フォーメーションZ

【ふぉーめーしょんぜっと】

ジャンル シューティング
対応機種 アーケード
発売元 ジャレコ
稼働開始日 1984年9月
プレイ人数 1人~2人(交代)
レーティング CERO:A (全年齢対象)
※アーケードアーカイブス版より付与
配信 アーケードアーカイブス
【Switch/PS4】2020年3月19日/838円(税込)
判定 なし
ポイント 溜め撃ちと変形する自機のパイオニア的存在
ゲーム自体はかなり単調

概要

1984年にジャレコが発売したアーケードシューティングゲーム。地上形態(ロボット)と空中形態(戦闘機)に変形できる自機「イクスペル」を操作し、敵である「ザナック軍」に立ち向かう。
自機の変形、ショットの溜め撃ちなど、当時としては斬新と思われるフィーチャーがいくつか組み込まれている。

ストーリー

西暦2701年、地球連邦は連邦軍第9特殊機甲師団(惑星ザナックを本拠地とする)の反乱により総攻撃を受けた。
半壊滅状態に追い込まれた地球連邦は、ザナック軍の特殊兵器に対抗するべく、かねてから開発中で当時試作段階にあった形態可変戦闘メカ・イクスペルの開発を急いだ。
日ましに激しくなってくるザナック軍の攻撃に耐えかねた地球連邦は、まだ未完成の状態にあったイクスペルを出撃させることを決意する。
(※Wiiバーチャルコンソール版(ファミコン)公式サイトのストーリーの項目より抜粋)

特徴、システム

  • 1レバー+2ボタンで自機である「イクスペル」を操作。強制横スクロールのシューティングで、ステージは「地上→海→地上→海→宇宙空間(地面あり)→宇宙空間(地面なし)」と進行し、2度目の海には中ボス「S.T.Y」が、最後の宇宙空間(地面なし)にはラスボス「ジズィリアム」が待ち構える。ラスボスを倒すと1周クリア、以降はループゲームとなる。
  • レバーで自機の移動、1ボタンでショット、2ボタンでジャンプもしくは変形をする。
    • 常に画面がスクロールしているため、レバーを後方に入れても後退することはできず、同じ場所に居続けるという挙動になる。
    • ショットはボタンを連打すると発射する「パルスレーザー」と、ボタン押しっぱなしで発射する溜め撃ち「ビッグバン」とがある。パルスレーザーは連射が効くが「ヘラ」(戦車)や「サンドウォーカー」、中ボスやラスボスといった敵には効かず、これらの敵にはビッグバンを使って対処する必要がある。
    • ジャンプボタンを長押しする事で自機は地上形態と空中形態に変形できる。地上形態は動きは遅いがエネルギーは消費せず、前方・斜め上下の3方向に攻撃ができる。空中形態は高速で空を飛行し、レバーでショットを上下に振る事もできるが、変形中はエネルギーを大きく消費し、エネルギーが0になると墜落してミスとなる。
      • 変形しないジャンプもできるが、レバー入れ方向により「その場でジャンプ」「少し前にジャンプ」「かなり前にジャンプ」の3つしか使えず、空中制御もできないので着地地点に敵がいるとどうしようもない。
  • エネルギーは地上に置いてあるエネルギーコアを取る事で10回復する。
    • 一方、途中にある海は空中形態でないと渡れず、更に渡るためには最低でも50エネルギーは必要になる。
    • 地上がある場面では地上形態になりエネルギーコアを回収しつつ進み、海ではエネルギーを消費しつつ空中形態で飛び、地上が見えてきたらまた地上形態に戻るというのが基本となる。

評価点

  • 溜め撃ち、自機の変形といった先鋭的なシステムの数々。
    • ショットボタンを押しっぱなしで発射されるビッグバンは溜め撃ちの元祖的な存在ともいわれ、例えば溜め撃ちの存在する有名なシューティングであるアイレムの『R-TYPE』(1987年)より3年ほど早い。また、溜め撃ち自体もあってもなくてもどうでもいいというものではなく、要所要所で溜め撃ちでしか破壊できない敵が出てくるため、通常ショットであるパルスレーザーと使い分ける必然性がある。単なる飾りではなく、きちんと新しいシステムを使わせるゲームデザインをしているのも評価点の一つだろう。
    • 自機は任意で地上形態と空中形態へと変形できる。変形自体はこの作品が初という訳ではないが*1、自機が変形する有名な作品である『テグザー』(1985年)よりやはり早く、当時としては中々斬新なものだったと思われる。もちろん変形要素も単なる飾りではなく、ステージの途中で地面が途切れている箇所があるため、使わざるをえないものへと仕上がっている。また、変形そのものも滑らかかつスムーズに変形する。
  • 地上形態では3方向にショットを撃て、また地上ステージでは上空には空中機、地上には戦車や地雷といった敵キャラクターが待ち構えている。場面場面に応じてショットを斜め上、斜め下に撃ち分け、臨機応変に空中敵、地上敵に対処していく必要が求められ、ただ単にショットを前方、上方に撃っていればそれでいいという造りになっていない点も評価できる。

