ASSASSIN'S CREED ORIGINS

【あさしん くりーど おりじんず】

ジャンル アクションRPG


対応機種 プレイステーション4
Xbox One
Windows 7~10
メディア PS4/One BD-ROM/ダウンロード併売
Win ダウンロード専売
発売元 ユービーアイソフト
開発元 ユービーアイソフト モントリオール・スタジオ
発売日 2017年10月27日
定価 PS4/One パッケージ版:8,400円
ダウンロード版:7,500円
Win 通常版:8,400円
ゴールドエディション*1:10,200円
レーティング CERO:Z(18才以上のみ対象)
備考 前日譚を描いた小説版もあり
判定 良作
ポイント 物語は「起源」へ
色鮮やかに描かれる古代エジプトの砂塵と陽光
魅力的なメジャイの主人公・バエク
シリーズ初のファンタジー要素が登場
アクションRPGへの路線変更は賛否両論気味
ASSASSIN'S CREEDシリーズ


概要

ユービーアイソフトが販売するステルスアクションゲーム『ASSASSIN'S CREED』シリーズのメインタイトル10作目。
同社の看板タイトルとして定着している『ASSASSIN'S CREED』だが、毎年新作を継続してリリースするという状況から質のバラつきやマンネリ感も出ており、こうしたこともあり前作『SYNDICATE』の発売後一旦シリーズの休止宣言が出ていた。
本作はそのシリーズ再開の鏑矢となるタイトルであり、過去作の様々な要素の廃止・変更・復活をしつつ新たな現代編の主人公が明確に設定されるなど記念すべき10作品目を迎えるにあたり「仕切り直し」を強く意識した作品となっている。

中世の十字軍に始まり産業革命の時代まで来た『ASSASSIN'S CREED』だったが、ここに来て本作は一気に時代を遡り、紀元前のプトレマイオス朝エジプトが舞台となっている。
古代エジプトの栄華が失われつつある中で最後のメジャイ*2の戦士バエクの復讐の旅路を通し、アサシン教団がいかに発足したのかが描かれる。


ストーリー

紀元前49年。
プトレマイオス13世の治世下のエジプトでは日に日にローマ帝国の影響が増し、神々への信仰も少しずつ揺らぎつつあった。
エジプトの守護戦士「メジャイ」の末裔バエクは謎の仮面の男たちに息子を人質にとられ、不幸な事故により息子を喪ってしまう。
それから1年後。バエクとその妻のアヤは息子の魂の安寧のため、エジプトを闇から操る「古き結社」たちへの仇討ちを始めるのであった。

時は流れ2017年。
アブスターゴ社員のレイラ・ハサンはアニムス計画から遠ざけられたことに憤慨し、自身を計画から外した上層部を見返すためにバエクたちの墓所を暴く。
2人のミイラから得た遺伝情報を新型アニムスへとセットし、悠久の時を超え過去世界へとダイブするのであった。

