イトルデュー

【いとるでゅー】

ジャンル パズルアクションADV
対応機種 Steam*1
Wii U
Nintendo Switch
発売元 【Steam】Ludosity
【WiiU】レイニーフロッグ
【Switch】Leoful
開発元 Ludosity
発売日 【Steam】2013年7月23日
【WiiU】2015年10月14日
【Switch】2021年4月1日
定価 【Steam】1,010円
【WiiU】800円
【Switch】1,000円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B (12歳以上対象)
備考 WiiU版のタイトルは『イトルデューの伝説 失われた島と謎の城
判定 良作
ポイント 小ぶりで良質なゼルダライク謎解きアクション
スピードラン想定済の問題構成のうまさが光る
シーケンスブレイク*2要素もアリ

概要

スウェーデン発の2D見下ろし型パズルアクション。
不思議な島に漂着した冒険家の女性・イトルデュー(Ittle Dew)を操作し、各所に仕掛けられたパズルに挑みつつ島外へ脱出するのが目的となる。
操作性やゲームコンセプト、視覚的な面で『ゼルダの伝説』シリーズに似ており、壮大な物語や主人公の作り込まれたバックボーンなどは無いものの、謎解きのために各ボタンに割り振られたアイテムを活用したり、ひらめきを存分に発揮する必要がある。

登場人物

  • イトルデュー
    • 探検とお宝をこよなく愛する漂流中の女性冒険家。知恵より先に暴力で物事を解決するタイプであり、口調もかなり粗雑。
    • 大きな古城を擁する見知らぬ島へと漂着した際にイカダが大破。現地でイカダを調達するにあたり、城に眠る「アーティファクト」*3を探す羽目となる。
  • ティプシー
    • イトルデューの相棒である空飛ぶキツネ*4で、性別はメス。
    • なぜかあらゆる謎解きを初見で解き明かすことができるが、自身でパズルを実行することはなく、対応ボタンを押下した際にイトルデューへヒントを与えることしかしない。
  • アイテン
    • 島で唯一のショップを経営する男性。船型の帽子に眼帯、フック状の義手と、あからさまに海賊然とした見た目が特徴。イカダを作製するために「アーティファクト」が必要と言い、イトルデューを城へとけしかける。
    • ショップではイトルデューが城内で見つけたゴールドと引き換えに新たなアイテムを渡す……と思いきや、店内に実物は用意しておらず、代わりにイトルデューをそのアイテムが安置されているダンジョンへ送り出すことによって提供する。

謎解きに用いられるアイテムや仕掛け

  • 木の棒
    • イトルデューが持つ初期装備。ただの棒きれであるが城内の敵を倒すには充分な威力を持つ。
    • 火のくべられた場所で振る事によって一定時間たいまつとなり、下記の「炎の剣」と同等の効果を代理的に持たせることができる。
  • 炎の剣
    • アイテンのショップで、200ゴールドと引き換えに入手権利が得られる武器。
    • 常に炎をまとっており、木の棒にくらべて攻撃力が高くなるほか、火を用いる仕掛けで役立てることができる。
  • ポータルの杖
    • 300ゴールドと引き換えに入手権利が得られる道具で、マップ内のオブジェクトをワープさせる効果を持つ。
    • ポータルストーンの魔法とセットで入手でき、使い方は、①ポータルストーンを自身のいるマスに設置→②ポータルの杖から魔法を射出→③魔法が当たった対象物がポータルストーンの位置にワープする、というもの。
  • 氷の杖
    • 400ゴールドで入手権利が得られる、氷弾を発射する道具。
    • 氷弾の当たったオブジェクトは一時的、または永続的に凍った状態となり、イトルデューが押した際に壁と衝突するまで滑るようになる。
    • 敵を凍らせて足止めすることも可能。
  • ゲート
    • 顔面のついた4本の柱で構成される足止め用オブジェクト。
    • ゲートと呼ばれるが単に障害物として存在し、画面中にある何らかの謎解きを完了することで地面に埋まり、通れるようになる。
  • クリスタル
    • こちらも顔面つきのクリスタル。普段は居眠りしているが、ダメージを与えられると一定時間だけ目を覚ます。エリア内の全クリスタルが同時に目覚めている状態にするとクリア、といった謎解きで用いられる。
  • 踏み石
    • 床に設置された踏むとへこむパネル。謎解きでは主に、エリア内の全踏み石が押下されるとゲートが開くといった仕掛けで用いられる。
    • 複数の踏み石がある場合は同時に踏まれている必要があり、下記のストーンなどが活躍することとなる。
  • ストーン
    • 城内や各地ダンジョンに設置されている、押すことのできる石。
    • 氷の杖で凍らせることが可能であり、この状態で押すと壁に衝突するまで滑り続けるようになるほか、たいまつまたは炎の剣の攻撃で破壊可能となる。
  • 爆弾
    • こちらも各地に存在する仕掛けであり、たいまつまたは炎の剣で点火すると一定時間後に周囲1マス内に攻撃判定を与える。爆弾でしか壊せない石や壁に用いることが多い。
    • これもストーン同様、氷の杖によって凍る性質がある。更には点火途中で凍らせることによって爆破カウントを一時停止させる(その間に滑らせて遠隔地に送る)芸当も可能。

