おぼっちゃまくん
【おぼっちゃまくん】
ジャンル
|
ボードゲーム
|
|
対応機種
|
ファミリーコンピュータ
|
発売元
|
テクモ
|
発売日
|
1991年4月5日
|
プレイ人数
|
1~4人
|
記録方式
|
バッテリーバックアップ
|
定価
|
6,500円
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
二大おぼっちゃまくんゲーの一角 『マリオパーティ』の先駆け?
|
コロコロコミックシリーズリンク
|
概要
コロコロコミックから始まり、あらゆるメディアで展開されていたおぼっちゃまくんがゲーム化された。
世界各国を回るボードゲームであり、沙麻代に渡すプレゼントの争奪戦が繰り広げられる。
内容
-
沙麻代が欲しがるものを茶魔(おぼっちゃまくん)、柿野、袋小路、貧ぼっちゃま、チャンシー(COMプレイヤー)が世界を回って取ってきて、その目的のプレゼントを手に入れ、世界中のどこかにいる沙麻代に届けるというもの。
-
プレゼントを手に入れると通掛聞造が沙麻代の居場所を教えてくれる。
-
プレゼントアイテムは誰かが取ったものを奪ってもいいが(後述)、自分でそれを取りに行って沙麻代に届けた方がハートが3つ貰える(他の誰かが取りに行ったプレゼントを奪って届けた場合は1つ)。
-
最初に目的数のハートを決め、その数に達した者が勝者となり、沙麻代のキスを受けられる。
-
「辞典」がサイコロのような役目になっており、その文字数が出目(1~8)となる(例・「け」→1「へけ」→2「へけけけけ」→5)。
-
移動時にランダムでイベント(敵キャラクターやエンカウント等)が発生する。
-
他のプレイヤーと同じマスでぶつかった場合その延長線上に飛ばすことができる。その相手がプレゼントを持っていた場合奪うことができる。この時茶魔の象徴的挨拶をするのだが、それは友好の証なので本来の意味と違うような?
-
「G」のマスに止まることでお金が手に入る。
-
「川」では1歩歩く毎に少し体力を消耗し、高確率で「川底のコケ石を踏んでしまい足を滑らす」が発生しそのまま流されてしまう(プレゼントを持っている場合落としてしまい流されている間も1マス毎に体力消耗)。
-
「食肉花」のあるマスではランダムで噛み付かれてしまい、その場合体力が減り移動力が残っていても強制ストップ。
-
食肉花はランダムで枯れたり、隣のマスに繁殖したりする。噛み付かれなかったら刈り取ってアイテム欄に入れることもできる。
-
世界はアジア、ソ連、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、北極、南極、ハワイの9地区に分かれている。
-
他にアイテムが使えない小地区として、ピラミッド、ロンドン、ワイキキビーチ、たんばワールド(霊界)がある。
-
メイン9地区の内、アジア、ソ連、ヨーロッパ、アフリカ間と北米、南米間は陸続きで歩いて移動できる。北極→南極もたんばワールド経由で可能だが、それ以外は船か飛行機を使うことになる。
-
攻撃アイテムの「ミサイル」や「戦車」により地面に穴が開くことがある。その穴に入っても別の地区にワープできる(ただしプレゼントを持っていた場合、その場に落とすことになる)。
-
地区内移動なら飛行機は1日、船は2日で行けるが、地区外に行くには飛行機で2日、船で3日必要。乗っている間は行動できない。
-
船や飛行機に乗ると低確率で「ドクターモオ」による乗っ取りが発生する。これが発生すると飛行機なら3日、船なら4日間も動けず行先も「????」となり世界中のどこに着くかもわからない。
-
地区内移動限定ながら電車(チャマンスカー)に乗ると、移動できる場所は限られるが2倍の速さで進むことができる(前述の「食肉花」も踏みつぶせる)。
+
|
アイテムの詳細。
|
-
いたらき(100万)
-
体力が回復する(50前後)。
-
確率で「かいしんのいたらき」(一気に全快の100)と「つうこんのいたらき」(回復しない)が発生する。
-
食肉花(400万)
-
歩ける部分に設置できる。この花があるマスに入ると確率で噛み付かれてダメージを受ける。噛み付かれなかった場合は、刈り取ってアイテム欄に入れて持ち歩ける。
-
