Marathon Infinity
【まらそん いんふぃにてぃー】
ジャンル
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FPS
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対応機種
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Mac OS
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発売元
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Bungie アテイン株式会社(トリロジー日本語版)
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開発元
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Bungie Pacific Software Publishing, Inc.(日本語化)
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発売日
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1996年10月15日 【Win】2011年12月1日
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判定
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なし
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ポイント
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トリロジー最終作 製作ツール同封 複雑で投げやりなストーリー
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Marathonシリーズ Marathon/ Durandal/ Infinity
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概要
『Marathon』『Marathon 2: Durandal』に続き発売されたシリーズ第三作。
開発当時既にBungieのメインチームはフル3DのファンタジーRTS『Myth』の開発に注力しており、ごく少数の社内チームによる小規模な形で進められた。
3D時代の到来により御役御免となったエンジンとともに『Durandal』で使用したエディタを調整し「Anvil」「Forge」として同封。
ただ遊ぶだけでなく、自らの手で『Marathon』を作り出すことも可能となった。
ストーリー
デュランダルとの戦闘に苦戦し、恒星を新星に変える最終兵器「タリ・ジーム」を持ち出したプフォールは、それを恒星に向け放ったことで恒星に潜む超生物「ワークンカクンター」を呼び起こしてしまう。
全てを喰らい尽くす謎の存在を前に破滅を覚悟するデュランダルとプフォール。しかしそれに巻き込まれるはずだった主人公は、突如現れた謎の存在によって時空を超えたテレポートに巻き込まれる。
プフォール内の派閥抗争に勝利し自らタリ・ジームを放とうとするティコ、デュランダルへの協力を拒否する古代AI、ティコとの戦闘に敗北するデュランダル...謎の存在によって「あり得たかもしれない過去」に送られ、幾多もの破滅に繰り返し遭遇する主人公。
ワークンカウンターの目覚めと避けられない破滅を回避する方法を探し、主人公は繰り返す世界を変えようと足掻いていく。
ゲームシステム
操作
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基本操作・仕様は前作と同様。大きい変化は無い。
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エンジンは改良されていないが、新たな武器として水中でも発砲できる「KKV-7 10mmSMGフレチェット」が登場した。
ゲーム進行
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さまざまな平行世界を舞台に、破滅の歴史を変えるべく両勢力に干渉していくパラレルワールドを題材とするFPS。
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過去作同様にマップ各所にコンソール(ターミナル)が設置されており、これらを使用することで情報の閲覧が可能となっている。
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全4チャプター、合計25レベルのステージクリア型。チャプターによって置かれた状況は大きく変化し、プレイヤーの立場は一定しない。
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加えて攻略必須ではない「オプションレベル」が複数存在する。全攻略することで得られるメリットは少なく、ストーリー的にも「本編」との関連は薄くスルーしても問題は無い。
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オプションレベルの多くは時空超越や並行世界としてのステージであり、中には1作目の舞台だった宇宙船マラソン号の中であることが示唆される場所すらあるが、グラフィックや状況が1作目と全く違うため断言はできない。単なる省略化やジョークなのか、混沌を極めた並行世界なのか……。
マルチプレイ
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合計23マップのマルチプレイを搭載。実装ルールは前作同様。
評価点
開発ツール配布
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実際に開発に使用したツールを使いやすく調整した「Anvil」「Forge」が付属。マップエディタがForge、物理環境(キャラクターやアイテム等)エディタがAnvilとなる。
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それまでにも解析した熱心なファンにより製作ツールが開発されていたものの、実際に開発チームが利用していたものが配布されたことによりファンメイド『Marathon』製作の敷居が劇的に改善した。ちょうどインターネット黎明期という時期も重なり、外伝や続編、果ては全く異なる世界観の物など様々な二次創作が製作・配布されるようになったのである。
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これらを用いて当時作成されたファンメイドのシナリオやゲームは、後述するAleph One版でも概ね動作可能な場合が多く(もちろん確実な保証はないため個々に自分で確認すべきだが)、現在でも配布され続けているものもある。
歯応えのある「VidMasterChallenge」
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VidMaster(Marathon熟練プレイヤー)向けの専用レベルとして「VidMasterChallenge」が登場。
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内容的には1、2、そして今作それぞれで最も困難と思われるマップを、更に凶悪にして再録したものとなっている。システム的にはどの難易度でも挑戦可能なのだが、当然ヴィドマスターなら最高難易度でのみやるべしということになる。
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並みのプレイヤーではクリアは到底不可能な縛りプレイを課すその内容はコアなファンに受け、日本のファンも含めた世界中で誰がクリアできるかが競われた。
プフォールとの共闘
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頻繁に登場勢力が切り替わり、プフォール側についての戦闘も可能に。更にはプフォール同士の対立という場面すら登場する。
