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『Another World』Amiga/Atari ST原作
『Official Conversion』多機種移植版
『Anniversary Edition』各リマスター版
の以上を取り扱います。
記事名は他ゲームタイトル同士との重複を防ぐため、原題及び邦題表記に則り『Another World / Outer World』となっています。
Another World
【あなざーわーるど】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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原題ロゴ
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対応機種
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Amiga Atari ST
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メディア
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フロッピーディスク
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解像度
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320×200
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発売元
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欧州
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U.S. Gold
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北米
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Interplay
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開発元
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Delphine Software
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発売日
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1991年
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判定
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賛否両論
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ゲームバランスが不安定
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スルメゲー
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怪作
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ポイント
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ドラマチックで映画的な体験 技術に挑んだアニメーション 作者心情を表現したシナリオ 終始ノーヒント同然の謎解き アクションパートも高難易度
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概要
元々Delphine Softwareに勤務していた、当時24歳のエリック・シャイ氏が2年掛けてたった一人でプログラムからビジュアルまでを創り上げたことで知られており、今で言う「インディーゲーム」の走りにあたる。オープニング及びエンディングに使用されている音楽はJean-Francois Freitas氏が担当している。
発売の際に様々なパブリッシャー探しに奔走し、最終的な契約の際に、欧州ではU.S. Goldと、北米ではInterplayと提携した。そのため個人によるパブリッシングではなく商業流通扱いである。
結果として商業的にも成功し、1990年代には売上は約100万本に到達、ゲーム批評家からも軒並み高評価を得るに至った。
タイトルについて
本作のタイトルは大まかに分かれて以下の3つに分類される。
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原題『Another World』
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洋題『Out of This World』
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邦題『Outer World』
他言語版は商標権問題が絡んだせいか、北米版が『Out of This World』と言うタイトルとなり、日本版発売の際に『Outer World』という邦題が与えられたものの、現在では世界共通で原題である『Another World』が採用されるようになり、各地域でのローカルタイトルが併記されるようになった。
その後、2019年10月25日に邦題と同じ名前を冠する『The Outer Worlds』がPrivate Divisionから発売されているが本作とは一切無関係である。
ストーリー
科学者のレスター・ナイト・チェイキンは、度重なる嵐の影響で延期されていた粒子加速実験を天候の悪い中強行する。延期中に確認しておいた訂正すべき場所をコンピュータに打ち直し、あとは実験の結果を待つだけだった。しかし、その最中雷が研究所を直撃。そして、レスターはそれによって引き起こされた光と爆発に巻き込まれた。直後、レスターはその場所から消え去った。
その後、フランスのある研究所から彼が記したと思われる1冊の日記が見つかった。
特徴
進行順
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度重なる延期により中断されながら、嵐の中で強行実施された粒子加速実験中に突如落雷が直撃、異世界に飛ばされた科学者レスター・ナイト・チェイキンが主人公であり、さまざまな危機を乗り越えて行くSFファンタジー。
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テキストによる解説は一切無く、ステージ構成や背景や各種オブジェクト演出のみを頼りにゲームを進行していく事を特徴としている。残機やHPという概念は無く、一度のミスで特定ポイントからやり直しとなる。コンティニューは無限ではあるものの、復帰した際に再開するポイントは決まっており、その場からの再開ではない。
世界観(※ネタバレ注意!)
