Rise of the Triad: Dark War

【らいず おぶ ざ とらいあど だーく うぉー】

ジャンル FPS
対応機種 Windows(Steam/GOG.com)
MS-DOS(海外のみ)
iOS(海外のみ)
発売元 Apogee Software
Apogee Entertainment(Steam/GOG)
開発元 Apogee Software
発売日 1994年12月21日(シェアウェア)
1995年2月17日(フルバージョン)
判定 なし
ポイント 元『Wolfenstein II』
実写取り込みの強烈なゴア演出
武器やマップ構成は前時代的


概要

1994年にシェアウェア(体験版)配信、翌95年にフル版が発売された、『Wolfenstein 3D』の販売を担当したApogee Software(現在の3D realms)によるFPS。
開発には『Wolf3D』開発陣の一人で元id Software社員のトム・ホールが関わっており、当初はWolfensteinシリーズに属する新作として開発が進められていた。

使用されたゲームエンジンはWolfenstein 3Dエンジンの強化型。スコアシステムや箱型構成のマップなど共通点は多いが、高さの概念*1や明暗のライティングなど独自要素も多い。


ストーリー

アメリカ合衆国 カリフォルニア州 サンニコラス島

サンニコラス島にある古代修道院で、『トライアド』と名乗るカルト教団が武装化、周辺を要塞へと改造し、勢力を増しつつあった。

国連の特殊工作ユニットであるハイリスク・ユナイテッド・ネイションズ・タスクフォース、通称H.U.N.T.はタラディーノ・カサット率いる5人のエージェントを島へ送り込むが、上陸後にボートが見つかり破壊されてしまう。

帰路を絶たれた彼らだったが、その直後に教団の目的がロサンゼルス壊滅であることを知る。

5人のH.U.N.T.メンバーは教団の計画を突き止め阻止すべく、厳重な要塞と化した修道院の内部への潜入を試みる。


ゲームシステム

  • 基本的には元となった『Wolfenstein 3D』を踏襲。視点の上下移動とリセットキーが追加され、左右ストレイフキーが独立した以外の基本的操作は共通している。
    • ゲーム開始時にそれぞれ体力・移動スピード・射撃精度が異なる5人のH.U.N.T.隊員から一人を選び、以降その隊員のみでクリアを目指す。

ゲーム進行

  • スコア+残機式のステージクリア型FPS。カギを集める、スイッチを押すなどの行為によって探索範囲を広げていき、ゴールの階段を目指す。
    • 各ステージの最終面にはボスが登場。通常武器ではダメージが通らないなどの特殊な仕様となっており、プレイヤーの前に立ちはだかる。
    • 体力回復はマップのそこら中に落ちている食料品や盃に入った水などで行う。体力はポイント制でアーマーの概念はない。

武器

  • PPK、PPK二挺、MP40の基本武器と、各種ロケット兵器・ミサイル兵器・魔法のどれかを同時携行可能。合計13種類。
    • 基本武器は弾薬が無限でリロードも存在せず、残弾を気にせず撃ち続けることができる。爆発武器には残弾が設定されており、弾丸の補充も不可。
    • 魔法は回数ではなく時間制限となっており、絶大な効果を発揮すると同時に無敵などの恩恵を受けられる。骨を取得した場合は犬になり、背の低い穴も潜り抜けることが可能。

ジャンプパッド

  • 乗ることで高く飛び上がることのできる台。ジャンプはこれ以外の方法で行うことはできず、段差を飛び越えたり高所へ登ったりといった動作に使用する。
    • ジャンプでマップ外に飛び出すこともできるが、落下死扱いとなり即死する。

スコアアイテム

  • 各所にはスコアアイテムが配置されており、拾うことでスコアが加算される。スコアを集めることで残機を増やすことができる。
    • ただし残機数はセーブ&ロード時には減らないため、ノーセーブ縛り以外ではあまり意味のない要素。
    • 他の飾りアイテム同様に銃撃や爆発で破壊されてしまうため、拾いたい場合は誤射に注意する必要がある。

特殊アイテム

  • マップ上には飛行できるようになるアイテムなどの有用な魔法アイテムが落ちている一方、お邪魔アイテムとして視界が歪むマッシュルームや、壁に当たると跳ねまわるゴムボールなどのバッドステータスを被るものも存在。
    • 一部ステージにはルーレット式の魔法アイテムも置いてあり、ランダムで魔法武器・魔法効果・バッドステータスのどれかが当たるようになっている。
    • また、マップによっては敵のネットランチャーに絡まった際に即座にネットを切り裂けるナイフなどのアイテムも出現することがある。

評価点

実写取り込みの緻密なグラフィック

  • いかにもドット絵然としていた『Wolfenstein 3D』や『Blake Stone』のグラフィックから進化し、社員やその家族を撮影して取り込む実写取り込み方式を採用。
    • 当時としては比較的リアルな質感を再現しており、雰囲気はしっかりと出ている。
    • また、動作やゴア描写もオリジナル版より強化。命乞いや死んだふり、武器の窃盗といったより人間らしい行為をするようになったほか、至近距離で爆風を浴びると目玉や肉片が盛大に飛び散り画面にへばり付くようになった。

にぎやかなマップ

  • 単純に高低差の概念の追加でマップが広く見えるようになったほか、壺や窓ガラス、旗といった破壊可能な装飾オブジェクトが増加。後のBuild engineには劣るものの、破壊表現にはこだわっている。

良質なBGM

  • 時代故にMIDIではあるものの、ボビー・プリンスとリー・ジャクソンの作曲によるBGMはアップテンポで聴き応えのあるものばかりで良曲揃い。
    • 特にメインテーマである『Goin Down the Fast Way』は高く評価されており、リメイク版においてもメインテーマに抜擢されている。

