Spear of Destiny
【すぴあー おぶ ですてぃにー】
| ジャンル | FPS | ASINが有効ではありません。 | 
| 対応機種 | MS-DOS Windows(Steam)
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| 発売元 | FormGen Corporation id Software(Steam)
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| 開発元 | id Software FormGen Corporation(ミッションパック)
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| 発売日 | 1992年9月18日 1994年5月(ミッションパック)
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| 配信 | Steamにてオンライン販売中 | 
| 判定 | 良作 | 
| ポイント | 『3D』の前日譚 難易度が上昇し、オカルト要素が増加
 ミッションパックのみグラフィックが変更
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| Wolfensteinシリーズ | 
 
概要
id Softwareが開発し、1992年5月にApogeeから発売されたFPS『Wolfenstein 3D』の続編。発売はFormGenが担当している。
前作から僅か4ヵ月という短期間で発売されており内容としては拡張パックに近いが、ストーリーやボスなど新規要素も複数含まれている。
内容は前作より前の話であり、拘束されウルフェンシュタイン城からの脱出を図る以前のブラスコヴィッチの活躍が描かれる。
1994年5月にはFormGenからグラフィックと音声を新調した追加ミッションパック「Return to Danger」「Ultimate Challenge」が発売されており、Steamで配信中のデジタル版では予めこれらを統合したものが配信されている。
ストーリー
第二次世界大戦中の1940年、フランス。
電撃戦を成功させフランスを支配下に置いたナチスドイツは、とある秘宝をヴェルサイユ宮殿から接収しドイツ領内ニュルンベルク城へと輸送する。
彼らが奪ったのは、かつてキリストの脇腹を貫いた「運命の槍」。古い伝承によれば、その槍を所有するものは世界を制するほどの力を授かるのだという。
仮に伝承が真実ならば、ヒトラーの許へ聖槍が渡ってしまえばヨーロッパに明日はない。
ヒトラーの手に渡る前に聖槍を奪還するため、OSAの諜報員B.J.ブラスコヴィッチはドイツ領内へと潜入。ニュルンベルク城内部へと続く地下トンネルへと飛び込んでいった。
ゲームシステム
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合計19レベル+隠し2レベルで構成されるステージクリア型FPS。発売元がApogeeからFormGenへと変わったため、当時のApogee作品に多用された体験版配布前提のチャプター方式は廃止されている。
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基本的な部分は『Wolfenstein 3D』から変更されておらず、本編では一部テクスチャおよび各チャプターのボスキャラクター5体、最終面のゴースト、ラストステージの「エンジェル・オブ・デス」などが新規キャラとして登場している。
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基本的な内容は前作と変わらず、各銃器で敵を射殺し、鍵や宝を収集、エレベータを使用して次のレベルへと向かう方式となっている。
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最終ステージのみ変則的な内容となっており、レベル18と19がシームレスに繋がる仕様。
 
 
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追加ミッションパック「Return to Danger」「Ultimate Challenge」はFormGenが開発・販売しており、テクスチャや武器・敵グラフィック、音声が新しいものへと差し替えられている。
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犬が青い服を着たり、ナチス兵が緑色のコートを着用したり、武器がMP40からStG44へと変化したりと雰囲気は異なるが、根本的なパラメータに変化はなくグラフィック以外の内容は本編と同一。
 
評価点
歯応えのある難易度
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前作クリア前提の歯応えのある難易度となっており、前作では物足りないプレイヤーも楽しませてくれる。
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クリアできないほど難しいかというとそこまでではなく、パターン構築や配置の暗記を駆使すれば突破できる絶妙な部類。
 
壮大になったストーリー
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聖槍とその力を巡るオカルトチックなストーリーとなっており、前作の因縁のきっかけとなるトランズ・グロッセ編やインパクト絶大な巨大スーパーミュータント、デスナイトとの最初の出会い、聖槍を持つに相応しいかどうか試練を与える存在「エンジェル・オブ・デス」との死闘などストーリー上の見所は多い。
豊富なボリューム
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ミッションパックを含めると21+21+21の合計63レベル。内容は兎も角としてボリュームは申し分ない量を誇る。
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各ステージにシークレットも備わっており、やり応えはある。
 
賛否両論点
奪われまくる聖槍
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元々1992年の時点では1回聖槍が奪われ、ブラスコヴィッチが奪還して消息不明になる…という話だったが、無理やりFormGenがミッションパックを追加した結果、それに合わせてヒトラーに3回も聖槍が奪われるという無茶かつ本編ぶち壊しな脚本になってしまっている。
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一応槍を持つ資格があるかどうかの試練として守護神である「エンジェル・オブ・デス」と戦うのは1回だけであり、その後は聖槍の助力を得てヒトラーが呼び出した悪魔の化身を薙ぎ払う、という面白みのある展開にはなっているが、本編のエンディングは『3D』へとシームレスに繋がっていたはずなので時系列的な違和感は拭えない。
 
問題点
改良点が少ない
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基本的なエンジンやザコ敵の種類、武装に手は加えられておらず、進化したウルフェンシュタインを求めるとやや肩透かしを食らう内容。
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出来自体は悪くないが、当時はFPSの技術進化も非常に早かったため『DOOM』発売後は同世代の作品共々その影に埋もれることとなった。
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一応FormGenのミッションパックではグラフィックの改善や音声の新録が行われているが、発売されたのは1994年。既にid Softwareが『DOOM』を大ヒットさせた後のため、さほど注目されることはなかった。
 