問題点

  • かなり単調なゲーム内容
    • 出現する空中敵のパターンはいくつかある内の中から選ばれ、そのパターンは小型機編隊が画面右から左を横切る、小型機が空中で停止したのち自機に突っ込んでくる、UFO型の中型機が高速移動しながら弾を撃ってくる、中型機が突然空中に出現し弾を撃ってくる、といったものがあるが、敵の種類、パターン共に少なく、ゲームを開始してしばらくすれば、早々に全ての敵パターンが出揃ってしまう。そしてこの少ない敵パターンがゲーム終了までずっと続く事となる。そのためゲームを進行しても目新しさというものをあまり感じられず、ステージが進んでも新しい敵出現パターンといったものもない為、かなり単調な思いをさせられる。地上敵の種類も3~4種類と少なく、戦車などの敵も弾を撃ってくるなどせず他の地上敵も機敏に動いたりなどもしないため、この辺りもかなり単調に感じる要因となっている。背景も2度目の地上にピラミッドとスフィンクスがある程度であまり変わり映えせず、同じような景色が延々と続くため、やはり単調さを助長させてしまっている。
      • 一応、2度目の地上に「サンドウォーカー」という固有敵がいたり、宇宙空間から小型機の見た目が変わったり爆弾を投下してくる小型機が登場したり、2周目からは岩のようなものが降ってきたり、中ボス「S.T.Y」を倒したのちに「コスモブースター」と呼ばれるユニットとのドッキングイベントが発生し、早く成功させればそれだけ多くスコアが入るなど、ある程度のメリハリが効くような造りはされているが、それでも全体の単調さを軽減するまでには至っていない。
  • 「単調ならばゲームの難易度は低いだろう」と思われるかもしれないが、決してそんな事はない。敵の図体や破壊可能弾が小さく撃ち漏らしやすく、撃ち漏らした敵や弾に当たるという事故がよく起こり、また浅い角度で飛んできた弾に被弾するという事も起こりやすい。自機の動きが重くとっさの回避が困難な事も難易度、事故率の上昇に拍車をかけている。
  • 任意に自機を変形させられるのが本作のウリだが、空中形態は大きくエネルギーを消費し、エネルギー回復アイテムのエネルギーコアは地上に置いてあり、また海を渡るのには最低でも50エネルギーが必要となってくるため、地上で頻繁に空中形態へと変形していると海でエネルギーが足りなくなり墜落死する危険性がある。そのため地上形態で地面を歩きながらエネルギーコアを回収し、海が迫ってきたら仕方なく空中形態に変形、といったプレイになりがちで、任意で変形できる割にはその変形の自由度、ステージ攻略の自由度は高くない。また、空中形態から地上形態に変形する際は自機が無防備になるため、この時がゲーム中で最も敵や弾への被弾が起こりやすい危険タイミングとなっている。空中形態になったらいずれまた地面に降りなくてはならないため、飛行には常に着地時のミスが付きまとう。この点からいっても地面がある場所では地上形態でずっと歩く事になりがちである。安易な変形はイクスペルの寿命を縮める事となる。
  • 溜め撃ち「ビッグバン」は、『R-TYPE』のようなボタン押しっぱなしで溜めて放すと発射、というものではなく、ボタン押しっぱなしで溜めた後に自動で発射するというもの。慣れるまでは発射のタイミングがつかみづらく、後続の作品に比べるとやや使いづらい。
  • ゲーム中はBGMが全く流れず、1984年という時代を考慮してもかなり寂しい。この点もゲームの単調に拍車をかけている。

