グローランサーIII The dual darkness

【ぐろーらんさーすりー ざ でゅあるだーくねす】

ジャンル ノンストップドラマチックRPG

対応機種 プレイステーション2
メディア CD-ROM 1枚
発売元 アトラス
開発元 キャリアソフト
発売日 2001年12月6日
定価 7,140円(税込)
判定 なし
ポイント RPGに回帰
ダンジョンもフィールドも独特
フリーダムな選択肢
駆け抜け過ぎたドラマチック
グローランサーシリーズリンク


ドラマチックを駆け抜けろ!




ストーリー

世界では太陽が異変を起こし、地上に降り注ぐ陽光が減少していた。
そのために作物は育たなくなり、人類の版図は減り、
食料を求めて国どうしの戦争まで起こり、破滅の道をたどり始めていた。
物語は異変の影響をあまり受けていない土地「キシロニア連邦」からはじまる。

記憶をなくし、倒れていたところを
キシロニア連邦議長の娘・アネットに助けられた主人公を中心に、
登場人物たちのさまざまな思惑が複雑に絡み合い、たどり着く先は…。
(公式サイトより抜粋)


概要

ノンストップドラマチックRPG「グローランサーシリーズ」の第三弾。
前作『グローランサーII The sense of justice』と同時製作であり、前作の僅か数ヶ月後に発売された。
その為、UIやグラフィック、サウンド、バトルシステムの多くは流用となっているが、
ファンディスク寄りの内容だった前作と違って一本のRPGとして作られており、基本システム面では別物と言えるほどの出来になっている。

舞台は前作、前々作の1000年前。過去作で語られた人類の故郷である「死の世界」。
一部の人々が滅亡を逃れる為に移住した新天地が過去作の舞台であり、本作は移住計画の前後とその後の死の世界を舞台に
前作で語られたグローランサー(光の救世主)の元祖となる少年の物語を描く。

特徴

  • 前作はマップ探索の要素が廃されたシミュレーション風のシステムになっていたが、本作では前々作同様のRPG方式に回帰。
    • しかし各種システムは前々作とも大きく異なっており、シリーズでも独自色を打ち出している。
  • 街から街の間が地続きなのではなく、一般的なRPGのようなワールドマップ形式を採用。ワールドマップ上では歩数エンカウントとなる。
    • 前作『II』ではマップのポイントを移動するとランダムでエンカウントした為、それを通常のワールドマップ形式に流用した形と言える。
  • ダンジョンは入る度に構造が変わるランダムダンジョンが採用されている。
    • 本作のダンジョンは洞窟だろうが地下通路だろうが建造物だろうが全てランダムダンジョンである。一見無茶な設定だが、理由は存在する。
  • 今回の主人公「スレイン」は前々作の「カーマイン」と同様の喋らないドラクエタイプ。
    • しかし今回は前作、前々作に比べて選択肢が大幅に増えており、多くの場面でプレイヤーの意思を反映できるのは勿論、選んだ選択肢に応じて主人公の性格が変化するシステムが導入されている。
    • 例えば人を助ける選択肢を選べば善人寄りに、逆なら悪人寄りという感じで主人公の性格が常に変動する。優しさ、頭の良さ、女好き、男好きと言ったパラメーターもある。
      • それによって「現在の性格では選べない選択肢」が登場した。善人だと非情なものが選べなかったり、頭が悪いと的確な返答ができないなど、性格に応じて取れる選択が変わって行く。
    • これは次回作以降に受け継がれており、シリーズのスタンダードとなった。
      • 今作では特有の設定により、主人公が突然喋り出すイベントがあったり、戦闘で掛け声を出すと言った独自要素もある(詳細は余談にて)。
  • 舞台が人類の故郷であり、1000年も過去という事で、過去作で語られた設定に準じた世界観になっている。
    • 人類の故郷には魔法の源「グローシュ」が満ち溢れており、魔法を自由に使える事で人間は魔法技術で栄えていた。一方、羽を持つ種族「フェザリアン」は魔法が使えない為、科学技術が発達している。しかし新天地にはグローシュが無く、魔法が使えなくなってしまった為、フェザリアンの科学技術が人間に伝わっていった。後に機械で元の世界からグローシュを引く事で何とか魔法を使用できるようになる。
      • その為、『I』は科学と魔法の入り混じった世界観であり、また、元の世界とのチャンネルを宿すグローシアンという人間も存在していた。
    • その元の世界が舞台の本作ではグローシュは大気も同然の存在なので魔法は当たり前に使用可能であり、科学技術もフェザリアン以外ではごく一部の人間しか精通していない。その為、シリーズでも特にSF要素が少なく、ファンタジー色の濃い作風となっている。
  • 妖精キャラの復活
    • 主人公が自発的に喋るタイプだった前作と違ってドラクエタイプ主人公に戻った事で、代弁者となる妖精キャラが復活した。
    • 今作の「ラミィ」は『I』の「ティピ」とは全く違うゆるふわ系のキャラで、勿論主人公を蹴ったりはしない。メッセージのフォントもふにゃっとした独特のものになっており、暗くなりがちな世界における清涼剤となる。
  • 戦闘システムは前作『II』とほぼ同じだが、新要素として「協力魔法」が登場した。
    • 1人では単体にしか魔法攻撃が出来ず、範囲指定の魔法については、単発の魔法2種類を二人で協力して発動させる必要がある。
      • 一例として「アイスバレット」と「ウィンドエッジ」を組み合わせると「ブリザード」になる。
    • 1人で使用する魔法は(単体効果限定だが)射程は無限だが、協力魔法はほんの一部の協力魔法を除き、効果範囲と射程が限られている。(敵も同様)
  • パーティーは再びメンバー選択制へ。
    • 今回から最大人数は4人になり、以降の作品でも定着した。
  • 前作のデータをコンバートする事で前作キャラを仲間に出来る
    • 対象は前作の正規ルートのパーティーキャラ(セレブ除く)とシュナイダー。主人公のウェインは無条件であり、仲間はエンディングを迎えたキャラを呼び出せる。シュナイダーはラスボス後に生存確認イベントを見ている事が条件。

