ENDER LILIES: Quietus of the Knights
【えんだーりりーず:くわいたす おぶ ざ ないつ】
ジャンル
|
アクション
|
|
対応機種
|
Nintendo Switch Windows(Steam) Xbox One Xbox Series X/S PlayStation 4
|
発売元
|
Binary Haze Interactive
|
開発元
|
Live Wire, Adglobe
|
発売日
|
【Switch/Win(Steam)】2021年6月22日 【One/XSX】2021年6月29日 【PS4】2021年7月21日
|
定価
|
2,728円(税込)
|
プレイ人数
|
1人
|
レーティング
|
CERO:C(15歳以上対象)
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
モノトーンの印象的なビジュアル アクションゲームとして王道な面白さ 雰囲気に合致した楽曲 若干オリジナリティが弱い
|
概要
2021年1月にSteamにてアーリーアクセスが行われ、その後同年6月に正式販売された2Dアクションゲーム。
パブリッシャーを務めるBinary Haze Interactiveにとっては本作が初めて自社からリリースするタイトルとなる。
なお、作風や海外で人気の高いジャンルのメトロイドヴァニアに該当することから海外産タイトルと勘違いされることがあるが
パブリッシャーのBinary Haze Interactive及び開発を務めたLive WireとAdglobeの3社はいずれも『エストポリス伝記』等で有名なネバーランドカンパニーの元スタッフが中心になり設立された会社で、れっきとした国産タイトルである。
ストーリー
昔々、彼方の「果ての国」にて。突如降り始めた「死の雨」は、
生きとし生けるものを狂暴な生きる屍へと変貌させた。
人智を超えた悲劇に成す術もなく、王国は滅びた。
呪いであるかのように、止まない雨。
滅び果てた世界の、ある教会の奥深くで
少女「リリィ」は目覚める。
(オンラインストアなどでの公式の作品紹介より引用)
特徴
-
本作はメトロイドヴァニアタイプの2Dアクションゲーム。
-
プレイヤーは主人公であるリリィを操作し、生きる屍「穢者(けもの)」が蔓延る「果ての国」を探索しこの地に何が起こったのか、そしてリリィ自身が何者なのかを知る旅に出ることとなる。
-
アクションは概ね「ジャンプ」、後述する3種類の「スキル」、無敵時間のある「回避」、HPを回復する「祈り」の4つに大分される。
「回避」は左右に移動してその無敵時間で敵の攻撃を回避する。また、特定の装備があれば、敵の攻撃をはじく「パリィ」も使用可能。
「祈り」は初期状態だと3回まで使用可能。道中に咲いている「白い花」を刈る事で、使用回数を回復させられる。
-
崖やすり抜けられる足場に接触した際はそのまま登れるようになっている(本家『メトロイド』におけるパワーグリップに相当する)。
スキル
-
3つのボタンに割り振れるアクションで、2ページ分セットしておく事が可能なため、合計6個のスキルを保持して使える。
-
スキルは各地のボスを倒し「浄化」することでリリィが穢れの魂を受け継ぎ使用可能となる。
-
このうち、シナリオ攻略に必須の大ボスから入手できるのものはメインスキル、寄り道して中ボスクラスの敵から入手できるものはサブスキルと分類分けされている。
-
メインスキルは基本的に回数制限のない通常攻撃のような扱いなのに対し、サブスキルは使用回数が定められており、道中の「赤い花」を刈ると使用回数を回復することができる。
-
中盤の特定のボスを倒すとメインスキルの「奥義」が解禁される。
-
「奥義」は専用のゲージがたまった状態でスティックを上入力しながらメインスキルを使うことで大技が発動できるという格闘ゲームにおける必殺技のようなもの。
-
また、大ボスを倒した場合、二段ジャンプや着地時の攻撃など、スキルとは別枠の常時使えるアクションを入手できる。
レリック
-
各地に隠されているパッシブ効果のあるアイテム。
-
装備できるスロットの総限界値及びレリックごとの個別の使用スロット数があり、進行時点での限界値以上になるレリックを装備することはできない。
-
レリックの総限界値は「魔導の鎖」というアイテムを拾うことで増やすことができる。