チャンシーの場合は確率で自分から食いつく(食肉花は消える)のでダメージは受けないが、その場合「メシ喰ったらひと眠りでシ」と言って何ターンか寝てしまう。
-
1ターン終わるごとに「増殖」「枯れる」「現状維持」の抽選が行われ「増殖」になると、上下左右いずれかに増える。
-
ミサイル(3000万)
-
攻撃アイテムで自分も含めて標的ランダムに選ばれる。
-
回避不能でダメージを受けるとともに数マス吹っ飛ばされ(プレゼントを持ていた場合落とす)、着弾点には穴が開く。
-
穴には宝箱が隠れている場合があり、開けると何かしらアイテムが入っている。
-
戦車(3000万)
-
4方向に弾を撃てる。弾数は最初に辞典を引いて出目の数(1~8)。
-
ただし着弾点は何マス目から不定で、相手プレイヤーを直撃すればダメージを与え吹っ飛ばすことができる(プレゼントを持っていた場合落とす)。またミサイル同様穴が開くことがる。
-
ゆるしてもら演歌(1000万)
-
使うとキャラに合わせた専用の絵が表示され専用BGMが流れ、これを使ったターンのみ有効で、アクシデントに遭わない、食肉花に噛まれない、穴に落ちない、川を移動しても体力が減らず川で流されないといった具合に安全に移動できる。
-
使えま千円(3000万)
-
他のプレイヤーはアイテムを数ターンの間、使えなくなる(確率で解除)。
-
カンガルー(400万)
-
マップ上を1マス飛ばして進める。川に飛び込んだり数ターン経過で効果がなくなる。
-
1マスの通行不可な地形(川や海など)がある場合に有効。
-
ドラム缶(50万)
-
本来一歩ごとに体力を消耗し、流されたりする川を安全に進めるようになる。川の中にいる間は効果は持続し陸に上がるとなくなる。
-
工作隊(400万)
-
邪魔な構造物を建てて数ターンの間通せんぼする。岩山や海なども平然と歩けるチャンシーも、これは通れない。ターン経過で無くなる。
-
設置できる場所は自分が今いるマスと、その上下左右。
-
ほしがリータ(2000万)
-
ランダムで相手プレイヤーから持ち物を取ってくる(船や飛行機で移動中のプレイヤーは対象外)。確率で失敗する可能性もある。
-
こわがリータ(2000万)
-
金が倍になったり半分になったり、アイテムをなくしたり、プレイヤー同士の場所が入れ替わったりといろいろなことが一気に何度も発生する。
-
対象のプレイヤーも全員から1つの効果がごとにランダムに選ばれる。
|
-
各アイテムの効果はちゃんと画面で解説が見られるので予備知識がなくてもあまり困らない。
-
一般的なRPGと違ってアイテムを捨てると捨てた場所にそれが残っており、拾うことができる。
-
チャンシーが使うのは「ほしがリータ」と「いたらき」のみで、前者は確率で使い後者は体力が減ってくると使う。これらは「所持している」という概念がないので実質使い放題。
-
体力が0になると、その地区の病院に運ばれて3回休み(この場合もプレゼントはその場に落とす格好になる)。
-
病院に着いた場合、自主的に休むこともできる(残りの移動力を捨てて体力が全回復する)。
-
セーブはオートセーブ
-
変なタイミングでリセットをやると、よーしゃなく削除されると言われて、実際に削除されるようになっている。
評価点
ボードゲームとしてバランスの取れた仕上がり
-
一気に3回行動できる「やらせてもらえんか」が1億円と高額だったり、回復アイテム「いたらき」は100万円と安かったりバランスが取れている。
-
単に沙麻代に届けるだけなら奪った方が手っ取り早いが、自分で見つけて届けると3倍もらえるというのは大きいので、プレゼント探しから争奪戦を繰り広げる展開になりやすく、白熱した展開になる。
-
競争力がなくなっての脱落がまず起こらない。
-
本作で『競争力の根源』はお金だが、『桃鉄』などで起こりがちな「大差をつけられすぎて脱落」になるようなケースがほとんどない。
-
例えばお金がなくなっても「G」マスは世界中にまんべんなくあり、アジア地区では「酔っ払い」や「虎」とエンカウントして勝つと数千万円が一気に手に入る(ドラゴンなら2億)。
-
船や飛行機の運賃すら払えないところまで困窮することはまずない。
キャラクターのグラフィックが非常によくできている
-
