ダンシングアイ
【だんしんぐあい】
ジャンル
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アクションパズル
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対応機種
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アーケード(SYSTEM11)
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販売・開発元
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ナムコ
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稼働開始日
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1996年9月19日
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プレイ人数
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1人
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判定
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バカゲー
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ポイント
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またもやナムコご乱心 ごほうびはポリゴン女体観賞 ゲーム界に伝説を残した作品
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概要
いわゆる『クイックス』タイプの陣取りゲームを3D化したもの。対象物の表面のパネルを全て囲んで破壊するのが目的のゲーム。
ポスターやチラシのイラストはややローアングルのセーラー服姿の女性に小さなサルが纏わりついている。
キャッチコピーは「これが全く新しいアクションパズルゲームだ! ちょっと怪しめ。」である
ポスターイラストを描いたのは後に『アイドルマスター』でデザイナーを務める田宮清高氏。
また、ディレクションには『アウトフォクシーズ』や『子育てクイズ マイエンジェル』でディレクターを担当した梅田正輝氏や『コズモギャング・ザ・ビデオ』や『エメラルディア』を手掛けた見城こうじ氏が参加している。
ゲームシステム
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全15ステージの1周エンド。スタート時にステージ毎に決まった3つのステージの中から1つを選ぶ。そのため、総ステージ数は41にも上る。
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プレイヤーキャラは「宇津木次郎」で、キャッチコピーにも使われているサル。
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操作は4方向レバーに1ボタン。フィールド上は予めマス目状に区切られていて、そのライン上を移動する。
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自分のいる場所を中心に真上方向から見下ろした視点で、移動すれば足元のフィールドの方が動く。
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ボタンを押すとその場に杭を打ち、押したまま移動すると足下のラインを囲み始め、四方全体を囲むとそのマスは点滅して囲みが完了したことが分かる。
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その状態でボタンを離すとラインが解放され、囲っていたマスの表面が破壊されて『中身』が見えてくる。こうして全てのパネルを破壊すればステージクリアとなる。
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フィールド上にはウサギやリスなど全10種類の敵がいて、それぞれ決まったパターンで動き回っている。
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パネルを囲んで破壊した時に囲まれたパネルの辺上にいた敵すべてを倒す。
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各ステージで黄色いリスを倒す回数を1回までに留める状態でクリアすると、3ステージごとにクリア時のタイムボーナスが倍になる。
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3面で2倍、6面で4倍、15面まで継続できれば32倍になる。ハイスコアを狙うなら必須条件である。
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ボタンを押している間も移動スピードが落ちることはないが、ライン上を加速しながら追尾してくるリスに追いつかれそうになったら囲うのを諦めることが戦略となる。
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敵やパネルの中には光っている物があり、これを破壊するとアイテムが出る。
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これらは一定時間敵の動きを止めたり、縦や横方向のパネルをまとめて破壊したりととても強力な効果が得られるので、攻略の上でも非常に重要である。
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敵に触れたり、制限時間内にステージクリア出来なければミス。残機が無くなればゲームオーバー。
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フィールドは女体や木箱やトラックなどの立体物であるのが本作最大の特徴。
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女体の場合は基本的に服がパネルになっている。パネルを破壊すれば当然下に着ている物が露わになる。
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女体以外にも木箱の中にバニーガールがいたり、ミルク缶の中に牛がいたり、マッチョな男性や学ラン青年、さらには牛をさらう宇宙人や人間の体に上半身を覆い隠すほどの不気味な犬の顔のような物を被った謎の生物まで様々なキャラクターがいて楽しませてくれる。
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ステージクリア後に15秒間(HURRYが出てからクリアすると10秒間)のごほうびモードになり、動き回る『中身』を自由に眺められる。
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レバーでカメラアングルの変更、ボタンを押すとズームアップ。背後に回り込んだり、真下から見上げてズームアップするアングルも可能。
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設定で『KIDSモード』に変える事が出来る。
