サイコドリーム
【さいこどりーむ】
| ジャンル | アクション |  
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| 対応機種 | スーパーファミコン | 
| 発売元 | 日本テレネット | 
| 開発元 | ライオット | 
| 発売日 | 1992年12月11日 | 
| 定価 | 8,900円 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 独特な世界観 良質なグラフィック・BGM
 アクションゲームとしては大味
 明らかな描写不足
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概要
夢幻戦士 ヴァリスでおなじみの日本テレネットから発売されたアクションゲーム。
プレーヤーはデバッガーとなり、ドラッグムービー(以下Dムービー)によって現実世界へ戻れなくなった少女、柚木沙耶香の精神の救出に挑む。
トータルデザインやシナリオを漫画家の西崎まりの氏が、音楽を後にワイルドアームズシリーズで活躍するなるけみちこ氏が担当している。
テレネットらしく映像メディアを意識したビジュアル演出とストーリー性に重きがおかれているが、肝心のストーリーの演出法については後述のように少々独特なスタイルをとっているのが特徴となっている。
特徴
ストーリー
1992年の冬。古い洋館の中で一人の少女が眠りに就いていた。
少女の名前は「柚木沙耶香」。
彼女の母親は離婚や自身が私生児であるという境遇から、自分の過ちを繰り返してほしくないという思いで娘を厳しく躾け、それが沙耶香を束縛していた。
17歳の夏。初めて恋をした沙耶香だったがそれは母にとって許されざる行為であり、二人は無理やり引き裂かれてしまう。
やがて沙耶香は母の抑圧から逃れるべく、「Dムービー」にのめり込んでいった。
「D(ドラッグ)ムービー」。実体験と同じように仮想世界を体感できる画期的なシステムであり、ゲーム機器として一般販売される娯楽であった。
しかしそれは感覚接続器との接続に加え、精神遊離剤も服用しなければならないというもので当初から危険性は指摘されていた。
時が経つにつれ、ハードの性能向上により安価なマシンが出回り、海外からのソフトの出荷もあってDムービーは若年層を中心に爆発的に普及していった。
同時に、仮想世界にブレインアウトしたまま戻ってこない若者達「シンカー」が社会問題となっていた。
ブレインアウト中は現実の肉体は眠ったまま呼吸以外に何もしない。当然、その状態が何日も続けば命に関わる。
しかし現実逃避しがちな青少年、とりわけ思春期の少年少女にとってはDムービーの世界はあまりに魅力的過ぎるものであり、
そのリスクを知っても尚、リターンを拒むシンカーが後を絶たなかった。
そんな彼らを救うべく、国家公安委員会は公安4課を設立し、
Dムービーへの耐性を持つ人間を、シンカーの精神に潜入させて連れ戻す「デバッガー」という役割に当たらせた。
彼らは記章にはめられた美しい結晶から「ダイヤモンドの犬」と呼ばれた。
シジマ・リョウとトバリ・マリアはDムービーへの高い耐性を持つデバッガーであり、ダイヤモンドの犬の一員としてシンカーを連れ戻す任務に当たっていた。
そして二人は、大量の精神遊離剤を服用してシンカーとなった沙耶香を連れ戻すべく派遣される。
既に沙耶香がシンクしてから3日が経過しており、病弱な彼女ではあと24時間持つかどうかという状態であった。
仮に救出作業中に沙耶香が死亡すれば、リョウとマリアの精神も現実に戻れなくなる可能性が高い。
更には沙耶香がシンクしていたのは最も流行し最も危険と言われていた「廃都物語」というソフトであり、仮想世界は沙耶香の精神から生み出された魔物が蔓延っていた。
二人は沙耶香を救うため、この危険なミッションに挑む。
登場人物
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柚木沙椰香(ゆうきさやか)
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17歳の病弱な少女。母親からの厳格な躾による日々の抑圧に耐えられず、自らDムービー『廃都物語』にブレインアウトしてしまう。
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深い眠りに就いてしまったことで生命の危機に晒された彼女を救うことが本作の目的である。
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作中のモンスターは彼女が生み出したものであり、デバッガーの救助を拒んで逃げ続けるも潜在意識の深層部では助けを求めている。
 