登場人物

+ クリックして展開
  • スレイン・ウィルダー(CV:浪川大輔)
    • 本作の主人公。倒れていた所をアネットに助けられるが、全ての記憶を失っていたため、彼女の屋敷に身を寄せる。一般人には見えないはずの精霊や妖精が見える。
    • 容姿は元々前作ラスボスの没デザインだったらしく、主人公にしては悪人顔である。
  • ラミィ(CV:堀江由衣)
    • 闇の妖精。おっとりを通り越してどこかぼんやりした緊張感の無い性格。本来普通の人には見えないはずの自分を認識できるスレインに興味を持ち、付いて来る。
  • アネット・バーンズ(CV:かないみか)
    • キシロニア連邦議長の娘。幼馴染と母を一度に失う過去を持つ。剣術に長けるが薬学の勉強もしている。スレインにはどこか懐かしさを感じている。
  • モニカ・アレン(CV:南央美*1)
    • フェザリアンと人間のハーフ。羽はあるが小さいため飛ぶ事が出来ない。年齢不相応にクールで合理的な性格。
  • ヒューイ・フォスター(CV:川田紳司)
    • 陽気で飄々とした青年。関西弁を話す。ラミィの姿が見えるらしく、スレインの素性に心当たりがある素振りを見せるが…。
  • 橘 弥生(CV:高橋美紀)
    • 東の大陸からやってきた、巫女装束に身を包んだ女性。見た目通り慎ましやかで礼儀正しい。シモーヌという人物を探している。
    • シリーズでも唯一と言っていい、日本人風の容姿と名前を持つキャラである。
  • ビクトル・ロイド(CV:鈴置洋孝)
    • 人間は魔法、フェザリアンは科学と、技術・文明の住み分けがされているこの世界においてフェザリアンに匹敵する科学知識を持つ魔導科学者。少々偏屈な人物で、研究さえ出来れば幸せらしい。