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女体のフィールドは既存の他の物に差し替えられ、ステージ8からはステージ1にループする形になる。ステージ14・15はノーマルと同じ。ただし、ステージ14のSFコスチュームの女性は4,11面でも選択可能なので最大3回同じ面をプレイすることが可能。
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ファミリー向けにデパート内のCS「ナムコランド」を運営していたナムコらしい配慮である。
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「パネルが透けて見えるモード」「キャラが関西弁でしゃべるモード」「ごほうびモードでカメラ視点を顔か股間に切り替える」という裏技がある。
評価点
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単純で分かりやすいゲーム性
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足下のパネルを囲むという初めての人でも分かりやすいシステム。また、クイックス系のゲームは『ヴォルフィード』や『ギャルズパニック』など、ゲームセンターでヒット作を輩出しているジャンルであり、プレイヤーに比較的馴染みのあるゲームであるためとっつき易さがあった。
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ポリゴン黎明期に「女体キャラをふんだんに用意して自由に観賞する」というチャレンジングな姿勢
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新しい市場の開拓に挑んだのは間違いなく、最初から客を選ぶゲームになると分かっていただろうに敢えて出す度胸。
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また、この時代にこのレベルのキャラを作れる技術力があるからこそ制作した自信。
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しかも、観賞を「ごほうび」と言い切る厚顔さ。そういう点ではとてもナムコらしいゲームであると言える。
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ステージの豊富さ
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女体ステージはセーラー服(中身はブルマ姿)、CA、『ソウルエッジ』のロゴのTシャツを着たDJ、バニーガール、チアガール、黒いボンデージスーツのSM嬢等各ステージに必ず一つは女体ステージもしくは中身が女体のステージがある。終盤まで女体ステージだけを追い求めるプレイも可能。
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女体以外のステージもミルクタンク(中身は牛)、大蛇に巻きつかれたマッチョ、トラックの荷台(中身はマグロ)など何かとユニーク。
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総ステージ数が多いので遊んだことのないステージを選びながら進んでいけば何度も楽しめる。
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ステージの形状や出現する敵によって難易度に差があるので、なるべく難しいステージを避けていく手段もある。
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豊富で多彩なBGM
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全41ステージに2曲ずつ、計82曲もの楽曲が必要だったため、当時のナムコのサウンドスタッフをほぼ総動員して作られている。
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曲だけでいいと言われたのに演歌風の曲に歌詞まで作ってきた人もいて、トラックステージに採用されている。
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何気に豪華な声優陣
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96年当時の人気声優だった富沢美智恵氏や荒木香恵氏、新山志保氏に渡辺久美子氏、佐久間レイ氏等が参加しており、ゲームの雰囲気作りに貢献されている。
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ちなみに本職声優の方々に混ざる形で開発スタッフも6人参加している。
賛否両論点
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良くも悪くも見る人に与えたインパクトの大きさ
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ゲーム内容、ポスターイラスト、キャッチコピーなど、本作の宣伝に関わる部分からして控えめに言っても万人にお勧め出来るものではない。
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後述の座談会で「企画を通すことより、むしろ製品化前の最後の調整の方が大変でしたね。細かい部分で、ここはいいけどこういう表現はダメ! とかあって」と語られている通りである。
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好意的に受け止めた人からは称賛されていたが、コンセプトの時点で賛否両論になるのは避けられないゲームである。
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KIDSモードにすれば大体の問題は回避できるのだろうが、ゲームの本来の魅力すら削ぎ落としてしまう諸刃の剣である。
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一見脱衣ゲームだがそこまでの描写は無い
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上記とは正反対だが、下着の脱衣は一切なく、バストですら露わになる事は無い。そのため脱衣麻雀のような裸の描写があるゲームを期待した人には中途半端に映り、物足りないという意見もあった。
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逆に下着姿の女体が躍る姿を観賞する様はまるでストリップだと指摘する人もいた。
言われてみればその通りであるが。
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落ち着きのないごほうびモード
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ボタンを押している間はズームアップ、離すと元に戻るという仕様なので、ベストアングルで止める事が出来ない。なのに「中身」は踊ったり歩き回ったりするので、せっかくのご褒美なのにゆっくり堪能出来ない。
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だが鍛えられたゲーマーの中には「ごほうびステージこそがダンシングアイの真骨頂」として、自分だけのベストアングルを追及していた猛者もいたらしい。
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最終ステージは女体じゃないどころか可愛くも無い