出来の悪いFormGenパート
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程よい難易度に纏まっている本編と比較するとミッションパック部分は敵配置が雑な部分が多く、そのべらぼうに高いだけの難易度は人によって好みが分かれる。
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本編の2年後という発売時期からしても、たいして力を入れて作られたコンテンツではないのは明らかだが…
 
総評
わずか5ヵ月後の発売かつ新規要素もそれほど多くはないものの、前作のプレイヤーに向けた歯応えのある楽しい内容へと仕上がっている作品。
前作同様の閉鎖空間を舞台にした探索や銃撃戦といった絶妙なゲームバランスは健在であり、より白熱した戦いを楽しむことができる。
ただしFormGenの関わったミッションパック部分に関しては否定的な声も多く、その内容は人を選ぶ。
現在は配信が行われているため、入手自体はさほど難しくはない。
良くも悪くも『Wolfenstein 3D』本編と同様の内容を維持しているため、前作の探索や銃撃戦を気に入ったのであれば挑戦して損はないと言えるだろう。
余談
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「ヒトラーが聖槍の力を求めた」というのは史実である。
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ただし実際に彼が入手した槍はウィーンに存在した「神聖ローマ帝国の聖槍」であり、1938年のオーストリア併合に伴って神聖ローマ帝国時代と同じニュルンベルクに移された。その後ヒトラーが自殺した1945年4月にニュルンベルクで連合軍が奪回し、再びウィーンへと移された。この槍は今もウィーンのホーフブルク宮殿に所蔵された形で現存している。
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なお、かつてはフランスにもフランス国王ルイ9世が購入した「ローマの聖槍」の先端部分が存在したが、一般的にはフランス革命によって失われたとされている。
 
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ドイツにニュルンベルク市は存在するが、本作のように1つの城としての「ニュルンベルク城」は存在しない。市にはカイザーブルク城とブルクグラーフェンブルク城の2つが存在し、この2つを合わせて「ニュルンベルク城」と呼ばれる場合が多い。
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エンディングでブラスコヴィッチの脱走後に炎に包まれている姿が映し出されるが、実際のカイザーブルク城は1945年1月の空襲によって破壊されている。なお、現在は破壊前の姿に修復済み。
 
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本作最初のボスであるトランズ・グロッセは、前作に登場したグロッセファミリーの長男。本作でトランズを殺害したことがきっかけで、ブラスコヴィッチは後に『3D』で復讐に燃えるハンス・グロッセとウルフェンシュタイン城出口で死闘を繰り広げることになる。
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パッケージでブラスコヴィッチがガラスを割るために振っているのはアサルトライフルのAKM。1940年には存在しない、ソビエト産の銃。
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パッケージ裏のストーリー説明ではニュルンベルク城ではなくウルフェンシュタイン城ということにされているが、本編上でウルフェンシュタイン城が登場することはない。
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Steam版でもボックス説明をそのまま流用してしまっているため、ウルフェンシュタイン城と誤記されている。
 
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Steam以外ではGOG.comでも配信されているが、こちらは単体配信ではなく『Wolfenstein 3D』とのセット配信。但し、本作の追加ミッションパックは収録されていない。
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一方、Steam配信版には『Wolfenstein 3D』と『Return to Catsle Wolfenstein』とセットになった「Wolf Pack」も別途配信されている。
 
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当時のパブリッシャー兼ミッションパックの開発元でもあったFormGenは、その後1996年にGT Interactiveの買収を受け吸収合併された。
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本作の縁もあってか後の『DOOM II: Hell on Earth』はGT Interactiveが販売を担当しており、「前作の小規模な新規要素を追加した半拡張パック方式」「前作のエピソード制を廃止し、連続ステージを採用」「シェアウェア商法を行わない」といったFormGen時代と同様の形態で販売が行われた。
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一方、前作『Wolfenstein 3D』の発売元であるApogeeはid Softwareからトム・ホールを引き抜いて本作とも異なる独自の続編『Wolfenstein 3D II: Rise of the Triad』を製作していたのだが、Wolfensteinシリーズが続くことで新規作品である『DOOM』の売り上げに影響を与えることを懸念したid Softwareの意向もあり、直接的な繋がりのない完全新作『Rise of the Triad: Dark War』として発売されることとなった。
 
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「Ultimate Challenge」最終ステージでは聖槍を手に入れたブラスコヴィッチがヒトラーの魔術に巻き込まれ、ナチスのオーバーテクノロジー供給源である「未来」へと飛ばされる…という展開になる。
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そして、その未来に置かれているコンテナには「UAC(ユニオン・エアロスペース・コーポレーション)」の文字が。実は『Wolfenstein 3D』のオーバーテクノロジーは、『DOOM』のUACのものを利用していた!という、衝撃的な後付け設定が明かされる。
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もちろん本作の場合は『DOOM』後の発売となったFormGen側のお遊びに過ぎないが、後にWolfenstein RPGなど同様の設定を仄めかす内容の作品はいくつか登場した。
 
最終更新:2021年09月10日 20:28