-
レリックはレストポイントで休んでいる時のみ付け外しができるようになっている。
レストポイント
-
名前通りの休憩ポイントで、体力や祈り、スキルの残り回数が全回復するが道中の穢者も復活する。
-
セーブやスキルのセット・強化、ファストトラベル等も行える。
-
道中で穢者にやられてしまった場合は最後に使用したレストポイントからやり直しとなる。
-
探索中にいつでも最後に利用したレストポイントまで帰還することができる。
評価点
-
ビジュアル・演出
-
「果ての国」はどのマップも暗い色合いを多用した陰鬱とした世界となっており、どこもかしこも生者はおらずアンデッドしか彷徨う者はいない。そんな中たった一人だけの生者である、か弱き白き少女が際立つキャッチーなビジュアル。
-
そして初めは純白だった少女が「果ての国」の住民のなれの果てである「穢者」たちを浄化するにつれて、その身は穢れに染まっていく。どんどんと「穢者」に近い色合いに変わっていくことで、文字で語らずに破滅的な結末を予兆させる演出となっている。
-
特に、道中の中盤には雪上のマップがあり、そこに差し掛かるころには初めは真っ白だったリリィの変貌が進行しており、背景の白い雪景色との対比で否応なしに目立つようになっている。
-
ネタバレになるので詳細は記述しないが、本作はこうした直接言葉で伝えずにプレイヤーの感情や想像力を湧きたてるような演出が多い。
-
ボスクラスの敵を撃破した際には生前の回想シーンが垣間見れるのだが、この際のモノクロで表現されるムービーシーンが印象的。
-
インディーゲームということもあってかボイスはないのだが、本作はむしろ無声映画のような情趣深さに繋がっており、プレイヤーの心を強く打つ。
-
ストーリー・世界設定
-
ダークファンタジーもの自体は数知れず存在するが、海外製タイトルは文化面の違いからか日本人からすると若干手に取りにくいタイトルも存在する中、本作は儚げな少女が主人公という日本人好みのスタイル。
-
また日本人が女主人公を作ると時に性的な要素を押し出すようなタイトルになってしまうこともあるが、本作はそうした要素もなく真面目なゲームとしての加減が分かっている。
-
ストーリーは上記のボス撃破時の回想ムービーや各地の遺品から断片的な情報が徐々に開示される形となっており、何があったのだろうというプレイヤーの興味を引き続けさせる構成となっている。
-
この手のタイトルだとややプレイヤーに解釈を投げすぎな作品もあるが、本作はコレクトアイテムを全回収すればしっかりと「ストーリーの流れ」自体はしっかりと分かる。
-
ボスキャラは全員リリィたちに少なからず縁のある人物で、そうした人たちが狂ってしまったことに対する悲壮感がプレイヤーの心を揺さぶってくる。
+
|
ネタバレ注意
|
-
作中の時代に至った経緯に関して、あからさまに悪と言える存在が皆無に近かったり明確に特定個人の責任とは言い難いシナリオなのも特徴。
-
しかし誰もに罪がなかったかと言うとそうとも言えない複雑な部分があり、その一方でそうした倫理的な観点で問題のある行為やその後招いたことを考えると悪手であった行いも状況や各人物の感情的にやむを得ない部分もあったり…と単純な善対悪の構造ではない奥深い人間ドラマになっている。
-
序盤の展開やタイトルにも伏線が仕込まれており、こうした要素をしっかりと回収するため物語の構成がとても丁寧。
-
特に「リリィ」の正体について発覚するシーンは淡々とした会話シーンながらも本作で一番の名場面に挙げるプレイヤーも多い。
|
-
アクションゲームとしての手堅い出来
-
豊富なスキルによる自由度。
-
スキルは枠こそ6枠しかないが総数は20種以上用意されており、それぞれ攻撃範囲や性質は異なるため、自分のプレイスタイルや単純に見た目やエフェクトが好みのものを好きに組み合わせて使用できる。
-
汎用性の差はいくらかあるがいずれのスキルも弱すぎて使えないということはなく、概ねバランスはとれている。
-
進行ルートも(スキルの入手タイミングの都合で大まかな順番自体はあるが)単なる一本道ではなくどれを先に取るかというプレイヤーに選択の自由がある。
-
スタッフの想定済みの「仕様」として一部のスキルの組み合わせやプレイヤーの腕前次第で本来の入手タイミングより早くアイテムを入手できる箇所が存在する。
-
手ごわくもパターンを見切って攻略する面白さ。
