グローランサーVI Precarious World

【ぐろーらんさーしっくす ぷれきゃりうすわーるど】

ジャンル ノンストップドラマチックRPG
対応機種 プレイステーション2
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 アトラス
開発元 アトラス(チーム・キャリア)
ワイズケイ
発売日 2007年6月21日
定価 7,329円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
判定 良作
ポイント 前作の改善
ボリューム・システムはシリーズ上位
ドラマチックさは薄い
グローランサーシリーズリンク


ドラマチックは時を超えて




概要

ノンストップドラマチックRPG・グローランサーシリーズの6作目。前作『グローランサーV Generations』から一年も経たずに発売された。
基本システムは前作に引き続いて3DRPGとなっているが、様々な点が調整されている。
世界観は前作『V』から地続きとなっており、前作から続く物語の実質的な完結編となっている*1
ゲーム画面は殆ど前作と変わらず、BGM、SEなどもほぼ流用となっている。発売スパンの短さと言い、シリーズでは『II』⇒『III』の流れに近い。


ストーリー

ここはエスグレンツ大陸。
その大陸南部、ヒンギスタン王国では
王家の圧政からの解放を目指した者達による内紛が起こっていた。

反政府組織は、強力な政府軍の前にちりぢりとなり、
各地で小規模な反乱が多発、ヒンギスタン王国内は荒れた。

見かねた西のフォメロス国はヒンギスタンの内紛に兵を送り、
これが引き金となってヒンギスタン、フォメロス、反政府組織という
三つ巴の図式が出来上がった。

そして東の隣国ジェワールに拠点をかまえる
世界的企業モノポリス社は、自前の警備兵を持ち、
戦争地域へも市場を拡げていた。

そのエスグレンツ大陸と大海を隔てたところに
周囲を光の結界で閉ざされた、大陸がある。
もっか、モノポリス社の関心は、
その大陸に存在する、手つかずの市場であった。


特徴

  • 基本的には前作のシステムを踏襲している。
    • しかし前作では3DRPGへとモデルチェンジを果たしたものの、粗の多さから不評が相次いでいた。本作はその不評意見をフィードバックし、前作のシステムを改善したものとなっている。
    • 現在は見られないが、公式サイトや高田慎二郎ディレクターの日記でわざわざ動画付きで改善点をアピールしていたりと、スタッフとしても大きなセールスポイントとして挙げたかった模様である。
  • ロール制は廃止された。
    • 前作では主人公以外のキャラを順番に操作していく「ロール」を採用していたが、本作では従来通り最初から最後まで1人の主人公のみを操作する形式に戻った。
  • エンチャントジェム
    • 旧作の「精霊石」「魔石」、前作の「アクセサリー」にあたる装備品。今作では合成によるカスタマイズが可能となっている。
    • 属性や耐性の付与、能力値の上昇などは従来と同じだが、1つのジェムには能力を最大で4つまで備えることができる。
  • 妖精
    • シリーズお馴染みの主人公の代弁者だが、今作では前作のライバル妖精だった「ユリィ」がパートナーになる。旧作キャラがこのような扱いになるのは異例。
    • 育成要素は健在だが、前作のような有料トレーニングは無くなり、パラメーターを上げる「ラナの実」「ラナの種」を使った強化に一本化された*2
    • 妖精コンテストも無くなっている。そもそもユリィ自体が妖精コンテストのクイーンである*3
  • ふとん犬*4
    • 前作の妖精コンテストに変わる要素。前作にも登場したふとん犬をユリィの立場で育成する。
  • コンティニュー
    • 今作では主人公の時間遡行能力により、戦闘で負けてもやり直す事ができる。
    • また、一部には敗北以外でゲームオーバーになる場面も存在するが、そちらもやり直せる。

登場人物

+ クリックして展開
  • メークリッヒ(CV:天田真人(現・四反田マイケル))
    • 本作の主人公。モノポリス社の私設軍の一員らしいが記憶を失っており、特殊部隊「赤狼隊」に配属される。ある時を境に「時を遡る力」に目覚める。
  • ユリィ(CV:落合祐里香)
    • 前作に引き続き登場。クイーンオブピクシーの称号を持つ妖精。メークリッヒこそが予言の勇者だと信じ、彼のパートナーとなる。
    • 前作ではややケバめのメイクをしていたが、今作では登場後すぐにすっぴんになる。軽装に着替えて髪も下ろすので印象も柔らかめに。コスチュームチェンジで元に戻す事も可能。
  • ウェンディ(CV:小清水亜美)
    • モノポリス社の私設部隊の一員で、陽炎流槍術の使い手。モノポリス社に入ったのは何らかの目的があっての事らしい。有り金全てを費やした回復薬を落としてしまい、同僚であるメークリッヒは彼女の世話をする羽目になる。
  • ルキアス(CV:小松里歌)
    • モノポリス社に滅ぼされた里の生き残りの少年。ある理由からメークリッヒをライバル視し、彼を超える事を目標とする。
  • ホフマン(CV:三宅健太)
    • フォメロス国軍元少尉。上官に嵌められて無実の罪で追われており、自身の潔白を証明する証拠を探っている。大柄な見た目に反して優男だが、熱いものも秘めている。
  • イリステレサ(CV:田中涼子)
    • 命を引き換えとなる使命を帯びた「大地の巫女」。大地の里から姿を消し、何故か今はテロリストと行動を共にしている。
  • アニータ(CV:能登麻美子)
    • モノポリス社総帥の娘。ある技術の実験台にされ、研究所で軟禁生活を送っている。記憶を失う前のメークリッヒの事を知っているらしい。
  • ゼオンシルト(CV:鈴村健一)
    • 前作の主人公。閉ざされた大陸「ゴートランド」の平和維持軍実行部に所属する青年。体内の1号細胞の封印の為に妖精のコリンとは今も常時一緒にいる。クイーン・スクリーパーを巡る一連の事件を収束させた最大の功労者のはずだが…。
    • 『II』のカーマイン同様、今回は1人のキャラクターとして性格付けがされており、自発的に喋る。
  • シュヴァイツァー(CV:小林和矢)
    • アニータの実兄で、モノポリス社総帥の第一子。帝王学を学びながらも突出した戦闘能力の高さから特殊部隊「赤狼隊」の隊長になった。メークリッヒとウェンディの上司として共にゴートランドに向かうが…。
  • シャイアー(CV:清水こずえ)
    • 若くしてモノポリス社の取締役を務める有能な女性。元はシュヴァイツァーの教育係だった。
  • ブランドル(CV:堀勝之祐)
    • モノポリス社総帥で、アニータとシュヴァイツァーの父親。かつては温厚な人物であったとされるが…。