賛否両論点

おバカな娯楽的作風

  • やたら効果が派手な爆発武器、ヘンテコな効果音を伴う魔法アイテム、無駄にバリエーションの多いゲーム終了時の死亡演出*2、どう見てもスパイに見えないHUNTの潜入、無敵の犬モードなど、作風は娯楽的。
    • リアル調の画風ではあるがノリは軽く、クスリと笑わせてくれるような演出もある一方で、登場キャラは軍服実写キャラばかりのため画風から浮いている部分も少なくない。

問題点

プレイヤーキャラ選択の欠陥

  • キャラによって能力が異なるのだが、どの能力が異なるかはゲーム内では明かされない。また、武器やマップの攻略法が異なるわけではないため大してゲームプレイに変化がなくキャラを分けたことにあまり意味がなくなってしまっている。

敵のバリエーションが単調

  • 実写取り込みで作成した都合上、どの敵も人間ばかりになってしまっている。その結果どの敵の行動パターンもさして変わらず、攻略方法はどれも一緒となり面白みに欠ける内容に。

基本武器が無限

  • メインとなるPPKやMP40の弾薬が無限であり、通路やドアに敵を誘い出す籠城戦法が非常に有用。配置されるアイテムも弾薬ではなくスコアアイテムばかりで収集意義に欠け、戦闘や弾薬管理の戦略性が欠如してしまっている。
    • 一応爆発武器しか効かない敵や乱射すると壊れてしまうスコアアイテムなどの要素もあるものの、戦略性の強化にはいまいち寄与できていない。

視点が動く

  • まだマウスエイムが普及する前の時代の作品であり、視点制御はキー操作。デフォルトでは視点の先にいる敵の高さに合わせて視点も自動で動く仕様となっており、意図しない視点移動に戸惑うことが多い。

総評

リアルな質感や爽快感のあるゴア演出、物理演算を取り入れたジャンプパッドなど『DOOM』に勝る点は多かれど、根本的なゲームプレイの部分ではインパクトに欠け惜しくも敗北してしまった作品。
使用された強化版Wolf3Dエンジンも大幅にアップグレードされているものの、箱状で起伏に欠けるマップなど複数の点で本家DOOMエンジンに劣ってしまっている。
批評家からも当時絶大な人気を誇った『DOOM』と比較され、当時無数に存在したDOOMクローンの一つと見做され良い評価を得られずに終わってしまった。

本作で培われたバカゲー的作風やゴア演出・緻密な破壊表現といった要素は、同開発陣による次作『Duke Nukem 3D』へと受け継がれていった。


余談

  • 最初の9ヵ月は『Wolfenstein II』または『Wolfenstein3D:Rise of the Triad』として開発が進められており、ドイツ軍風の素材などが用意されていた。初期の構想では「ヒトラー亡き後、三つの巨大企業が結託したナチス残党の秘密結社トライアドが核搭載V-3ロケットを開発し、プレイヤーがそれを止めに行く」という内容だった。
    • しかし『Wolfenstein』シリーズが新作である『DOOM』と競合するのを危惧したid Softwareによってプロジェクトがキャンセルされ、素材を流用したオリジナルストーリーの作品となった。
    • このため、メイン武器がPPK・MP40と両方ドイツ軍の兵器だったり、軍服を着たキャラが多かったりとゲームプレイには部分的にWolf3D時代の名残が見られる。
  • 本作を製作した開発チームであるThe Developers of Incredible Powerは結局本作限りで解散することとなり、一部は3D realmsに在留し『Duke Nukem 3D』の開発に参加、その他のメンバーは独立するかゲーム業界を去っていった。
  • 後に本作の高難度拡張パックとして『Extreme Rise of the Triad』が発売された。また、現在ではSteam/GoG.comにて単体販売の他、本作と『Extreme』、『Blake Stone』2作を含めたバンドル『Apogee Throwback Pack』としても販売されている。
  • 2013年には、デンマークを拠点とするInterceptor Entertainmentによって本作のリメイクが発売された*3
    • 開発を担当したInterceptorは、元々は『Duke Nukem 3D: Reloaded』というタイトルで『Duke Nukem 3D』のリメイク版を開発していたスタジオなのだが、『Duke Nukem Forever』と競合するのを恐れた(後のインタビューによればDNFよりも出来が良かったのに困った)gearbox softwareによって無期限保留され、最終的に本作のリメイクへと方針転換を強いられた……という、本作とWolfenstein 3Dのような経緯を経ている。
  • 2020年9月に3D Realmsが開催したオンラインイベント「Realms Deep 2020」にて本作のリマスター版を発売することが報じられた。プラットフォームはPS4/XboxOne/Switch/PCで、CS機ではこれが初めてとなる。発表当初は2021年初頭の発売予定だったが新型コロナウイルスの影響で延期に次ぐ延期を重ねたことから一時は続報すらも音沙汰がなかった。
    • その後、2022年9月に『Rise of the Triad:Ludicrous Edition』として2023年中に発売することが改めて発表された。開発は多くのオールドPCゲームの復刻/リマスターを手掛けたことで知られるNightdive Studiosが担当。同社が独自開発したKEX Engineによる4K解像度/60fpsのサポート、Steam Workshopに対応したレベルエディタ搭載、グラフィック描画の向上、そしてオリジナル版で削除されたエピソードの復活などが盛りこまれている。また、オリジナル版の開発者もリマスター版の開発に参加しているとのこと。
最終更新:2023年01月30日 23:29

*1 ただし2Dエンジンのため拡張されるのは上方向に限られ、天井の高低や床を基準とした低さの概念は存在しない

*2 ギロチン処刑や交通事故死、医療ミスによる心肺停止などさまざま

*3 リメイク版の開発にはUnreal Engine3が使われている。