Mighty No.9
【まいてぃ なんばーないん】
ジャンル
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アクション
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 ※画像は北米版
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対応機種
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Windows 7/Mac OS X/Linux プレイステーション3 プレイステーション4 Xbox 360 Xbox One Wii U
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発売元
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comcept deep silver スパイク・チュンソフト
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開発元
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comcept インティ・クリエイツ
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発売日
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2016年6月21日
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定価
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2,500円(税抜) ⇒【Win/Mac/Linux】1,980円
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備考
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PS3/PS4/WiiU版は配信終了
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判定
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なし
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概要
カプコンを退社した稲船敬二氏がKickstarterで出資を募って制作した2.5D横スクロールアクションゲーム。
稲船氏の思い入れの強い『ロックマン』シリーズフォロワーの1つで、「ユーザーと共に作り上げていくコンテンツ」をコンセプトに開発中のゲームを実際にテストしてもらうといった方式で開発が進められた。
ストーリー
西暦20XX年、ロボット技術の進歩により大きく発展した世界。人々はロボット同士が戦う「バトルコロッセオ」に熱狂していた。
ところがある日、突然アメリカ中のロボット達が暴走を始める。
ロボット産業の中心を担うチェリー・ダイナミクス社はこれを悪の天才科学者Dr.ブラックウェルの仕業であると発表する。
コロッセオの人気チーム「Mighty Numbers」も暴走してしまうが、チームの末弟Mighty No.9「ベック」とサポートロボット「コール」だけは暴走を免れていた。
ベックは開発者であるDr.ホワイトの命令により他のナンバーズを救出するため戦いに身を投じるのだった。
特徴
基本システム
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ロックマンとほぼ同様、ジャンプ、ショット、そしてダッシュにあたる「アクセラレート」が使える。
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壁蹴りは存在しないが、足場に向かってスティックを入れておくと縁に掴まって登ることができる。これを駆使して登っていくエリアも存在する。ただし、滑る足場は掴めない。
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アクセラレートは空中でも出すことが可能で、『ロックマンXシリーズ』のエアダッシュと異なりダッシュジャンプ中でも使用できる他、空中の連続使用も可能。
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地上にいる時、スティック下を入れながら使うと更に姿勢を低くしたダッシュになる。空中で入力した場合は急降下できるが、中断できないため落下死に注意する必要がある。
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敵にショットでダメージを与えていくと「弱体化」し、色が変化する。この時、アクセラレートで体当たりするとその敵を「Xel」にして吸収することが出来る。
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吸収には「吸収レート」が存在し、弱体化させてから吸収するまでの時間が短いほど高いレートを得られる。連続して100%のレートで取り込むとコンボになり、ステージクリア時にスコアボーナスを得られる。
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ボスも一定ダメージを与えると弱体化し、攻撃を防御して回復を図るためアクセラレートで体当たりする必要がある。
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なお、アクセラレート中はショットを撃てずキャンセルできない上、ダメージを受けると通常よりも大きくノックバックしてしまう。
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ショットとジャンプは「アクションシフトボタン」を押しながら使うと異なるアクションを出せる。
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アクションシフト+ショットの場合はバックジャンプしながら斜め下に攻撃。
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アクションシフト+ジャンプの場合は向いている方向と逆にジャンプする。出始めに無敵が発生する。
アクセルブースト
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アクセラレートで敵を取り込んだ際、その敵の属性に応じて一定時間ベックの各種能力が強化されるシステム。
