このページではアーケードゲーム『Dragon's Lair』を取り扱い、移植版は割愛しております。


Dragon's Lair

【どらごんずれあ】

ジャンル インタラクティブ・ムービー
筐体
ロゴタイプ
対応機種 アーケード
使用基板 Zilog Z80搭載基板(32kb)
Pioneer LD-V1000
メディア 映像 レーザーディスク
発売元 北米 シネマトロニクス
欧州 Atari Ireland
日本 ユニバーサル
開発元 Advanced Microcomputer Systems
稼働開始日 北米 1983年6月19日
欧州 1983年秋
日本 1984年7月
プレイ人数 1-2人(交互プレー)
判定 賛否両論
ゲームバランスが不安定
スルメゲー
ポイント 映画品質のアニメがゲーム上に映る
あらゆるシーンで細かく入った演出
ある意味裏目に出た入力指示の演出
シビアな応答時間と入力タイミング
後世にも多大な影響を与えていった
ドラゴンズレアシリーズ
Dragon's Lair / II Escape from Singe's Castle / FC版 / II TIME WARP / III / 3D


概要

北米初、且つ世界的に見てもセガの『アストロンベルト』に次ぐ2例目にあたるレーザーディスクゲーム。

総監督(ディレクター)はドン・ブルース氏。
彼はディズニーで作画監督などに携わり、1979年9月13日(氏の誕生日)に9名のアニメーターを連れて退社・独立して自身の名を冠する「ドン・ブルース・プロダクション」を起業した。開発費は当時のレートで約300万ドル、開発期間に7ヶ月の歳月を要した。

魔法使いモードロックの暗躍により、邪悪なドラゴン・シンジに誘拐されたダフネ姫を主人公であるダークが救出する流れとなっている。
モードロックに関しては今作では最後まで一切登場せず、続編『II』でついに姿を表すこととなる。


ゲーム内容

ゲーム進行

  • 【1】規定クレジット分のコインを入れる。基本的には2クレジット(25セント硬貨2枚分)残機5設定である。
  • 【2】手元左側のプレー人数選択ボタンで1人でプレーするか2人でプレーするかを選択する。
  • 【3】ゲーム開始。進行順は最初のステージを抜けた後は最終ステージに到達するまではランダムとなっており、1ミスをした場合は次のステージに進む。最終ステージまでクリアーするか残機を失いゲームオーバーになった時に、ハイスコアになった場合はネームエントリーとなる。

筐体

専用筐体を使用している。

  • スコア表示とゲーム画面は独立したものとなっており、スコアや残機は筐体上部にセグメントで表示される。
  • 操作デバイスは「2つのプレー人数選択ボタン」「4方向レバー」「レバーの左右に計2つあるソードボタン」。プレー人数選択ボタンのみ白色で、他のレバー・ボタン類は赤色となっている。
    • 「4方向レバー」は指示された方向に動かす時に使用。「ソードボタン」は剣を使うアクションを実行する際に使用する。
  • 基板は専用のマザーボードで構成されており、CPUにZ80プロセッサを採用している。
  • レーザーディスクプレーヤーに、パイオニア製の「LD-V1000」を採用している。筐体によっては同社の「PR-7820」を採用しているものも確認されている。