評価点

  • ノンストップでドラマチックなストーリー展開は健在。
    • 前作はメインストーリーが薄めだったが、今作は一本道の独立したRPGに戻った事で(中盤までは)戦乱を通じて様々な思惑が交錯するドラマチックストーリーが紡がれる。シリーズ恒例の王道戦記モノながら、今回は光が遮られ、緩やかに滅亡へと向かう死の大地が舞台という事で、他作品では見られないようなダークさが漂う。
    • 戦争の原因は作物の不作による食糧不足である。物語の始まりの地であるキシロニア連邦は大陸では比較的肥沃な土地を残すが、餓死者が出るほどの深刻な食糧危機に見舞われている軍事国家アグレシヴァル王国の侵攻を受けている。
      • その為、連邦は食料提供と引き換えに隣国のシェルフェングリフ帝国と同盟を結び、アグレシヴァルを迎え撃とうとする。しかし帝国は皇帝の暗殺で生じた後継者争いによって内紛状態にあり、しかもそこにはとある組織の思惑が介在している。
    • ローランド王国は国土の大半が長雨で荒れ果ててしまっている為、フェザリアンと協力して新天地に移住する「時空融合計画」を進めている。この「時空融合計画」は前作、前々作へと繋がる重要なファクターである。
      • 難民と化したローランド人が帝国へ押し寄せた際には已む無くトンネルを塞ぐ事で抑え、結果として大量の餓死者を出したという悲痛な過去がある。ローランドへ向かうトンネルには大量の白骨死体が箱積みにされているのも痛ましい。
    • そのような戦乱の裏で、精霊を使役して世界の秩序を管理する「精霊使い」と呼ばれる者達の存在が見え隠れする。やがて物語は精霊使いを中心に動き出していく。
    • この暗く物悲しい世界観を反映してか、主題歌は熱い前二作とは打って変わって切ない曲調に。オープニングムービーの雰囲気も従来や次回作とは一線を画したしっとりとした静かなものになっており、シリーズでも異彩を放つ。
    • 過去作の原点を描くだけあり、エンディングのラストシーンでは新天地へ旅立った人々が映ると共に「TO BE CONTINUED GROWLANSER I&II」と表示されるという、シリーズファンには感慨深い演出がある。
  • 今回のキャラも個性的。うるし原智志氏による美麗なデザインも相俟ってキャラの印象は強い。
    • 氏によるとヨーロッパの古いファッションを取り入れ、前二作との時代の違いを表現したとの事。
    • 記憶喪失だが何やら影を感じさせる主人公・スレイン、母と幼馴染を失う悲しい過去を持ちながら快活に振舞うヒロインのアネット、女好きで飄々とした三枚目だが重い使命を背負うヒューイ、クールで合理的に見えて実は背伸びしているモニカ、研究開発に全てを捧げたビクトルなど、パーティメンバーはキャラが立っている面々が揃う。
      • 後述する通り女性陣ばかりフィーチャーされがちだが、うるし原氏の一押しキャラは意外にも中年キャラのビクトルらしい。
    • パーティー外でも、スレインと身体を共有する暗殺者・グレイ、免疫不全の為に密閉された部屋から出る事が出来ない少女・ミシェールと言った複雑な境遇を背負ったキャラもストーリーをドラマチックに彩る。
      • バーバラというキャラはスリットの開いたドレスに破邪大星っぽいゴツいショルダーアーマーという凄まじいファッションで存在感が強い。そして実年齢もすごい。
  • RPGへの回帰
    • 前作でシミュレーション化していたシステムはRPGに戻った事でマップ探索やダンジョン攻略が再び可能になり、前作の仕様に落胆していたファンを喜ばせた。