評価点

  • 通常のRPGへの回帰
    • 前作で不評だったロール制を廃した事で、従来通りのRPGに戻った。これにより「さして重要でもないプロローグが長過ぎる」「次周にアイテムを引き継げない」「本編のストーリーが短め」と言った問題は全て解決した。
    • ゲームを始めればすぐにキャラメイクを経て本編に入れるし、クリア後には『II』~『IV』同様にアイテムや装備をほぼ全て次周に引き継げる。
  • ロール制を廃止した事でストーリーが長くなり、前作がやや短めだったのに対して本作は『I』『IV』にも劣らないほどのボリュームへと増強された。
    • 舞台に関しても、新舞台「エスグレンツ」に加え、前作の「ゴートランド」*5が丸々登場するので、2倍近い広さに拡張されている。
      • 『II』では『I』と同じ舞台且つ、行けなくなった場所が多く、更には基本システムすら変更された事で逆に世界が狭くなった印象しか受けなかったが、今作では正真正銘大幅に拡張された世界となる。
  • システムの改善
    • 基本システムは前作を踏襲しているが、今作は敵にトドメを刺しても時間が停止しなくなり、テンポが良くなった。
      • 前作ではテンポは従来より格段に良くなったはずなのに、一部の目立つ硬直の所為で逆に悪くなった印象を与えてしまっていたが、今作では本来のテンポの良さを実感できる。
      • アイテムやアビリティプレート入手のアナウンス、スキル発動の際に止まってしまうのは変わらないが、それでも前作よりは格段に快適になっている。
      • また、今回は主人公は硬直中でも移動が可能なのも地味に嬉しい改良点である。移動中は硬直ゲージが減らないが、攻撃直後に距離を取ると言った戦い方も可能になった。
    • 魔法はレベル指定が復活。前作では廃止され、現時点の最大レベルでの詠唱を強制されていたが、今回は『IV』以前同様に調整して放つ事が可能になった。
    • ジェムの合成によって装備のカスタマイズ、戦術の幅が広がった。続投のアビリティプレートと併せて、シリーズでもカスタマイズ性の高さはかなりのもの。
      • 仲間が離脱する際にはジェムも自動的に外れるようになっており、持ち逃げの心配も無い。
    • 敵の移動速度が下がった事と索敵範囲が狭くなった事で、前作のように理不尽に戦闘に突入する事が減った。
      • 前作では一体でも敵に気付かれるとマップ全体の敵が一斉に向かってきていたが、今回はその当該グループのみが襲ってくるようになった。
      • また、仲間に戦闘行動を取らせず主人公に追随させる「エスケープモード」が追加されたため、勝手に敵に向かって行く事が防げている。また、戦闘の離脱も容易になった。
    • これらの事から、前作からの新路線を良い方向に軌道修正しており、3D路線は二作目に至って結実を迎えたと言っていいだろう。また、前作で打ち出した方向性が間違っていた訳ではない事の証左ともなっている。
    • シリーズお馴染みの「ミッション」も健在。ストーリーが長くなったことで、シリーズお馴染みの「ストーリーの一部たる戦闘」が様々なシチェーションで楽しめる。
    • また、妖精の育成に大金が掛からなくなったため、前作ほどは金欠に悩まされる事はなくなった。
    • コンティニューの導入によりやり直しが容易になった。ストーリー性の強いイベントバトルの関係上、初見殺しの多いシリーズなので有難い配慮である。
    • 主人公の移動速度も若干上昇している。
    • 他にも地図に街の名前が表示されるようになった、町間を瞬間移動できるトランスゲートが復活した*6、などの移動面での快適性も向上している。
      • トランスゲートは『III』『IV』と違って拠点がそもそも無いので拠点を経由する事なく、目的地へと直に移動できる。
  • キャラメイクも健在
    • 前作で復活したキャラメイクは更に充実化。『I』にも劣らないほどに豊富なイベントで、細かく主人公の初期パラメーターが設定できる。完璧超人を目指すとなるとリトライの繰り返しは必至で、なかなかゲームが始められない事も。
    • 2周目以降はスキップも可能で、その場合は最大成長率で始める事ができる。
  • 個性豊かな仲間達
    • 主人公のメークリッヒはシリーズ唯一の20代グローランサーであり、歴代主人公と比べても大人として見られる事が多い。
      • その一方で過去作以上に大人げない選択肢も少なくなく、彼が本当に大人らしく振る舞えるかはプレイヤー次第である。
    • ヒロインであり、主人公の相棒的存在のウェンディは旅立って早々にドジを踏んで主人公に寄生する羽目になったり、彼女を思いっきりからかう選択肢が登場するなど、シリーズ中でも特に個性の強いヒロインとなっている。
    • 他の仲間も、年齢不相応に大人びているが徐々に主人公を認めて敬うようになっていく弟分のルキアス*7、シリーズ最大級の巨漢だが温厚でしかし熱くもなれるホフマン、堅苦しいと思いきやツンデレ化するそして年齢詐称疑惑アリのイリステレサ、シリーズ最強クラスの巨乳を誇るおっぱい総帥のアニータ*8など、いずれも個性的。
    • 後述するように掘り下げのイベント量は物足りないが、キャラクター自体は決して薄くはない。サブイベントではそのキャラの普段と違う面が覗ける場合もある。