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最後はデカいパイナップルを被った2頭身男性で、中身はオッサン顔。エンディングもこのオッサンが動き回る様子を背景にスタッフロール。せっかくここまで来たのにがっかりしたプレイヤーもいた事だろう。
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ここまで女体以外の変なステージも多いのでそれらを選んできた人、あるいはKIDSモードで遊んだ人には「最後まで変なゲームだった」で終ってしまう。だがそれも本作らしいとも言える。
問題点
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傍から見れば女性を脱がすゲーム
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下着姿止まりとは言え、女体ステージは見る人によっては扇情的に見えるので、やはり人目のあるゲームセンターでプレイするには抵抗を感じる人は多かった。脱衣麻雀より恥ずかしいと言う人もいたり、中には「ごほうびモード自体いらない」という
本末転倒な意見のプレイヤーも見受けられた。
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女体ステージを選ばなくても、キャッチコピーが示すゲームのイメージのインパクトが強すぎて、他の人からは脱衣麻雀をプレイしているのと変わらない目で見られてしまう恐れは避けられない。
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ポリゴンキャラが少々粗い
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本作はPS互換基板のSYSTEM11で作成されているため、性能的にこれが精いっぱい。ポリゴン黎明期のため仕方ない点ではあるが、この影響で女体のクオリティが少々残念な事になってしまっている。
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とは言えあの当時であのクオリティを作れたのは流石ナムコと言えるだろう。
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ごほうびモードで近寄り過ぎると「中身の中身」である空洞が見えてしまうのも残念なポイント。対象物が動き回るので慌てると余計そうなりやすい。
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フィールドが立体的なので全体が見づらい
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自機のいる場所の裏側や幅が広いフィールドの隅など、どうしてもそのままでは見えない(もしくは見づらい)場所が出来やすい。
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プレイ中に全体を見渡す方法は無いので、パネルが残っている場所が見つけにくかったり、分かりにくい位置に敵がいて気が付いたらすぐ傍にいたりという事態が起こりやすい。そのため難易度は少し高い。
総評
シンプルな操作方法でシステム的には誰にでも楽しめるが、内容的には誰もが楽しむには難があった。
しかし ポリゴンで描かれた女体を好きな方向から観賞出来るゲーム の先駆者的存在であり、衝撃を受けた人、あるいはフェチズムを刺激された人には強烈な印象を与えたゲームとなった。
不思議な魅力を持つ魔性のゲームであり、今でも家庭用機への移植を希望する声もある。
ナムコらしくないゲームと思う人もいただろうが、自由な発想のもとで作られたある意味当時の「ナムコらしいゲーム」で、家庭用移植されていない点も含め間違いなくゲーム業界に伝説を残した作品である。
余談
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ナムコの広報誌『NOURS (ノワーズ)』のNo.14にて、「緊急企画「ダンシングアイ」開発者座談会」が掲載された。
スタッフはその中で「ナムコご乱心!?」は最大の賛辞ですと語っていた。
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もっとも、過去に『ワンダーモモ』の洗礼を受けていた人の中には「ナムコはたまにこういう事をする」と冷静な意見を述べる人もいたという。
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NOURSにはキャラクター相関図も掲載された。なんと全ての登場キャラクターが誰かと何らかの関係があって1つの図に載っている壮大な物であった。
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例えば最終ステージの大顔は「大顔グループ」の会長で、宇津木次郎はそのグループの社員。
その後の展開
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PS1に移植される予定だったが、結局発売中止になった。
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互換基板なので技術的には問題は無かったはずなので、やはり内容的な問題だったと推察されている。
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「中身」には黄色いワンピースを着た少女もいる。少女のパネルは体を覆っている木の葉であり服は脱げないが、ごほうびモードで360度視点が変えられるので真下アングルから眺めることが可能。
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因果関係は不明だが、家庭用移植がされない一因にこのキャラの存在を挙げる人もいる。
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2011年に突如PS3にてリメイク版が開発中と発表された。
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同社の過去タイトルを現代風にアレンジした『ナムコジェネレーションズ』のシリーズとして、『メトロクロス』のリメイクである『エアロクロス』と同時発表された。
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どちらも公式サイトに開発中の画面写真やトレーラー動画が公開されていた。モーションコントローラーのPS Moveでの操作も可能だった。
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あまりに突然で意外すぎるゲームの発表に当時のゲーマーは沸き立った。しかし残念ながら2012年にどちらも開発中止が発表された。理由は「諸般の事情」となっている。
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やはり倫理的な理由が推察されるが、『ナムコジェネレーションズ』シリーズが第1弾の『パックマン』と『ギャラガ』のリメイクで打ち切りとなってしまった点から、それらの売上があまり振るわなかったからではとも考えられる。
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かくして2024年現在、実基板以外で遊ぶ手段はない状態が続いている。
最終更新:2024年07月15日 00:39