    • また、前作はSRPG風であまり感じられなかったが、RPGに戻った事で「戦闘もシナリオの一部」という独自性が再び実感できるようになり、今回もまた豊富に用意されたシチュエーションで様々なイベント戦闘を楽しむ事ができる。
    • 戦闘システムも前作の基本を受け継ぎつつ、前々作のようなRPGらしいものに戻った。
      • 消費アイテムの「グッズ」も復活し、戦闘中の咄嗟の対応がしやすくなった。
      • 経験値も行動時に得るのではなく戦闘終了後に全員に分配される形式に戻った。戦闘中にいちいちスキルポイントの配分をする必要もなくなった。
      • 勿論、前作のような戦闘中のセーブ&ロードは不可能になった。
      • また、『I』ではメンバー外のキャラのスキルポイントは勝手に割り振られてしまっていたが、今回はかなりの量がストックでき、好きな時に配分が可能になった。
  • 豊富な選択肢
    • 主人公の性格という新たな概念の導入により、選択肢が格段に増えた。よりプレイヤーが感情移入しやすくなっている。
    • シリーズ全体で見てもとにかく選択肢が多く、思わず笑ってしまうようなネタに走ったものや鬼畜なものも少なくない。まるでアイレム作品の先駆けである。
      • 例えば宿屋で部屋を取るシーンで、アネットは「シングル2部屋」とチェックインするのだが、ここで「ツイン1部屋でもいいぞ」「俺はロイヤルスイートだ」と口を挟む事も出来る。勿論怒られるが。
      • ヒューイのイベントでラミィが漫才を覚える一幕があり、その状態であるふざけた選択を選ぶとツッコミを入れて貰えるなどという小ネタも。
  • 拠点となるヴォルトーン旧市街地で行える事が豊富
    • アパートではストーリーの節目に解散して仲間達の部屋を訪れる事ができ、これが本作における休暇にあたる。『I』とは雰囲気が異なるものの、時には部屋の中に通されたり一緒に食事に行ったりと仲間を掘り下げる個別イベントが多数用意されている。
      • イベントの起こるタイミングはラミィが教えてくれる。それ以外で仲間の部屋を訪ねても「今は出られない」と返されて会話は出来ない。
      • 部屋を訪れる順番でイベントが変化する事もあり、周回プレイで時には違うイベントが体験できる。
      • アパートの部屋が異様に多いのは前作キャラを召喚可能な為。彼等には休暇イベントは無いが、訪れると一言コメントが貰える。
    • ショップの他にもアイテムの開発、主人公の性格判定や仲間との相性を教えてくれる占い屋、性格を変化させる料理を食べられるレストラン、世界情勢を知ったり様々な調査を依頼できる情報部などが存在し、「拠点」という雰囲気が強く感じられる。
      • 他の街で出会った人にテナントを紹介し、人材を誘致して施設を充実させると言った『I』のMY CITYの要素もある。
      • 更に後になると闘技場、最高難易度の裏ダンジョンまでもが設置される。これらは次回作にも受け継がれた。
      • アイテム開発はパーティーメンバーのビクトルに依頼し、一エピソード分のシナリオを進めると完成する。ラスボスまで進めても隠しダンジョンを最奥部まで行けば開発が完了するので安心。但し、ビクトルがパーティーに居る間は開発が止まってしまう。
    • 『I』に比べるとイベントは少なくあっさりしたものだが、ゲーム開始直後ではシリーズ恒例のキャラメイクが出来る。
  • シリーズらしく声優陣も豪華
    • 前作までと時代が違う為、声優陣は一新されたがパーティーメンバーもパーティ外も有名声優が名を連ねる。

