Rise of Industry

【らいず おぶ いんだすとりぃ】

ジャンル ストラテジー
対応機種 Windows 7/8/10(いずれも64bit版のみ)
発売元 Kasedo Games
開発元 Dapper Penguin Studios
発売日 2019年5月2日
定価 3,448 円(Steam, Epic Games Store)
$29.99(GOG)*1
プレイ人数 1人
メディア ダウンロード専売
備考 Unityゲームエンジン使用
ハードウェア要件 intel製グラフィックカードはメーカー不推奨
判定 なし
ポイント 列車が活躍するのは中盤以降のみ

概要

  • 経営シミュレーションゲームである。
    • Farmで農作物を育て、Livestock Farmで家畜を育て、鉱山や油田、井戸などから資源を集めて、そのまま売ったり、工場でより高度な製品に加工して販売し、事業を広げてゆく。
    • グラフィックは『シムシティシリーズ』に酷似しているが、ゲーム性はかなり異なる。また、『Train Valley 2』と列車などの造形が似ているが、そちらともゲーム性は異なる。
  • 本作は2017年にitch.io上でプレアルファ版が発売され、2017年にitch.ioにて一番売れたゲームとなった。
    • その後、2018年2月9日にSteamにてアーリーアクセス状態で販売が開始され、2019年5月2日に正式リリースとなった。
    • Dapper Penguin Studiosはスペインのソフトハウスで本作が初の商業作品となる。

ゲームの目的

Farmで農作物を育て、Livestock Farmで家畜を育て、鉱山や油田、井戸などから資源を集めて、そのまま売ったり、工場でより高度な製品に加工して販売する。
自社工場で製作した"自家用車のプロトタイプ"を街のショールームで展示することで、一応ゲームクリアとなる。
ライバル会社(AI)に株式を買い占められるとゲームオーバーとなる。
流動資金がショートするとゲームオーバーとなるが、借金額が少なければ、ゲームオーバー表示の際に「融資を受ける」という選択肢が提示され、融資を受けることを選択するとゲームの続行が可能となっている。

システム

  • モード
    • チュートリアル
      • 最低限のルールの説明がある。
    • キャリアモード
      • 本作の通常のプレイモード。
      • マップ生成前に難易度を細かく決めることが出来る。例えば初期資金の増額や、運搬コストの軽減/増加、設備維持費の軽減/増加、イベントの強度(強いほど影響が強まり、期間が長くなるイベントも有る)など、細く設定が可能。
    • シナリオモード
      • シナリオを読み込んでプレイする。デフォルトで2種類付属するが、シナリオ作成モードも付属するため、他のプレイヤー製のシナリオも公開されている。
    • サンドボックスモード
      • 資金が無尽蔵で、研究も全てアンロックされた状態のぬるいモード。
  • MapはいくつかのRegion(地域)に分割されている。
    • Regionに存在する資源に対応して、石炭と鉱物があれば"Industrial", 石油や天然ガスがあれば"Heavy Industrial", 漁場があれば"Fishermen", 森林しかなければ"Rural"の4種類の特色のうち一つが適用される。
    • Regionに産業施設を建てるには許可が必要(後述)。ただし、倉庫とそれに付随する駅や線路、および道はどこでも建設が可能である。ただし、輸送コストが予想外に重いので、ほとんどの製品は地産地消でないと儲けが出ない。
    • Regionには1つずつ街がある。
      • 街にはレベルがあり、小さい方から、Village, Town, City, Metropolisとなっている。
        プレイヤーの商業活動によって街の人口が増えるとレベルアップの機会が生じる。この時、Settlement Office(役場)からクエストが発生し、クエストで要求された物品を納入するか、現金(要求された物品よりも高額)を支払うことで街がレベルアップする。 このシステムは、ゲームとしてはそこまで違和感がないが、現実社会に当てはめようとするとかなりありえない設定である気がする。
      • 街にはSettlement Office(役場)がある。たまにオークションが行われる。
        オークションの内容は「Region内に生産施設を(無制限に)建てる許可」「役場が要求する物品を納入する契約」「一定期間トラックの制限速度を上げる」「一定期間、トラックの運行費用を軽減*2」などがある。
      • 街にはShopがあり、Shopに製品を置かせてもらい、その商品が売れて初めて売上が出る道の駅の産地直売所形式のシステムである。
        Villageには農産物を扱うFarmers Marketと工業原料を扱うHardware Storeがかならず有る。
        VillageからTownへ昇格する際にShopが新しく建つが、クエストを遂行して昇格させた場合は新しいShopの種類を提示された3-4種類の中から選べる。4軒目のShopも同様となる。
      • 街の建物や、公共が敷いた道路は破壊不可である。
        街の拡大に伴い、プレイヤーやAIが敷いた道路が公共化される事がある。砂利道を敷いていた場合、舗道にアップグレードされる。
        街が拡大することを考慮していないとlumberyardが街に飲み込まれて伐採できる木が減る場面も生じる。
  • 原料は自分で集めるかStateから買うことになる。ライバルAIからは購入できない。
    • Mapの端にStateとの交易ポイントがある。Stateへはほとんどの品目が販売可能であるが、買取価格が渋く、おそらく儲けは出ないであろう。購入可能な品目は、石油や石炭などの資源のみとなっている。
      • 需給の関係によって物価が変動するため、Stateから購入し続けるとその商品の価格がどんどん上昇することになる。同じ商品を売り続けると、買取価格がどんどん安くなる。
  • プレイヤー所有の施設は稼働のon/offの切り替えが可能である。
    • 稼働していた場合は従業員に所定の給料を払うこととなる。給料は日割り計算され、月末締めで翌月1日に支払われる。
    • 稼働停止している間は給料は掛からないものの、それでも維持費が掛かる。
+ 建設可能な主な施設