特徴

  • 本作はシームレスなオープンワールドマップを採用し、エジプト全土を自由に冒険することができるようになっている。
    • 過去作同様各地の高所にはビューポイントが設定されており、一度シンクロするとその地点へと高速移動可能になる。
    • これまでの作品同様シナリオが進行するまで一部侵入できない地域や特定のイベント限定のマップもあるが、全解禁後の広さはシリーズでも随一の物となっている。
      • また、地上のみならず水中にも潜水して探索できるようになった。『IV』でも可能だったが、本作では十分な深さがあるところは任意に潜ることができる。
      • 水上もこれまではひたすら泳ぐ場合が多かったが、本作ではファルーカ(小型帆船)に乗り込み操ることで、快適に移動できるようになった。
      • 騎乗動物は従来の馬の他に、エジプトらしくラクダも使用可能。また戦車(いわゆるチャリオット)も登場して使用可能になっている。
    • 伝統的な操作割当であったRボタンのアクティブモードなどが廃止され、R1/RBが弱攻撃・R2/RTが強攻撃ボタンになった。フリーランに相当する段差移動は×/Aボタンか○/Bボタンだけ押しっぱなしで良くなった。
  • レベル制・スキルツリーシステムの導入
    • 過去作からの最大の変更点と言える部分で、これまでは純粋にアクションゲーム寄りの作風だったが、本作は敵を倒したりクエストをクリアすることで経験値を溜めレベルアップする…というRPG風の作りになった。
    • スキルツリーはレベルアップ・石板発見時に入手できるアビリティポイントを消費することで新たなスキルを習得できる。
      • ステルス能力と弓矢などの遠距離武器の「ハンター」と、近接戦闘関連スキルの「ウォリアー」に加え、爆弾やスリープダーツなどの特殊装備と戦闘以外のスキルの「預言者」の3系統があり、任意の系統から順番に習得することができる。
    • オプションによる難易度選択が導入されたのも本作から。ステルスアクションに苦手意識が拭えない初心者でもシリーズに入りやすくなった。
  • 戦闘システムや武装に関しても過去作の物から刷新された。
    • 最大の変更点として盾が追加されたことが挙げられる。L1/LBボタンでガードを固めることや受け流し(パリィ)が行えるようになり、一言で言うと『DARK SOULS』及びそのフォロワー作に近い操作体系をとっている。
    • また、会敵すると画面下部にアドレナリンケージが出現し、敵に攻撃を当てたりすると徐々にケージが上昇する。最大値まで貯まった状態で弱・強攻撃ボタンを同時押しにすれば装備している武器に応じて大技を繰り出したり一定時間バエクのステータスアップが行える。
      • もちろんシリーズの象徴であるアサシンブレード*3などを使った暗殺術も健在で、後述の通りレベルさえ十分で敵に発見されていない状況ならば一瞬で息の根を止めることもできる。
      • ブレードに加えて、本シリーズの名脇役たる煙幕弾や毒針といった小道具もスキル解放で使用が可能。
    • 過去作では武器はある程度種類が限られており、特定のタイミングで入手したら最後までその武器が使用可能というアクションゲームとしてはベーシックなスタイルだったが、本作ではいわゆるハクスラ要素が部分的に導入された。
      • ただし、一般的なMMOなどに見られる装備品の能力がランダムに割り振られる本格的なハクスラと違い、武器ごとにパラメーターや特殊能力自体は固定されている。
      • パラメーターは固定はされているものの、装備には非固定のレベルが設定されており、鍛冶屋でレベルをアップグレードすると基本性能を上げられるため、お気に入りの装備を長く使うプレイも可能。
      • ただし、自身の現在レベル以上のそれを入手しても装備することはできない。新たな武器や盾は、イベントでの入手や鍛冶屋での購入のほか、各地の宝箱を開けたり、敵を倒すことで入手できる。