賛否両論点

  • 協力魔法とは言いつつ実際は範囲魔法の制限
    • 『I』や『II』では範囲魔法を1人で使用できたため、過去作をプレイしていると純粋に使いづらくなったと感じるプレイヤーもいる。
    • 一方、過去作の終盤において敵の数が多い場合、敵に範囲魔法を連発される前にこちらが連発して一掃するような大味なゲームバランスの原因にもなっていた為、これへの対処的な側面もあると思われる。
  • 『II』で削除されたオートコマンドに代わる「突撃」コマンドを新たに実装。
    • これを選ぶと仲間キャラは自動で敵を攻撃しに行く。面倒な雑魚戦では重宝する。また、全員に突撃指示を出す事が可能になった。
    • しかし『I』のオートコマンドは予め立てた作戦に基づいて通常攻撃のみならず魔法も使用できていた為、それに慣れていた人からすれば劣化に見えてしまう。
    • 以降のシリーズではこれが標準となり、後に『I』がPSPでリメイクされた時もオートコマンドから差し替えらえてしまった。

問題点

システム面

  • 新システムは意欲的ではあるが不便さも相応にある。
    • ワールドマップは歩数によるランダムエンカウントだが、一戦毎に相応の手間が掛かる本シリーズの戦闘とは相性が悪い。
      • 当然敵が視覚化されないので『I』のように避けて進むことができない。「しのび歩き」を使えばエンカウント率を下げられるが、0にできる訳ではないのでやはり遭遇する時は遭遇する。
      • また、簡略化されたマップであるのと面積もさほど広くはないので、前々作や次回作以降のような舞台の広大さをあまり感じられない。
    • ランダムダンジョン形式なのでどのダンジョンもやる事は一緒。ダンジョン毎のギミックだとか、ダンジョンの途中でのイベントと言ったものは皆無。
      • また、戦闘を行っていると周囲の敵が寄って来る。しかも別の部屋からも平然と来る為、モタモタしていると大勢の敵を相手にする羽目になったり、その前に片付けても部屋の出入り口まで来ているので結局戦う羽目になったりと、面倒な状況が少なくない。
    • あまり良い評価を得られなかったのか、ワールドマップは次回作以降には引き継がれず、ランダムダンジョンは名残として隠しダンジョンに採用される程度に留まった。
  • テレポートの性能が変わった為、街間の移動はトランスゲートという装置で行うのだが、拠点と特定の場所を繋ぐというものなのでテレポートより大幅に制限されている。
    • しかも各地のトランスゲートを起動するにはビクトルをパーティーに入れている必要がある為、いない時にゲートを発見すると二度手間に。
    • 挙句、トランスゲート自体は序盤から登場するものの、実際に利用可能になるのは後半に差し掛かる頃である。
  • いくつかの理由から味方側は協力魔法を使いづらい
    • まずパーティメンバーが最大4人に減った為、協力魔法を使う為にその半数の2人を取られてしまうのが痛い。
    • 魔法の詠唱中は移動もできず防御力低下などのペナルティがある上に魔法の得意なキャラは防御力と体力が低いので、不意の後方からの奇襲等に弱く、かといって護衛に人数を割くと今度は攻め手に欠けてしまう。
  • 戦闘時のシチュエーションも協力魔法には向かい風になっている。
    • 「少数精鋭の主人公パーティーが敵陣に潜入、奇襲、陽動をしかけるために時間経過で後方から敵援軍が現れる。」「防衛戦で敵が挟み撃ちや多方向から攻めてくる」というシチュエーションが多く、退路や安全に詠唱できる場所を確保しにくく前後衛が機能しにくい戦闘が多々ある。
    • さらには「奥に進むために複数のスイッチがある」、「護衛対象や部隊が複数存在する」など効率的に攻略するにはパーティを分断しなければならないものもあり、余計に足を止めて協力魔法を詠唱するより小回りの利く単体魔法と回復を行いつつ、孤立しないように移動する方が安全な事が多い。
    • こういった理由から味方側の協力魔法の使用頻度は低くなりがちで、強力なスキルが出揃う後半や力押しが出来てしまう2周目以降には出番がほとんどなくなってしまう。
  • 一方で敵は協力魔法を有効活用してくる為、不公平感が強い
    • 敵側は部隊単位で行動している事も多く、その人数を活かして前衛後衛をうまく機能させて協力魔法を使用してくる。
  • 前作に引き続き、リング=ウェポンの付け替えは自由に行えない。今回は「調律屋」に行かねばならず、勿論有料。
    • 移動がシンプルだった前作に対し、今回はRPGに戻っているので装備の為にショップに通うのが更に面倒になってしまった。
    • 旅先で手に入れて「すぐに装備したい」という気を抑える為か、初めて入手したリングは調律屋で鑑定しなければ性能が分からないという仕様になったが、そんな制約を設けるよりどこでも装備可能にして欲しいものである。
    • 次回作ではようやくいつでも変更可能になった。但し、鑑定が必要という点は受け継がれている。
  • 妖精の存在意義が薄め
    • 復活した妖精キャラだが、ラミィは『I』のティピと違って戦闘中やメニュー画面では一切声を発しない。せっかく人気声優を起用しているのに何とも勿体ない事に。
    • 設定上、精霊使いの素質のある者にしか姿は見えないし声も聞こえないので、コミュニケーションが取れる相手が限られ、代弁者としてもあまり活躍できない。御蔭でパーティーメンバーでもアネットとビクトルとは最後まで話が出来ない*2
    • ストーリー上もそこまで重要な役割でもなく、ラミィ自身の掘り下げも甘い。
      • 「普通の人には見えないはずのラミィが、何故か主人公には見える」「この世界で妖精はどんな意味を持つのか?」という世界の謎を深めるキャラとして作られているが、つまりそれが過ぎるとお役御免も同然で、後は惰性で主人公に付いてきているような状態に*3。精々、敵の偵察ぐらいしか活躍の場が無い。