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アクセルシュート:攻撃力が向上。通常ショットなど一部の攻撃には貫通性能も付加される。
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アクセルスピード:移動速度が向上。
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アクセルアーマー
:防御力が向上。
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アクセルリカバー:体力回復。一定以上のエネルギーを吸収するとストックされ、任意のタイミングで使用可能。要はサブタンク。ただし、死ぬと消滅する。
リセレクション
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ボスから獲得できる特殊武器。アタックエネルギーを消費して使用する。
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アタックエネルギーは時間経過で回復する他、Xel吸収時に回復可能。
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アクセルブーストにより異なった強化が行われる。ボスが特定のリセレクションを弱点としている点はお馴染み。
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各リセレクションはリセレクションボタンで順番に切り替えられるが、3つまでショートカットに登録して瞬時に切り替えることもできる。
キャラクターチェンジ
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一部のステージではコールを操作して攻略することになる。
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コールの性能は、ショット連射不能、ダッシュ、ジャンプボタン押し続けでホバー落下、しゃがみ移動が可能。
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ベックと異なりダッシュしても敵を吸収することは出来ず、リセレクションも使用できない。
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アタックエネルギーを消費してバリアを張ることが可能だが張っている間は攻撃できなくなる。エネルギーは自然回復せず、ステージ中に配置されているパックを交換することで回復する。
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DLCの追加ステージをクリアするともう一人のプレイヤーキャラ「RAY」が解禁され、ステージセレクト画面で上キーを押すと切り替え可能になる。
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RAYの基本アクションはベックと同じだが、通常攻撃がショットでなくクローによる近接攻撃になっており、このクローでも敵を吸収できる。
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ダッシュに攻撃判定が付いており、体当たりするだけで敵を吸収可能。
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ただし、RAYは時間経過でライフが減少していくので、Xel吸収で回復が必要。長期戦になるボス戦では実質的に一撃死という仕様で高難易度になっている。
その他
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ライフ+残機制。
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OPステージをクリアすると8つの選択ステージをプレイでき、全てのステージをクリアすると最終ステージへ挑戦できる。
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他にオンラインランキングを競えるチャレンジモードなどの「EXモード」も用意されており、ゲームの進行に従ってステージが解禁されていく。
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一度ゲームをクリアすると「HARD」「HYPER」「MANIAC」の難易度が解放され、新規データ作成時に選択可能になる。
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HARD以上では敵の強さや行動パターンが強化されるが、代わりに最初から全てのリセレクションが使用可能になる。
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MANIACではこれらに加えて一撃死制になるため、本作の全てを知り尽くしたプレイヤーでなければクリアは絶望的。
評価点
爽快感の高い操作性
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基本的な操作性は良好で、ボタンの反応も良く遊びやすい。通常のショットでもザコ敵は基本的にのけぞってくれるので打ち込んでいく楽しさもある。
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連続エアダッシュが可能なアクセラレートでの移動は非常に爽快で、アクセルシュートで貫通させ弱体化した敵を一気に吸収できた時は気持ちよくプレイできる。
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ショートカットを活用することで最大4種類のリセレクションを瞬時に切り替えることが可能なのも良点。ステージ攻略に有利なリセレクションを登録しておくとスムーズに攻略できる。
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後述のように慣れが必要ではあるが、上達すればリセレクションで一気に弱体化させ、アクセラレートで吸収と同時にエネルギー回復して延々とリセレクションを使いまくれるようになる。特殊武器を活用してのステージ攻略という点では非常によく出来ている。
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DLCキャラであるRAYはベックと違ってダッシュに攻撃判定があるため、後述の誤タックル問題が発生しにくく抜群の爽快感とアクションを楽しめる。