+
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イントロダクション
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以下のイントロダクションはスキップ可能で、その場合はゲーム開始地点に即座に飛ぶ。
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嵐の舞う地下研究所の入口前に「フェラーリ・288GTO」でドリフト駐車するシーンから全てが始まる。降り立った人物は今作の主人公で操作キャラの「レスター・ナイト・チェイキン」。彼は若手の科学者だ。下車をして厳重なセキュリティで管理された入退場ゲートでのパスワードと身体検査の二重チェックをクリアーし、いざ粒子加速実験開始。今回は宇宙が誕生したときの様子を再現しようとする実験であり、あとは誤ったデータ訂正を行い、実行に移し結果を待つのみ。そこでコーラを飲んで一服して実験を見届けた。
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しかし、嵐は止むどころか雷が発生する勢いで増していき、ついに研究所に雷の一発が直撃。粒子が目的地に到着する直前、研究所に落ちた稲妻が加速器を妨害、予期せぬ粒子の融合と爆発を引き起こし、爆発と共にレスター教授はあっという間に消滅。その跡には大きな穴が開いていた…
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+
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エンディング
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エンディング
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直前の襲撃で瀕死の重傷を負い、歩けなくなってしまったレスターは、スイッチを作動させて攻撃者を光線で始末。その後銃撃の猛攻がやってくるもののそこで辛くも脱出。塔の頂上に着いたそこにはドラゴンが居たが遂にレスターは立ち上がることはできなかった。しかしすぐに相棒はレスターを抱き上げ、二人はドラゴンのような生物に乗って、地平線の彼方へ向かいながら遠くへ飛び立っていった。
『Another World』はここで「THE END」となり、以後の展開は続編『Heart of the Alien』に続くこととなる。
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評価点
本作は主にビジュアル面において高い評価を得ており、2Dポリゴンによる無機質なSFを表現したグラフィックや、次々にやってくる衝撃的なストーリー展開は、手に取ったプレイヤーの度肝を抜くものとなっている。全体的にエリック・シャイ氏が影響されたものや好きなものを効果的に取り入れたものとなっており、ゲームデザインから要所に至るネタまで散りばめられているため、興味があれば探してみるのも一興である。
ノンバーバルで表現される世界観
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今作最大の特徴である。全編に亘り
ゲーム中ではダイアログなどの進行説明をはじめとした一切のテキスト表示を排している
点が特徴。カットシーンのみならず、ゲームプレイ中も同様で、物体の状況や敵の行動などから次に実行する行動を自分で決めていく。『カラテカ』『Impossible Mission』に似たSFゲームを作るつもりだったとエリック氏が語るだけあり、ゲーム内容や序盤の地下牢のマップ構造の段階からしてその片鱗を示している。
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ギミックも同様で、要所に点在するトラップはプレイヤーの恐怖を煽るような見た目をしており、実際に嵌ってしまった時には更に焦燥的な衝動をおぼえるグラフィック、中には衝撃的なカットシーンが流れる。更に相棒の存在もゲームとして見てもプレイヤーの協力者としてパズルを解決したり、ストーリーの急展開に関わるといった、制作サイドから見てもゲーム中のアイデアを次々と生み出す源泉としても機能しており、一つ一つの小道具にも意味を持たせていることが窺える。
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こういったゲームデザインになった理由として「ドラマチックな映画のような体験を作りたい」と言う製作者の意向が理由である。そのため、ノンバーバルで表現することは、最初から制作者側が完全に意識したものということになる。
予測不能な展開で構築されたストーリー
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エリック氏が「その時々の感情や精神状態に身を任せて制作した」と後年称するだけあって、シナリオなどを制作する際には、なんと脚本やプロットさえも作らず、レベルごとに行き当たりばったりでストーリーを創り上げていく形で、ほとんど即興で制作されたものとなっている。
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「プレイヤーをあっと驚かせるには、自分も予測できないことをしなければならない。」と言う考えのもとで、制作状況の心境が個々の表現にそのまま落とし込まれており、次の展開がどうしてそのようなシチュエーションや場所になっていくのかがまるで読めない展開が終始続いていくため、ゲームを一通りプレイしただけでは意味不明に映ってしまうのは必然と言える。しかし、エリック氏の心境を意識しながら手にとってみれば、グラフィックと併せて世界観を余すことなく表現しきった映画的体験により、想い描いた異世界(Another World)に対してプレイヤーの好奇心を惹かせること間違いなし。
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ストーリーを制作する際に直面する技術的な限界については考慮されていなかったため、そうした点で開発が難航した。彼はこれを「ゲームの雰囲気」「リズムのテンポ」「物語の緊張感」を作り出すことに重点を置くことで、難局を乗り越えていった。
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ラストの展開も同様の経緯で制作されている。開発終盤の追い込まれていた自身の焦燥感が、最終盤のシーンに反映されたとのことで、意識して見れば製作者の苦労と心境が窺い知れるものだろう。
卓越したグラフィック
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本作制作のきっかけの一つとなった『Dragon's Lair』に影響された当時「ゲームでここまでの映画的表現ができるようになった」という確信と「より低容量でもアニメーションが実現できるように」と言う一心のもとで開発されたグラフィックやアニメーションは、無機質ながらも他に類を見ない独創的な雰囲気を醸し出しており、SFベースの退廃とした世界観と見事にマッチしている。
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技術的には、高級言語であるC言語からマシン語(低級言語)のアセンブリに切り替えると言う、ハードウェア機能の限界に挑んだものとなっている。プログラミングを改良し続けた結果、Amiga上でも20フレーム/秒でポリゴンを表示できることを発見したことでアニメーションの実現を確信。更に当時ポリゴンを扱えるツールが殆ど無かったこともあり、これまたゲームエンジンやツールまでもが独自制作されたものとなっている。こうして出来上がったポリゴンは「PIXIGON」と命名された。極力ラスタ画像を用いずにベクター形式を巧みに活用したものとなっており、結果としてメモリの使用量を削減することに成功している。