    • そして個別エンディングも存在しない。ソロエンドを迎えた場合に途中まで主人公に付き合うという展開があり、ラストに寂しげな一枚絵もあるのだがその程度。しかもこの一枚絵はソロエンドを見なくても解禁される。
    • この反省からか、次回作以降は例外なく妖精キャラとエンディングが迎えられるようになり、性格判定や値引き交渉、宝箱サーチと言ったゲーム上役立つスキルも得られるようになっていった。
  • 前作に続いてイベントスチル、ムービーの類はほぼ皆無
    • ムービーは協力魔法使用時(前作の使い回し)と時空制御塔の転移のシーンにあるのみ。勿論、『I』のOPのようなアニメも無い。
    • オープニングムービーは前作のキャラ紹介デモとも違う、女性キャラの一枚絵を微妙に動かす程度。曲の雰囲気にはよく合っているが、オープニングとして見るとかなり異質。
      • また、キャラ紹介のOPムービーも無くなった。
    • イベントスチルも無いが、エンディングではキャラ毎の一枚絵が用意されている。女性キャラは二枚ずつ用意。
      • 但し、一枚はOPにも使用されているものとほぼ同じ。また、二枚ずつとは言ってもアネットと弥生は表情の差分程度しか違いが無い。
    • また、今回は主題歌は一曲しか無い。一応、OPではピアノアレンジ、EDで原曲という違いは出しているが、前々作はボーカルと曲調が二通り、前作はOPとEDで二曲が用意されていたのでやや寂しい。
  • 男性キャラは若干冷遇気味な部分がある
    • パーティーの主人公以外の男性キャラ、ヒューイとビクトルはOPではサブキャラに混じって立ち絵がチラっと出るのみ。EDの一枚絵も、女性キャラが条件を満たした場合とそうでない場合の二種類がある一方、この2人は条件を満たさなかった場合は立ち絵の使い回し。パッケージも主人公以外は女性キャラのみと、そこはかとなくギャルゲーの雰囲気が漂う。
      • その一方でヒューイは本編の出番が非常に多く、専用イベントも多めなので、OPやパッケージとのギャップが否めない。
      • ビクトルはアイテム開発で好感度が上がる為、個別イベントが存在しない。技術者、開発要員としてはそれなりに出番があるが、キャラの掘り下げ自体は明らかに甘い。また、パーティーに加えている間は開発が止まる仕様上、連れ回すとエンディングが迎えられないという妙な事になっている。
      • また、女性キャラの中でもOPやパッケージでヒロイン級の扱いを受けているミシェールは確かに個別EDはあるものの、家族が事件の根幹に居るというだけで本人は殆どストーリーには絡まない。
    • 女性陣のエンディングの場合、誰を選んでもヒューイとビクトルは登場するのでそこは扱いが良いと取るべきか、それとも彼等の個別EDの存在意義が薄れていると取るべきか。
  • ボリュームはまだ少ない
    • 前作と同じくCD-ROM一枚であり、短か過ぎた前作よりは長くなっているものの、『I』と比べると短い。
    • 公式サイトの質問コーナーでは実際にユーザーから「話が短くなるのではないかと心配」という質問が寄せられていたのだが、プロデューサーは「(内容を知ってる自分でも)40時間ぐらいプレイしてる」「濃~~~く楽しめるはず」「結構、おなかいっぱいになると思う」と答えていた。しかし決して「話が長い」とは言っていない。
    • 『I』のストーリーの流れに例えるなら、ゲヴェル撃破時点でエンディングを迎えるようなもの。しかも後述のように終盤は駆け足で尻すぼみであり、短いなりの充実感が得られるとも言い難い。
  • ボイス量も『I』には及ばない
    • メインストーリーの大半はフルボイスで一部ナレーションまで声が付いているのだが、サブイベントは声が無い場合が多く、特に解散時のイベントは基本ノーボイス。休暇の個別イベントもフルボイスだった『I』に比べると寂しい。
    • ヒューイの漫才講習など、解散時はキャラの個性が活かされるイベントが多いのでここに声が無いのは勿体無い。特に後半はストーリーに絡みにくいアネットやモニカはこの場でこそキャラを立てられるのに。
  • ある装置を開発していないとキャラエンドを迎えられない
    • ストーリー中にとある場所で情報を得て作成可能になる装置を開発しておかないと、例えキャラエンドの条件を満たしていてもソロエンドで終わってしまう。これに関してはノーヒント。結末について「予め何とかしておかないと」というような雰囲気は漂ってはいるが、初見では引っ掛かり易いトラップである。
    • しかもその情報を得る場所はストーリー中では、幾つもある情報のうち一定数を調べると強制的に進行する為、この装置の情報を調べ損ねた場合はまたダンジョンを越えて再訪しなければならない。
    • 尚、装置を開発していなかった場合、ED条件を満たしていないキャラを誘えたりとフラグが少々おかしな事になる。いずれにせよソロエンド行きなのは変わらないが。
  • 前作キャラについて
    • コンバートで前作のキャラを仲間に出来るのだが、呼び出せるのは終盤も終盤のラストダンジョン突入前なので活躍の場は乏しい*4
      • パラメーターは前作の状態なので、かなり鍛えていないと本作終盤に出すのは厳しい。前作で強力な精霊石やリングを集めていれば、装備させて本作に持ち込むという活用法は可能だが。
    • イベント面でも精々、殆どのキャラは各々の部屋を訪ねて一言頂く程度で、個別イベントはごく一部のキャラの最強防具入手時のみと極めて少ない。勿論、本編には絡まない。
      • この様子なのに呼び出せるメンバーは最大で10人と無駄に多い。本作のパーティーメンバー(6人)を軽く上回っている。
    • エンディングでは一応登場するが、話し掛けても「お疲れ様」「やったな!」などの短いコメントを返されるだけ。

