時空探偵DD ~幻のローレライ~
【じくうたんていでぃーでぃー まぼろしのろーれらい】
ジャンル
|
アドベンチャー
|


|
対応機種
|
プレイステーション セガサターン Windows 95
|
発売元
|
アスキー
|
開発元
|
システムサコム
|
発売日
|
1996年7月26日
|
定価
|
6,800円(税別)
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
セガ審査 全年齢推奨
|
備考
|
DISC2枚組
|
判定
|
クソゲー
|
ポイント
|
豪華声優陣によるフルCGアドベンチャー あまりに薄過ぎるゲーム内容で評価を落とす ボリューム詐欺、タイトル詐欺が酷評要因に
|
概要
第5世代ハード前期に発売されたADV。
発売当時は映像作品の延長にあるインタラクティブゲームが数多く作られていたが、本作もその流れを汲む作品である。
原作者は様々なアニメに携わり、後にアニメ版『ポケットモンスター』を手掛ける脚本家の園田英樹氏(シナリオ自体は別のスタッフが担当)。
タイトルのDDは「Dracula Detective」の略。その名の通り、本作の主人公は吸血鬼の探偵である。
その売りは豪華な声優陣と、当時最先端のフルCGで描かれた世界観。
意欲的な試みとなった本作だが、プレイヤーからは酷評の嵐を受ける事になってしまった。
あらすじ
西暦2238年。
時空犯罪を専門に扱う時空探偵、DDこと鳴神雷蔵のもとに、ある日一人の少女が仕事の依頼に訪れた。
彼女、レニ・ラヴァルの依頼とは、失踪した父、高名な超電磁工学の権威であるクルト・ラヴァル博士の行方を探すことであった。
博士の持ち物を調査した結果、博士は何か巨大な物体を過去に転送したことがわかった。
DDとレニ、DDの相棒霧姫・アイスマンの三人は、博士の手がかりをつかむため300年前の過去へとタイムライドを駆る。
西暦1939年、第二次世界大戦前夜のドイツに到着したDD達は、ラヴァル博士らしき人物が、完成したばかりの巨大飛行船「ローレライ号」の処女航海に設計者として乗り込むことを知った。
早速新聞記者になりすまして乗船するDD達。
しかし博士の後を追っているのはDD達だけではなかった。
船内から姿を消すレニ、そして進路を突然変更したローレライ号、謎は深まって行く。
ラヴァル博士の行動は何を意味するのか?
そして博士の後を追う謎の男達の目的は?
DDは時空を超えた壮大な陰謀を暴くことができるか?
(取扱説明書より引用)
特徴
-
システム
-
舞台はドイツから飛び立った飛行船「ローレライ」。3D空間を歩いて情報収集を行い、ストーリーを進めていく。
-
特殊能力
-
主人公の鳴神はトマトやドリンクを摂取する事でパワーを蓄積し、ある程度の力が溜まると"空間の記憶"を読み取ることができる。
-
トマトやドリンクはゲーム内の特定の場所で入手が可能。
-
ポーズメニューには「ヒント」という項目があり、ある条件を満たすことで使用する事ができる。
-
本作は複数のプラットホームで発売されたが、違いはおまけ要素の内容のみ。
評価点
-
参加声優がとにかく豪華
-
主演の森川智之氏を筆頭に、石塚運昇氏や大塚芳忠氏といったこの当時から名の知れた声優が数多く参加している。
-
若手についても林原めぐみ氏や丹下桜氏と言った当時の人気声優を押さえており、中でもメインヒロインの一人を演じたのは、同年に『サクラ大戦』でブレイクする横山智佐氏である。
-
このメンバーは当時としても相当豪華な顔ぶれであり、後述する問題点の数々によりゲームとしての評価はかなり低いものの、声優陣の名演は本作の見どころである。
-
ゲーム序盤できちんとチュートリアルを入れてくれる。
-
後に『アストロノーカ』や『ウィザードリィエクス』などを手掛ける神保直明氏の音楽は高評価。
-
一部の楽曲にフリードリヒ・ジルヒャー作曲の「ローレライ」のアレンジが使われている。
問題点
-
DISC1の内容
-
ある意味で本作の全てを体現した、最大の問題。
+
|
一応、ネタバレ注意
|
-
ゲーム開始後、30分近くムービーを見せられたかと思うとそのままDISC2に突入する。
-
つまりDISC1にはムービーしか入っておらず、ゲーム部分は実質DISC2にしか存在しない。
-
本作はDISC2枚分の少し高い値段設定となっているが、そのあまりな内容に本作の批判点として真っ先に挙げられる事が多い。
-