それなりに容量もあるファミコン後期のロムカセットというのもあるが、主役の5人から脇役に至るまで細部まで細かく描かれており、キャラゲーにありがちな「見た目が全然違って誰なのかわからない」などということはない。
-
特にゴールでの沙麻代の服装のバリエーションが豊富なのは見どころ。
-
その中でもハワイの「ホテルカメヘンナ」の水着姿はちょっとしたサービスカットと言えるかも。小学生離れした沙麻代のナイスバディが見られる。
テクモらしくBGMの出来がいい
-
それぞれ地域の雰囲気にもマッチしており、聴きも心地よい。
-
また、小地区にもそれぞれ固有のBGMが用意されている。
賛否両論点
CPUキャラクター「チャンシー」の優遇
-
空港や港での移動が常に1日でできる。
-
飛行機や船に乗るのではなく自分で飛んで渡る形なのでドクターモオによる乗っ取りもない。ただし地区内便は使用しない。
-
岩山や海といった基本的に移動不可の地形でも問答無用でスイスイ進めてしまう。工作隊の作った構造物の上は直接移動できないが先述の通り岩山や海で迂回できるためあまり役に立たない。
-
これに関してはズルイという意見もあるが、そもそもファミコンではCPU自体思考がかなり悪い傾向にあり、本作でも「最短距離を一気に進むスタイルなのでリスクの高い川に飛び込みまくったりして自滅することも多々ある」のでそのハンデとしては丁度良いともいえる。
-
上述の通り地区内便を使わないのでオーストラリア大陸やアジア大陸に行く場合は東京に飛んでから海を進んで行くことになる。特に西アジアやオーストラリアまでは相当マスがあるので地区内便が使えるプレイヤーの方が有利と言える。
-
またお金をいくら持っていても使わず、アイテムも特定の物しか使わない(ただしランダムで「燃えていまシューマイ」が発生し移動力が倍になることがある)ので、その辺りでもバランスが取れている。
-
これに関しては「優遇」とは言えないが食肉花に対しても特別で、噛まれるのではなくチャンシーから噛み付いて喰ってしまう。自分から噛み付くので体力が減ることはないが「メシ食ったらひと眠りでシ」といってしばらく動かなくなる。
やり込み要素という解釈もできるが海路や空路の繋がりが今自分のいる地区以外で知るすべがない
-
例えば北極はソ連の「クソジン」からしか行けず、ハワイは北アメリカの「ロサンゼルス」からしか行けない。まあ、この程度はなんとなく察しがつくのでソ連や北アメリカに行って「サーチ」すればわかる。
-
厄介なのが南極で、そこに繋がるのはオーストラリアの「パース」と南米の「ブエノスアイレス」これは即座に発想しにくい。特に「パース」の方はプレイヤーは船を使う必要があるのにチャンシーは海の上をラクラク飛んで着けてしまう。
問題点
食肉花の大繁殖
-
ターンの終わりに低確率で「○○(地区名)では食肉花が大繁殖」と出て、その地区に食肉花が大量に現れる。
-
食肉花は基本的に「現状維持」「枯れる(消える)」「増殖」の3択だが、大量に出てしまうと「枯れる」が選ばれても隣り合ったのが「増殖」になったりすると意味がなく、結局半永久的に居座られてしまう。
-
「ゆるしてもらえんか」を使った状態なら噛みつかれることはないので、それを利用して刈り取りまくれば安全に除去することが可能。だがこのような対戦プレーゲームでは自分が犠牲になって作業するだけでしかないので、それをすること自体メリットが限りなくゼロに近いため結局のところ放置され、事実上の「半永久的な居座り状態」を容認することになる。
リセット乱用を防ぐためとはいえ簡単にセーブデータが消えてしまう
-
ターンの終わりの状況確認の画面があり、その画面以外でリセットや電源を切るとデータが必ず消えてしまう。
-
ゲームスタート時に告知されるとはいえちょっとしたアクシデントはつきものな上に、元々プレイヤー同士の対戦重視のゲームという点で、それを乱用する必要性自体薄いので石頭な感が否めない。
茶魔の呼称がおかしい
-
通掛聞造、じいや、沙麻代が茶魔を「おぼっちゃまくん」と呼ぶ。
-
沙麻代は普段「茶魔」と呼び捨てにし、御坊家の執事であるじいや、お助け軍団の通掛聞造は「茶魔ちゃま(「様」という意味)」と呼ぶので、さすがに違和感がある。アニメで「おぼっちゃまくん」と呼ぶのは柿野のみ。