特徴・評価点

画期的なアニメーション

  • 今作最大の評価点は、まさにこのアニメーションに集約されていると言っても過言では無い。当時はコンピューター自体の基板制約ゆえに映像を流すマシンパワーは到底無く、スプライトやベクタースキャンによる映像表現が一般的だった。そんな中での「本職のアニメーターが作画した、お茶の間や映画のアニメーションと同じレベルのクオリティを誇る映像が表示されるゲーム」というのは大変画期的で、驚きの声と衝撃をもって迎え入れられることとなった。全編秒間24フレームの滑らかなフルアニメーションであり、作画の乱れと言える乱れも見受けられないため、映像作品としての全体的な完成度は極めて高く、今の基準で見ても見劣りするどころか、一般的な視聴目的でも違和感無く閲覧可能な高い完成度を誇る。
    • アニメーションの制作を担当したのは「ドン・ブルーススタジオ」。元々ディズニーに在籍していたこともあり、その作風や質自体も特筆点。中世ヨーロッパ風の古城をモチーフとしながらも、城内のギミックはあらゆる要素が詰め込まれている。蛇などのモンスターや魔法使いや鍛冶場、『不思議の国のアリス』をモチーフとした「Drink Me」と言ったファンタジーのお約束と言える要素はもちろんのこと、電気の流れるギミックやロボット騎士や左右に流れる玉石と言った、近未来的なものまで網羅したものとなっている。
    • 今作のアトラクトは、ゲーム内容のナレーションに合わせてゲーム本編で使用されている映像を編集したものが流れる、と言ったものであり、その様はさながら映画の予告編に相応しい仕上がりとなっている。このためだけに使用される音楽もわざわざ用意されており、当時の収録作業は18時間もぶっ続けで作業に入ってたそうな。

事細かに用意されたミスシーン

  • 各ミスシーンも、他のLDゲータイトルでは「画面がフラッシュするだけ」、良くても「ミスシーン用の単発汎用アニメーション」で済まされることが専らである中で、それぞれのミスをした場面ごとに、個別に事細かく用意されている点も見逃せない。その豊富さは動画の累計時間からも伝わるほどで、なんと3分以上もの大ボリュームとなっている。これにより「ミスシーン見たさのために敢えてミスをする」と言った遊び方も編み出されることとなった。
    • 残機消費による再開時の復活演出からゲームオーバー確定演出も、これまた手の込んだものとなっており「ミスしたステージの背景+専用のアニメーション」が流れると言うものとなっている。音響を含めた優れた演出面からも、ミスからの復帰時のストレス軽減に繋げている。

創意工夫のキャラクター

  • 開発予算の中でも最も経費が掛かる上に削減難易度も高い人件費を合理的に削減するために、キャラ造りも丁寧な合理化が図られている。当然声優選定も抜かりなく行われており、概ねプロとしての声優経験の無い人選ではあるものの、演技力は確かなものであり、素人ゆえの棒読みぶりを感じさせない。
    • 主人公のダークは映像編集担当のダン・モリナ氏、ヒロインのダフネ姫の声優は当時清掃部長だったヴェラ・ランファー氏が担当している。キャラ造りもインスピレーションと言える手法が採られ、モデルを雇う余裕が無かったために、アニメーターによるダフネ姫のモチーフとしてプレイボーイ誌の写真が活かされるなどと言った創意工夫も。
    • 唯一、アトラクトムービーで流れるナレーターに限り、プロの声優であるマイケル・ライ氏が担当しており、後の『Space Ace』『Dragon's Lair 2 TIME WARP』でも同様にナレーターを担当している。

賛否両論点

ヒント類がある意味抽象的

  • 映像演出を尊重した結果とも言えるが、今作では(後にリリースされる)一般的なLDゲーに搭載されている、ヒントや画面指示の類と言える機能は一切搭載されておらず、完全にアニメーションが映し出している状況から自らの判断で正しい操作をしないといけない。後述の入力受付時間の短さもさることながら、何度も試行錯誤をしながらタイミングを把握していく必要がある。
    • 代わりに次に進むべき道や行うべき動作が、LDによるアニメーション内でそのまま光るようになっているシーンもある。演出としては秀逸ではあるものの、どのボタンを操作すれば良いのか直感では分かりにくいものとなっているため、完全に表裏一体なものとなっている。
    • 幸いミスで残機を失っても、一定のステージまでは次のシーンに移行する救済措置が設けられているため、次のシーンがランダムと言う仕様もあり、いつまで経っても同じステージばかりやらされる、と言うことにはならないようになっているため、少なくとも映像演出が楽しめなくなることがないよう調整はされている。