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デバッガー
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国家公安委員会直属の組織・公安4課、通称「ダイヤモンドの犬」に所属する特設公務員。Dムービーに囚われた人々の救出を目的としている。
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沙椰香を救うべくデバッガーのリョウとマリアが派遣され、プレイヤーは両者のうち一名を選択する。
 
    
    
        | + | 主人公2人 | 
シジマ・リョウ
男性主人公。スラストセイバー(剣)を使いこなす。
近距離強化はフレイムフリーク。肘骨や膝骨が伸びて刃のように回転する。LV2で2本、LV3で4本に増える。
遠距離強化はパラサイトフリーク。寄生生物がレーザーを発射。LV2で3wayに、LV3で反射レーザーになる。
特殊攻撃(ファイナルアトラクション)は、画面全体をモザイクにする「モゼイックディジーズ」。
説明書によると、不屈の闘志の持ち主らしい。
 
トバリ・マリア
女性主人公。ローズラッシュ(鞭)の使い手。
近距離強化はネイルフリーク。伸びた爪での切り裂き攻撃。LV3では横回転でなぎ払う。
遠距離強化はキャノンフリーク。腕が銃になり弾を発射。LV2で3wayに、LV3で追尾弾になる。
特殊攻撃(ファイナルアトラクション)は、画面全体に血の雨を降らせる「ブロッディレイン」。
遠距離攻撃が特に強くなる。
またトランスミューテーション(後述)すると、ジャンプボタン押しっぱなしで背中の羽根を使ってゆっくり降下することができるようになる。
説明書のエピローグを見る限り、リョウとは恋人同士の模様。
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ゲーム内容
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オーソドックスなステージクリア型の横スクロールアクション。全6ステージ。
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各ステージは「トラック」と呼ばれ、数個の「チャプター」と呼ばれるエリアで構成される。各チャプターは制限時間あり。
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コンティニュー回数は無限。各チャプターの最初から再開できるが、キャラの変更はできない。
 
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移動は歩き、ジャンプする事は勿論。Rボタンを押しっぱなしでダッシュに加えハイジャンプも可能。
フリークアウトシステム
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敵を倒すとたまに出現する「プロテイン」というアイテムを取得することで主人公を強化しつつ進んでいくのが本作の特徴の一つ。
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通常攻撃は最初は近接攻撃のみだが、イエロープロテイン(近距離)もしくはブループロテイン(遠距離)の取得で攻撃方法が切り替わる。
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この2色は出現後、一定時間毎に色が切り替わる。同色を続けて取得することで攻撃を三段階まで強化できる。
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そして三段階目まで強化された状態だとたまにレッドプロテインが出現。これを取得することで「トランスミューテーション」し、最終形態に変身。
 遠近両方の攻撃を同時に繰り出せるようになるが、3回被弾すると解除され、初期状態に戻ってしまう。
 
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特殊攻撃は無敵状態になっての全画面攻撃。回数制限あり。
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パープルプロテインの取得で特殊攻撃の使用回数を増やせる。最大6回分までストック可能。
 ピンクプロテインの取得で体力回復。この2色も出現後、一定時間毎に色が切り替わる。
 
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他には、一定時間無敵になるグリーンプロテイン(難易度NORMAL以下限定で出現)がある。
 
評価点
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非常に独特な世界観
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登場するモンスターは現実世界に戻ろうとしない少女の狂気と幻想が生み出したものであり、その悉くがグロテスク、かといって下品な印象は出ないようにバランスが取られている。
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一方で背景は桜が舞う街並みや高層ビル群、地下鉄といった現実的な場所が多く、そのギャップがある種の退廃的な美しさを演出している。
 