いびつな中身を抜きにしても、いくらADVだろうと長時間ムービーを見せられるのは大きなマイナス要素である。
-
ちなみにエンディングもDISC1に収録されている。
|
-
薄過ぎるボリューム
-
上記の問題をより一層強めているのがこれ。
-
定価7,000円台のソフトでありながら、本作は2時間半でクリアできてしまう。
-
2周目以降で出る隠し要素やルート分岐は無く、周回する意義があまり無い。
-
取扱説明書のあらすじを見ると壮大な話のように見えるが、実際はさくさく進んですぐ終わってしまう。
-
誤解を招くタイトル
-
タイトルに「探偵」とあるが、本作は推理ADVでは無い。
-
実際はおつかいや聞き込みを行なってゲームを進行させるだけの一本道ゲーで、プレイヤーが介入する余地は殆ど無い。
-
一応、ADVの一形態としては間違っていないのだが、タイトルから推理を楽しむゲームを期待したプレイヤーは肩透かしを食らう羽目になる。
-
また進行に詰まっていると、主人公が次に行うべき行動を喋り始める。
-
このようなアドバイスは『龍が如く』等のプレイヤー自身で行動をある程度選択できる作品等では評価点となる親切設計なのだが、推理物として手に取ったプレイヤーからは「自分で解く楽しみが無い」との批判が多い。
-
まともなゲーム要素は、終盤で行われるQTEしか無い。
-
分岐の無いADVとして見ても、あまり出来が良くない。
-
プレイヤーがやる事は、飛行船を歩き回って情報収集を繰り返すだけ。
-
一部の場所はポインタで詳細を調べられるが、選択可能な箇所は限られており、隠し要素を探す自由度も低い。
-
しかも歩行速度が遅くてダレやすく、ダッシュ機能なども存在しない。
-
ゲーム中盤で入れる船長室に再び入ると、一度見たムービーをもう一度見せられる(約10分ある上にスキップ不可)。
-
ストーリーをおさらいしたい人向けの仕様と思われるが、むしろ情報収集の際に間違えて聞く羽目になるので迷惑極まりない。せめてスキップあるいはムービーを見るかの選択ができれば…。
-
極め付けに、ゲームとしてはほぼ未完成に近い有様。
-
まず「吸血鬼の探偵」という設定は特に活かされていない。
-
ミスマッチな組み合わせに対する理由付けが薄く、なぜ吸血鬼なのか等の掘り下げも無いため、作品のコンセプトからしてふわっとした物になっている。
-
吸血鬼らしさを発揮する機会もゲーム中一度しかなく、血を吸った後の「空間の記憶を見る」という能力も吸血鬼と無関係である。
-
例えるなら、雑誌の読み切り漫画やアニメの第1話のような設定紹介の物語に終始していて、買い切り型の単発作品としては物足りなくなっている。
-
特殊能力について
-
システムの説明だけ見ると「どうやってトマトやドリンクを調達するか」というパズル的な要素を期待してしまうが、そのような楽しみは一切無い。
-
というのも、トマトとドリンクは劇中で無限に入手できる上、使用しなくてもクリアに必要なパワーがイベントで調達できてしまうのである。
-
また、トマトやドリンクは込み入った隠し方をされているわけではなく、ある場所を調べる度に何度でも補給される手抜きのような仕様。
-
しかもこの能力を使うのはゲーム中2回だけ。結果的にこのシステムは完全に死んでおり、実装できなかった謎解き要素を未完成のまま強引にねじ込んだようになっている。
-
なぜかと言うと特殊能力ゲージが不足しているとイベントが発生して女性キャラに血を吸わせてもらうためのイベントが起こり、やや艶っぽいムービーが流れる。つまりちゃんとトマトやドリンクを確保して能力ゲージを確保しないと詰むという構成ではなく、トマトやドリンクは女性の肌に触れるイベントを潰す罠アイテムである。
-
ヒント機能は隠しイベントでしか使用されず、よほどきちんと探索しなければ出番の無いままゲームクリアとなってしまう。
-
主人公が整合性の取れていないリアクションを取る場面がある。
-
その未完成ぶりが露骨に現れているのが、クリア達成度の仕様。
-
セーブ画面ではゲームを何%進めたかが表示されるのだが、最後のイベントに到達すると達成度が43から99に跳ね上がる。
-
些細な事に見えるかもしれないが、遊ぶ側としては「え、もう終わり!?」と拍子抜けする羽目に。
-
この数字を信じるなら、本作は当初の予定の半分しかゲーム内容を実装できなかった事になる。数字をまともな値に直す時間も無いほど切羽詰まっていたのだろうか…。
-