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オープニングのシーンは特に力を入れられており、ポリゴンと自作の開発言語を駆使して完成させたものとなっている。迫力ある音楽と併せて「この先何が起こるかわからない」雰囲気を醸し出した流れは見たものに強烈な印象を与えた。このシーンは最初に製作した後、どう言ったゲームにしようか悩んでしまったほど、エリック氏も思い入れがあるそうな。
賛否両論点
以下の内容は、ノーヒント同然な内容を中心にゲームプレイに直結する点であり、ゆえに文字通りアクションアドベンチャーとして楽しむか、パズルゲーム要素を含めたアクションとして挑むかで評価が真っ二つに分かれてしまう。
しかしノーヒントな謎解きも、思考パズルという観点で見れば「次にすべき行動を自分で考えて進めていく冒険ゲーム」として適度な難易度となり、一転して優れたパズルアクションとして楽しめるようにもなる。そうした観点でプレイした人からの評価は今も昔も変わらず極めて高いことからも、内容自体の本質的な高さが窺える。
ノーヒント同然な謎解き
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世界観を演出する上でも評価点と表裏一体となっているため、一見したら矛盾しているように見えるが、言葉での表現自体が全編を通して一切無いため、終始グラフィックの変化や環境音などを頼りにしてゲームを進めていかなければならないため、そもそも何をすればよいかわからない状況に陥りやすい。ヒントと言える目印が少なく、その少ないヒントすらも非常に細かく描写されている。
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基本的にどこかしらのギミックを作動させたら先に進める手筈を順番通りに行うことが常だが、これもわかりにくいところやトラップを掻い潜った先に配備されていたり、大廻りを要するなどで全体的にかなり回りくどく危険を伴うものとなっている。
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コンティニューが無限にできる仕様を考慮しても、後述の通り、アクションゲームとしてのテクニックも相応以上に求められるため、先に進められなければ詰むこともあり得る。この点と後述の高難易度なゲームバランスや癖の強い操作性と併せて何度もミスをしながら試行錯誤を経て覚えていくことが必然となる。とは言え、コンティニューポイントは多く用意されており、リトライする際のストレスもある程度は軽減できるのがせめててもの救いである。
+
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※ネタバレ注意
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最初から不意打ち
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初っ端から「上ボタンを連打して水中から出なければ触手に捕まりミス」といきなりの初見殺しがプレイヤーをお出迎えする。上がった後その場から動かない状態が続けばこれまた「水面から出てきた触手に水中へ引き摺り込まれてミス」と言った流れであり、初めて手に触れたプレイヤーはこれらの光景を見て呆気に取られることは間違いないだろう。
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このトラップの場合だと、それこそ背景のような黒いグラフィックとして突然触手がやって来るため、躊躇している余裕はないと言って良く、以後も要所に点在している安全地帯を除けばそうしたものであることを意識して進行していく必要がある。
わかりにくい武器獲得
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敵に捕らえられて牢屋から脱出する際に、そのまま脱走しようとすると、必ず敵の攻撃で相方共々射殺されてしまい、これ以上ゲームを進められなくなってしまう。そこで相手は武器を使って攻撃しているため、まずはそうした表現から何かしらの武器を手に入れないといけないと気付けるかが鍵となる。
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…のだが、この武器というものも牢屋に踏み潰された看守が落とすものであり、床に灯りが点灯する程度しかヒントと言えるものがないため、注意深く見ないと「武器を使わないといけないと気づけてもそもそもどう入手すれば良いかわかならない」状態に陥ってしまう。ちなみに入手した後は、途中の基地で敵と鉢合わせになる箇所と最終盤で落としてしまう時以外は終始装備したままとなる。
弾数は有限
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この仕様自体は問題点にはならないが、問題なのはエネルギー切れを起こす直前や射撃出来ない状態での警告表示やビープ音などの演出が無い。特に武器を入手した直後は、敵の猛攻に対してバリアーを展開しなければならず、ここで無駄撃ちを行うなどで、その後の光線銃を使うギミックを操作できなくなってしまうリスクが孕んでいるため、引っ掛かりやすい点である。
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「特定地点での無制限チャージ」という形でリロードこそできるものの、全編で2箇所しかなく、最初にそれができるポイントはよりによって上記猛攻を抜けた後である。
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少ないボリューム
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全体的に一本道で自由度は少ないものとなっており、且つボリュームも順調に進めさえすれば3時間、実力があれば1時間も掛からない程度で終わるレベルにあっさりしたものとなっている。作り込まれた世界観をより堪能したいであろう熱心なユーザーは今も根強いものなだけあり、そうした意味でも心残りのあるボリュームと言える。
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ただし今作のゲーム進行順はノーヒントで且つアクションゲームとしての技術も終始要求される。ゆえに死んで覚えながら進めていくことが必然となるうえ、グダグダに長引かせるのも問題となる意味も考慮すれば「この程度で丁度良い」とする声も。
問題点
では、ノーヒントな謎解きをしらみ潰しや消去法でフラグを回収したり、目印になるものを探したり、予め攻略サイトなどで次に何をすれば良いかを把握しているのならば楽勝であるかと言えば…結論から言えばそんなことは一切なく、下記の問題点にもあるようにゲーム全般にわたってアクションゲームとしての実力も求められるため、通常プレイですらも困難を極める点がある。更に謎解きだけでも難しいのに加え、こういった要素がゲーム全体の難易度をさらに引き上げてしまっている。
一方で全体的に絶妙なバランス取りを極めた難易度とあって、ハードルを乗り越えた者からは「生きるか死ぬかのスリルがたまらない」と称賛する声も根強いものの、やはり難易度設定などで緩和することができない点もあるため、多方面に見れば看過できない問題点と言える。
応答性に難のある操作性
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何を行うにしても細かなアニメーションを取りながらアクションを起こすため、結果として反応がワンテンポ遅れる操作性となってしまっている。操作に慣れないうちは、ボタンを押したら即座に対応してくれず、操作が間に合わず事故死と言った事態に陥りやすい。
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なにより今作では、それを狙ったかのようなギリギリの操作が求められるシーンが随所に散りばめられている。ボタンのチョン押しをする位置を間違えて穴に落ちたり、トラップにハマる、操作が間に合わずに相手の光線銃で撃ち抜かれて白骨化…と言った事故は最早お約束と言ってもよく、コンティニューが無限である点を味方に付けながら死んで覚えていくしかない。
アクションパートも高難易度