    • 前作ではやたらコスプレじみていたデザインは(前作に比べれば)無難なものになり、シリーズらしい奇抜さはあれど違和感を持つ事は少ない。
    • また、パーティ内には前作のようにアクの強い人物はおらず、不快なキャラ描写や理解に苦しむ行動を取る事も基本的に無いので安心して冒険できる。
  • 前作と世界観を共通しており、前作キャラも登場する。
    • 前作主人公ゼオンシルトは『II』でのカーマイン同様、仲間として登場する。更に前作のセーブデータをコンバートすれば強さを引き継げるため、徹底的に鍛えていればバランスブレイカー級の活躍を見せる。逆に弱い状態でコンバートすると苦労する羽目になるが。
      • 性格的にも従来主人公のようにクール寄りではあるが、クールに傾倒していた『II』のカーマインと違って年相応の面も多く人当たりのいいキャラとなっており、好感が持てる。自身の妖精キャラと実際に絡むやり取りが見られるのもシリーズでは貴重な例である*9
      • コンバートした場合は名前もそちらを引き継ぐ事になる。また、今作中でもゼオンシルトの名前変更が可能となっているため、やっぱり変えたくなった場合も安心。
      • 尚、ゼオンシルトの最強武器と次点の武器、最弱武器は本作では手に入らないため、もし本作で手に入れようとした場合は装備させたデータをコンバートする必要がある。
    • 前作で色々と問題視されていたクライアスは今作では良き指導者として登場し、主人公達に情報を提供したりゼオンシルトを「スクリーパー退治の専門家」として派遣するなど、出しゃばる事もなく役割もしっかり果たすキャラになっている。
    • 前作の人気キャラであるランディは極めて短期間ではあるが一時的な同行者となり、戦闘も可能である。
    • 今作の主人公のパートナーが、前作のライバルであるユリィという点も、前作プレイヤーからするとなかなか新鮮な体験と言える。
      • 完璧主義な性格から前作のコリンと比べると息苦しさは若干あるものの、前作のような高飛車な部分は無くなり、また今作では完璧超人だった前作では見せなかった面も多く見せる。更に個別EDではコリンが成し得なかった歴代妖精のような結末を迎える。
      • また、前作のコンテストで戦ったライバル妖精達も一通り登場し、あるシーンではストーリー上も重要な役割を果たす。
  • BGMも良い
    • 前作の流用が多いが、元々良質だったのでそのクオリティは据え置き。
    • 新規BGMも同様に良く、特にラストバトルの曲はシリーズでも屈指の盛り上がりを演出してくれる。
  • エンディングの仕様
    • 前作のような告白イベントでのアニメは無くなったが、代わりにキャラ毎にエンディングアニメが用意されている。そのため、キャラEDはあっさり目が多かったシリーズの中でも豪華な演出になっている。ラストの一枚絵も男女問わずより気合いの入ったものになっている。
      • また、今作ではラストバトルでは仲間達が1人ずつ強制離脱させられるギミックがあり、最後は主人公と告白相手だけでラスボスと決着を付ける構図となっている。エンディング前を盛り上げる新しい試みである*10。また、離脱する仲間も最後にラスボスに一矢報いる形で熱く去って行く。
    • ラスボス撃破後からエンディングまで自由行動がある。
      • 旧作でも『V』を除いてラスボス戦後に少し操作可能なパートが存在したが、ただ帰還するだけだったり、1マップしか移動できなかったりなどとあくまで「最後の仕上げ」をプレイヤーにさせる時間だった。対して本作ではいくつかの街を歩き回る事が可能であり、平和になった世界を実際に体験することができる。
      • エンディングによっては同行者が存在し、イベントのセリフも変わる。
    • スタッフロールの演出も従来より手が込んでおり、EDテーマ「BEGIN」の優しいメロディも相俟ってクリアの心地よさに浸らせてくれる。
  • やり込み要素も相応にある
    • お馴染みの闘技場やダンジョンレディの井戸は勿論完備且つ、ボリュームも増加している。
      • 井戸はなんと前代未聞の地下50階。途中に中ボスも居たりと、シリーズでも突き抜けた構造になっている。参考までに、旧作では地下10〜15階でボスもいないランダムダンジョンのみであった。
      • 闘技場はいつもの充実のメニューに加え、2周目以降にはより過酷なクラスが待っている。あろう事か、クイーンスレイヤー認定試験*11なんてものも。
    • 前作の妖精コンテストのようにキャラEDに必須ではないが、ふとん犬育成もかなり作り込まれている。
      • メニューの細かさに加え、育てられるふとん犬も複数用意されている。
  • ダンジョンレディに立ち絵が付いた
    • 『III』から隠しダンジョン関連で登場していたダンジョンレディだが、本作では遂に立ち絵のお披露目となる(容姿は前作からのものに準拠)。
    • 他のキャラには無いデフォルメ顔もあり、メインキャラを差し置いて感情表現豊かな作中きっての強キャラと化している。
    • 更に妹のダンジョンガールも登場し、お馴染みの隠しダンジョン生成イベントも従来より無駄に濃くなっている。
      • キャラの強さ故か、この2人は後のドラマCDにすら登場している。