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暴走ぎみの性格や近接戦闘主体のアクションなど全体的に攻撃的なキャラクターになっており、さらに彼女専用のシナリオも丸々一本分追加されるのでお得感も高い。
個性的なキャラクター達
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主人公「ベック」は末っ子という設定のためか少々臆病な性格で、嫌々戦いに出ていくが兄弟思いで他のナンバーズとも仲が良い。
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ロールちゃんにあたる「コール」は意外にもクールで機械的な性格。ベックの戦いを拒否する姿を理解できないと漏らすなど、対照的。
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ボスとして立ちはだかるナンバーズも、子供のような性格の「クライオスフィア」・短気で騒がしい性格の「ダイナトロン」・リポーターとして実況しながらステージ中を飛び回る「アヴィエイター」・自力で暴走を抑えようとする「ブランディッシュ」・皮肉屋なスナイパー「カウンターシェード」など個性派揃い。
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ステージ攻略中に喋りかけてきたり、ボスとの戦闘中もベックとの会話がボイスで演出されて雰囲気を盛り上げてくれる。
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救出したボスは仲間となり他のステージで手助けしてくれるようになるため共闘感がある。トラップや敵を破壊してくれたりするので攻略もだいぶ楽になる。
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手助けに来てくれるボスキャラは、ステージ選択時にアドバイスをくれるので分かりやすい。クリアしたステージでもクリア前と同じように進行するため、手助けに来てくれることを知った後でも確認できるようになっている。
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これらキャラクターを演じる声優陣も豪華で、特に終盤の「工場」での賑やかな活躍などは印象的。
賛否両論点
グラフィック・BGM
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モデリング自体は悪くなく、世界観やキャラクターに合わせたものとなっている。
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ただしイベントシーンで口パクがなかったり、動作も簡素なものが多い。
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敵や敵の弾が見えにくくなる場面がある他、水中では画面全体が濁ったようになって見難くなるなど、演出・絵作りといった面ではやや微妙。
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曲自体は良好であるが、大人しめな曲が多いことと音量が小さ目なせいか、やや印象に残りにくくなってしまっている。
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DLCの「Retro Hero」を入れると8bit風に変化し、聴き取りやすくなるので曲の良さがわかりやすい。
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ジェネラルオプションのサウンド設定でBGM、SE、ボイスのテストが用意されているので、ここで聴いてみるのも手。
問題点
レベルデザイン
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どのステージも初見殺し、即死トラップが多く配置されており、ストレスの溜まりやすい作風になっている。
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「トゲ」にあたる電流トラップがそこかしこに配置されており、ダメージ後の無敵時間がほとんどないためノックバックして電流トラップに落ちて即死のコンボになりやすい。
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判定が分かりにくい場面もあり、例えば「発電所」後半の低空ダッシュで即死トラップを抜ける場面などは判定が非常に分かりにくいのにギリギリを通らねばならず、死にやすい。
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最初の8ステージをクリアすると出現する終盤ステージは上下に電流が配置された通路や落下死地帯のオンパレード。
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特に「工場」では全方位電流だらけの通路を落下しながらアクセラレートで長め・短めのエアダッシュを駆使し、針の穴を通すように細くなっているところを通るという非常に難易度の高い場所がある。もはや死にゲーレベル。
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リセレクションの「ジャイロブーメラン」を使うと落下速度が緩やかになるため攻略しやすくなる。というよりそれを前提にしている節があり、そのアクションがないRAYでのプレイ時では掴まれるロープがいくつか設置されており、それをエアダッシュで渡るだけなのでかなり簡単になっている。
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死亡し続けると道中でアイテムを出してくれるサポートロボ「パッチ」がブーストアイテムを出してくれるようになるが、即死トラップでの死亡が多いと意味はない。『ロックマン9』のような即死を防げるアイテムがあればまだ違っていただろうが…。
アクションの調整不足
前述のように操作性自体は問題はないのだが、ではアクションとして良好かと言えば一概には言えず、そこかしこで粗が見える。
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アクセラレートの難点
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遠くからちまちま撃つだけでクリアできないハイリスクハイリターンなアクションという点では面白いのだが、これを前提に調整した結果、敵が全体的に硬くなっており逆に爽快さを削ぐ要素になってしまっている。