評価点

  • 骨のある謎解きとスマートな問題意図の提示の両立
    • 本作はマップ中に仕掛けられた謎の意図を読み取り、仕掛けを作動させることで次のマップに進める、というのが主な流れであるが、簡単なものから一筋縄ではいかないもの含め様々なパズルが用意されている。
    • 主にはストーンをそれぞれ踏み石のところへ運ぶ、いわゆる『倉庫番』的パズルが多いが、ゲームが進むに連れ、そこに「壊せる壁と爆弾」や「衝突時にストーンを動かす敵」の存在、および先述のポータルの杖を用いたワープや氷のストーンなどが関与していき、適度に悩む問題構成となっている。
      • 他にも「全てのクリスタルを起こす」「全ての敵を倒す」「エリア内の火を全て消す」など変化球もあり、最後まで新しいパズルに出会う楽しみを維持することができる。
    • またこの時、道をふさぐゲートや扉を殴ると、それらが関与するオブジェクトに向けて光の筋が描画されるようになっている。
      • 例えば「エリア内の特定の踏み石を踏む」がクリア条件であればその踏み石に向けて光が灯るし、「全ての敵を倒す」であれば敵に光が灯るといった具合である。
      • これにより無駄な演出を挿むことなく問題意図がプレイヤーに伝わるようになっているし、「解法も自分で当てたい!」という人はゲートや扉を叩かないだけで簡単に縛りプレイを実現することができる。
    • 更にボス戦もパズル風味となっており、いずれも「直接殴ってダメージを与える」のではなく「手持ちのアイテムとボスの攻撃手段を組み合わせてダメージソースにする」といった頭脳プレイを求められる。
  • ティプシーのヒントのメタ的な親切設計
    • ワンボタンでティプシーが所在エリアのパズルに関するヒントを述べるが、教えてくれるのは解法ではなく主に「何のアイテムを持っていればクリアできるか」となっている。
    • これは一見すると「それは解ってるんだ、もっと具体的に教えてくれよ!」となりかねないが、見方を変えると「まだ解けないパズルへの時間の浪費」を抑える効果がある。
      • パズル要素のあるアドベンチャー、アクションRPGではしばしば「後でアイテムを入手してから解く謎解き」があり、不足に気付かず時間を無駄にすることがあるが*5、このティプシーのヒントによって興を削ぐことなく「今は挑戦すべきでない」ことだけが伝わるようになっている。
    • なお一方で、ボス戦時のヒントについては普通に倒し方を説明してしまっているのだが、そもそもボス戦に到達した時点で必須アイテムが不足していることはなく、アクションも求められる場面なので大きな問題ではないと思われる。
  • 難易度曲線のゆるやかさ
    • ゲームが進むにつれ前述の通り「炎の剣」「ポータルの杖」「氷の杖」と手持ちのアイテムが賑やかになっていき、それらを組み合わせて使用することで複雑な謎解きにも挑めるようになっているが、入手時点ではそれぞれ単品を用いた解法しか求められないように問題がデザインされている。
      • というのも、アイテンのショップで支払いをした際、「そのアイテムがあるダンジョンへ」直接イトルデューが打ち上げられる*6のだが、この際に手持ちのアイテムは手放され、ショップ前のゴミ箱に突っ込まれる。
    • そのため、いずれのアイテムもまずは「木の棒だけで解ける謎解き」から始まり、入手後は「そのアイテムしか使わない」謎解きで要領を掴み、アイテンのショップに帰還して初めて「既存のアイテムと組み合わせた謎解き」に挑む、といった流れに沿うこととなる。
    • 前述の通り、ゲームの進行に伴い謎解きは複雑化するのだが、この構成によって自然に各アイテムの特性を習得できるようになっている。
  • 手書き風でポップかつ視認性の高いグラフィック
    • 本作はキャラクターが大きめに描かれているうえ、輪郭線も太めなため、画面上の構成物が視認しやすい。
    • その分プレイのうえで全く関与しないただの飾り(地面に落ちている植物や骨など)も多いが、プレイヤーが作用できるキャラやアイテムについては輪郭線が小刻みに震えるようにアニメーションしているため、直感的に判別しやすい。
    • 併せて敵キャラも「とぼけた顔の丸みを帯びた鳥」「常に怒っているキツネの着ぐるみの女の子*7」「顔の書かれたシーツのオバケ」といった、少し癖がありつつもガーリーポップな風合いであり、ある程度親しみやすいといえる。
  • チャレンジ要素の充実
    • 初回プレイ、かつ各アイテムを入手しコレクション要素も押さえたとて4時間もかからないボリュームではあるが、実はそれに加えて「炎の剣」「ポータルの杖」「氷の杖」のうち、任意の2点さえ入手すればクリアできるようになっている。
    • しかし初見プレイでは「お金を集めて都度アイテムを買う」という流れに気を取られるうえ、特殊な解法に気付くのも難しく、更にその事実は一通りアイテムを獲得した後「最初のダンジョンに残された謎を解く」ことで判明するため、自然な流れで2周目&シーケンスブレイクへの誘導が提示されている。
    • また、タイムアタック要素としてタイムカウンター表示やベストタイムの記録機能*8があるほか、本編クリアには無関係な高難度ダンジョンも用意されているため、一度クリアした後も複数の手段でやりこみを楽しむことができる。