問題点

  • シリーズの売りである「ノンストップドラマチック」なシナリオだが、今回は正直なところドラマチックとは言い難い。
    • 本作のストーリーは、悪の親玉であるラスボスから世界を救うために奔走する物語で、これ自体はシリーズや他のRPGでも珍しくない王道の流れである。前作のようなツッコミ所も特筆するようなものは無い。
    • しかし過去作のような様々な思惑が交錯する人間模様、主人公達の葛藤と言った「ドラマチック」成分が少ない至ってシンプルな勧善懲悪ものになっている。良く言えば王道、悪く言えばありきたりで、平坦な展開が続くため盛り上がりに欠ける。特に後述するように主人公側の描写も甘い所為で、淡々と問題を処理していく展開になりがちである。
    • 全体的に言えるのが、「世界を救う」という大目標があっても主人公にはそれを行う理由が弱く、「やらされている」感が強い。
      • 過去作では徐々に主人公の外堀を埋め、時々の目的を果たしつつ世界観に没入させて最終的な大目標へのモチベーションを高めていく構成だったが、今回はそれがかなり弱い。そのため、プレイヤーとしても使命感を抱き難く、ただゲームをクリアするためにおつかいをこなしているような感覚に陥り易い。
      • 任務をこなすうちに世界の危機に関わるという点は過去作と同じだが、本作はその任務を与えてくれる組織から早々に離反してしまう。同じく早くに組織を抜ける『IV』では「遺志を継ぐ」という強い動機があったが本作にはそれも無く、他にやれる人がいないから自分達が問題を解決する、の繰り返しになる。
    • 序盤こそ、主人公が企業に属していたり、経済が関わる話運びがあったり、近代・SFチックな雰囲気が強めだったりとシリーズでも新鮮な雰囲気があるものの、すぐにいつもの世界観に戻る。かと言って従来のようなドラマにはほど遠いため、肩透かし感が大きい。
    • 最終決戦直前、ようやくラスボスが本腰を上げた事で世界各地の都市が壊滅する事態に陥るのだが、これが実際に歩き回ってみないと分からない。『I』や『V』のラスボスも登場は遅くとも、しっかり本編中で明確に世界を危機に陥れていたのだが、今作は本編だけでは深刻さが殆ど伝わってこない。
  • 登場人物は少ない上に掘り下げが全体的に甘く、印象の薄いキャラばかり。
    • 多くのキャラがそれぞれのドラマを繰り広げて強い印象を残していた旧作に対し、本作のキャラは各々の役割を最低限果たす程度の関わりしかせず、印象に残りにくい記号と化している場合が殆どである。
      • 印象が強いのは後述するシュヴァイツァーやネーリスぐらいで、序盤から登場するシャイアーですら有能な秘書として描かれるだけで、内面や過去の掘り下げは皆無も同然。『IV』のシドニーのように個別EDがある訳でもない。
      • あるキャラの立ち絵は『III』のゲルハルトのデザインを殆ど流用している。立ち絵があるのは良いが、デザインそのものの流用は如何なものか*12『IV』の使い魔じゃないんだから。
      • シリーズでも極めて珍しい男性型と思しき妖精も立ち絵付き*13で登場するのだがチョイ役でしかなく、名前も担当声優も明かされないなど扱いは悪い。
    • 『I』のインペリアル・ナイツ、『IV』のロイヤルガード、『V』のスレイヤーのような印象的な強者がいないのも味気なさに拍車を掛ける。
    • 前作ではロール制自体は不評だが、複数の視点でキャラの心情や物語を多角的に描けていた。今作では主人公視点に一本化した事と、『IV』の「遠見」のようなシステムが無い所為もあって、主人公が立ち会わない情景はプレイヤーに入ってこない。結果、上述したようなストーリー運びも相俟って、あまり多くのキャラと関われずそれぞれのドラマが描き辛くなってしまっていると言える。
    • 敵サイドに属する「ネーリス」はEDが用意されているのだが、これもかなり取って付けたようなものである。主人公に惹かれる要因自体はあるものの、イベントの流れが全体的に強引で説得力に欠ける。もう少し丁寧に描けていれば良かったのだが。
    • ラスボスも最大の敵、諸悪の根源とされながら出番が少なく、最終盤まで目立った行動も起こさないため、設定の割には印象は強いとは言い難い。
      • 『IV』ラスボスも影が薄いと言われていたが、あちらは黒幕として暗躍する様子が描かれていたのに対し、本作ラスボスはそれも薄い。
  • パーティメンバーに関しても、前作に続いて休暇が無い所為で掘り下げも物足りず、せっかくの個性が活かしきれていない。
    • 前作同様、ストーリーの節目に解散する(謂わば休憩)イベントで仲間と親睦を深めるのだが、やはりその度合いは休暇には及ばない。しかも前作は拠点を中心に大陸中を回る形式だったのに対し、今作は序盤と終盤以外では拠点らしい拠点が無くとにかく不休で忙しなく働かされている感じがして、余計に心休まる暇が無い。
    • 当初こそウェンディのドジっぷりやふとん犬に萌えるユリィなど、コミカルなイベントも相応あるのだが、途中からはそれも殆ど無くなり、ひたすら世界を救う旅に駆り出される。仲間達も謎の使命感に駆られて邁進するため、序盤の和気藹々な雰囲気など忘れたかのような真面目な展開ばかりになり、ストーリーの長さの割には仲間に愛着が湧く機会は多いとは言えない。またそう言ったイベントは敢えて本筋の流れから外れなければ見られないサブイベントの場合も多く、体験できないまま進めて尚のこと感情移入が進まない事も。
