イトルデュー 2+
【いとるでゅー つーぷらす】
ジャンル
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パズルアクションADV
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対応機種
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Windows/Mac/Linux(Steam) Nintendo Switch
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発売元
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【Steam】Ludosity 【Switch】Leoful
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開発元
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Leoful
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発売日
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【Steam】2016年11月15日 【Switch】2021年5月28日
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定価
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【Steam】1,520円 【Switch】2,500円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC 7+
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備考
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Switch版のみ日本語に対応
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判定
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良作
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ポイント
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前作から大幅ボリュームアップ 質の高いパズルと軽妙でポップな世界観は健在 一方でガチアクションを求められる場面も増加
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概要
『イトルデュー』の続編となるゼルダライクなパズルアクション。
元々Steamで『Ittle Dew2』として販売されていたが、2019年5月24日に『~2+』としてアップデート版に差し替えされ、かつ日本語対応のうえSwitchに移植されたのが本作となる。
前作で大海原への脱出を果たしたものの、漂流生活の末、また別の島へと流れついたイトルとティプシー。
そこはまたしてもパズルだらけの不思議な島。例によって大破したイカダの代わりを探しつつ、財宝と謎解きを求めて8つのエリアにそれぞれあるボスダンジョンを荒らし回ることが目的となる。
大きな特徴として、8つのエリアが全て地続きであり、ゲーム開始直後からいっさいの制限なく行き来可能となっている点がある。
そのため、おすすめの攻略順こそあれど実際の着手順はユーザの任意であり、それによって主要アイテムの入手順や解法が大きく変わるようになっている。
登場人物
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イトルデュー
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あらゆる謎を力任せに解決する傍若無人な女性冒険家。漂流生活ですっかり髪も伸び、今作ではポニーテールとなった。
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ティプシー
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イトルの相棒で翼の生えたキツネ。どんな謎解きでも初見で解き明かすが相変わらず自身で実行はせず、更にヒントの内容もほぼ役立たずになった。
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パッセル
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頭に本を乗せている男。上陸したイトルに冒険者の野蛮な雰囲気を感じ取り、探索をやめるよう怒鳴りつける。
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公式サイトに記載されたファミリーネームで解る通り、前作アイテンの弟。
謎解きに用いられるアイテムや仕掛け
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木の棒
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前作に引き続き初期武器として登場。
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一時的に火をつけることで下記炎の剣と同等の効果となるのも同様だが、本作では敵が固くなったことからダメージソースとしてはあまり使い物にならない。
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炎の剣
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こちらも前作から続投。近接攻撃としての使い方のほか、氷のブロックを破壊することができる。
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冒険の途中で「炎の鎚矛」へとパワーアップさせることで、一撃目に炎を直線方向へと飛ばせるようになる。
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ダイナマイト
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設置すると数秒の間を置いて爆発する。
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当然パズルや障害物の爆破で活躍するが、設置武器としても使えるため、特に後半はバトルでも多用することになる。
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力の杖
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直線方向に弾を飛ばせる杖。この弾によって敵の攻撃を跳ね返せるほか、離れた位置のブロックを押すことができる。
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遠隔地から防御しつつ攻撃できるため通常の攻撃手段としても優秀であり、連続発射も少々の間隔を要するが可能。
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力の杖の弾に更に弾をぶつけることで威力を上げることが可能。イトルやオブジェクトがこの強化弾に当たると穴を飛び越えて2マス先まで吹っ飛ぶ。
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氷の輪
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物体を凍らせられるほか、イトルの前方が空きスペースであればそこに氷ブロックを作成できる。
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この氷ブロックは炎の剣で(斜め方向に)半分にカットできる。カットされた氷ブロックは斜め方向に押せるようになるほか、力の杖から発射された弾を90度方向に反射させることができる。ただし、作成できる氷ブロックは一度にひとつまで。