ちなみに別売の設定資料集では未使用の設定が多く確認されており、本来はより多くのボリュームが予定されていた事が示唆されている。
賛否両論点
-
フルCGの質
-
発売時期を考えると、水準が低いわけではない。
-
むしろ「当時としては良く出来ている」と高く評価する意見もある。
-
とはいえ当時のクオリティでは不気味に見えてしまうのもまた事実で、グラフィックを理由に評価を落とすレビューも存在する。
-
最たる例を1つ挙げると、OPにおいてビキニ姿のヒロインが「うみ、うみ~!」と言って腕をシャカシャカ動かしながらやってくるシーンが悪い意味で強烈な絵面となっている。
人によってはトラウマものである。
-
シナリオ
-
ゲーム性が薄いADVとなれば物語に求められるハードルが高くなるが、この点でも購入したプレイヤーの期待に応えられたとは言いがたい。
-
簡単に言うとよくあるB級映画的なノリのシナリオで、それも2時間半で終わるとなれば、定価に対して割高なのは否めない。
-
一方で推理要素が無いことや問題点で挙げた中途半端さに目を瞑れば、全否定されるほど酷い内容では無い。
-
所々ツッコミどころはあるものの、起承転結は整っており極端に破綻した箇所は無い。キャラクターも個性があり、伏線や世界観も練られていてお話としては堅実にまとまっている。
-
むしろ高く評価する声もあり、シナリオが受け入れられればそれなりに楽しめる作品でもある。
-
こうした点から「ゲームじゃなくTVスペシャルなどでやるべきだったのでは」という意見も存在する。
-
言うなれば、素材は悪くなかったのに売り方を間違えてしまった作品とも言える。
総評
90年代半ばのインタラクティブゲームの中でも散々な評価を受けている一作。
中途半端な作品設定、薄過ぎるボリューム、探偵要素皆無なゲーム性により、高い値段に見合わないガッカリゲーとなってしまった。
フォローしておくと、推理アドベンチャーではなく読み物要素の強い一本道ADVとしてならば最低限の体裁が整っており、理不尽な詰み要素などは特に無い。
ゲームというより軽めの短編映画として"観る"のが、正しい味わい方かもしれない。
だからといって中古で安く買ったプレイヤーからも評価が良いわけではなく、少なくとも"ゲームとして"触る分にはあまりおすすめできないソフトである。
余談
-
ゲーム自体の評価ではないが、パッケージ詐欺っぷりも本作の問題点として語り草に挙がる。
-
パッケージではヒロインの霧姫らしき人物がチャイナドレスを着て銃を構えているが、そのようなシーンはゲーム中に一切存在しない。
-
実際の彼女はというと、調査にかこつけて依頼人と2人きりになりたい鳴神の手により、調査の間ずっとタイムマシンに拘束されるというあんまりな扱いである。
-
彼女は要所要所で助けてくれるため、かろうじて主要キャラとしての面目は保っているが、むしろ鳴神と同行しているレニの方が立場上メインヒロインに近い。
-
しかも顔のモデルがゲーム内の物と別人レベルで異なっている。それどころか髪型すら一致しておらず、説明書を読まないと霧姫だと認識できない。
-
面長なゲーム内ポリゴンに比べるとパッケージは美少女チックな造形となっており、こちらのデザインを期待するとガッカリすることになる。
-
ちなみに説明書にはメイン2人をデフォルメしたイラストが所々に挿入されているが、そのタッチは親しみやすいものとなっており、こちらのデザインを評価する声もある。
-
作中ではオゾン層がすっかり破壊された未来が描かれているが、発売当時の数年前にはフロンガスの全面規制が国際的に行われたばかりで、この手の環境問題が記憶に新しかった。
-
当時ほどオゾンホールの話題が無くなった今からすると、プレイヤーによっては懐かしく感じられるかもしれない。
-
同時期には本作以外でも、オゾン層の崩壊が問題視されている未来を描いた作品がいくつか存在した(『メルティランサー』など)。
その後の展開
-
シナリオ原作の園田氏が後年手がけたアニメ『時空探偵ゲンシクン』には、本作の主人公から苗字や設定を引き継いだ「鳴神 京一郎」というキャラクターが登場する。
-
また、同作の黒幕の声は本作で鳴神役を務めた森川氏が担当している。
-
1998年には続編『時空探偵DD2 叛逆のアプサラル』が発売された。原作も同じく岡田氏。
-
インタラクティブムービーの本作と打って変わってイラストとテキストで展開する標準的なADVとなったが、こちらはそれなりに評価されている。
最終更新:2024年10月20日 11:00