問題点

短すぎるボタン応答時間

  • アーケードゲームゆえにそうしたバランス調整としているものと思われるが、全体的に操作の受付時間が極めて短く、 基本的に1秒程度かそれ未満しかない 。更に入力タイミングも不意打ちに等しく「押すタイミングと思ったら時間切れになった」「タイミングがずれて1ミス」と言った事故が頻発しやすいと言えるほどに大変シビアで、常時瞬間的な操作が求められる。加えて残機が尽きればコンティニューは無いため、残機が少ない設定だとその分エンディングにまで到達するハードルも跳ね上がってしまう。

ゲーム性自体は単調そのもの

  • アニメーション部分を考慮せずにゲーム性だけを見れば、結局のところはタイミングに合わせて正しい入力を行い続けるだけであり、タイミングを覚えて掌握さえすれば、あとはただの覚えゲーになってしまう。また、シーン毎のシークタイム故のブラックアウトも問題視されており、テンポの悪化と映像表現の違和感に少なからず影響した。
    • ただし、次のステージに何が来るかは基本的にランダムであり、且つ入力タイミングが極めてシビアなため、覚えるにしても相応の熟練を要するうえ、ステージがミラー(映像反転)になったり、映像を複数回繰り返し再生させることで操作回数が変化するギミックがあるため、ある程度のゲーム性は確保されている。そのため、タイミングをきちんと覚えたところで咄嗟の決断と判断が下せなければいつまで経っても先に進めず、残機だけ失う一方であるので、そこは誤解なきよう。また、他のLDゲー同様に入力時間の早さでスコアが変動するため、スコアアタックを狙うとなれば急激にハードルが上がる。

総評

当時低迷していたアーケードゲーム業界の起死回生も兼ねて導入された本作は、アニメーションの質の高さと物珍しさから当時の10代から特に支持され、1984年2月には3200万ドル(当時)と言う、通常のアーケードゲームの10倍ほどの売上を記録するほどの大ヒットを記録した。これはLDゲームとしては異例だったそうであり、以後これに匹敵するほどにヒットしたタイトルは確認できていない。「アーケードゲーム低迷期を救った」と評されるほどの売上を記録しただけあり、当時日本での会社更生法にあたるチャプター11が適用され破産状態にあった、ドン・ブルース氏のスタジオが、今作で得られた利益で持ち直すのではと囁かれていたほどである。

1983年末には『Ms.Pac-Man』『ポールポジション』に次ぐ3位の売上を記録するなど人気は長く続き、その功績からビデオゲーム初期の傑作として『Pong』『パックマン』らと共に北米ワシントンD.C.のスミソニアン博物館に収蔵されるに至った。

制作者サイドにも影響を与え、今作の大成功が「ゲームでもアニメーションが実現できる」として、当時のエリック・シャイ氏が『Another World(アウター・ワールド)』を制作するキッカケを作った。

しかし単体のゲームとして見れば、最高峰のアニメーションと演出に大きく助けられているため、後々に流通する多数のLDゲーと比べて差別化がなされているとは言え、結局は反射神経頼りの覚えゲーであり、救済措置を考慮しても全体的に極めて高難易度なゲーム内容が目に余るため、全体を標榜して純粋に良作として評価して良いかといえば、どうしても否定符が付いてしまうのもまた事実。結果、後年のLDゲーの売上不振とLDプレーヤーの故障頻度も相まって、業界からの本作に対しての視線も懐疑的なものへとなってしまった。

そうした意味でも、まさに時代のニーズや情勢と綺麗に噛み合ったゲームと言える。復刻移植も多数であり、ゲームの歴史を変えた意味でも未来永劫歴史に名を刻む存在として君臨し続けることは確かである。これから興味があって手に取りたいユーザーならば、失敗時の豊富なアニメーションも包括して、無理して最後まで到達することよりも、場面ごとに移り変わりを楽しむゲームとして割り切れば、イケるクチと言えるかもしれない。超高難易度に屈しない精神を持つゲーマーならば、是非ともこのスリルな高難易度にチャレンジしてみてはいかがだろうか。