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なお「輪」という名称について、指輪状のグラフィックであるため、ローカライズするならそのまま「リング」の方がニュアンスは伝わりやすかったと思われる。
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ピッキングツール
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ダンジョン内にある鍵のかかった扉を開けることができる消費アイテム。これによって数に限りはあるが、鍵を入手するためのパズルをスキップすることができる。
評価点
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3D化によるグラフィック面の正統進化
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前作は完全な2D見下ろし型マップだったが、今作では全キャラクターチップが3D化。
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イトルはローリングできるようになり、敵も回転攻撃や大振りのアクションを行うなど、より派手な立ち回りを見せるようになった。
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ごく一部のマップではカメラがイトルに対してやや平行に撮るような構図もあり、表現の幅が広がっている。
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全体的なボリュームアップ
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前作では基本的に「城」と3つのダンジョン=計4つのロケーションで構成されていたが、今作の島はコンセプトの大きく異なる8つのエリアで区切られており、全体的なマップ量はかなり増している。
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各エリアはキャンディが転がっている海岸や、星型の床がちりばめられた夜のマップ、美術館を擁する庭園……と意匠が凝らされており、視覚的にも楽しい。
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それぞれエリアに複数の隠しダンジョンも存在しており、クリアまでのプレイ時間も前作の2~3倍と大幅なボリュームアップとなった。
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その分パズルの物量も増えているが、質は前作同様、見てすぐわかるものからアイテムの使い方を熟知したうえで相当に悩まないと解けないものまであり飽きさせない。
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アイテムによってスキップ可能になったパズル
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ダンジョンの構造はざっくり言えば「謎解きをすることで鍵を入手し、扉を開けて奥へ進んでいく」ものとなるが、前述の通り、ピッキングツールが鍵代わりになるため幾つかのパズルをスキップすることができる。
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本作は性質上、たったひとつのパズルが解けないせいでプレイが止まるということが起こり得る。一見するとゲームの根幹を揺るがすようなアイテムに見えるが、そうしたパズルによるモチベーションの低下やプレイからの離脱を軽減する効果があるといえる。
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スキップしたところでパズル自体は存在したまま(あくまで改めて鍵を得る必要がなくなるだけ)なので、後から再挑戦することは容易。
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あえて難を言えばピッキングツール自体がパズルの報酬になっていることだが、そこはご愛嬌というものだろう。実際、ピッキングツールを得られるパズルは難しくないものや、アクション重視のものが多いためあまり問題にならない。
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場面に合わせて雰囲気の変わる楽曲
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本作は楽曲数も大幅増加しており、50曲をゆうに超える(前作の3倍以上)BGMが用意されている。
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いずれもエリアの雰囲気によく合ったものだが、更に「ダンジョンに入ると同じ曲のアレンジバージョンへとシームレスに切り替わる」仕掛けが施されている。
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屋外でエレキギター主体の曲が流れている際に洞穴に入ると即時同メロディがマレット楽器(木琴系)に差しかわるなど、雰囲気の変化を印象づける優れた演出となっている。
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相変わらず豊富な寄り道要素
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前作でもクリアするだけなら無関係な高難度ダンジョンはあったが、本作ではコレクションアイテム用ダンジョンが5つ、トゥルーエンド用ダンジョンが4つ用意されている。
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既に記載した通りメインのボスダンジョンは8つであるため、もはやラスボスは通過点というレベルとなっている。
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これらはゲーム序盤から存在が示唆されているが、加えて更に「存在に気付くことすら難しい」真の隠しダンジョンまで存在する。
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本作のSwitch版は日本語対応済とはいえ割高だが、これら要素も含めて言えば十分元が取れるだろう。
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「可愛い」から「キモい」までひと癖あるキャラクター群
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こちらも前作から引き続き活かされている点。鳥と魚の合いの子のような奇妙な生き物から、マッチョなサボテン、少々性格にクセのある人間型エネミーと、独特なセンスの敵キャラクターが島内に生息している。
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特に最序盤で出会う「びびり屋ジェニー」は体に枕をくくりつけて鎧がわりにした女性エネミーで、常に怯えている様子が可愛らしい魅力となっている。
賛否両論点
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アクションを求められるシーンの大幅増加
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本作は3D化によって敵の立ち回りが派手になった影響か、前作と比べても、またアクションゲーム全般から見ても激しいバトルを求められる場面が多い。
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前作では「部屋内の全エネミーを倒す」が謎解きの条件となっている部屋はごく一部だったが、今作では敵がいる部屋は大体全滅が条件という傾向が強く、自然とゲームプレイの中でバトルが占める比率が高くなっている。
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また、ザコ、ボス共に敵AIや倒しにくさも前作よりパワーアップしている。
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ザコ敵は序盤から「回転しながら高速で近づいてくる」「全方位にトゲを飛ばす」といった攻撃手段を取ってくるため、慣れないうちは回避が厳しい。