      • 一応、過去のトラウマに苦しむルキアス、使命を果たせず生き残ってしまったが故にこれからの生き方を模索するイリステレサなど、ED条件となるイベントには印象的なものも多いのだが、基本それがメインなので休息らしいゆるいイベントはかなり少ない。
    • 後半に仲間になるアニータは物語開始前に既に「フラグが立った」状態にあるため、加入後は大したイベントも無く好感度を上げるだけでEDが迎えられるという優遇なのか冷遇なのか分からない微妙な扱いになっている。
      • 固有イベントと言えば、思い出の品から過去の様子を見る程度。それもあくまで記憶を失う前のメークリッヒとの絡みである。
  • 主人公・メークリッヒについて
    • 記憶喪失という点は『III』のスレインと同じだが、今作のメークリッヒは記憶を失う前の様子がかなり詳細に語られる。それも「ヒロイン候補5人中3人と深い関わりがあった」「ある回想シーンでは声付きで喋る*14」などかなりキャラ設定が固まっている。
      • その分、顔無し主人公という特性との相性はシリーズでも悪め。メンバーのうち3人がメークリッヒに対する理想像(記憶を失う前の姿)を抱いている点も感情移入を阻害する。そんなメンバーが現在のメークリッヒに目を向けるようになる過程は見所ではあるのだが、それまではかなり比較される羽目になる。
      • 「その身を犠牲にしてでも仲間を守る」「ヒロイン候補の一人に生きる希望を与える」「上官の遺志を継ぐ」と言ったドラマチックな見せ場は殆ど記憶を失う前に持って行かれており、プレイヤーが操作する彼は淡白なストーリーの中を使いっ走りのように走り回るのが大半となる。
    • 歴代グローランサー達の中でも上位に入るほど複雑且つ重い背景の持ち主なのだが、肝心のストーリー上ではそれが活かされる事は少ない。
      • 時間移動能力は彼の専売特許ではないし、記憶を失う前の役割についてもそれ自体はラスボス打倒に貢献するものではない。『I』のカーマイン、『V』のゼオンシルトのように自身の境遇に思い悩んだり苦しむ事もなく、世界の危機との関係も見え辛く、言われるがまま「世界を救う」為に奔走する形になる事が多いため、上述した通りモチベーションにも繋がりにくい。
    • 一応、ラストバトル直前にキーパーソンとなった結果、自身の存在を揺るがす問題が起きるが、これも不慮の事故のようなもので『III』のスレインや『IV』のクレヴァニールが抱えていた宿命とは程遠い軽さである。
      • また、この問題はクレヴァニールのように悲壮な覚悟と長い旅路を経て解決する訳でもなく、都合よく偶然解決してしまう。付け加えると、ユリィEDでの出来事も同じ要因による偶然である。
  • 本シリーズは戦乱を通じて様々な思惑や人間ドラマ、軍略を描く戦記モノとしての魅力を持っていたのだが、本作はシナリオの大半が「主人公達がラスボスの脅威から世界を救うために走り回る」様子ばかりを描くため、戦記部分は必要最低限しか描かれていない。
    • 舞台のエスグレンツ大陸では三つ巴の戦争が起きているはずなのに、これに介入する事は数えるほどで対岸の火事のような図式になってしまっている事が殆ど。
      • 各国の設定自体は相応に作り込まれており決して手抜きという訳ではないのだが、描写が伴わないためどうにも印象が薄くなりがち。
      • 旧作のように敵が裏で糸を引いている訳でも、世界的な問題が戦乱の原因となっている訳でもなく、戦乱自体は本筋とはほぼ無関係である。
    • 終盤になってようやく戦争終結に動くのだが、それも「ラスボスと戦うために世界がまとまる必要がある」からであって、それ自体は目的と言うより過程程度の扱いである。
      • 戦争終結の方法も、各国の戦火を広げる敵(タカ派の悪徳政治家、圧制を敷く施政者など)を順番に対処していくだけで害虫駆除作業のような流れでしかない。敵側も思想家やカリスマではなく単なる悪役に過ぎない。ポッと出ですぐに倒されたり、そもそも直接は登場しなかったりと扱いも杜撰。
      • そしてトップがすげ変わっただけで、あっさり終戦して各勢力が何事も無かったように手を取り合う流れもまた戦記物としては残念な出来である。それ自体は過去作にもあったが、相応の描写で説得力を持たせていたのに対して本作は本当にあっさり片付けられてしまう。
  • 乱用される時間移動
    • 今作では時間移動と過去改変がテーマとなってはいるが、跳ぶのは数日から長くても数ヶ月。それも敵が過去を変えたから追いかけて阻止する、或いは悲劇を回避するために少し過去に戻るという事をその都度行うだけで、あまりタイムトラベルをしている感じがしない。それはまだ良いとしても、敵味方双方とも困ったら過去に行くという感じで軽々しく時を超え過ぎであり、それに対するリスクや困難さは説明こそされるがあまり描写はされない。
    • 同じく時間移動を扱っていた『IV』では未来から持ち込まれた物や情報が重要な役割を果たしたり、過去に跳んだ者が歴史に大きく影響していたりなどストーリーに深く関与していたのだが、今作の時間移動は敵味方双方にとってのただの都合の良いチートに過ぎない*15
      • また、『IV』では時間移動はSF要素も絡めて設定が作り込まれていたのに対し、今作では妖精達が力を合わせれば過去に飛べたりなど、あまりに扱いが軽い*16