賛否両論点

  • 会話のライトさ
    • 輸入インディゲーとしてはローカライズの質はそこそこであるが、かなり砕けた口語体となっており、更にネットスラングまで使われるため、ゲーム全体を通して軽薄な印象を受けやすい。
    • シリアスな話でないため雰囲気にあっていないわけではないが、イトルデューの発声一発目からして「うおー!冒険のにおいがプンプンするぜー!!!」*9であるし、フランス語の口上を述べるボスに対して「日本語でおk」と返すシーンもあるため、どちらかといえばライトというより「スベっている」ともいえる。*10 *11
    • また終盤に連れてメタ会話も多くなっていき、ラスボスに至っては自身がラスボスであることを自覚した台詞回しをするうえ、そのバトルも撃破したからではなく「ラスボスの攻撃手段がネタ切れした」ことによって終了する。
      • 一応、「作中人物がゲームの登場人物であることを自覚している」といった意味のメタではなく、上記のような会話もストーリー上の理由あってのことではあるが、やや制作サイドの悪ノリが見えなくもない。
    • とはいえこうした雰囲気を「ネタ的に昇華している」と見る向きには好評。
  • 好みが分かれるキャラクターの視覚的印象
    • 評価点にも記したグラフィック面だが、あくまで視認性が高くポップではあるものの、いわゆる「美少女」「売れ線」とは遠い画風である。
    • ゲーム界の女性冒険家といえば家庭用ゲームの画質向上に伴い容姿に磨きのかかった先輩がいるが、イトルデューはというとデフォルメの効いた丸顔丸鼻で顔芸もこなし、アイテンのショップから射出される時は目も口も大股もがっつりと開いて空高く打ち上げられる有様である。
    • そういう画風と言う話でしかないし、これはこれで愛嬌があるのだが、人によっては「女性主人公」という属性に求める像とかけ離れている可能性はある。
    • なお、敵キャラについても「マッチョなサボテン」「困った顔の巨大石像*12」など、可愛いかキモいか絶妙な線のものもいる。