      • 武器にはバランス型の剣や、素早く手数を繰り出す双剣、遅いが一撃の強い鈍器、リーチの長い槍などのほか、各種の弓矢が存在。中にはスナイパーライフルやショットガンのような性能を持つ弓矢もある。
      • 肩当てや籠手などの防具や矢筒といったその他の各種装備は、野生生物を倒したり各地に落ちている物を拾うことで集めた素材を使うことで強化が可能。
  • 相棒のセヌ
    • 主人公のバエクはこれまでのアサシンたちの特殊能力である「鷹の目」を持たないが、その代わりとして本物の鷹であるセヌが冒険をサポートしてくれる。
    • 上キーを押すと操作キャラがバエクからセヌへと切り替わり、敵や宝箱のマーキングなど偵察が行えるようになっている。スキルを習得すれば陽動も行えたりと旧シリーズにあった「弟子」の要素も部分的に兼ね備えている。
  • 一部のストーリーイベント限定で海戦が復活した。
    • 海戦が初登場した『III』のような海洋ミッションもないため、基本的にシナリオ中に数度のみ行われる。
    • 紀元前の海戦ということもあって当然ながら大砲なぞ存在しない故に、火矢と投石器、衝角で攻撃する。
  • デズモンド時代のような現代編の復活。
    • 近年の現代編はプレイヤー自身が主人公とされ明確なキャラクターが設定されていなかったり操作できないムービーパートで済まされていたが、本作では現代編の主人公が明確に設定され、初期作のようなTPS視点の操作パートが復活した。
    • 実写映画版と関わりが深く、事前に観ているとより楽しめる。映画を観ていなくてもゲーム中の読み物で最低限の補完が可能。
  • DLC
    • 本編の後日談となるエピソードが2回に分けて配信されている。どちらも単品販売がなされている他セットで買えるシーズンパスも販売されている。いずれも新規マップが追加された規模の大きい拡張となっている。
    • 第一弾「隠れし者」
      • シナイ半島を舞台にバエクたちのその後が描かれる。教団の教義の1つが確立された経緯や過去作へとつながる小ネタが存在したりと、本編終盤で垣間見える教団の起源に深く切り込んだシナリオとなっている。
    • 第二弾「ファラオの呪い」
      • こちらも本編の後日談となるエピソードだが、かつてのエジプト首都テーベ・王家の谷・そしてまさかの古代エジプトにおける冥界である「葦の原野」を舞台にしている。
      • 現世と冥界を行き来して、今は亡き歴代のファラオやアヌビス神と戦うといういつもの『ASSASSIN'S CREED』からはぶっ飛んだ神話・超常的なシナリオであり、本作のエンドコンテンツとなるボス戦クエストも同時に配信開始されている。
  • ディスカバリーツアー
    • 無料アップデートで追加されたモード。教育機関などでの利用も視野に入れて製作されているため、このモードのみの単品販売もなされている。
    • 戦闘や収集要素は一切なく、プレーヤーが自由に歩き回る形で当時のエジプトの文化・習俗・政治情勢などについて学習することができる。個別にナレーションや写真資料も付属している。
      • ちなみに操作キャラは、本編でも操作できるバエクとアヤ、レイラから主要キャラやモブNPCも含め、25種類用意されている。しかし、ゲーム本編のモーションとマップを流用している都合上、誰でもパルクールアクションが行えるため、神殿やピラミッドをいとも簡単によじ登る幼女やクレオパトラという、とてつもないシュールな光景も拝むことが可能。
    • 5つのテーマに分類される合計75種類ものツアーが個別に用意されており、本編のおまけとして見た場合かなりのボリュームとなっている。
  • これまでアニムスのUIという体裁でデザインされていたVRテイストなUIなどが一新され、シンプルなフリーローミングRPGの様式になった。
    • クリア済みクエストのリトライとサブ目標によるシンクロ率、DNAシークエンスなど、ステージ制とそれに伴う要素もまた同時に全廃されている。
      • ライフゲージ、マップ描画時のデジタル感と死亡時の「シンクロ解除」に名残を残すのみ。