    • その時間移動も後半は途端に見られなくなり、クライマックスで思い出したように行われるだけ。そしてその結果が後述する結末である。
      • そもそも他のタイムトラベルものに比較すると、世界観的に時間移動の必要性自体があまり無く、キャッチコピーにしてまで前面に出すには弱い。その時々の問題解決に必要なだけで最終目標には特に関係なく、確かに最後は時を超えて世界を救うが、それも結果的にである。
    • コンティニュー機能は主人公の時間遡行能力によると序盤に描写されるが、最初のミッションで意味深に発動するも以降はストーリーにも絡む事は無い。
      • そもそも後に説明された時間移動のルールとは明らかに矛盾している。ただのシステムと割り切れという事なのかもしれないが、ならば最初のミッションは何だったのだろうか。
  • 理解に苦しむキャラ
    • 本作の敵サイドにあたる「シュヴァイツァー」は前作のアイザックやペルナギにも劣らない、かなりのトンデモキャラになっている。
      + シュヴァイツァーの所業
    • 時間移動能力を持つという事で、何が問題があればちょっと時間を遡って歴史を改変するという事を何度も行う。その結果、どんな現在にどんな悪影響を及ぼそうが意に介さない。
      • 目的の為なら手段を選ばないという設定通り、その歴史改変の方法もえげつなく、軽率というかやりたい放題であり、大量虐殺を伴ったり大きな災厄を齎そうが御構い無しで安易な行動を繰り返す。主人公達の歴史改変のいたちごっこも主にこの男の所為である。
      • 当初は自社の利益のためにこのような事を行なっていたのが、途中からは黒幕を倒すために行動を開始する。しかしそれでも手段を選ばないのは変わらず、寧ろより過激になる。
    • しかしこれだけのことをしておきながら、目的が同じというだけで主人公達は「自分達が勝ったら黒幕を倒すのに協力しろ」という条件を突き付けて戦いを挑む。そして倒したらあっさり和解する。
      • 彼が起こした大量虐殺や大破壊は全て主人公達の歴史改変で無かった事にはなっているとは言え、このような外道と簡単に協力しようとする流れは良識あるプレイヤーは首を傾げてもおかしくない。
    • 結局、最後は敵の不意打ちを受けて倒れ、以後は死亡したと扱われるのだが、あるイベントを起こすと生存が判明する。しかしあれだけのことをしておきながら、まるで裏から主人公達を支援するサポーターのような立場になる。そしてエンディングでも善人扱いである。
    • どうも前作に続き、「目的のために手段を選ばない」性格自体はさほど悪とは看做されていない模様である。
      • 己の信念を貫いて散った『II』のウォルフガング、最期までカリスマ悪役を演じ切った『IV』のルードヴィッヒのような例が過去にはあるのだが、この頃の開発陣はラスボス以外の悪役作りが中途半端になりがちだったようだ。
  • 前作を蔑ろにする展開
    • 時間移動による歴史改変を可能とする敵がいるのだが、それによってゼオンシルトが前作のロール5開始直後に殺されるという歴史改変が行われ、修正するまでしばらくそんな歴史の中を進む事になる。
    • 散々苦労して倒した前作ラスボスが、なんと普通に倒すと分裂して復活するという事実が明らかになる。ゴートランド到達時、遠方を当たり前のように浮遊する複数の前作ラスボスの姿は前作を経験したプレイヤーに絶望感を与える上、あれだけ強大に描かれていた前作ラスボスがまるでただの巨大モンスター扱いなのも切ない。
      • 結局、メークリッヒ達が過去に飛んで前作ラストバトルの裏側で工作(=前作ラスボスが復活しない為の処置)をした御蔭で事態は収束するのだが、前作終盤の盛り上がりは何だったのかと思えても仕方ない。
      • しかも前作ラスボス戦のBGMは本作ではボス戦に流用されている。ますます前作ラスボスの立場が無い。
    • 前作の仲間キャラでも、メルヴィナ、ルーファス、シェリスは登場こそするが三人揃ってまさかのモブ同然の扱い。ボイスもメークリッヒ側からの反応も無く、しかもストーリー上必須ではない場所への配置なので、下手をすると姿を見る事すら無く終わってしまう*17
    • 前作ではゼオンシルトは体内の1号細胞を封印するために、コリンと常に一緒にいなければならなくなったのだが、今作ではサブイベントを進めるとそれがあっさり解決する。
      • 確かに根本的には未解決の問題ではあったが、それを本編ではなく寄り道で軽く描くのは如何なものだろうか。しかもこの件でゼオンシルトと絆を深めていたコリンは問題が解決するや否や、さっさと別行動を取ってしまう。
      • 久しぶりに自由になれたからという心情は分からなくもないが、前作の告白イベントではコリンが「(封印の必要が無くなっても)一緒にいていい?」と尋ねる⇒ゼオンシルトが微笑んで頷く、というやり取りがあった事を考えると薄情とも取れてしまう*18。そして別行動を取らなかったとしても、差分を作る手間を省いたのか一定の地点以降はコリンが会話に加わる事は基本的に無い*19
      • また、前作ではコリンのEDを目指すと「ゼオンシルトの尽力で落ちこぼれのコリンは成長し、敵わぬ相手だったユリィに勝つ」という展開に進んだのだが、前述の通り今作でもユリィはクイーンのままなので、つまりこの展開は無かった事にされている。