総評

溜め撃ちや自機の変形など革新的な要素を多く取り入れてある本作。だが、ゲームの内容がその要素について行っているかは甚だ疑問である。目新しい要素を取り入れてもゲームの面白さに繋がっていないといういい例であろうか。
単調ではあるものの出来が悪すぎるといった作品でもなく、また現代ではアーケードアーカイブスなどで手軽に触れる事ができる本作。今となってはこれらの要素に目新しさはないが、当時に思いをはせながら触れてみるのも一興だろう。


余談

  • 書籍『ジャレコ・アーカイブズ』によると、本作の開発はジャレコ自社ではなく、外注制作会社によるものとの事*2。なお、同書に載っているジャレコ初代社長の金沢義秋氏へのインタビューや解説によると、ジャレコ初の自社開発タイトルは『シティコネクション』(1985年)になるとの事*3
  • ラスボス「ジズィリアム」は、コナミの『グラディウスシリーズ』に登場する敵キャラクター「ビッグコア」とよく似ている。ちなみに、『フォーメーションZ』の稼働は1984年9月、『グラディウス』の稼働は1985年5月29日と、こちらの方が世に出たのは早い。
    + ラスボスの画像
  • 同社のキャラが一堂に会するシューティングゲーム『ゲーム天国』には本作枠としてイクスペルの後継機とされる「Z-DYNE Mk-II」(ゼットダインマークツー)が登場(CV:業務用は千葉繁氏、セガサターン版は置鮎龍太郎氏)。
    • オートロックレーザーで敵をロックオンでき、小さい敵などに強さを発揮する中々使いやすい機体となっている。
    • 同作はジェイナスモモコぴぐセリアと、原作キャラを異様に弄くり回したり、原作の設定に無駄に斜め上の肉付けをしたオリキャラを登場させている中、Z-DYNE Mk-IIはほぼオリジナルながらかなりまともなキャラ付けになっている。…と思いきや、セガサターン版の寸劇イベントではモモコの影響でオカマ口調になってしまうイベントがあったりと、やはり弄られている。
  • 2022年10月に岐阜で行われた「全国エンタメまつり(ぜんため)*4」にて、リメイク版の制作が発表された。
    • 開発はジャレコの版権を受け継いだシティコネクション(発売も担当)と、『R-TYPE FINAL 2』のグランゼーラの共同で行われる。ハードは現時点でPS4とアナウンスされているが、更に追加予定との事。

移植

  • ファミリーコンピュータ版
    • 1985年4月4日に発売。最も有名であろう移植。ハードの都合により2度目の地上に登場する「サンドウォーカー」が登場しない、中ボス「S.T.Y」撃破後に発生するドッキングイベントが削除されているなどの差異があるが、アーケードのプレイ感覚はよく再現されている。
    • 「ビッグバン」の発射間隔が少し遅くなっている、後半ステージに登場する「ヘヴラム」(UFO型の中型機)の弾速が上がっているなど、一部アーケードより難しくなっていると思われる個所も。
    • 2009年2月3日からはWiiのバーチャルコンソールで、2010年7月20日からはプロジェクトEGGで、2017年3月29日からWii Uのバーチャルコンソールで配信されている他、PlayStation用ソフト『ジャレココレクション Vol.1』やゲームボーイアドバンス用ソフト『じゃじゃ丸Jr.伝承記~ジャレコレもあり候~』にも収録されている。
  • その他、MSX、FM-7、X1、PC-8801といった各種パソコンの移植版が日本デクスタより発売されている。
    • PC-8801版では、イクスペルの機体の色が 赤い
  • Windows版
    • メディアカイトから2003年に廉価版レーベルの「ULTRAシリーズ」の1作として発売されており、翌2004年6月11日には同社の廉価版レーベルの「遊遊シリーズ」で再販されている。内容はAC版をそのまま移植したもので、これが国内初の「AC版準拠での移植」になる。
  • アーケードアーカイブス(Switch/PS4)
    • アーケードアーカイブスの1作品として2020年3月19日に配信。
最終更新:2024年01月06日 05:18

*1 例えば本作の前年に稼働した『バスター』(セサミジャパン・1983年)は、自機のシールドエネルギーゲージが空になるとロボット形態から飛行形態へと変形する。

*2 『ジャレコ・アーカイブズ』32頁より。

*3 『ジャレコ・アーカイブズ』7頁及び32頁より。

*4 日本一ソフトウェアが主催者に名を連ねる、ゲームを中心とした町おこしイベント。