Alien vs. Predator
【えいりあん ばーさす ぷれでたー】
ジャンル
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FPS
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ASINが有効ではありません。 |
対応機種
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ATARI Jaguar
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発売元
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Atari Corporation ムーミン(日本)
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開発元
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Rebellion Developments
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発売日
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1994年10月20日 1994年12月8日(日本)
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判定
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良作
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ポイント
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『AVP』FPSシリーズ第一作 種族別の3エピソード マップ構造は原始的
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Alien vs. Predatorシリーズ
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概要
1994年にRebellion Developmentsによって開発されたFPSであり、同社の手がけた『エイリアン vs プレデター』のFPSシリーズ第一作。
『Wolfenstein 3D』のような高低差の無い線形マップと、実写取り込みとプリレンダリングによる2Dスプライトを採用している。
マップは探索式であり、個別に解除すべきギミックや倒すべき敵が存在するなど同年代の『DOOM』のようなステージクリア型FPSとは異なる一方、スコア集計機能が存在するなどアーケードゲーム的な仕様も混在している。
日本ではLynxやJaguarの輸入代行を行っていたムーミンによりバンドル販売された。
ストーリー
2329年9月5日 宙域時間09:13:24
とある信号を受信したアメリカ植民地海兵隊の宇宙船によって、漂流していた未知の宇宙船が発見される。その宇宙船は奇妙なU字型をしており、人間の建造したどの宇宙船にも該当しないものであった。
拿捕された宇宙船はその宙域の支部であった、ウェイランドユタニ社の建造した植民地海兵隊の訓練用宇宙基地「USS ゴルゴタ」に収容される。しかし、その船の調査からまもなく基地の脱出ポッドが射出され、USSゴルゴタ基地の通信は途絶えてしまう。
14時間後。ゴルゴタの第一デッキに、正体不明の宇宙船が突入する。戦闘種族である彼ら「プレデター」は、ゴルゴタ基地で誕生したエイリアンクイーンを捕獲し、宇宙船に載せる。
プレデターを殺害しエイリアンクイーンの解放を試みる一匹のゼノモーフ、宇宙船から逃亡したクイーンの首を求める一匹のプレデター、そしてゴルゴタ基地の爆破と脱出を試みる海兵隊員ランス・J・ルイス。
孤立無援の宇宙基地で、三種族による三つ巴の闘いが繰り広げられる。
ゲームシステム
ATARI Jaguarのコントローラに最適化されており、十字キーとABCボタンで移動及び発砲、テンキーで武器及びガジェットの変更、使用を行う。
種族ごとにシステムは分かれており、それぞれ原作の特性を生かしたオリジナル要素が追加されている。
エイリアン
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主人公は巣に潜む一匹のゼノモーフ。時系列的には最初にあたり、デッキ1に着陸しているプレデターの船に乗り込み、プレデターを全て倒して捕獲されたエイリアンクイーンを解放するのが目標となる。
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武器は爪・インナーマウス・尻尾の三種類。それぞれに威力に関連するパワーゲージが存在するが、ゲージがなくなっても攻撃は可能。ほかの二種族とは異なり攻撃手段が増える事はない。
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体力の回復はできないが、その代わりとして倒した人間を同時に最大三つまで「エイリアンエッグ」に加工することができる。死亡した場合は加工したエイリアンエッグから孵化した別のゼノモーフとなり、エッグのあった場所から復帰する。
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後の作品と異なり、エイリアンの視界・視覚は人間と同一。このため、クローキングデバイスを発動したプレデターを視認できない。
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エイリアンのみエレベーターを操作できず、ダクトを利用してエリア間の移動を行う。
プレデター
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主人公はUSSゴルゴタへ宇宙船でやってきたプレデターの生き残り。時系列的には中間に当たり、脱走したエイリアンクイーンの首を持ち帰るべく、海兵隊とエイリアンを倒しゴルゴタ基地の奥地へと向かう。
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医療キットによる任意回復、クローキングデバイスを利用しての不可視化、バイザーを変更して視覚を強化するといった、ガジェットを駆使した行動が可能。