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純粋なアクションとしての難易度も非常に高い。その難易度は「謎解きさえできれば後は楽勝」と言った類ではなく「謎解きが大前提で、かつアクションとしての実力も相応に求められる」と言うほどである。
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中盤から徐々に難易度が上がるかと思いきや、初っ端から純粋なゲームの腕前を要求されるシチュエーションがやってきてしまう。他にも道中に置かれたトラップも絶妙な配置となっており、位置やタイミングを見計らってボタン操作を駆使しなければミスに直結するシチュエーションも多いため、操作性の悪さも相まって精巧なボタン操作が求められる。
+
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※ネタバレ注意
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最序盤
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獣に見つかり追いかけられるシーンでは、咄嗟の行動を取らないとあっという間に追いつかれてしまうため、ギリギリの操作が求められる。
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逃走経路は「来た道を戻る→蔓を使って反対方向へ逃走」のため、事前に毒虫を退治しておかなければ、毒虫も同時に避けなければならないため「逃走中に毒虫に触れて死亡」と言ったうっかりミスを2度にわたって気をつけなければならないため、難易度が急上昇する。無論先にふざけ半分で蔓を使った場合はミスへ一直線である。
最初の銃撃戦
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光線銃を入手してから何度も遭遇するパート。出の遅い光線銃と溜め撃ちにバリアーを展開して敵の攻撃をやり過ごしながら画面に表示された敵を始末しなければばならない。一部の敵に至っては、徐々に近づくものもあるため、間合いを詰められて瞬殺されるリスクが更に跳ね上がる。敵と同様、バリアーを忘れずに複数展開しないのは、自殺と同じである。
洞窟
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トラップが随所に散りばめられており、棘から落石に謎の生物、更に単に徒歩で飛び降りただけでミスをする場所すらある。しかもこのトラップに嵌まってしまった演出があからさまにグロく、耐性に乏しいユーザーにとっては精神的にも乗り越えなければならないパートと言える。
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水脈を破壊した後に走らなければならないが、これもギリギリの操作が求められる。後に水中に入り、水没した同じ経路を進むこととなるが、これも見えない時間制限があるため、進む道順を間違えたら即やり直しも同じとなる。
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総評
壮大な世界観と当時のホビーパソコンのスペックで挑んだ2Dポリゴンで表現されるグラフィックや映画的効果をふんだんに取り入れた演出は、まさに一種の藝術の域に達しており、発売直後に数々の賞を立て続けに受賞したのみならず、以後も『ICO』『メタルギアソリッド』『サイレントヒル』をはじめ、長きに亘り作り手サイドをはじめとしたゲーム業界関係者を中心に多大な影響を与えることとなった。『メタルギアシリーズ』で有名な小島秀夫や『シルバー事件シリーズ』で著名な須田剛一も「好きなゲーム」として名指しで挙げており、そうした意味でもゲームの歴史を語る上では無視できない存在なのは確かであり、陰の功労者と言うべきポジションを不動のものとさせた。
一方で、単体のゲームとして見た場合だと話がどうしても変わってしまい、それこそ相当に手を焼く曲者と言わざるを得ない。終始全編にわたるノンバーバルな内容から起因するノーヒントぶりも、映画的演出を最大限に活かした意図的なものであり、手に取る人次第で魅力にもなれば意味不明の何かになってしまうほど評価が大きく分かれるのは必然である。また、ストーリーの展開も作者自身が「即興に身を任せて制作した」と言及しており、無理して場面と場面の繋がりなどを理解したり考察するより、作者が表現したかった世界観としてそのまま受け入れる方がベターと言える。
以上のことから、本作は「藝術的な教養を持っている」ことに加え「思考パズルを解くことに趣を置いている」「アクションゲームとしての相応の技術を有している」の計三つの知見と技術を有するユーザーならば、真の面白さを知ることができるゲーム、と総括できるだろうか。
「ゲームと言うより映画を見ている感覚になれる」「アクションパズル」と評する声からも思考しながら謎を解くタイプのゲームと見做すことができるため、高難易度に立ち向かう自信のあるプレイヤーは是非一度手に取って当時の衝撃を体験してみてはいかがだろうか。
続編
『Heart of the Alien』 ※日本未発売
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1994年にVirgin Interactiveより発売されたSEGA CD専用ソフト。前作『Another World』のラストシーンからそのまま繋がっており、相棒の壮絶な過去をノンバーバルに描くものとなっている。前作からカットシーンの情報が大幅に増加、モブを含めたキャラの感情や行動などがはっきりとしたものとなっており、演出面ではさらなる磨きが掛かっていることが窺える。
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プレイヤーは重症を負ったレスターから相棒となり、光線銃の代わりに鞭のような武器を使う。光線銃のようにレーザー光線を放つことも可能であるため、大まかなゲーム性は変わらない。
記事内のタイトルは、公式表記に則り『Another World Official Conversion』で統一しております。
Another World Official Conversion
【あなざーわーるど おふぃしゃるこんばーじょん】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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共通
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スーパーファミコン
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北米
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Apple IIGS Machintosh Windows 3.x
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欧州
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ゲームボーイアドバンス Symbian OS
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日本/北米
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3DO
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北米/欧州
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SEGA GENESIS
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メディア
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IIGS/Mac Win3x