シナリオ面

  • 決着が付かず再登場もしない敵がいたり、途中から放置される国が出てきたり、急に出てきたキャラが話を一気に動かしたりと、後半以降の展開は尻すぼみ感が強い。
    • 各勢力の指導者も知らぬ間に暗殺されたり城を乗っ取られたりして戦乱の行方も有耶無耶のままラスボス討伐の流れになり、戦記ものとしての完成度は高いとは言えない。
      • 中盤までは国家間の思惑や軍略がしっかり描かれているのだが、後半に差し掛かる頃には異変も戦火の拡大もみんなラスボス一味の仕業だったという展開になるのでそういった描写も収縮してしまう。
      • ある国の司令官は食糧問題を建前に戦争を起こして領土拡大を狙ったり、敵対国の指導者を暗殺するなど戦争の黒幕として暗躍した割に、決着が付かないどころかその後の動向すら不明という中途半端な扱いを受けている。
    • 『I』のインペリアルナイツに相当する「帝国三将軍」という者達がいるが、出てくるのはヴィンセント・クロイツァーただ一人。ストーリー上の役割を見ても、どうにもインペリアルナイツに比べてキャラが弱い。寧ろ、その部下で親友のオルフェウスや、帝国の軍人であるケネスの方がストーリーに深く絡む。
      • そのケネスも、中盤までは戦略家として活躍するのだが終盤は出番が殆ど無く、ヴィンセントの部隊が苦戦している後方で手をこまねいているというシーンが最後の出番になるという、これまた中途半端な扱い。しかも娘が精霊使いの素質を宿しているという描写があり、彼の家庭の暗い未来が暗示されている。
    • 終盤は精霊使い中心の展開になる為、精霊使いであるヒューイと弥生ばかりが前面に出て他のメンバーは話に絡みにくくなってしまう。特にアネットは主立ったエピソードは前半とサブイベントで片付いてしまうので、メインヒロインにも拘わらず影が薄い。
      • シリーズでも仲間キャラがかなり少ないが、その分描写を濃く…という訳でもなく、寧ろ本編ではヒューイと弥生が目立つばかりで他はどんどん描写が薄れていく。
      • パーティー外の仲間も相応にストーリーに絡んでくる『I』、常に全員で行動する『II』に対し、本作はメンバーが全員揃う頃になるとパーティー外の仲間は大抵蚊帳の外になってしまう*5。そしてヒューイと弥生は強制加入シーンが所々ある為、必然的に残るアネット、モニカ、ビクトルの影が薄くなっていく。
      • 幸い、ヒューイは後の『V』のクライアスのように主人公の座を奪うような事はせず、あくまでスレインをリーダーとして立てて自分は一メンバーに徹する。ただ、それでも他のキャラのエンディングまで出張って来るほどの目立ちぶりだが。
      • 前作では休暇が無い分キャラのやり取りは濃いめだったのだが、今回は中盤以降の本編はこの通り。しかしそれを補うべき解散イベントでは前述の通り声が無く、印象を弱めてしまっている。
    • 事情があったとは言え散々悪の組織に加担しておきながら、説得を受けて組織を離反しただけでお咎めなしになるキャラがいるなど、純粋におかしな部分も無くもない*6
  • 終盤戦も『I』のような盛り上がりやどんでん返しは無く、かなり駆け足のまま最終決戦まで行ってしまう。前作のような唐突な展開ではないものの、本作のキャッチコピー「ドラマチックを駆け抜けろ」の通り、あっという間に駆け抜けていく。
    • 戦記ものとしての描写ばかりかパーティ内のやり取りと言ったキャラ描写も薄くなっていくので、後半~終盤は「ノンストップドラマチックRPG」から「ドラマチック」を抜いたような淡泊で早い展開になりがち。本作の特徴的なダークさ、物悲しさもこの頃になると殆ど感じられなくなる。
    • しかも最終決戦前の告白イベントが無い。クライマックスの雰囲気が出ないばかりか、エンディングは男性キャラはまだしも女性キャラが主人公と結ばれる流れがかなり唐突になってしまった。
    • ラスボスはこの世界を死の大地に変えた元凶で主人公にとっても因縁の相手なのだが、前作同様に戦闘が普通過ぎてラストバトルの雰囲気が出ない。ストーリー上の重要なボス戦をクリアしたらそのままゲームも終わってしまったという感じ。
      • ラスボスは途中で何回か戦っている相手と言うのは『I』も同じなのだが、『I』や次回作以降のように怪物形態への変身がある訳でもなく、ただいつもよりパラメーターが高く、HPが大幅に増えている位しか違わないのでとにかく盛り上がりに欠ける。そして倒したらそのままエンディング。
      • そもそも「ラストバトル開始と同時に敵の装置が発動し、全てに光が灯る(=ラスボスの野望が成就する)前にラスボスを倒して止めろ」という展開は前作そのまま。二作続けてやるのは流石に芸が無いと言わざるを得ない*7
  • エンディングは仲間達のエピローグが流れた後で個別EDに入るのだが、ソロエンド以外は誰を選んでも展開は大体同じでほぼ台詞のマイナーチェンジ。エンディングそのものの内容はともかく、キャラ毎のやり取りは前作と比べてもあっさりしている。