-
本作は全体として受けるダメージが大きめに設定されており、それなりに探索・育成の時間を長めに取っていたとしてもちょっとした飛び道具で1/5~1/4ほど、終盤は雑魚の攻撃でもモロに食らうと1/3~1/2近いHPを持っていかれる。
加えてダメージを受けたあとの無敵時間が非常に短く、ゴリ押そうとすると1~2秒でHPが溶けることも。
「祈り」というHP回復アクションで約半分ほどHP回復ができるが、入力からHP回復までに時間がかかり、「危ない」と思って慌てて使うと回復が発動する前にやられてしまうことが多く、祈りを使用するにもしっかり敵の攻撃を避けて安全を確保したり、危険を承知で敵を倒してから祈りを使用する必要がある。
-
上記のように無敵時間やHP回復を利用したゴリ押しが不可能な一方、敵の攻撃のほとんどはパターンさえ理解すればしっかり避けられる作りになっている。雑魚・ボス含め全ての敵は攻撃の瞬間に赤い光が出るようになっており、暗い背景の中でも危険が察知できるよう配慮されている。
-
一度真エンドまで到達すると追加されるNewGame+モードでは自分で各種ダメージ量を調整できる他、敵の行動パターンが変化するというギミックが盛り込まれている。
-
このため通常モードでほぼ完全に敵の攻撃を回避できる実力であっても「やることが同じ」にならずに2周目も遊ぶことができる。
-
マップ画面が便利で、まだ回収していないアイテムや通ったことがないルートがあるか一目で分かるようになっている。
-
操作系を柔軟にカスタマイズできる。自分のクセや好みに合わせたボタン配置やキー配置で、存分にプレイを楽しめる。
-
Mili制作のBGM
-
楽曲はTVアニメ『ゴブリンスレイヤー』や『DEEMO』に携わっているMiliが全曲製作しており、退廃的な世界観にマッチした仕上がりとなっている。
-
ゲームの作風に合った物悲しい曲調の曲が多く、特にチュートリアルステージを抜けた後に流れる「Harmonious」はハミングとスキャットを効果的に使った楽曲で、荒廃しきった村という背景美術込みで作品世界に強烈に引き込んでくる。
-
また、本来はプレイヤーの心境を盛り上げるような曲が流れるボス戦もストーリーに合わせた悲痛な曲で、ボス戦をより印象深いものにすることに成功している。
-
最終盤は単なるダークファンタジーというよりはむしろホラーゲームのような聞いただけでドキリとする楽曲もあり、(有機的すぎて怖いという意見もなくはないが)最後までプレイヤーの心を掴み続ける。
-
リリィの行動や状況に応じて細かく楽曲の音が減ったりエフェクトがかかったりとインタラクティブミュージック的な仕掛けがある。
-
特に、新マップへの接続部やイベントやボス戦が発生する場所ではあえてBGMを流さず突然無音や環境音のみになるため、プレイヤーの緊張感に大きな緩急をつけにくる。
賛否両論点
-
本作は様々な事情から難易度に関して人によっては「ちょっと難しい」という意見もあれば逆にむしろ「簡単・親切すぎる」という双方の意見が存在する。
-
先に「難しい」と感じる人の観点から解説すると、単純に敵のボスの火力が高く油断すると一気に削られるため適切に回避する必要があることと、後述の通り雑魚戦がスムーズに進みにくいことが挙げられる。
-
世界に関する設定やキービジュアルが魅力的なだけに、それらに惹かれて購入したライトユーザーによってはいざ買ってみたら予想以上に難しく苦戦するということも。
-
レベル制を採用しているがリリィのレベルを上げても上がるのは攻撃力のみなので、単純にレベルを上げればそれだけで容易に攻略できるというわけでもない。
-
ライフは収集アイテムである「お守りのかけら」を拾うことで増やせるがボスクラスの敵の攻撃はその時点で取得できるお守りを全て取得していたとしても1発程度しか耐えられる量は変わらないため焼け石に水。
+
|
ネタバレ注意
|
-
ライト層にとって鬼門となりがちなのは、シナリオ中盤に当たる3番目〜5番目のボス。この辺りから徐々に的確な判断と操作を要求されるようになるうえ、誘導弾や追尾攻撃、果ては“回避した先に持続時間の長い範囲攻撃のトラップ”などといった厄介な攻撃が増えてくる。
-
一般的なメトロイドヴァニアなら、歯が立たなかった場合アイテム回収などでゴリ押しできたりするのだが、このゲームではこの時期のアイテム取得制限が非常にタイトでシビア。どう進めようとギリギリの接戦を強いられることになる。