評価点

  • エジプトというロケーションそのもの。
    • 昨今では古代エジプト的な要素を含んだキャラクターなどは様々な創作作品で見受けられるがエジプトそのものが舞台になる作品は限られており、プレーヤーがエジプトを自由に歩けるオープンワールドゲームは本作が世界初のタイトルと言える。
    • 一面に不毛の地が広がるサハラ砂漠からナイルの恵みにより発展した緑豊かなナイルデルタ地域、居住地もアレキサンドリアのような巨大都市から田園風景が広がる鄙びた村、説明不要の世界遺産であるギザの王墓とロケーションも豊富で飽きさせない。
      • エジプトの目玉と言えるピラミッドや数々の神殿は外部のみならず中身もしっかりと作りこまれており、探索したいという冒険心をくすぐらせてくれる。
        ピラミッドもまた現代の石段が剥き出しになったものではなく、当時の外観を再現した化粧石で覆われた美麗な物となっている。当然、パルクールで天辺まで登ることもできる。
      • 内部も迷宮状になっているものがあり、探索して進むには火をともして明るくしたり、途中のパズル要素をクリアして通路を構築していく必要があり、探検気分も味わえる。途中やゴールにはレアアイテムなどが置かれており、自キャラ強化にも役立つ。
      • 現在は失われたアレクサンドリア図書館やファロス灯台と言った歴史に名のみを遺す建築物も再現されているのもポイントで、こうした今は姿形無き名所に訪れることができるのもゲームならではの楽しみと言える。
      • わずかに残っている当時の資料に加え、フランスの建築家ジャン=ピエール・ウーダン氏の協力のもと、これら建造物がデザインされているためリアリティも抜群。
      • これを象徴するエピソードとして、本作発売から6日後に発表された素粒子を用いたギザの大ピラミッド調査で発見された隠し部屋がゲーム中にも再現されていたという驚嘆すべき事件がある。
      • ウーダン氏の説を元に将来的に発見されることを期待して実装したとのことだが、わずか数日で事実であったことが証明されたのである。
      • プトレマイオス朝末期という時代柄、エジプトに勢力を伸ばしてきているギリシャやローマの建造物も散見される。ギリシャ神の神殿、建設中の水道橋など。
    • 人間や建物のみならず動物たちも生き生きとしており、村で立ち止まると猫がすり寄ってきたり牛がのんびりしていたりと古代の息遣いを感じさせる。
      • 一方動物たちは必ずしもバエクに友好的とは限らず、エジプト各地にはコブラやライオン、ワニにカバと言った危険な生物たちもいる。とりわけカバはかなりの強敵で、リアルなカバの恐ろしさ*4を再現しているゲーム業界でも珍しい作品だと言える。
    • ターゲットを始末した際の対話シーン(通称:暗殺空間)もエジプト神話に則り、過去作とは一味違った神秘的な演出が好評。
    • 資料が限られる古代の話ゆえにアサクリのお約束である実在の偉人との交流や歴史上の大事件との絡みはどちらかというと少な目だが、クレオパトラの有名な逸話や誰もが知っているカエサルのあの一言といった歴史体験ゲームとしての押さえておきたい要所はしっかりと押さえている。
    • パルクール機能では潜水に加え、かなり数の壁や岩山をよじ登れるようになっており、より高度な3次元的な移動やショートカットが可能になった。
  • マップの広さもこれまでの『ASSASSIN'S CREED』以上。
    • これまでの『ASSASSIN'S CREED』は舞台となる都市を絞って特定の都市およびその周辺地域のみをミッションの合間に探索できるようになっていたが、本作は(ナイル川東側と上エジプトが舞台になるDLC編も含めれば)文字通りエジプト全土をほぼ切れ目なしに渡り歩くことができる。
    • 当時の伝統的な暮らしをしているバエクの故郷シワのオアシスから、ギリシャ・ローマの文化的影響が色濃い地中海方面まで自分で歩いたり馬や駱駝に乗って冒険可能。
      • また、騎乗している際には目的地までのオート移動機能も存在し、周囲を自由に眺めながら観光することができる。
  • 『ASSASSIN'S CREED』としては初めて他のゲームのような形のサブクエが導入され、各地で受注できるようになった。
    • 一度受注しても完遂しなくてもよく、複数のクエストを平行して進めてもよい。
    • ほぼ全クエストにフルボイスイベントがあり、過去作に多かった単純に数字を増やすだけの収集要素よりもストーリー性が増している。本シリーズ内での比較に限れば進歩していると言える。
      • 中身自体はいわゆるお使い的な物が多いものの、本筋では語り切れない古代エジプトの文化や習俗と関わりあるイベントが多々あるので、雰囲気づくりの一環としては申し分ない。
  • またメインクエストに関してはサブ目標などによる内容評価がなくなったことで、攻略の自由度を高く感じやすくなった。ステルスプレイが直接優遇されているわけではない分、近接戦闘や弓矢の各スキルを生かした大立ち回りをしても問題ないようになっている。
  • お馴染みの収集要素も豊富。アイテムやビューポイント回収の他に、ロケーションイベントという地点ごとに設定された小クエストをクリアしていくというものが存在し、「隠されたアイテムを見つける」「特定の敵を倒す」などをこなしていく。
    • 他にも財宝のありかをほのめかす文章が書かれたパピルス書の謎解きや、ストーンサークルでの星座探しがある。特に後者はバエクと息子ケムの会話が回想されて、ストーリー上での父子の絆が実感させられる。ちなみにケムは、父親を驚かせるほどのなかなかマセた少年だったようだ。
  • 主人公・バエクが魅力的
    • 30代後半の所帯持ちの男性というゲーム業界としては異色の主人公だが、その分精神的に成熟しており自身の過去から子供思いなシーンが多く、歴代主人公でも屈指の人格者である。
    • 信心深く知性に富む一方で卑劣な悪党には激昂を見せる、理知的な側面と直情的な側面をバランス良く併せ持った人間的な人物であり、共感しやすい。
      • また、サブクエストによっては冗談めかした対応を取ったり奔放な依頼人に困らされたりと少々コミカルな場面も存在し、好感の持てる描写に事欠かない人物となっている。
  • 「オリジンズ(起源)」というタイトルの通りこれまでの教団のしきたりやシリーズのお約束についてもそれとなく連想させる要素が多く、シリーズファンなら楽しめるようになっている。
    • 特に「アサシン教団のマーク」が初めて画面に映るシーンは演出も相まって本作の印象的なシーンに挙げるファンが多い。
      • そもそもアサシンとエジプトに何らかの関係があることは初代の時点で示唆されており、『II』でも本作に登場する人物について言及があったため、長らくエジプト編を望むファンは一定数存在していた。本作はこうしたファンの期待にようやく応えて長年の伏線を回収できたと言える。
    • 一方それ故に、(過去編に限ればだが)シリーズ他作との接続は少なめであり、シリーズの他作品を遊んでいなかった人であっても話が分かりやすく手に取りやすい。
  • セーブファイルが複数作成可能に
    • 『UNITY』『SYNDICATE』ではセーブファイルを1つしか作成できなかったため、最初からやり直したければセーブデータを消すか別のアカウントを使用するしか無かったが、本作でようやく改善された。
    • また、装備やステータスなどを引き継いでストーリーを最初からプレイできるニューゲーム+もアップデートで追加されたので、気軽に過去のストーリークエストを再プレイできるようになった。