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ボスは攻撃間の猶予がかなり短く、安全圏に移動してボスに向き直して攻撃して……とやっているととても間に合わない。アクションが苦手な場合、被弾覚悟で突っ込んで武器を振り回すか、先に記載した「ダイナマイト」を設置してうまく爆破範囲に入ってくることを祈る戦法になりがち。
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特にラストダンジョンに現れるザコ敵「ニンジン魔導士」は、「全方位に大量の炎を発射」「出現直後に自身を中心に十字方向へ爆撃」「前方扇状に高速弾乱射」「移動速度低下デバフ付与攻撃」……と厄介な攻撃手段を複数持っているうえ異常にHPが高いため、苦戦は必至。地形ダメージ床のあるマップで2体同時出現してきた際は、最早ダイナマイトを設置し続けながら逃げ回ってしのぐほかない。
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これはこれでかなりのやり応えポイントだし、前作が逆にバトル要素が薄めだったため改善点ではあるのだが、謎解きを求めて購入した新規プレイヤーや、そうした知的パズル面を前作の魅力と感じていた経験者は「そこまでアクションを求めるの!?」と感じるかもしれない。
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一応オプションで被ダメージを減少させる設定(=イージー難度)はあるが、最大HPの増加すらパズルの報酬である(パズルを解かないとHPが増えない)本作では苦戦する場面は多いだろう。
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シビアなローリング判定
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他のアクションゲーム同様ローリング中はダメージ回避となるが、この有効時間がほぼ最低限ちょうどであり、ダメージを避けるのに慣れを要する仕様となっている。
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少なくとも『DARK SOULS』よりは有効時間は短く、その時間を延ばすアイテムはあるものの手に入るのは最終盤となる。
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更にニューゲームで初めてローリングを多用する場面が「細い道に重なる軌道で回転運動している鉄球をかわす」というトリッキーなシーンになりがちなため、習得としては少々厳しくなりやすい。
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しかしアクション慣れしてみると「これ以上長いと甘すぎる」と思えるような絶妙な時間バランスであり、特にトゥルーボスを相手にする場合は心地よい緊張感を生む要素となっている。
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レベルデザイン面の大きな変更
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前作と本作とでは、レベルデザインのありかたが大きく異なっている。
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前作は3つある主要アイテムのうち「全て取ってもいい」し、「いずれか2つだけ取ってもクリアできる」作りとなっていた。これによりシーケンスブレイクによる早解きの余地があったが、本作は8つのメインエリアは必ず全て攻略する必要があり、あくまで8番目(ラストダンジョン)以外の攻略順が任意であるという形式になった。
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とはいえこの順番の前後によって大いにプレイ感は変わるし、主要アイテムの取得順によっては、本来複雑な解法を要するパズルを無理やりアイテムの力で突破できてしまうというケースもある。
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特に氷のブロックを自前で作れる「氷の輪」は倉庫番系のパズルの難易度を大きく下げるため、攻略順序の妙をよく味わうことができる。
問題点
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ほとんどあてにならないティプシーのヒント
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ワンボタンでティプシーのヒントメッセージをいつでも表示できるが、謎解き面で役に立つことはほぼ皆無である。
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例えばダンジョン内では、どの部屋にいるかに関わらず「ダンジョン全体を通した目的」しか言わない。そのためまだ発見していない大仕掛けの話をしていたり、所持アイテムのイレギュラーな使用方法には全く関与していなかったりと、混乱を誘いやすい。
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他にも「柱を特定の順番で叩く」といった謎解き部屋で「チェストを棒で叩いて開けるだけ」と、謎を解いた後の話をしている場面もあり、残念ながら意義のある要素になっているとは言い難い。
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一方ボスバトルでは多少攻略法について触れてくれるのだが、こちらはローカライズの際にうまく訳せなかったものか、「自分の弾を反射させて当てろ」→「イトルの攻撃ではなく敵自身の弾をマップギミックに反射させる」の意、といった表現のいまいちなケースがある。
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一応フォローするなら、ボス撃破済ダンジョンでは「開けていない宝箱」があるかを判定してくれるので、そこは有用ではある。
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イトルを45度方向に向かせることが難しい
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「氷の輪」での説明でも触れた通り、本作のパズルではブロックを斜め方向に押す解法が存在するほか、力の杖も斜めへ発射する場面があるのだが、イトルは入力に応じて360度自在に動くため、45度に調整するのが難しくなっている。
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そのため解法の見当はついていても位置取りの微調整に戸惑うことがあり、若干興ざめ感がある。
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異様に高い敵のHP
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全体的に敵のHPは高めに設定されており、最終盤になっても序盤エリアの敵を倒すのに3回攻撃が必要、といったケースがある。
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そもそもイトルの攻撃力を上げる手段がかなり乏しく、また上がってもほとんど実感に繋がるレベルではないため、「不必要に硬い」という印象が残りがち。
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特にラストダンジョンやトゥルー用ダンジョンなどに至っては雑魚敵相手に10回以上攻撃が必要ということもザラである。
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オプションでの難度変更はあくまで被ダメの軽減のみで与ダメに効果がないのもマイナス。
総評
前作と比較しかなりアクションの重要性が高くなったものの、質の高い骨太なパズルとポップな世界観は健在。
また、全体的なプレイボリュームも大幅パワーアップしており、豊富な隠し要素を持つ上質なパズルアクションといえる。
ストーリーのつながりは多少あるものの、ゲームデザインの変化から新規プレイヤーも無理なくプレイできるため、こうしたジャンルについて腕に覚えのある方は挑戦してみてはいかがだろうか。
最終更新:2022年03月12日 11:23