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なるけみちこ氏による暗いBGMも上手く引き立てている。
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その本作の象徴とも言えるのがラスボス戦であり、それまでの暗い雰囲気から一転、アヴェ・マリアをBGMに、夜のテーマパークでの煌びやかなパレードを背景に相手はやはりグロテスクな巨人という異質なもので印象に残る。
 
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尚、本作の舞台となる仮想世界『廃都物語』は西崎氏が嘗て発表した漫画を原案としている。
 
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グラフィックも良好で、背景に溶け込んで視認性を損ねるようなこともない。
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女性主人公のマリアは大きく背中の開いたTバックのボンテージ衣装という過激なコスチュームだが、しっかり描写されている。
 
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MODE7の活用
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SFCらしくタイトル画面でのエフェクトに始まり、作中でも拡大、縮小、回転、モザイク、半透明などの機能が駆使されて良質な素材を更に引き立てる。
 
賛否両論点
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難易度が高い
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道中は長めかつ敵からの攻撃も厳しいので難所が多い。
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ラスボスは正統派な強さを持ち、特にコンティニュー後の未強化状態から倒すのは困難。
 
問題点
ゲーム性
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ボリューム不足
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ステージは6つのみで、それぞれのステージも長くはないため1~2時間もあればクリア可能。スムーズに行けば30分程度で終わってしまう。
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主人公や難易度の選択はあるものの、はっきり言ってゲームのボリュームは少ない。
 
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高速スクロールや無限ループなど、ステージのバリエーション自体はそれなりにあるが、肝心のステージ自体が短いので早く終わってしまう事に変わりはない。
 
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自キャラの当たり判定が大きめで、近接攻撃が被弾しやすく使いづらい。
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リョウとマリアの性能差
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マリアは遠距離攻撃を三段階目まで強化した際のホーミング弾が非常に使いやすい。トランスミューテーションすると6方向に同時に発射するようになり威力も高いため、ホーミングが機能するボスは秒殺できてしまう。
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対するリョウは近接攻撃タイプなのだが、前述したようにそもそも近接攻撃が使いづらく、トランスミューテーション時の専用アクション(滞空)もないためマリアに比べて強みが薄い。
 
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ちなみに、どちらのキャラでクリアしてもエンディングに変化はない。
 
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上方向へのスクロールが狭い。
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画面のかなり上の方までいかないとスクロールせず、画面外にいる敵にはこちらの攻撃が当たらない仕様もあり、上に登っていくステージではやや理不尽な被弾が発生しやすい。
 
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処理落ちや画面のチラつきが起こりやすい。
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敵が多い場所で最終形態の攻撃を連打していると顕著。
 
ストーリー関連
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ゲーム中におけるストーリー描写がなさすぎる
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説明書にはプロローグがかなり詳細に記載されており、沙耶香が何故仮想世界に逃避しているのか、この世界はどういう仕組みなのか、主人公2人は何者なのかと言った背景が数ページに渡って説明されている。更にはエピローグすら載っているという徹底ぶり。
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さらに当時のゲーム雑誌に掲載された広告では、説明書のものとはまた別の場面を描写したミニ小説が掲載されていた。このミニ小説は数種類存在しており超短編ながらも好評だったのだが、故にその内容を知っているかどうかで没入度の個人差を生んだ。
 