収集施設

取水場
水辺にのみ建設可能。イベント"Drought(干魃)"によりイベント期間中は生産能力が-75%となる場合がある。
井戸
水辺でなくとも建設可能だが、生産コストが取水場に比べて水1単位当り$500ほど割高になる。こちらもイベント"Drought(干魃)"の影響を受ける。
油田、海上油田、ガス井、炭鉱、鉱山
資源を採取する。稼働すると汚染が発生する。
lumberyard
周囲の木を伐採する。植樹(1本当り$250)が可能であるが、伐採可能になるまでは数年掛かる。成木は周囲に苗木を生むことがあり、木々はゆっくりとしたライフゲームのように勝手に増殖する。このため、最初にlumberyardの伐採可能範囲内全てに植樹しておけば、後は伐採しても自然回復力のほうが強く、再度植樹する必要もなく放置が可能である。
イベント"Wildfire(山火事)"によってイベント期間中に生産能力が-50%となることがある。
Fisherman's Pier
沖合にある漁場から魚を集める。ゲーム開始時のオプションで"資源枯渇あり"を選ぶと数年で漁場が消滅する。"資源枯渇あり"で魚の缶詰などの上位商品の生産ラインを組むのは止めたほうが良い。

Farm

農園
水を消費して作物を生産する。イベント"Cold Snap(寒波)"によってイベント期間中は生産能力が-50%となる場合がある。
Livestock Farm
水と小麦を消費して、牛、羊、鶏のいずれか1種を育てることが出来る。
牛は、牛乳、牛肉、皮革を生産する。
羊は羊肉と羊毛を生産する。
鶏は卵と鶏肉を生産する。
このようにいずれも複数の生産物を産出するが、そのうちどれか一つでも在庫が上限に達するとその施設は生産が止まる。このため、牛乳だけが欲しい、羊毛だけが欲しいといった考えで手を出すと他の生産物が余って生産停止となるハメに陥る。
また、畜産物は買取価格が渋く、例えばeggは小麦1単位と水1単位でegg2単位を生産するが、egg1単位の買取価格は小麦1単位の買取価格の半値以下であり、採算は取れない。他の畜産品も隣町に列車で運べば運送料によって赤字確定である。
同一の街で卵と鶏肉の両方の販売が可能という場合でなければ、手を出すべきではない。