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使える武器は近接武器リストブレード、槍のコンビスティック、遠距離攻撃が可能なショルダーキャノン、敵を貫通するフライングディスクの合計4つ。しかし常に全て利用できるわけではなく、「名誉ポイント」の上下によって利用可能武器が増減する。
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名誉ポイントは「クローキングデバイスを使用しながら獲物を殺害したか否か」で増減する。見えない状態で敵を殺害すると臆病者と判断されてポイントが下がり、見える状態で敵を殺害すると勇敢な戦士として認められポイントが上がる。
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プレデターはエレベーターを操作できるが、ダクトを通ることができない。また、フェイスハガーを自力で剥がすことが可能。酸への耐性は無く、ゼノモーフの血液でダメージを受ける。
アメリカ合衆国植民地海兵隊
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主人公は暴行の罪で収監されていた海兵隊員「ランス・J・ルイス」。時系列的には一番最後にあたり、海兵隊が全滅したゴルゴタ基地から脱獄、自爆プログラムを作動させて脱出するためにゴルゴタ基地を探索する。
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武器はショットガン、パルスライフル、火炎放射器、スマートガンの4つ。弾薬は落ちているものを拾うことで補給し、回復もマップの各所に散らばるメディキットを取得することで行う。
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アイテムとして、周囲の敵を感知する「モーショントラッカー」を入手可能。死角に潜むゼノモーフやプレデターを感知できるが、接近音が恐怖感を煽る。
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爆破装置を作動するため、合計10個のクリアランスキーを収集する必要がある。また随所に存在する緑色のパネルから施設のコンピューターにアクセスが可能となり、ログを介してバックストーリーを知ることが出来る。
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海兵隊はエレベーターとダクトの両方を利用可能であり、探索範囲は一番広い。フェイスハガーで即死し、ゼノモーフの血液でダメージを受ける。
評価点
初めての『エイリアン』FPS
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それまでの映画『エイリアン』を題材にしたゲームといえばそのほとんどが2Dタイトルであり、俯瞰視点からただエイリアンを駆逐するだけのアクションゲームが多かった。映画『エイリアン』シリーズで描かれていた「いつどこから襲われるかも分からない恐怖感」の完全な再現には、それら従来のゲーム的な表現方法では今一歩届かなかった。
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だが、本作がシリーズで始めて採用した一人称視点の任意探索ゲームという方式は非常に没入感の高いものだった。曲がり角の先に何があるか見えない、うなり声は聞こえるのにどこに潜んでいるのか分からないといった映画『エイリアン』で描かれていた恐怖感の再現に成功しており、これまでのエイリアンゲームには無かった新しいゲームスタイルを確立させた。本作の評価によって、後に『エイリアントリロジー』や『エイリアン:リザレクション』といったFPSシリーズが多く登場するようになった。
映画の要素の再現
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エイリアン・プレデター・海兵隊ともに原作映画に登場した武器をしっかりと押さえている。名誉を重んじるプレデターや人間をエイリアンエッグに加工するエイリアンといった要素も上手くシステムに落とし込んでいる。
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『エイリアン』のゲームシリーズにおいて無視されがちであった「酸によるダメージ」もしっかりと再現。至近距離で倒せば返り血でダメージを受け、ゼノモーフの死体もその場に残り触れるとダメージを受けるなど、ゼノモーフの生物としての厄介さが強調されている。
プレイ感覚の異なる三種族
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『AVP』としては初期作品ながら後の作品のような種族別の特徴はこの頃から実装されており、ファンも納得の出来。それぞれに利点と欠点があり、没入感のある一人称視点も相まってその種族になりきって遊ぶことができる。
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対戦を前提とした能力調整のある続編と異なり、シングルプレイを前提とした内容となっている。そのためマルチにつられてシングルのバランスが崩れるということもなく、きちんと三エピソードが成立している。
グラフィックやサウンドの優秀さ
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線形マップを採用しており地形は単純なブロック状だが、各種装飾を追加することで雰囲気を上げている。エイリアンの巣やプレデターの宇宙船などの質感は非常に良い。
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サウンドも映画のものを踏襲しており、モーショントラッカーの音やバイザーの切り替え音、ゼノモーフの叫び声やパルスライフルの独特な射撃音といったものも余すことなく再現。
賛否両論点
迷路的な線形マップ
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多数の死角による「先の見えない恐怖感」を演出するため、マップは意図的に入り組んだ構造となっている。角を曲がった目の前に現れるなどプレイヤーを驚かす試みは成功してはいるが、その弊害として探索が凄まじく厄介。
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マップ構造も二次元的であり、続編などと比較すると臨場感に欠ける。当時の技術的な限界であるため仕方のない部分ではあるが...