問題点

  • 画面切り替えで初期化されるゲート
    • 部屋同士を行き来した際、一度パズルを解いて開いた扉は開きっぱなしとなるが、地面に埋めたゲートについては復活する。
    • そのため、しばしば後戻りができなくなったり、他の部屋から遠回りで戻る必要が生じる。これによる詰みポイントは無いが、復活する必要性も特に見られず不親切である。
  • 「ジジイ」の扱いの酷さ
    • ヒント用NPCとしてダンジョン各所に配置されているキャラクターに「ジジイ」がいる。長い白髭を伸ばしたまさに見たまま爺なのだが、攻撃判定があったり、すぐそばに「この人の言うことを真面目に聞かないように」と立札を立てられたりなど、妙に扱いが酷い。
    • 挙句の果てには彼を炎の剣で燃やすのが正解という謎解きもあり、悪趣味さを感じさせる。
    • 悲しいことに、実際、彼の発言が有用なヒントになるケースは非常に少ない。

総評

安価でしっかり遊べる良質なパズルアクション。
よく練られたパズルとその提示手法の妙から、謎解き好きは勿論、難しすぎるパズルは苦手という層にも試してほしい逸品である。
一方で壮大な物語や人物の内面の機微……といったドラマティックな展開はほぼ提供できないが、その分プレイの気軽さや、或いは見下ろし型2Dアクションの入門向けという点ではおすすめといえる。

余談

  • 続編である『Ittle Dew2』が2016年11月15日にSteamで配信開始。その後、2019年5月24日にアップデート版となる『Ittle Dew2+』が『2』と差し替わる形で配信開始*13
  • Switchでは1作目の配信から約2ヶ月後の2021年5月28日に『イトルデュー 2+』の配信が開始された。
最終更新:2022年09月05日 12:25

*1 Windows/MacOS/Linuxのマルチプラットフォームでリリースされている

*2 ゲーム仕様を熟知したうえで得られるテクニックや発想を駆使し、想定解と異なる進行順でクリアすることを示すゲーマー用語

*3 具体的にどのような物体なのかは不明。いわゆるマクガフィンである

*4 本編で言及はされないが、コレクション要素であるキャラクターカード、及び続編「~2」で言及されている

*5 もちろん、それもまた醍醐味というプレイスタイルを否定するものではない

*6 そのままの意味で。ショップの床が突き上がり、イトルデューが空高く射出され、ダンジョンへと墜落する

*7 ちなみに怒っている原因は、城内で得たゴールドが彼女たちのお昼ごはん代だったためである

*8 アイテム全入手クリアと特定2品入手クリアとできちんとカウントが分かれている

*9 『ジョジョの奇妙な冒険』第1部に似たセリフがあり、それを元にした可能性がある。なお原語では「Well, would you look at that. An entire island just reeking of adventure!(意味:ねえ見て、島じゅうから冒険のニオイがする!)」なので訳としては合っている

*10 Steamでの日本語対応が2014年であったため、Switchで配信される2021年にはこうしたスラングの賞味期限や価値観が違ってしまった面もある

*11 ちなみに「日本語でおk」は原語では「Okay.」のみ。仰々しい挨拶に対して軽く受け流すというタイプの笑いとなっている

*12 顔だけであるため巨大人面石というべきか。更に翼が生えているのに高所恐怖症(なので困っている)という設定である

*13 『~2』を所有しているユーザーは無償で『~2+』にアップデートされた