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上記のように、ゲーム外でのストーリー描写に力が入っている一方、ゲーム中でのストーリー描写は皆無で、ステージクリア時には毎回同じ一枚絵が表示されるのみで、エンディングも非常に簡素。
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ゲームを開始すると街を背景にスクロールしながらスタッフ名が表示されるという映画的演出はあるが、その後は「廃都物語」と表示されるだけでいきなりアクションステージが始まる。
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イベントらしいイベントはTRACK03のボス戦で「沙耶香を救出するもまたすぐに姿を消してしまう」という演出がある程度。あとはラスボス撃破後に解放された沙耶香が主人公に抱きついて来るシーンがあるだけで、その後は廃都の遠景をバックにスタッフロールが流れて終了という寂しさである。
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そのため、説明書を読まずプレイしただけでは「化け物だらけの荒廃した街を変な格好の男女が進み、ステージクリアの度に謎の女の子が出てくるゲーム」にしか見えないだろう。
 
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遡ればPCゲー黎明期やFC時代は容量の都合からやむを得ずこういった手法を取っていたゲームも多かったが、SFCの時代にこういった手法を取るのは流石に時代遅れと言える。
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本作の冒頭では
 「
このカセットに収録されている_映像及び音声の仕様は、_家庭内での利用を目的とする_販売に限って許諾されております。
」
 「
このカセット又はその一部でも_複製、変更、又はこれを使用した_上映、上演、有線放送、_及び放送は法律により固く禁止_されております事をご了承_下さい。
」
 (原文ママ)とあり、更にSFCのパッケージ箱自体がビデオテープのサイズとほぼ同等。このことからビデオテープ時代のOVAアニメを意識していると思われる。
 にも拘らずゲーム内で明かされるストーリー要素が皆無というのではさすがに寂しすぎるだろう。
 
 
総評
アクションゲームとして見ると粗は多いが、その独特な世界観から一部のユーザーからは熱烈な支持を受けているゲームである。
しかしストーリー性を強く意識した作風ながらそれらが一切ゲーム内で描写されておらず、しっかり楽しもうと思うと説明書を熟読し世界観やストーリーなどの予備知識をあらかじめ頭に入れた上で、脳内補完しながらプレイしなくてはならない。
可能であれば広告掲載の小説まで含めてである。
総じて、独特な魅力はありながらもそれがゲームに収まりきっておらず、ゲーム性にも少々問題があるのが残念なゲームである。
余談
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各種配信について
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2012年4月24日にプロジェクトEGGで配信が開始。
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2021年2月17日に『スーパーファミコン Nintendo Switch Online』で配信が開始。
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2022年3月2日、なんとサウンドトラックCDが発売。ブックレットに説明書のプロローグ、エピローグも掲載された親切仕様。
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海外ゲームメーカーのラタライカゲームズが権利を取得して2025年にSteamと海外版Nintendo  Switchで配信を表明、その後同年9月5日にPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/Steamにて配信が開始された。
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他ハードはともかくNintendo  Switch Onlineで以前から配信されている作品なので、こちらは前述の通り詳細に書かれた説明書や資料データも収録されていることや本作だけを買い切りで得られるというのが特色となる。
 
 
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中古相場は高め
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今のところソフトだけでも4~5千円で取引されているが、アクションゲームとしての購入はおススメしかねる。
 
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あるシューティングゲームのオマージュ
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ラスボス手前のTRACK06のCHAP.02では細胞壁で構成されており、更にはプロミネンスみたいなのや上下する大きな牙、大型細胞など色々と酷似しており、登場人物はそのゲームのファンだった疑いが濃厚である。
 
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隠し要素?
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TRACK02のCHAP.03においてミスした後にコンティニューを行うとゲームプレイ中ではここでしか聞けない特別なBGMが再生される。ただし、オプションでサウンドテストが可能なゲームなので該当するBGMをそこで聞くことはできる。
 
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高速スクロールステージが存在するのは上述したが、よくあるトロッコなどの乗り物に乗るのではなく自力で走る。
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しかも常に前方(右)を向く訳ではなく、後方(左)に移動すると高速で後ろ走りする形になるので、仮想世界とは言えちょっとシュールかもしれない。
 
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上記の通り今作の知名度を上げたゲームセンターCXでは、実際に有野課長による挑戦も行われている。
最終更新:2025年09月06日 07:28