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フロッピーディスク
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SFC
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8メガビットロムカセット
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MD GBA
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ロムカセット
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3DO
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CD-ROM 1枚
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Sym
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ダウンロード専売
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発売元
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SFC
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日本
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ビクター音楽産業
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MD
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Virgin Games
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Mac
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Mac Play
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GBA
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FoxySofts
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Sym
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Telcogames
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上記以外
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Interplay
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開発元
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AppII 3DO
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Interplay
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Mac
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MacPlay
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Win3x
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Maddox Games
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GBA
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Foxy & Eric Chahi
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Sym
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Magic Productions
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上記以外
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Delphine Software
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発売日
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IIGS
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1992年
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SFC
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北米
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1992年11月
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日本
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1992年11月27日
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欧州
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1993年5月27日
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Mac
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1993年
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MD
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北米
|
1993年3月
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欧州
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1993年4月
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3DO
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北米
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1994年
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日本
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1994年10月21日
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Win3x
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1995年
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GBA
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2005年4月28日
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Sym
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2005年7月1日
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判定
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全機種
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賛否両論
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ゲームバランスが不安定
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スルメゲー
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怪作
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ポイント
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一部移植に独自要素 ハードの限界に挑んだ良移植 難易度など基本的な仕様は変わらない
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概要(OC)
大ヒットを契機に数多くの機種に移植されていった『Another World』。以後も『15th Anniversary Edition』が発売されるまでの長年に渡り原点となるAmiga版を忠実に移植したものが立て続けにリリースされる運びとなり、世界中のコアゲーマーを虜にしていった。
日本において最も有名と思われるのが、スーパーファミコン移植版の『アウター・ワールド』だろう。初の日本上陸機種で当時のプレイヤーの間でも語り草になっていた上、ゲーム特集や動画共有サイトで度々取り上げられるほどで、そこで知った人も少なくない。
なお、Comomodore 64とATARI JAGUARにも移植されている情報が確認されているが、これらは前者が2019年にHokuto Force氏によって非公式にダウングレード移植されたもので、後者が2013年に後述の『Anniversary Edition』をファンメイドで移植したものである。従って当wikiの規定に基づき一切取り扱わない旨ご了承願いたい。
変更点(OC)
スーパーファミコン
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独自のBGMが追加された。『Anniversary Edition』のものとも全く異なるため、本移植作の独自要素である。
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以下の表現が任天堂の規定により変更された。ちなみに白骨化の描写には特に変更はない。
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出血描写。主に高いところから落下したり洞窟のトラップにハマった箇所、敵の死体が対象である。
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女性風呂の描写。具体的には「3ドット分の隙間が塗りつぶされた」ところであり、後年エリック氏もネタにしていたところである。
3DO
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ビジュアル面において全体的な大幅改変が施されている。
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2Dグラフィックがテクスチャの付いたものへ全面的に差し替えられた。映像やスクリーンショットを見ればすぐにわかるレベルに視覚的に大きな変化が発生している。
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独自のBGMが追加された。『Anniversary Edition』のものとも全く異なるため、本移植作の独自要素である。
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ミス時に迫力のある効果音が追加された。
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エンディング後に特別な特典が収録されている。
+
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※ネタバレ注意
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なんと続編『Heart of the Alien』のオープニングアニメーションが収録されている。
相棒が重傷を負ったエリックを自宅まで運び出すまでのアニメーションが収録されており、続編が続くことを示唆する形でゲームは終了する。
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評価点(OC)
ハードの限界に挑んだ良移植
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全てのハードでAmiga版に忠実な移植
となっており、グラフィックやBGMのダウングレードも無く、内容削減や明確な処理落ちをはじめとした、ビジュアルやゲームプレイに支障をきたすレベルの劣化がまるで見受けられない。
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一部低スペックハードにおいては、シーンの切替時にロード時間が見受けられたり、音質がガビガビ気味になっていたり、グラフィックのジャギーが散見されるものの、ハード性能や2Dポリゴンの描写に違和感なく溶け込んでいるため、ハード制約ゆえの部分劣化した点をそうなってしまったと感じさせない仕上がりとなっている。
賛否両論点(OC)
良くも悪くも(見た目は)別物と化した3DO版
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確かに単体で見れば、ハードの性能を活かしきった秀逸な表現でありAmiga版を知っててもこちらを評価する声も少なくない事実からも、グラフィック自体の迫力は、独自のシネマティックな音楽も併せて大幅に向上したものであるため、総じて評価点に値するレベルである。
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しかし、グラフィック自体は比較して見れば一発でわかるレベルに大幅刷新されたもので、他のどの移植とも全く違うほどに大幅改変されたものである。これだけならまだしもAmiga版そのままのグラフィックに切り替える機能も無いため、原作通りのグラフィックで楽しみたい人からの不満の声も。
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一方で、壁を破壊した音やトラップにハマった時などの各種効果音はそのままとなっているため、気にし出したら違和感をおぼえる点もあるのが難点と言えるか。
問題点(OC)
ゲーム的には特に変化なし
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プラットフォームごとの独自追加要素やハード制約による仕様以外はAmiga版に忠実な移植である。そのため、難易度調整と言える機能が実装されておらず、全体的な高難易度ぶりを緩和することは不可能である。
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SFC移植版では高難易度に対する配慮として、説明書にゲームの導入部分の解法が詳しく書かれ、以降のヒントも断片的に記載されている。