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これまで敵だったキャラクターたちとも一緒に戦える場面が増えた。
ボブの更なる進化
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1作目では非力で邪魔なだけだったが、2作目ではピストルでちまちま戦えるように進化した味方NPC「Bob(ボブ)」。今作ではついに装甲宇宙服とゼウス級核融合ピストルを装備した「真空ボブ」として大幅なパワーアップを遂げた。
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ゼウスピストルは1作目から通してプレイヤー側の武装だったもので、低弾速だが使いやすく強力な武器であった。これをボブ達が集団で撃ちまくる様は圧巻である。耐久力も見た目通りアップしておりそこそこ死ににくくなった。
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しかし今作では主人公自身の立場・所属組織がコロコロ変わるため、実際には敵NPCとして立ち塞がるケースも多い。せっかくパワーアップした味方と敵対せねばならないのは辛いが、容赦していては生き残れない"強敵"である。
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ちなみにVidMaster(Marathon熟練プレイヤー)の心得として前作から追加された「ボブは一人として生かすな」という条項は今作でも健在。従ってヴィドマスターへの道を歩むなら、彼らが味方状態のステージでも容赦なく抹殺しなければならず、
気持ちとは別の意味で
ハードルが高くなっている。またステージによっては前作のピストルボブも再登場する。
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そしてシリーズ恒例、プフォール側が投入する自爆テロ用人造人間「爆弾ボブ」にも真空版が登場し、相変わらず厄介な邪魔者として活躍する。
多彩なステージ構成
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暗闇の場面が多く閉鎖的空間での探索と謎解きに重きを置いていた1、明るい場面が多く開放的空間での撃ち合いに特化した2に対し、本作はその両方を兼ね備えたものとなっている。
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そしてそれらに加え、本作ならではの要素としてより不可思議な謎解きステージが複数存在する。ある時は「電気羊」と称される時空の狭間で、またある場面は超古代AIの見る「悪夢」の中で、プレイヤーは探索を行うのである。
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羊系や夢系ステージの不可解かつ不条理な雰囲気は唯一無二のものであり、プレイヤーを混沌の中に突き落とす、まさしく本作を象徴するものである。
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総合的には1の暗闇を懐かしむ層にとって朗報でありつつ、2の派手な撃ち合いを好む層も十分楽しめる折衷案と言える。ただし中には1以上に過酷で不条理な暗闇ステージもあったりするので油断はできないが……。
賛否両論点
投げやりすぎるストーリー
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綺麗な終わり方で一件落着だった前作と異なり、本作の展開はかなり投げやりなことになっている。
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プレイヤーの立場は定まっておらず、状況も結末も異なるさまざまなチャプターに分かれている。全容もあまり説明されず、プレイヤーに解釈を委ねる部分が多い。
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それは同時にファンによるAnvil/Forge製二次創作作品の許容でもあったのだが、前2作の重厚なストーリーを評価したプレイヤーからは不評となった。
問題点
改良されていない本編
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外部委託的な小規模プロジェクトではあったため仕方ないが、前作からエンジン部分や本編内容は進化していない。同年にMS-DOSで『QUAKE』が登場したのもあり、2Dスプライトのキャラクターなど技術的な古さが多く見られるように。
総評
「無数の平行世界が存在する」という形で二次創作を許容しつつ、同時にそれを可能にするツールを配布するという特殊な内容の『Marathon』最終作。
1つの作品として見ると進歩がなく、また続編として見ても繋がりが薄く纏まりがないなどゲームとしての形は前二作と比べて劣る点が多い。
しかしその様々な作品を許容するスタンスと扱いやすく調整されたツールは高く評価されコミュニティが活発化、正統派の続編から全く内容の異なるものまでさまざまな「平行世界」を生み出した。
単独作品としては褒めるところは少ないものの、そういった側面からファンに高く評価された作品となっている。
余談
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マイクロソフトによる買収直前にBungieからソースコードがリリースされたため、現在ではそれをベースにWindowsなどの現代PCでも動作するよう調整した「Aleph One」が開発されている。
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やや経緯が分かりにくいので整理すると、(1)買収前にBungieがMarathon2のソースコードを無償公開→(2)それを元にAleph Oneが開発される→(3)さらに後年Bungieが2ソースコードだけではなくシリーズ全作のソフトそのものを無償公開……という流れである。
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Aleph Oneの動作にはオリジナル版(のデータ)が必要なため、当初はそれを所有し続けている過去ユーザーが現行環境でプレイするためのものという意味合いが強かった。そのため後日、オリジナル版ソフトを持っていない新規層でも遊べるようにソフト本体公開が(Aleph Oneの完成度が一区切りついたのに併せて)行われたのである。
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なおAnvil/Forgeも無償公開ソフト内に含まれているため、これらの入手自体は現在も容易。ただこれらは当時のMac環境(OSX以前、今で言うClassic環境)でしか動作しないため現代で使うのは敷居が高いかもしれない。従って現行環境で新しいマップや世界観を作ろうとすると、代用となるユーザー製のツールを探して使うことになり、ある意味で時代が逆戻りしてしまった。
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もちろん(?)Classic Mac環境そのものをエミュや中古機で再現し、そちらでAnvilやForgeを使うという荒技もなくはないが……。
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Marathonシリーズは日本にも熱心なファンが多く、当時はAnvil/Forgeを利用してさまざまなオリジナルマップが作成された。
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そしてシリーズの人気や影響は国内外に根強く残っている。後年HaloシリーズやDestinyシリーズに用語や一部要素が受け継がれたり、周年記念イベントでMarathonをモチーフにしたアイテムが登場したりしたほか、インディーズゲーム界隈でも「The Citadel」などMarathonの影響を受けたゲームが時折登場しているのである。
最終更新:2022年05月09日 21:35