賛否両論点

  • カウンターの再廃止
    • 前作で復活したカウンター攻撃だが、本作でまたしても廃止され、盾の受け流しに面影を残すのみとなった。
    • これに関しては「正面から突っ込んでもリカバリーが効くため便利すぎた」「殺し方を考える余地が出来ていい」という肯定的な意見もあれば「囲まれた時や強敵相手と戦う時に厳しい」「カウンターで華麗にいなす方がアサシンらしい」と賛否どちらの意見も存在する。
      • カウンターが弱体化されたことで相対的に1人ずつ仕留める暗殺の重要度が上がったので、ミッションに直接要求しない範囲内でステルスキルを優位にすることに成功したとは言える。
  • ファンタジー要素
    • これまでのシリーズでは明確なSF・オカルト要素は第一文明関連のみで、それらも神話や聖書に出てくる秘宝が実は第一文明の科学の遺産であった、という程度の内容であった。
    • 対して、本作ではアニムスのバグや夢という形とはいえエジプト神話の神や怪物と対峙することになる他、DLC2ではファラオの亡霊や冥界まで登場する。
      • その内容自体は実に魅力的なものだが、シリーズの世界観の変容について賛否が分かれるところである。
  • 吹き替え
    • 本作ではこれまでのシリーズ同様に日本語吹き替えに対応しているのだが、主人公であるバエクの声には賛否が分かれている。
    • バエクの声を担当するのは福山潤氏なのだが、海外版バエクの声とは声質が正反対*5のために拒否感を示すユーザーが少なくなかった。
      • 本作の日本語吹き替え版トレーラーが公開された際には、炎上というほどではないが少々荒れたのも事実である。