総評(OC)
全ての移植でハードウェアの限界に挑んだものとなっており、一種のベンチマークとして機能している点も含めて、エリック・シャイ氏の功績や技術を世界中に知らしめていった。3DO版に至っては、ハード性能を見せ付けた豪華なものとなっており、グラフィックの完全刷新や独自の高音質サウンドのみならず、ファンサービス要素も収録されているなど、Amiga版を知っていてもこちらを評価する声も根強い。
ただし、ゲーム内容自体はAmiga版から変わっておらず、難易度問題は全く解消されていない。そうした意味でもファンやコアユーザー向けの内容であることに変わりなく、日本においても『SFC移植版』が発売されてからは、そのマゾゲーぶりを知らしめたことで今もなお語り継がれるタイトルとなった。
記事内のタイトルは、原題及び『15th』『20th』では大まかなゲーム内容が共通しているため『Another World Anniversary Edition』で統一しております。
Another World Anniversary Edition
【あなざーわーるど あにばーさりーえでぃしょん】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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原題20thロゴ
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対応機種
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15th
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共通
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Windows
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20th
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共通
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iOS Android
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日本/北米
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ニンテンドー3DS Wii U Nintendo Switch
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北米/欧州
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PlayStation 3 PlayStation 4 PlayStation Vita Xbox One
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配信
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共通
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GOG.com
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共通
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Windows Linux
|
20th
|
Steam
|
共通
|
Windows Macintosh
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発売元
|
15th
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共通
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Magic Productions
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20th
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PS/Xbox
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BULKYPIX
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3DS/WiiU
|
日本
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ビヨンド・インタラクティブ
|
iOS/Android Switch
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DotEmu
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上記以外
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The Digital Lounge
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開発元
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15th
|
共通
|
Mana Games
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20th
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共通
|
DotEmu Eric Chahi
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発売日
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15th
|
共通
|
2006年4月14日
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20th
|
iOS
|
共通
|
2011年9月22日
|
Android
|
共通
|
2012年3月
|
Steam
|
共通
|
2013年4月5日
|
3DS/WiiU
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北米
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2014年6月19日
|
日本
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2015年1月21日
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PS/Xbox
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北米
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2014年6月24日
|
欧州
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2014年6月25日
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Switch
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北米
|
2018年7月9日
|
日本
|
2018年7月12日
|
レーティング
|
20th
|
日本
|
CERO:B(12歳以上対象)
|
米国