流通

Warehouses(倉庫)
物流の拠点である。駅、港、飛行船発着場を併設できる。ただし、いずれも研究によるアンロックが必要。
ターミナル駅
倉庫1つに1つだけ併設できる。駅は文字通り常に終端駅であり、通過はできない。
灌漑塔
収集範囲内の取水場や井戸からトラックを使わず直接水を収集し、範囲内のFarmへ水をトラックを使わず直接配分する。
トラックを使わないため、運賃を大幅カット出来る。水を配分できるのはFarm, Livestock Farmだけで、工場には水を配らない。ただし、灌漑塔から水をトラックで運ぶ経路を設定できるため、灌漑塔を使って水の運搬距離を短くすることが可能。
  • 研究
    • 資金を投入して研究を行う。
    • 研究項目は新製品の開発の他、灌漑塔や駅、橋やトンネル等の建設のアンロックや、倉庫の容量増加など効率向上の項目も有る。
  • 汚染
    • 油田や鉱山、工場は稼働することで汚染を発生させる。街に汚染が広がった場合、人口が減少する。
      • 『Factorio』では木々が汚染を吸ってくれたが、本作では木々はただただ枯れるだけである。
    • 汚染を出す建物の近くに空気洗浄機を設置して、汚染の広がりを止める必要がある。

評価点

  • ありそうでなかった、産業だけに特化したシミュレーションゲーム
    • この手のいわゆる経済シミュレーションと呼ばれるジャンルは『Age of Empires』が祖とされているが、最終的には軍備を整えて戦争を行う物が多い。しかし、シミュレーションはしたいけれども、戦争したいわけではないという人もいるであろう。そういった人にうってつけのゲームである。
      • ただし、戦争という莫大な費用がかかるシミュレーションゲームはかなり特殊なシナリオでも無い限り損益分岐点が意外にザルであるのに対し、本作は運搬コストがかなり重くシビアな経営判断が必要である。
  • キャリアモードの難易度が各項目ごとに細かく設定が可能である
    • 例えば初期資金の増額や、運搬コストの軽減/増加、設備維持費の軽減/増加、イベントの強度(強いほど影響が強まり、期間が長くなるイベントも有る)などの項目がある。
      • 本作は意外に難しいが、これらの設定で易しくすることも可能である。なんと、運搬費用"無料"というオプションも有る。プライドさえ捨てればクリアは可能なはずなのだが。
  • MODに対応している
    • 有志による日本語化MODがある。
      • ただし、更新はなされていないため、チュートリアル部分に不具合が残ったままである。意味の通らない箇所はないが、漢字の誤変換や表記ゆれがある。