        このEDでは敗北の悔しさを知ったユリィが「次は自分も勇者(メークリッヒ)を見つけるから負けない」とリベンジを誓うという人間的な面を見せており、本作にも続きそうな流れになっている。それを汲んでユリィを「コリンに敗れた元クイーン」とでもした方がメークリッヒ(プレイヤー)側の親近感も湧き易かっただろうし、ゼオンシルト達の絆にも説得力が持たせられたと思われるが。
      • 挙句、コリンはゼオンシルトのEDにも登場せず、ラストの一枚絵にすら写らない。最後にユリィとのやり取りぐらい入れても良さそうなものだが*20
    • 前作ヒロイン候補3人のうち、メルヴィナとシェリスは上記の通り散々な扱いだが、ファニルのみはストーリーにも絡んでくる。
      + しかし…
      • ゼオンシルトの問題を解決するイベントを起こすとファニルはその為にエスグレンツに向かうのだが、後のスクリーパーの襲撃によって生死不明(恐らく死亡)になってしまう。前作で愛着があったプレイヤーにはあまりに酷い仕打ちである。
  • 本作のラスボスはスクリーパーを生み出した存在であり、言ってしまえば前作の全ての悲劇の元凶である。今作ではその禍の根源を断つ事で全てに決着を付ける結末になるのだが…。
    + エンディングは…(重大なネタバレ)
  • 最後は2000年前に飛んだラスボスを追って主人公達も時を越え、2000年前にこの星に襲来した当時の自分と融合したラスボスをその場で倒してしまう。結果としてそれ以降のラスボスの悪事は全て無かった事になる。つまり前作と今作の物語も全て消失する
  • 当事者であるメークリッヒとEDを迎える相手、妖精であるユリィは改変前の記憶を保持している事は分かるものの、エピローグの自由行動での様子を見る限りそれ以外の人物の記憶に関しては全て失われている模様。
  • 前作における全ての元凶であったスクリーパーも大陸の結界も無くなったため、前作の物語自体がそもそも無かった事になってしまう。わざわざロール制などという不評な構成にしてまで「世代」の物語を描いたのは何だったのか。
    • 一応、改変後の世界でも「別の要因で平和維持軍は組織され、ゼオンシルトも所属して活躍していた」とは申し訳程度に語られるが、前作のストーリーを体験してきたプレイヤーにしてみればなんとも遣る瀬無い気持ちになるだろう。
    • 上述のファニルの件も「最終的に帳消しになるから良い」というつもりで入れたのかもしれない。実際、EDでファニルの姿は見える。…だとしても酷い展開である。
  • 微妙なオープニング
    • 前作と同じくオープニングムービーは、主題歌をバックに作中のアニメを編集したものが流れる形式である。しかし前作は主題歌の評価が高く、アニメの編集もよく出来ていたのに対し、本作はかなりお粗末な出来になっている。
    • というのも、本作のアニメは殆どがキャラED用であり、オープニング向きではないからである。
      • 前作では本編中にもアクションシーンを描いたアニメがあり、そこに告白イベントでの落ち着いた雰囲気がコントラストとなって曲に上手く合わさっていたのだが、今作ではキャラエンドのしんみりしたアニメが過半数且つ、本編中のアニメもかなり減った上に動きの少ないものばかりなので、それをひたすら繋ぎ合わせた所で盛り上がるはずもない。
      • また繋ぎ方も雑で、曲にも今ひとつ合っていない。
    • 主題歌「Bravery ~辿り着きたい君へ~」は『I』『II』『V』のような熱い曲ではなく、どちらかと言えば『IV』寄りのセツナ系の曲である。曲自体が悪い訳ではないのだが作風に合っているかは少々微妙で、かと言って『IV』のような専用のアニメを作っている訳ではないのでツギハギ感が否めなくなっている。
      • キャラED用を使っているとは言っても殆どがヒロイン候補のものであるため、曲調と相俟って不出来なギャルゲーOPのようである。ある意味『III』の系譜か。
  • 3Dモデルも基本前作の流用なので、出来の粗さは据え置き。
  • 演出のボリューム低下
    • イベントスチルは『I』『IV』ではストーリーに応じて、前作でもロール終了時や妖精コンテスト優勝時にあったのだが、今回はEDぐらいしか無くなってしまった。
    • アニメムービーも全体的に見ると前作より減っている。上述の通りOPが微妙になってしまった要因に。
  • ふとん犬育成は限られた場所でしか出来ず、通過後は来る機会の殆どない所なので、寄り道し辛い雰囲気のストーリーも相俟ってやらずに終わってしまった人も多い。
  • ラストダンジョンが存在しない。最終決戦の地に向かうとそのままラストバトルを含む幾つかのミッションをクリアして終了である。
    • 従来は『II』を除いて必ずラストダンジョンが存在したのだが、今回はいかにもそれらしい場所に行くのにそこはダンジョンにはなっていない。ラストのあっさり感の一因に。
  • メンバーは加入期間に大きく差があり、ウェンディとルキアスはほぼ加入しっぱなしな一方で他の4人はスポット参戦が多く、育てる機会が少ない。メンバー編成が可能になるのも後半に差し掛かった頃である。
    • 『I』もメンバーの2人は強制加入だったが、他はそれなりに編成の自由があったしパーティの枠も1人多い5人だった。
    • せっかく再登場したゼオンシルトも、加入はかなり終盤である。
  • バグがいくつかある。
    • 特にふとん犬関連はジェム増殖というチート級のものや、ハマってリセットするしかなくなる凶悪なものまである。