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ESRB:T(13歳以上)
|
欧州
|
PEGI:12
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備考
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共通
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配信
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日本語未対応
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判定
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全機種
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賛否両論
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ゲームバランスが不安定
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スルメゲー
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怪作
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ポイント
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原作尊重仕様のリマスター 更に向上した解像度 基本的な内容自体は原作譲り
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概要(AE)
2006年にエリック・シャイ氏本人がWindows XP層をターゲットにしてリリースされた、原作『Another World』から発売15周年を記念したリマスター版である。
その後の発売20周年目でも細かいグラフィックの修正を施した再リマスター版が登場した。以後の移植はこの『20th』がベースとなっており、原題そのままで移植されたSwitch版も変更は特にされておらず、他機種の『20th』移植と同じ内容となっている。
新機能(AE)
ビジュアル切替
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リマスター版限定の機能。ゲーム中でもリアルタイムで当時のグラフィックと切り替える
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地味ながらも音楽や効果音も切り替えられる点もポイント。
難易度調整
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3段階に難易度が調整可能となっている。ただし難易度の名称だけプラットフォームにより異なっているため、ここでは便宜上の名称を用いる。
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【イージー】一部の敵やギミックが無くなっている。他はノーマルと変わらない。
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【ノーマル】原作通りの難易度。
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【ハード】ノーマルからバリアーの耐久力が半分程度に減少していることに加えて、敵の動作の高速化やレーザー銃の射撃速度が速くなっている。
評価点(AE)
高画質で甦ったグラフィック
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解像度が大幅に向上した。『15th』ではEmmanuel Rivoire氏の協力により解像度は1280×800までに対応するようになった。当然そのままだとグラフィックの粗が目立ってしまうため、ここでも高解像度にレンダリングしたことにより明らかとなった粗を取り除くため、エリック氏自身により緻密なグラフィックを新たに制作することとなった。また、キャラクターをポリゴンで表現することで、オリジナルのキャラクターグラフィックをより高い解像度で使用できるように改良した点も特筆に値する。
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『20th』ではさらなる解像度の向上が施され、結果としてアニメーションの最大解像度は2560×1600にまで向上。そのためにディテールとベクターデザインの間の均衡を見出さなければならなくなったこともあり、非常に鮮明なディテールとカミソリエッジのポリゴンを用い、以前よりも微細な光の表現や陰影を活用することとなった。3DS北米版の発売元のDigital Lounge曰く「単純に『Another World』のオリジナル体験を忠実に、現在のハードウェアの利点と高いレベルで磨き上げて提供すること」を目指したとのことである。
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いずれもありがたいことにAmiga版の解像度そのままのビジュアルでプレーできる機能もあり、更にゲームプレイ中にリアルタイムで切り替えることも可能で、そうした点での気遣いも抜かりない。
その他改良点
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原作よりもミスをした時の復帰地点が2倍ほど増加しており、ミスをしたときのリカバリーが幾分は容易となった。
問題点(AE)
実質高難易度は据え置き
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あくまでオリジナルに忠実な移植であるため、チェックポイントが倍増して中断がしやすくなった点と、グラフィックが高画質になり新音源が追加されたこと以外は、基本的にAmiga版と変わらない。そのため癖の強すぎる操作性やノーヒントな内容やアクションパートの高難易度ぶりは変わらず据え置きである。
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一応、3段階の難易度調整があるものの、イージーでも根本的に難易度が変化するわけではないため、一般層からすればどれも同じ難易度にしか思えないだろう。
iOS/Android版
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操作体系に難がありすぎる。進みたい方向にフリックしてダッシュ、上をフリックすればジャンプ、右下か左下を押して攻撃をするようになっているが、パッド操作を無理矢理詰め込んだようなアサインで、結果として直感的な操作でなくなってしまっているため、操作ミスによる誤爆を招きやすい。
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タッチパネルに表示されるパッド操作に切り替えることもできるが、画面上部に表示される代物であり、操作中に指で隠れて物理的に見えなくなってしまうリスクの方が圧倒的である。
総評(AE)
エリック・シャイ本人が積極的に携わっただけあり、移植により新たに追加されたグラフィックもまた、質感などを尊重したものとなっており、ハードの性能と噛み合った映画的演出を実現。また、難易度調整機能が追加されたこともあり、多少のハードルを下げることはできた他、ハードゲーマーにとっても歯応えある難易度で進めることができるようになった点もポイント。
ただし、
あくまでAmiga版に忠実な移植である。
そのため難易度イージーでも根本的な難易度を解決できたかどうかは別問題となり、プラットフォームにより操作性などで一長一短なところもあるが、明確に劣化したと言える点は無きに等しいばかりか寧ろ追加要素のおかげで総じて良移植に相応しい完成度を誇る。
最終更新:2024年06月24日 22:52