Unreal

【あんりある】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
Mac
発売元 GT interactive
ソースネクスト(日本語版)
開発元 Epic Games
Digital Extremes
Legend Entertainment(拡張パック)
発売日 1998年4月30日
定価 980円(Steam)
配信 Steamでの販売は2022/12/14に終了
判定 良作
ポイント Epic Gamesの出世作
独自エンジンによる映像美
ゲームプレイの革新性は薄い
Unrealシリーズ
Unreal / II
Unreal Tournament / 2003 / 2004 / 3
Unreal Championship / 2


概要

次世代のグラフィックがウリの3DFPSとして1998年に発売されたFPSであり、後の『Unreal Tournament』シリーズの原型となった作品。
Epic Games*1が独自開発した 「Unreal Engine」(アンリアルエンジン) による非常に高品質なグラフィックが多くのゲーマーやレビュアーから絶賛された。
現在ではメーカー問わず様々なゲームで使われている「Unreal Engine」の源流となった作品である。

後にエンディング後の主人公の動向を描く拡張パック 「Return to Na Pali」 が出ている。


ストーリー

人類が惑星間を航行するようになった、はるか遠い未来…
とある罪で逮捕され囚人となった主人公 「Prisoner 849」 は、破損した囚人輸送船「Vortex Rikers」の船内で意識を回復する。
輸送船は謎の力により未知の惑星に不時着し、敵対勢力の襲撃を受けていたのだった。

墜落の衝撃で破損したプラズマゲートを潜り抜け監獄エリアから脱出した主人公は、逃亡の途中で看守を殺害する敵対勢力 「スカージ」 の姿を目撃する。
彼ら地球外生命体からも逃れなんとか船を降りた主人公を待ち受けていたのは、見たことの無い大自然の広がる惑星「Na Pali」の原野だった。

原住民である人型生物 「Nali」 を奴隷として酷使するスカージたちとの戦闘を介してNa Paliの過酷な現状を知った主人公は、Naliの解放と惑星からの脱出を図り単身スカージの統率者 「スカージクイーン」 の討伐に挑む。



ゲームシステム

  • 基本的なゲーム内容は『QUAKE』をベースにしている。ただしマップはQUAKEのものより圧倒的に広く、開放感のある地形が比較的多い。
    • マップは全38面構成。地形も複雑なためボリュームは非常に満点。
      ロケーションは大地、沼、遺跡、宇宙船、鉱山、ジャングル、村など、進むにつれてさまざまに変化し、プレイヤーを飽きさせない。
    • セーブ&ロードは同時期のFPSではおなじみの任意で行う仕様。
      残念ながらオートセーブはないが、基本的にどこであろうと制限なくセーブしておくことができる。
  • 特殊な操作として、任意の方向を素早く2回連打すると 「ドッジング」 と呼ばれる高速スライド回避を行える。
    このドッジングを用いることが前提の敵も多く、プレイヤーは敵の放つ玉を素早く避けながら撃ち合いを行う。
    • また、武器毎にいろいろセカンダリ攻撃が用意されているのも特徴。
      チャージショットのような単純に威力強化から挙動自体が異なるもの、組み合わせで大ダメージを叩き出せるものなどさまざまで、使い方を習熟すればより有利に立ち回ることができる。

評価点

当時最高峰の美しいグラフィック

  • オープニングで映し出される映像からして旗の揺らめき、薄ぼんやりとした篝火、床の鏡面反射、環境光、色のある照明、空の多重スクロール、霧といった(当時としては)非常に高度な表現を大量に取り入れている。当時のPCの限界と言えるほどのグラフィックは映像を重視するゲーマーから絶賛された。
    • 本編も緻密なテクスチャや光源処理によって美しい地球外惑星が描かれており、プレイヤーの冒険気分を掻き立てるのに貢献している。

ドッジング主体の堅実なゲームプレイ

  • ベースとなる『QUAKE』を忠実に発展させたスポーツFPS的なゲームプレイを採用しており、QUAKEとの一番の相違点として同一方向の移動を2連打する事による高速ジャンプ「ドッジング」が特徴となっている。
    プレイヤーは高速な左右移動を駆使して敵弾をかわしつつ敵を倒していく。
    一応前後方向にもドッジングは可能なのだが、マウスエイムを組み合わせて「前移動は押しっぱなしで横移動を2連打、同時にマウスを逆に45度分振ってすぐ戻す*2。」という斜めドッジを使うと、前連打間の微妙な停止を消せるため、最速の移動が可能。
    • 武器もそれに合わせたスポーツ系FPS的調整がされており、使用していて非常に爽快。高いレスポンスによって独特な没入感を生み出すことに成功している。