問題点

  • メインストーリーの終盤の展開について
    + ネタバレ注意
    • ストーリー最終盤、突然操作キャラがアヤに変更されるミッションが2~3回ほど存在する。それだけでなく、最後の重要人物の暗殺もアヤ、エンディング前の最後のムービーもアヤ…とバエクを差し置いてアヤが美味しいとこを持っていく形となっている。
      • こうなった原因は、過去作で存在が示唆されていたのはアヤの方だったのでなんとかリンクさせたかった、本作後にアヤが主人公のコミックが販売されるのでその宣伝目的、初期案ではバエクが途中退場して主人公がアヤに切り替わるという話でその名残など色々あるとは思われるが、ひとまず納得がいっていないプレーヤーが多いのは事実と言える。
    • 付け加えるとクレオパトラに対する心象がバエクは「途中から怪しむようになったが目的の遂行のためやむを得ず協力関係を続けていた」という物に対し、アヤは「掌を返されるまではクレオパトラに心底心酔していた」というあまり知性的には見えない態度なのもプレーヤーからあまりよい印象を持たれていない一因となっている。
  • 現代編について
    • 現代編は実質的に新たな主人公・レイラの顔見せ程度で終わり、詳しいことは次回作以降に持ち越し…という形で終わりやはり話はあまり進まない。
    • 一応、ある場所にて今後の重要な伏線らしきものは張られているが、どのみち本作で直接どうにかできることではないので本作単品での評価を左右するほどの物ではない。
    • 上述の通り過去編は他の作品との直接のつながりがないためシリーズ未経験者であっても入りやすいのだが、現代編は下記するメディアミックス作品の流れを汲むばかりかこれまでのあらすじをまとめたムービーなどがないため(シリーズ初見の人にとって)分かりにくい。
      • 一応、アニムスから出れば大量の文字的資料が観覧できるが…何分すぐに理解するには一筋縄ではいかないと思われる。
    • 本作というよりメディアミックス上の問題だが、『IV』から前作までゲームとコミックをまたいで続いていたフェニックス・プロジェクト編が完全にコミック限定に移行したため、本作は前作からの流れを無視した唐突な新章突入になってしまっている。
      • EDで意味深な台詞を吐いていたジュノー*6は本作には影も形もなく、そのまま本作から半年後に発売されたコミックにおいて倒されてしまった。
  • 調整不足なレベル制
    • 2、3レベル程度離れるだけでまるで太刀打ちできない程敵が強くなってしまう。
      • 特にレベルが開いていたり、アサシンブレードの強化が足りていないと、過去作では暗殺で処理できた敵がそれを耐えてこちらに強烈な反撃をしてくるため、「『ASSASSIN'S CREED』なのに暗殺できない」という事態に陥ることがある。
      • 装備品側のレベル制限も強い武器だけ盗んできて序盤~中盤を簡単に進めるというプレイができないため遊びの幅が狭まっており、どちらかというと不評。
    • 経験値入手手段は色々用意されているのだが、野生生物や雑魚敵を倒すだけではごく微量しか貰えない都合上、各種クエストの攻略が一番効率がいい。スタッフもそうした想定の元作ったのかサブクエをクリアしていくとほどよい難易度になるように調整されている。
      • これ自体は丁寧にレベルデザインがされているとも言えるのだが、故に本来やらなくても進めるはずのクエストを「やらされてる感」も出てきてしまっており、サブクエにハマれなかった人からはなお評判は良くない。
    • そもそも、プレーヤーがどこへでも好きな場所へ行けるオープンワールドと一本道のRPGのようなギチギチのレベル制自体が嚙み合っていないという意見が多い。
      • この問題は次回作『ODYSSEY』にも尾を引いており、結局『VALHALLA』ではレベル制そのものが事実上撤廃されたうえ一撃暗殺のオプションも選択できるようになったなど、あまり相性はよろしくない物だったと言わざるを得ない。
      • また、本作においてもDLCの想定レベル45へとすぐにスキップする機能がアップデートで追加されている。
    • 全てのアビリティを取りレベルをカンスト後も経験値を一定獲得ごとに熟練度を獲得でき、攻撃力をカテゴリー別に延々と強化することができるが、HPと防御力、アサシンブレードを強化する手段はそこで打ち止めになる。
  • 本シリーズではお約束だがやはりバグが発生することがあり、バグとまでは行かないが物理演算がおかしくなったりNPCが妙な挙動を見せたりする場面も多々ある。
    • アップデートである程度致命的な物は減った。とはいえ最新版でもアプリケーションエラーが起こる時もあるが…。
  • データベースが無い
    • これまで全てのシリーズにあった登場人物やロケーションのデータベースが無い。
    • ディスカバリーツアーで代用できるが、それだけのためにゲームを起動し直さなければならず、学習用の真面目な内容のために従来作のデータベースのような筆者の皮肉や注釈を楽しむことはできない。