問題点

  • グラフィック処理が重い
    • グラフィック処理のオプションをすべて最低に設定しても、トラックの数が増えすぎるとCPUでもメモリでもなく、まずGPUの処理限界に達し、コマ落ちしてトラックがカクついたり、ワープしたりする。
      • 灌漑塔を建てると水を運搬するトラックが大幅に減らせる。
  • 不親切な面が多々ある
    • 説明不足
      • トラックには実は2種類あり*3、生産所から出発するトラックと倉庫から出発するトラックとでは"運賃が異なる"。倉庫発のトラックのほうが割高となっている。
        ゲーム開始時にはどちらも積荷が1つだけなので、倉庫発のトラックは本当にただ割高なだけなのだが、研究により倉庫発のトラックだけ積荷が最大3個まで増やせる。こうなると、積荷当りの運賃は2個以上の荷物を積んだ倉庫発のトラックのほうが生産所から出るトラックより安くなる。このため、倉庫で積替えを行うほうが運賃が有利な局面がある。
        ところが、トラックによって運賃が異なるという事の説明はヘルプ画面にも存在しない
        トラック以外の輸送手段についても運賃の説明はない。実はどの輸送手段も、
         車両手配費 + ( 単位距離当りの運賃 × 距離)
        という内訳となっている。50タイル運ぶ場合、生産所発のトラックでは初期コスト$250, 1タイル当り$10で計$750掛かるとする。倉庫発のトラックは初期費用$350, 1タイル当り$15であるとする。3つの荷物を50タイル運ぶ場合、生産所発のトラックでは$750 × 3 = $2,250 掛かる。途中の25タイル目で倉庫で倉庫発のトラックに載せ替えると($250 + $10×25)×3 + ($350 + $15×25) =$2,225 となり、倉庫発のトラックの初期費用が高いため、差は$25と意外にも小さい。
        このような運賃のからくりを理解していないと、どのような輸送手段がベストなのか判断がつかないが、この点についてもヘルプ画面ですら説明はない*4
        話が逸れるが、畜産品の一部は買取値が非常に安く、羊肉が$2,600程度、卵が$2,400程度であり、前述の50タイル運ぶ輸送コストから分かるように、本当にどう工夫しても輸送コストが高くて赤字になりやすい。
    • 一部のUIの操作性がやや悪い
      • ゲーム内の情報ウィンドウはウィンドウの大きさを自由に変更できず、たいした情報のないウィンドウの大きさを縮小したり、逆に情報量の多いウィンドウを拡大したりできない。
      • アラート情報が出る場所にウィンドウを開いていると、現在開いているウィンドウの背後にアラートが出るため、いちいちウィンドウを閉じて確認する必要がある。アラートは常に前面表示で良いのではないか。
      • 研究のツリー表示が非常に分かり難い。牛や羊などの家畜をアンロックしようとして初めて、それらの前提に小麦の栽培が有ることに気がつくことになる。
        果樹園で生ゴムを育てるための研究項目はなぜか"化学"の項目内にあったりするなど、予想のつかないものが有る。
      • 『Simutrans』における"一覧表示"のような機能がなく、状況を把握しにくい。特に、在庫管理がキモのゲームなのに、在庫の量が分からないのが困る。
  • トラックの経路選択がおかしい
    • 荷物を届ける際に、最適ルートをとらない場面が多々あり、往路と復路ですら異なるルートをとる場面が頻繁にある。このゲームにおいては運賃コストはかなり重め(生産コストを上回る場面すらある)であるため、遠回りな経路を取るのは勘弁してほしい。
      • 特に市街地を通る場合、公共の敷いた道路は破壊できないため、勝手に一方通行にしたり出来ないのでプレイヤーはルート制御の手の施しようがない。
  • 鉄道が使いづらい
    • 鉄道に信号がない。このため、運行の制御は極端に難しくなっている。
      • 但し、立体交差が許容されているため『Factorio』の鉄道よりは線路建設の柔軟性はある。
    • 駅は終端駅しか無い。このため通過ができない。また、1つの倉庫につき、1つの駅しか建設できない。
      • このため、その駅を通過する経路と停車する経路の分岐点を作る必要がある。

総評

巨大サプライチェーンを築き上げるシミュレーションゲーム。
しかし、ゲームバランスはとんでもなくシビアであり、Steam上で最終目標である実績"Vroom Vroom(Completed the Car Prototype)"を達成しているのはゲーム所有者のうち1.8%と、信じられないほど低い。
ゲームの難易度ではなく、グラフィック処理が重すぎてクリアまで行き着くまでにゲームが進行出来なくなったという声も散見される。
緻密なサプライチェーンを構築してゆくゲームなのだが、干魃などの、えげつない突発イベントもある運ゲーでもある。

余談

  • DLC『Rise of Industry 2030』が発売されている。
    • 近未来が舞台となっており、難易度は本編よりも上とされている。
最終更新:2023年03月15日 11:05

*1 Steamの価格は29.99ユーロをドル換算したものであり、GOGの価格はドルとユーロを取り違えた値付けミスと思われる

*2 役場の権限でどうにかなるような事柄とは思えないのだが

*3 積荷の種類によってグラフィック的にはもっとたくさんの種類があるが、ここで述べる"種類"はもっと本質的な違いに基づくものである。

*4 ゲーム内に公式wikiへのリンクが有り、そこでは解説されている