見た目とは裏腹に、キャラクターの設定が原作と整合性が取れていない
-
沙麻代にツンの部分がない。
-
原作では非常に気が強くてツンとデレの起伏が激しいキャラクターだがゲームではずっとデレ状態。
-
ゲーム的都合のため仕方ないところもあるが、みんなライバル同士で友情が全くない。
-
原作では柿野は茶魔の親友、袋小路は金持ちの同士のライバル(とはいうものの金の対決ではほとんど茶魔に負けてばかりだが)、貧ぼっちゃまは比較的茶魔の味方寄りだが、このゲームではそれが一切ない。
-
この4人が対等な立場で戦うようなエピソードもあるにはあるが原作でも数えるほどしかない。
-
これも対戦型ボードゲームである以上やむを得ないところもあるが何故かみんな公平に金持ち。
-
茶魔は現実ではありえないほどの大金持ち。袋小路も茶魔には劣るものの現実なら世界トップクラスの金持ち。柿野は典型的な一般家庭(それでも比較的裕福な方)。貧ぼっちゃまは文字通り貧乏。こんな具合にこのように貧富の差が激しい4人だが、ゲームではみんな公平に2億円持ってスタート。
-
貧ぼっちゃまはイベントキャラクターで登場させたほうが違和感は無かったと思われる。
-
上記の通り本来なら友好の言葉であるはずの茶魔の象徴的挨拶が攻撃的役割にしかなっていない。
-
原作では友好の挨拶なのだが、ゲームではプレゼントを奪ったり相手を突き飛ばすような位置付けでモロに攻撃手段。
ミニゲームの要素が乏しい
-
容量の限られたファミコンとはいえ、このようなボードゲームには単調さを払拭するミニゲームがあるものだが、たんばワールドで出されるクイズぐらいしかないのは物足りなさがある。
総評
キャラクターがキャラクターなだけに好みが分かれるところだが、ゲームシステム自体は良くできておりコントローラー捌きのテクニックもいらないため『桃太郎電鉄』のような感覚でみんなでワイワイ楽しむことができる。
その『桃鉄』との差別化も出来ており、お金より「沙麻代の好感度(ハート)」を集めるスタイルは後の『マリオパーティ』に近い。
テクモらしくBGMの出来も秀逸で聴き心地がよく、キャラゲーとしてもゲームバランス上やむを得ない点など除けば大体は原作の要素をゲームシステムとして上手く取り込めている。
お金持ちばかり出てくるゲームであるが、中古相場についてはFC末期ながら現在のところ入手は容易な方なので原作ファンなら選択肢に入るだろう。
余談
-
同時期のおよそ丁度先月にも、にナムコからPCエンジンでも『おぼっちゃまくん (PCE)』のタイアップゲームが出ているが、その後ゲーム化は一切されていない。
-
アニメは翌1992年、原作も1994年にコロコロコミックでの連載も終わった影響が大きい。
-
本作及びPCエンジン版以降は、18年後の2009年に『CRぱちんこおぼっちゃまくん』として京楽産業からパチンコ化されたのみである。
-
本作でアイテムとして登場している「逃げ足の便(ベン)」とは原作で登場した「お助け軍団」の一人「便・ジョンソン」で、言うまでもなく1988年のソウルオリンピックの陸上男子100mで9秒79の驚異的な記録を叩き出しながら、ドーピングにより失格となったことで「悪役ながら最速」となったカナダ人ランナー「ベン・ジョンソン」のパロディキャラである。
-
原作でもライバルのルイスとともに実名のまま登場し、そのドーピングエピソードが用いられており史実同様ドーピングで失格したオリンピックを見た茶魔がドーピングに手を出して運動会を制し、テストで全9科目満点を取るなどして一度は尊敬されるも直後にそれが発覚してクラスから総スカンにされたエピソードで、ベンとは同じドーピングに手を染めた者同士で慰め合ったことで彼も日本籍を取り「便・ジョンソン」となり「茶魔が襲われそうなピンチに陥ったら茶魔を背負ってその自慢の足で逃げる」役回りの「逃げ足の便」としてお助け軍団入りしたという話がある。この話の終わりではクラスメートたちが一斉に襲ってくる中、便は茶魔を背負って見事逃げ切った。だが結局その後のエピソードではまったく登場しなかった。
-
そんなわけで本作は設定上だけで残っている「逃げ足の便」が日の目を見た唯一の作品となった。
最終更新:2023年11月09日 22:42