個性的な武器

  • 武器は10種類と多く、更に左クリック(プライマリー)と右クリック(セカンダリー)が各武器に用意されているため、実質2倍の武器数となっている。
    • それぞれの武器に個性があり差別化が図られている。
      特にASMD Shock Rifleの 「セカンダリーにプライマリーを当てると大爆発を起こす」 というショックコンボは1作目にしてUnrealを象徴する武器となった。
      他の武器も癖を覚えるほど強くなれる調整となっており、思い通りに振り回せたときの爽快感は髄一。

壮大なBGM

  • 場面や状況によってBGMは多彩に変化していく。Na Paliの幻想的な風景やスカージとの激戦を盛り上げる壮大な音楽の数々によって、プレイヤーはよりUnrealの世界に没入出来る。
    • Unreal engineの高い音響性能が存分に活かされたダイナミックな切り替えが多く、同じエリア内であろうと「激戦に差し掛かると一旦BGMが消え、交戦開始と同時にアップテンポの曲が流れだす」といった細かい音楽調整により展開を盛り上げてくれる。

適度に作り込まれた、素晴らしい敵AI

  • 敵の種類は色々豊富で、図体がデカいサイボーグ、動かない攻撃的植物、水中も泳ぐ半魚人、攻撃的な虫などさまざま。
    • メインとなる敵種族『スカージ』は非常に機敏な動きを特徴としており、左右のドッジロールでプレイヤーの弾を避ける。好戦的な種族という設定にも合致した独特な挙動は単純なごり押しになりがちなスポーツ系FPS戦闘へのスパイスとして機能している。
      また、非戦闘種族のNaliたちも助けると秘密の部屋へ案内してくれたりと、愛嬌のある姿を見せてくれる。
    • マルチプレイbotも非常に高品質。流石に人間には劣るものの、調整に応じて歯応えのある動きを披露してくれる。

楽しいオンラインマルチ

  • DM・TDMの2つのルールしか存在しないものの、スポーツ系FPSの王道を往く、立体的な地形を生かした派手な撃ち合いが楽しめる。武器の個性もしっかりと差別化されており、様々な武器の性能や配置を暗記し、それを駆使する戦略性も高い。
    • 後に本作のオンライン部分は様々な調整が加えられた後に『Unreal Tournament(UT99)』として単独タイトル化され、その後「Unreal Tournamentシリーズ」として2000年代初頭のスポーツ系FPSを代表するシリーズとしての地位を築いていった。

問題点

重かった

  • 1998年当時のベンチマークソフトとして多く利用されたという実績は伊達ではなく、その高性能なエンジンが必要とするスペックは(当時としては)非常に大きかった。
    ゲーマーの組んだ並みの自作PCですら遊ぶのに苦労するほどであり、当時のPCで最高設定で動かすのは不可能だとも言われていた。
    これはEpicの社員が皆揃ってフルチューンの自作PCを使っていて、それに合わせてしまった故に一般レベルでは動作が怪しいレベルの作品となってしまったという説が有力。
    • 勿論2年も経てばハードウェアの進化/世代交代によりこの欠点は消えていき、それに伴い高性能なUnreal Engineを使用するゲーム開発会社も続々と登場した。
      現在ではノートパソコンでも問題なく動作するため、重さ自体は欠点ではなくなった。
    • 逆に近年のPCではコマンドラインでfpsを固定してあげないと動作が安定しなくなっている。
      これは起動時にCPUのクロック周波数をプログラム側で判定し、それに合わせたfpsに設定するという機能がデフォルトで入っているためなのだが、2000年以降のCPUアーキテクチャーはアイドル時と高負荷時にクロック周波数を可変させる方式が基本仕様となっている。
      この場合、起動直後は負荷が低いので低クロックだったCPUが、ゲーム起動後に高クロックに切り替わるため、それに合わせて高速化してしまう弊害を防ぐためにこのような対処法を取る形になっている。

進化の薄いゲームプレイ

  • マップを右往左往してスイッチを探し、新しく開けた道を探してまた右往左往する、『DOOM』時代の古典的な探索スタイルを採用している。一部パズルはやや難解すぎるきらいがあり、マップの広大さも相まって苦痛に感じることもしばしば。特に拡張パック『Na Pali』にあるギミックは、起動装置とそれによって動く装置の位置が離れすぎて気づかない可能性が高い。
    1998年は探索型からリニア構造のFPSへの転換期に当たる年であり、そうした時期を考慮するとやや時代遅れ感のあるレベルデザインだと言わざるを得ない。
    • ただし、ゲーム進行の革新性やマップ構造の親切さには欠ける代わりに静的な壮大さは徹底して追求されており、表現の限界に挑戦した同年代の傑作としての魅力は現在でも感じられる。