総評

古代エジプトというロケーションそのものが素晴らしく、古代史やエジプト文明に少しでも興味がある人ならば間違いなくプレイすべきと言える一作。
現在では発売から数年が経過したものの、未だに古代エジプトを舞台にしたオープンワールドゲームというのは本作のみである。
この一点だけでも本作は長いゲーム業界史においてオンリーワンの作品であることは間違いない。

一方で過去作から継続して遊んでいるファンには目についてしまう変化点、「結局いつもと同じ」な部分もある。
システムの刷新は将来的な課題も残したが、一本のアクションRPGとしては充分平均以上の出来と言える。
総じて、シリーズ再出発点としては悪くない出だしを切れたと言えるだろう。


余談

  • ピラミッドは大昔は化粧石に覆われていて白く輝いていた…という話は結構有名で知っている人もいるかもしれないが、本作におけるピラミッドはパッケージにでかでかと描かれている通りちゃんとこの「白く輝くピラミッド」なっている。
    • が、実は本来ならばバエクの時代にはすでにピラミッドの表面が剥がされて現代と同じ姿になっているはずだったりする。これはスタッフ曰くエジプト編をやる上で最大の目玉にしたいということで、あえてリアリティを重視せずにゲーム的な見栄えを優先して創建当時の方の姿を再現をしたとのこと。
  • 発売前の初期のインタビューなどでは主人公の名前は「バヤク」と表記されていたが、発売が近づくと「バエク」とも表記されることも増え、発売後は「バエク」で統一されている。
    • 何故表記ゆれが起こっていたかと言うと、古代エジプトにおいて「鷹」に相当するヒエログリフがバヤクないしバエクなのだが、古代の言語なので正確な発音方法が分からないという事情があったため、このような事態が起きていたとのこと。
    • ちなみに、初代主人公のアルタイルや2代目主人公のエツィオの名前は同じタカ科である「鷲」に由来していたので、シリーズ再始動にあたり初期作をリスペクトしたネーミングと言える。
  • 本作の前日談小説の日本語版が竹書房文庫より『アサシン クリード オリジンズ 砂上の誓い』の題で上下巻で発売されている。
    • 物語はバエクが15歳の頃から始まり、最後のメジャイとなるまでが描かれている。
    • 結婚前のバエクとアヤ、ケンサをはじめ本編で説明なしに登場したバエクの知人たちとの過去、バエクの両親の登場、バエク最初の殺し、結社の目的の一端が語られるなど、見どころ満載の一作。
    • なお、ゲーム本編との整合性はあまり取られていないため、小説を読んだ後にゲームに入るとテーベ訪問時に少なからず違和感を感じるかもしれない。
  • 現代編には初期作及び世界観を共有している『Watch Dogs*7』の出来事を取り上げたイースターエッグが存在する。
最終更新:2025年03月06日 00:16

*1 シーズンパスとのセット版。

*2 古代エジプトに実在した王宮護衛官兼公安警察のような役職。本来はエジプト南部の一部族の名称だったが、長い年月を経て部族名そのものが治安維持に携わる者への役職名へと転化された。作中においてはそれからさらに時は流れメジャイがほとんど廃れた時代となっている。

*3 ゲーム内ではシナリオ・設定上の事情からヒドゥンブレードと表記されているが、過去作経験者が別種の武器と誤認しかねないので本項ではアサシンブレードと表記する。なお、過去作から日本語版では分かりやすさを重視してか、一貫してアサシンブレードと意訳されていたが、原文では「Hidden Blade」の表記だった。

*4 鈍重そうな見た目から想像しにくいが、現代でもカバによる死者は年間3000人近く存在するほど危険な生物である。

*5 低めの声を意識した演技をしているが、それでも福山氏が演じるよく聞く少年主人公を連想してしまう声になってしまっている。

*6 『BROTHERHOOD』シリーズの現代編を通して関わってきた宿敵。

*7 サイドミッションで、アブスターゴ社の人物が主人公のターゲットとして登場している。