-
特に(順当に行けば)5番目に当たる塔エリアのボスは作中屈指の強敵で、人によってはラスボスより強いと評されるほど。
-
逆にここさえ乗り越えることができれば、それ以降は探索できるエリアが格段に広がり、テンポよく育成できるようになる。
|
-
製作の手間があるのは分かるが、シナリオや演出を楽しみたい人向けの極端な低難易度モードといった救済要素があるとよかったかもしれない。
-
逆に「簡単」だとする意見として、本作はデスペナルティがなく、全体的にレストポイントが多くボス戦の最寄りマップにはほぼ必ず設置してある等リトライがしやすい作りになっていることが挙げられる。
-
この「デスペナルティなし」がかなり強力で、経験値や集めた魂の減少が無いこともさることながら、一度起動したマップ内の不可逆ギミックや入手したスキルが、レストポイントに到達する前にやられてしまったとしても元に戻らないという珍しい仕様がある。
いつでもメニュー画面からレストポイントまで戻って、回復して仕切り直し出来てしまう点と合わせて、コアユーザーからは緊張感に欠けるという指摘もなくはない。
-
また、優秀なカウンター系のスキルや特定のボスに有利に立ち回れるスキルがあるので、これらを使いこなせば大きく難易度は変化することになる。
-
しかし、そもそもカウンターのタイミングを見切れるかというのも個々人の腕前次第な部分であり、スキルを適宜入れ替えしないプレイングをして強みに気づかないまま進んでしまうということもあるので「用意されている」ことと「できる」ことは別と言える。
-
なお、最終的に特に難しかったボスに関してはアップデートで弱体化がなされており、開発スタッフとしては少々難しすぎたという認識のようである。
問題点
-
厄介かつ倒してもうま味が少ない雑魚敵
-
ゲーム後半はワープ能力持ち、急に突っ込んで切りかかってくる、連続ヒットするダメージゾーンを展開する、高速追尾弾を放ってくる、図体がデカすぎて素通りしにくい等処理に苦心する敵がとにかく出続ける。
-
例として本家『メトロイド』であれば後半入手できる能力や特定の手段で簡単に倒せたり、『月下』以降の『ドラキュラ』はランダムドロップアイテムや経験値以外の自身を強化できる要素がある等、メトロイドヴァニア系列作はこうした雑魚戦を簡単に突破できる手段、あるいは敵を倒すことによるリターンを用意しているタイトルが多い。
-
一方本作はわざわざ雑魚に付き合う意義・爽快感に欠け、ただ面倒と感じやすくなりがち。
-
舞台設定やビジュアル、ストーリーの一部の展開・システム部分など全体的に既存のソウル系アクションゲームを連想させるポイントが少なくなく、とりわけ『Hollow Knight』との類似点が多いと指摘されやすい。
-
スタッフインタビューでも影響を受けた作品に挙げられており、決して悪意のあるパクリというわけではないが、あともう一ひねり欲しかったところはある。
総評
ストーリー・BGM・ビジュアルがこれ以上ない形で溶け合っており遊んだ人の心に強く残る一作。
とりわけ同ジャンルのメジャータイトルが海外製作ゆえに洋ゲー的な味付けに仕上がっている中で、国産かつ日本人好みのテイストに落ち着いているのは特筆点と言える。
アクションゲームとしては目新しさに欠け若干気になる部分があるのは否めないものの、ベテランのスタッフが業界のトレンドを踏まえ真剣に作った秀品と表現できるだろう。
ダークファンタジーものが好きな人やキービジュアルが琴線に触れた人は、全てが壊れてしまった残酷な世界の中でこそ光輝くリリィたちの物語をぜひ見て欲しい。
余談・その後の展開
-
堅実なゲーム内容もあってかリリース後も安定して売れ続けており、2023年初頭には全機種・全世界での累計販売本数が100万本突破したことがアナウンスされた。
-
発売一周年を迎えた2022年6月に公式より「今後の展開にどうぞご期待ください」とアナウンスされると同時に続編が開発中であることを示唆する画像が公開された。
-
2024年2月21日の「ニンテンドーダイレクト ソフトメーカーラインナップ」にて続編『ENDER MAGNOLIA-BLOOM IN THE MIST-』が正式に発表された。2025年1月23日にWin/Switch/PS4/PS5/One/XSXで発売された。
最終更新:2025年02月14日 11:05