総評

ゲームプレイ自体は1996年の3DFPS『QUAKE』の発展系であり、ジャンル全体へ衝撃を与えるほどのタイトルとなることはできなかった。
並の自作派では歯の立たない激重グラフィックもそのプレイの敷居に拍車を掛け、比較的動作の軽いgoldsrcエンジンと革新的なゲームプレイを採用した同年の『Half-Life』と比較しても知名度的に今一歩及ばない結果となっている。

しかし、Unreal Engineによって描かれる美しい風景と『QUAKE』ベースの堅実なゲームプレイ、壮大かつ独特な世界観などは非常に完成度が高く、またゲームボリュームも満点でありコアなPCゲーマーや批評家を中心に絶賛された。
後にUnreal Engineやオンライン対戦特化の『Unreal Tournament』シリーズの発展に伴い初代の知名度も上がっていき、スペック向上によってプレイの敷居も低くなった現在では気軽に手に取れる1998年の名作として多くのゲーマーから評価されている。


余談

ゲームエンジンとシリーズ続編

  • 本作に使用されたUnreal Engineは、後に数多くの3Dゲームタイトルのエンジンとして利用された。
    初期の代表的なものとしてはオンラインマルチの派生作『Unreal Tournament』、RPG要素の濃くなった『Deus Ex』、ファンタジー要素の濃いFPS『Wheel of Time』などが挙げられる。
    その後も『Unreal Tournament』シリーズの発展に伴い「Unreal Engine 2」、「Unreal Engine 3」とエンジンもアップデートが続けられ、現在ではマルチプラットフォームにおけるサポートの手厚い代表的な3Dゲームエンジンの一つとして多くのデベロッパーが採用している。
    • 反面、ナンバリングの続編である『Unreal II: The Awakening』*3はその内容からあまり良い評価は与えられていない。更にオンライン対戦の『Unreal Tournament』シリーズも2007年の『Unreal Tounament 3』で止まってしまっているため*4、どちらかというと本編シリーズよりは現在も開発・アップデートが続けられている「Unreal Engine」の名前のほうが知名度が高い。

「Gold」版の相違点

  • 無印とReturn to Na Paliのパッケージである「Unreal Gold」以降のUnrealは、UI周りがUnreal Tornamentの物と共通になっている。これのせいか、旧版のUnrealとはマルチプレイの互換性が無い。ただし2020年現在Unrealを手に入れようとするとほぼOldunrealからのDLになるため、さほど問題は無いとは思われるが、大昔のパッケージを引っ張り出した場合には注意が必要。

販売停止から無料再配信へ

  • 2022年12月14日、Epicのオンラインシステム変更に伴うマスターサーバーの停止に伴い、オンラインマルチプレイ要素のあるUnrealシリーズのSteamでのダウンロード販売が終了した。
    ただシングルモードがメインであったUnrealやUnreal2まで販売終了という事に関しては疑問の声が上がった。
    • 一応Unreal、Unreal Tournament、Unreal2に関してはバンドルパックであったUnreal Anthologyからのインストールができるのだが、Unreal Tournament2004だけはWindows10以上の環境ではインストールこそできるがCDキーが通らないため、新規の購入は実質不可能となってしまった。
  • しかし時は巡って2024年12月11日、長年UnrealシリーズのリマスターModを開発していた「OldUnreal」というプロジェクトがEpic gamesの公認を受けて公式サイトで 『Unreal gold』本体の無料配信 を開始。
    現在では、最新OSに最適化された状態の初代『Unreal』をいつでも気軽に遊ぶことが出来るようになっている。
  • そして、Epic games公式サイトではUnrealシリーズの特集ページも用意された。
    各タイトルの紹介文下部にはリンクが用意されており、『Unreal』と『Unreal Tournament』の無料ダウンロードページへと繋がっている。
最終更新:2025年08月04日 22:21

*1 本作発売当時は「Epic MegaGames」という社名だった。1999年2月に現在の所在地であるノースカロライナ州のケーリーに本社を移転。同時に社名を「Epic Games」に変更している。

*2 右ドッジなら左にマウスを振って左45度を向いて横ドッジ。空中にいる間に正面に向き直る。

*3 開発は本作の拡張パック「Return to Na Pali」を手掛けたLegend Entertainmentが担当。

*4 2014年にUnreal Engine4で開発されていたシリーズ最新作がお蔵入りになってしまったため。