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弱体化(無力化)までの敵HPはたいして高くはないのだが、アクセラレートで吸収しない場合、そこから破壊までが固くなっている。
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弱体化後の敵を傷つけずに吸収するというゲーム性上、弱体化後の敵にも当たり判定が残っておりショットが止められてしまう。
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敵が並んでいる場面などは貫通攻撃で一斉に弱体化できないと誤タックルの原因になりやすい。また、弱体化後の手前の敵がショットを止めてしまうので連打で破壊するのも面倒。そして、貫通攻撃は素のベックではできずアクセルシュートを取っている必要がある。
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ボス戦においても同様で、トドメ以外で普通に突っ込むとまずダメージを受けてしまうため、すれ違うように吸収する必要がある。
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さらに一部のボスはこちらの攻撃や吸収が届く範囲外に逃げてしまうため、タイミングによっては弱体化させても吸収しようがないので回復されてしまう。ザコに比べて吸収レートの低下も物凄く早いため、弱体化直後に吸収できないと100%を逃してしまう。これを見越してダメージを調整する必要がある為、あえて攻撃を控える状況もある。結果的にほぼ全てのボス戦がターン制のようになってしまっている。
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移動面でも無限にエアダッシュができるという破格の性能のため、(スコアさえ気にしないのであれば)これの連打で通り抜けてたほうが楽という場面も多い。
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壁掴まりの難点
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掴まれる場所があると簡単に暴発してしまいやすく、さらに掴まり中は攻撃不可。一部ボス戦では必須アクションなので、暴発のせいでタイミングを間違えることもザラ。
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リセレクションの難点
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リセレクションの選択はフォームセレクトボタンを押すたびに一覧が表示されてカーソルが移動し、リセレクションボタンを押して初めて武器チェンジできる。つまり武器チェンジに余計なボタン操作が必要で直感的ではない。しかもメニュー画面からは武器チェンジできないので落ち着いて操作することも不可能。
もろ『ロックマン』な事
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本作と同じく『ロックマン』シリーズを意識し稲船氏も関わっている『ガンヴォルト』シリーズは独自の世界観やシステムによりある程度の差別化がなされているが、本作はすでに述べた通り設定の段階から『ロックマン』にそっくりである。少なくとも『ガンヴォルト』シリーズ以上に『ロックマン』に近い。
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前述の通り稲船氏が係わっている為「開発者が同一」という事である程度の類似性は許容できうる範囲だろうが、さすがに二番煎じ感やオリジナリティーに欠けているのは否めないだろう。
総評
アクションゲームとして光るところもあるものの、粗も多くみられるため良作になり切れていない高難易度アクション。
初見殺しの多さやイマイチ面白さを活かしきれていないアクセラレートなど、調整不足な面が多い。
結果として、延期を繰り返しての出来に不満が多く聞かれる作品となってしまった。
慣れればそこそこ楽しめるゲームではあるが、根気よく繰り返しプレイすることが前提なので上級者向けと言えるだろう。
余談
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3DS/PSV版も予定されていたが、現在まで音沙汰ないまま。おそらくキャンセルされたと思われるが明確なアナウンスもない。
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そうこうしている内にPS3/PS4/360/WiiU版は配信終了してしまった。One/Win(Steam)はまだ配信が続いているので、これから触ってみたいという人はそちらで。
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稲船氏は発売前のインタビューにて続編の制作にも意欲を示しており、本作のストーリーも解決してない部分がいくつかあるが、今のところ新作の発表はない。
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アニメ化も企画されていたが、こちらも一切の続報がない状況である。
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同じインティ・クリエイツ制作の『ガンヴォルト』とは、スピンオフ作『マイティガンヴォルト』で共演している。
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本作の発売が延期されたため、ベックのデビューはこちらの方が早かった。
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『マイティガンヴォルトバースト』では本作のステージ、ザコ敵、ボスがアレンジされて再登場している。
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『ガンヴォルト爪』のプレイヤーキャラ「アキュラ」はベックと同じく体当たりが重要アクションで、ボスの特殊武器を奪えるなど共通点が多い。
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アキュラの場合は最初にタックルして敵をロックオンするという操作のため誤タックルしにくくなっている。本作の批判が活かされたのかもしれない。
最終更新:2025年04月22日 13:28