総評

前作で噴出した多くの問題をフィードバック・解決し、3Dグローランサーの一つの完成形を見出した一作。
ロール制も廃止したことでボリュームも増加し、ストーリーの長さはシリーズでも上位に入るほど充実した。
一方、シナリオはツッコミ所は減ったものの、「ドラマチックさ」までもが減退した淡白なものになってしまったのは残念な所であり、
シナリオの評価が高い『I』『IV』、ツッコミ所の多い『V』が目立つシリーズ中では地味な立ち位置になってしまっているのも否めない。
しかし物議を醸した『V』の後と言うこともあってか、プレイした人からは絶賛とは行かずとも好意的な意見は多い。
ストーリー自体に極端な破綻や不快さがある訳ではなく、システムにおける完成度・改善点は褒められて然るべきなので、
総合的には「RPGとしての出来は○。但し、ストーリーは△」と言った所か。


余談

  • 本作を最後にシリーズのナンバリング作品は発売されておらず、評価の高い『I』『IV』のリメイク移植が行われるに留まっている。
    • 高田Dは後年「シリーズでは『I』『IV』が気に入ってる」「特に高いポテンシャルを秘めた『IV』に思い入れがある」と語っており、本作がこれらに及ぶとは考えていない模様である。
    • 『IV』リメイクの時も『V』『VI』については触れておらず、やはりシリーズにおける不遇さを感じさせる。
  • 今作ではユリィはクライアスと対面した際に「はじめまして」と言っているが、前作では普通にクライアスがパーティに入れられる時期にユリィと遭遇している。
    • 改変された歴史では「本来知り合いのはずの相手との面識が無くなっている」という描写はあるが、このイベントが起こるのは改変を修正した後の歴史である。普通に前作で知り合った事にしていた方が自然だったと思われるが…。
  • ドラマCDも発売されているが、こちらは本編からはとても考えられないほど暴走したギャグ満載の内容となっている。本編はおろか前作まで巻き込んでおり、主人公二人までもが色々とヒドい事に…。
    • ただ、上述の通り本編のストーリーが淡白なので、いっその事このはっちゃけ度の何割かを持ち込んでも(コメディ描写としては)良かったかもしれない。
    • 尚、このドラマCDの中に「次回作の主人公とヒロインを決めるためのクイズ合戦」というネタがある。ただのネタだとしても、次回作が未だ出ていない現状からすると切ない。
最終更新:2022年09月11日 18:13

*1 主人公達が前作の舞台に到達した時点で前作のラストバトルから約一ヶ月後。

*2 設定上はこれらのアイテムで効率化した自主トレーニングを行なっている。

*3 前作ではパートナー妖精の「コリン」のエンディング条件が「ユリィからクイーンの座を奪い取る事」であったが、今作ではそのような設定は無く、コリンはユリィを一方的にライバル視する平凡な妖精のままだしユリィも変わらずクイーンのまま。

*4 この世界に生息する犬で、特殊な体毛によりまるで布団を被っているように見える事からそう名付けられた。

*5 大陸自体に名前は無く、この名前はエスグレンツ側が付けた呼称。

*6 エスグレンツ側のみ。設定上、ゴートランドには存在しないので前作同様にキャリィ屋を利用する。

*7 しかも担当声優は『I』で主人公の義妹を演じており、声優コメントやドラマCDでもネタにしている。

*8 スリーサイズは"B120"、W60、H86。ちなみにウェンディのバストは90、イリステレサは96。平均的に大きめの本作でも桁が違う。あろう事か、デザインのモチーフがホルスタインだと明言されている。

*9 『II』にはティピが登場しなかったため、カーマインとの絡みは見られなかった。『IV Return』では見られるものの既に使い魔は人間化していた。

*10 ソロEDやパーティ外キャラとのEDの場合は最も付き合いが長いという事でウェンディが残ってくれる。

*11 スクリーパーを倒せる人間は倒したクラスに応じて「○○スレイヤー」の称号を得る。前作ではナイトスレイヤーすら1人しかおらず、その上位のビショップスレイヤーは主人公が闘技場で達成するまで誰もいなかった。そしてクイーンとは全てのスクリーパーの上に立つ"前作ラスボス"である。

*12 キャラドットの色を変えて別キャラに流用したり、一時加入モブの顔グラフィックに過去作キャラを使う事は過去にもあったが、流石に立ち絵は無かった。

*13 『IV』にも少年タイプの使い魔が登場したが、立ち絵は無かった。

*14 担当声優が存在するのはこの為。

*15 「同じ時間には一度しか飛べない」「過去の自分自身と出会うと存在を統合され、時間移動も二度と出来なくなる」と言った制約はあるが、それぐらい。

*16 しかも妖精という種族は歴史が改変された事を認識でき、以前の歴史の記憶を当たり前のように保持しているなど、かなりチートじみた設定になっている。

*17 シェリスは途中で存在は語られるが、ゼオンシルト同様殺害される歴史改変が行われた事による。

*18 コリンは『I』のティピや『IV』の使い魔と違って主人公とは恋仲になれないタイプの妖精であり、このイベントは当人のED以外でも可能だった。

*19 ダンジョンレディ関連のイベントなどに無くもないが、基本無言。また、当該イベントをこなさないとゼオンシルトをラスボス戦に連れていく事すらできないため、彼を最後まで使いたければ必然的にコリンと別れる事になる。

*20 しかもスタッフロールの背景ではユリィはメークリッヒと並んで映るにも拘わらず、コリンと並ぶのはゼオンシルトではなくファニルである。