余談

LDプレーヤーに負荷を掛けやすい仕様

  • LDゲームとは切っても切り離せない「プレーヤーが頻繁に故障する」問題は、黎明期に稼働開始した今作でも例外ではなかった。今作で使用されているLDプレーヤーは当時としては高性能であるものの、ゲーム内容ゆえに頻繁にシークを重ねに重ねることが必然であるため、ゲームタイトル自体の人気も相まってLDプレーヤーの故障が頻発していた。
    • なぜ故障しやすかったのかと言えば、そもそもLDプレーヤー自体が映画視聴を前提として設計されていたためである。映像を視聴している場合、データが直線的に読み取られるにつれて、レーザーを搭載しているヘッダーが徐々にディスクを横切って移動するようになっているが、LDゲームの内容は後述の通り、その用途に反した動作を行っていた。
      • プレイヤーの操作ごとにアニメーションが切り替わると言うことは、その都度トラック毎に記録された異なるデータへ切り替えながら読み込んでいると言うことであり、その際ディスクを読み込むためにヘッダーが動く。操作時に一時停止しているのはこの時の挙動であり、それによって発生する読み込み時間を「シークタイム」と呼ぶ。ゲーム内容からも察することができるが、その頻度も数秒〜1秒未満毎と、どう考えても本来の視聴用途を逸脱した動作を行なっているということである。無論ヘッダーを酷使されることが必然であり、稼働中は常時LDプレーヤーそのものを動かし続けていることも相まって、比較的短期間で故障が頻発する顛末となってしまった。
    • また、ディスクを読み取るためのレーザーの寿命も推定で650時間程しか持たなかった模様である。仮に高寿命のものに交換できたとしても、今度はディスクを回すためのスピンドルモーターが先に壊れてしまうため根本的解決には至らなかった。これは後に信頼性の高いLDプレーヤーへと交換することができるコンバージョンキットが用意されたことで概ね解消された。

その後

※以下のタイトルは判定の対象外である。

移植

  • 今作では実に多数の機種に移植された。3DOやメガCD・GBC・DS、PS2、GC、Wii、Xbox360のDL販売サービスXBLA、PC(Steam)等に完全移植されるなど、復刻が非常に盛んである。いずれも「Don Bluth Presents」の名称が記載されるなど、ドン・ブルース氏が手掛けたことが明記されるようになっている。
    • 特筆すべきなのは2000年にCAPCOM USAから発売されたGBC版であろう。H/Wスペックから考えても「FCやGBのようなアクションゲームの間違いでは?」と思いきや、LDゲームの方を半ば無茶移植とも言うべき技術力で再現している(制約上端折っている箇所はあるが)。ちなみに移植を手掛けたのは後にACのオムニバス移植で知られるようになったアメリカのDigital Eclipse。余談ではあるが、日本未発売ながらもなぜか言語設定に日本語がある。
+ GBC版ドラゴンズレアのプレイ映像。起動後の言語設定に日本語があることも確認できる。

続編

  • 続編として『Dragon's Lair II:Time Warp』が前作同様LDゲームとして1991年に出ている。こちらもPS3、Wii、DSiWare、PC(Steam)、Mac(Steam)、Amiga、CD-i、iOS等といった多くのプラットフォームに移植されている。
  • 世界観は異なるが、同じ製作スタッフによる作品にSF冒険活劇をテーマとした『Space Ace』があり、こちらはタイトーの有名LDゲーム『タイムギャル』の作風に影響を与えた作品として知られている。また本作同様、SFCでアクションゲーム化されているがやはり難易度が高く、SFC屈指の難ゲーとして有名である。
    • 上記2タイトルは、2010年に日本未発売のWiiソフト『Dragon's Lair Trilogy』に移植されており、2020年12月24日に日本でもPS4やNintendo Switch版がダウンロード専売として発売されたことにより、ついに日本語でもプレーできるようになった。

タグ:

LDゲーム 1984年 AC
最終更新:2024年12月17日 19:21
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