移動速度がどの種族も遅い
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エイリアンも海兵隊もプレデターも全て移動速度が同じとなっている。このため、近接攻撃のみのゼノモーフと比較して遠距離攻撃が可能な海兵隊が有利。続編ではゼノモーフの機動性が向上したため種族間格差は解消されたが、本作ではやや弱体化が目立つ。
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幸い、ゼノモーフには「倒した海兵隊を苗床に何度でも復活する」という人海戦術が可能なシステムとなっているため、相対的にシングルプレイにおけるバランスは取れている。他の種族のエピソードにおいても移動速度は遅いが数と処理の厄介さで圧倒してくるため、十分に脅威と言える強さを持っている。
BGMが少ない
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映画のサウンドトラックといったBGMは流れず、終始環境音のみ流れる。その分エイリアンの鳴き声などの音響効果やそれによるホラー的演出、没入感の向上には通じているものの、後のシリーズ作品と比較するとやや寂しい印象を受ける。
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もっとも、同ハードの『DOOM』はBGMが削られていたことを考慮すれば致し方ない部分と言える。容量の少ないROMカートリッジ媒体にしては頑張っている部類。
問題点
ボリュームの薄さ
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どの種族もアクセス可能なエリアは多いものの、迷わなければ1時間も経たずに目標に辿りつける。やや手順の複雑な海兵隊パートであってもあまりボリュームがあるとは言えず、かといって周回するほどやりこみ要素があるわけでもない。
状況説明が少なすぎる
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進入可能なエリアこそ多いものの、ゲーム進行上無意味なエリアが非常に多く迷子になりやすい。次にどこに行くべきかはまったく明かされず、総当りでマップ表示を埋めていくしか初見で進んでいく方法はない。
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一応武器庫やコントロールセンターといった壁面表記は存在するものの、それが役立つ場面は非常に少ない。マップも通ったエリアのグリッドのみ表示されるため、今居る場所が何のエリアなのかを理解しにくい。
エピソード格差
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エイリアン編、プレデター編はエリアに進入して目標を達成することで一枚絵が表示され、そのままランキングが表示されて終わる。それに対して海兵隊編のみ全エリアへの侵入が可能であり、マップを隅々まで探索してセキュリティキーや物資を集める、各所の端末にアクセスすることでバックストーリーが分かる、自爆装置を起動して脱出するなどやることが多い。
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もっとも、人間の建造したUSSゴルゴタ基地というロケーションの都合上そうなるのは仕方ないことではある。時系列的にも海兵隊が最後であると考えると、海兵隊のみエンディングがしっかりしていることも説明がつく。
総評
ラインナップやハード自体の不便さ、値段といった要因から史上三番目に売れなかったゲーム機「ATARI Jaguar」のみで発売されながら、批評家や映画ファンから絶賛、複数の賞を獲得し、さまざまな出版物からATARI Jaguar最高のゲームの1つとして紹介された作品。
公式によるFPS作品の先駆けとして後の「エイリアン」及び「AVP」シリーズのゲームに影響を与え、その後両シリーズにおいて恐怖感を念頭に置いた複数のFPSが登場した。
やや原始的な部分も多いものの当時のコンシューマーFPS作品としての完成度は抜きん出ており、生産が終了した現在でもJaguarファンからの評価は高い。
本作に存在する単調な線形マップや演出、種族格差といった欠点は、同じくRebellionによるPCの続編『Aliens vs. Predator (1999)』で解消されることとなった。
余談
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Beyond gamesとATARIは、本作の続編として『Alien vs Predator 2:Annihilation』をJaguarCDで発売すべく交渉していた。しかしJaguarの不振が原因となって企画は頓挫し、結局そのままATARI Jaguarで「AVP」ゲームが発売されることはなかった。
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本作は「エイリアン2」ではなく「エイリアン」のタイトルロゴを使用しているが、作中の要素はほぼ全て「エイリアン2」をベースにしている。その後の続編では2のロゴが使われるようになった。
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本作は版権や販売会社の吸収合併といった理由により、今日に至るまで移植が行われていない。ゲーム機本体・ROMカートリッジ共に現存数は多いとは言えず、正規手段での入手は極めて難しい。
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このwikiで「ATARI Jaguar」専売ソフトが扱われるのは、本記事が初である。
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ちなみに初版作成は2020年。ゲームカタログの前身「クソゲーまとめwiki」時代から数えると、実に10年以上かかったことになる。それだけJaguarというハードの存在意義が薄く、また今作が非常に良くできているということである。
最終更新:2024年06月30日 10:38