    • 告白イベントが無い所為で、ED分岐方法も「ラスボスから取り戻した物を返しに行く際に誰に付いてきてもらうかを決める」という少々無理のあるものである。そして個別EDはその返しに向かった先でのやり取りが描かれるだけで、スレインとパートナーのその後の描写は皆無。
    • 特に弥生は非常に淡泊。恋愛要素など申し訳程度で、他の女子三人のようにスレインとのハグすら無い。
      + 更にラストシーンは(ネタバレ)
    • 精霊使いの使命から解放されたスレインだが、それによってラミィの姿を見る事も声を聞く事もできなくなった。ラミィはヒューイを通じてスレインにメッセージを送り、スレインも見えなくなったラミィに別れの言葉を返す。そしてラミィの笑い声が聞こえ、スタッフロールへ。
    • 終わり方としては良いのだがキャラエンドは必ずこれで終わるので、誰を選んでもラミィが最後にみんな持って行ってしまう。個別EDなのに今一つパートナーの立場が無い。
    • 仲間達のエピローグは淡々としてはいるが、そのキャラのエンディング条件を満たしたか否かで一枚絵と文章が変化する演出はある。
  • 過去作に繋がる重要なエピソードであるはずの「時空融合計画」も本筋とはあまり関係無く、かなり早い段階で終わってしまう。
    • 元々は「時空融合計画」によって大陸全体を新天地に転移させる手筈だったのだが敵側の妨害で失敗し、計画の要である時空制御塔*8の存在する島しか転移できなくなった。そのため、移住を希望する一部の人々のみが新天地に移住し、それが『I』『II』の世界の始まりになったという流れである。本作のメインは残された元の世界の方であり、新天地側はあとはエンディングのラストで軽く触れられる程度であり、本筋の物語にはさほど強い影響は与えていない。
    • 前作では「時空融合計画の際、それを邪魔しようとする者達がいたが、どこからか現れた勇者が滅びゆく地に残りながらも人々を新天地へと送り届けた」と語られ、その勇者が「グローランサー」と呼ばれるようになったとされていた。
      • 人々を送り届けた勇者とはつまり本作のスレインのことなのだが、本作で描かれた所では敵組織が時空融合計画を邪魔しにきた際に戦って退けた程度。スレイン自身は仲間と別れて新天地を目指すつもりだったが、元よりこの世界に残るつもりだった仲間達が戦いに行ったのを見て自分も加勢に向かい、その結果、新天地には行かなかったというだけである。
        確かに「自分の移住を諦めてまで人々の為に戦った」のは事実だが、それが大分誇張されて伝わった事になる。
      • 最終的にはスレインはラスボスを倒してこの世界を滅亡から救う本物の「光の救世主」となる訳だが、それは新天地に向かった人々には知る由も無い。しかも設定的には光ではなく闇に属する身である。
      • 1000年も経っているし、伝説などそんなものという事なのだろうが、本シリーズのタイトルである「グローランサー」の起源や『I』『II』世界の始まりが本作で詳しく描かれるのかと期待すると拍子抜けするだろう。
    • また、過去作で重要そうに語られていた「時空融合計画」とは関係なく世界が完全に救われる結末も旧作ファンを微妙な気持ちにさせる。
      • 『I』の終盤では、世界が死の大地に引き戻されることを防ぐべく奮闘する流れだったのだが、本作のエンディングにてその死の大地は救われ、『I』の1000年も前に既に正常化していたことが判明する。
      • 世界滅亡などという結末にはし辛いだろうし、『I』の頃にそんな設定など無かったから仕方ない話ではあるのだが、『I』で必死に世界を救おうとしたカーマイン達の頑張りは何だったのかと思えてしまうのも然りである*9
        寧ろ、過去作ファンは「時空融合計画」そのものを主軸に展開する物語を望んでいたのではないだろうか。
  • スレインと肉体を共有するグレイは当初こそ主役級の扱いに思えるが、ストーリーが進むとどんどん存在が忘れられていく。
    • スレインの意識が眠っている間に行動できるとされるが、出てくるのは本当に数えるほど。謎めいた存在として登場し、その後のイベントで素性を明かすが、それ以降はまるで登場しなくなる。
    • ヒロインであるアネットの幼馴染で、前連邦議長の息子。アネットの母を殺した相手に復讐する為に暗殺者になった。暗殺対象は悪人だけ。連邦議長(アネットの父)の暗殺依頼を受けているが、それは他の暗殺者に依頼を行かせない為。皇帝暗殺の濡れ衣を着せられている。…などいかにも話に深く絡みそうな設定を多数持っているのだが、実際は殆ど活かされない。
    • 因縁の相手(アネットの母の仇)との対決という見せ場はあるが、なんと本筋と全く関係ないサブイベント。起こさなかった場合は本当に最後まで影が薄いまま進んでしまう。
      • しかもその仇は元々は次回作への持ち越しを想定して決着が付かない予定だったが、スタッフの要望で急遽対決イベントが追加されたという経緯がある。結果的に続きが出なかった為、もしそれが無かったら本当に投げっぱなしになる所だった。
        その影響か、仇の方も序盤~前半では本筋に絡んでくるものの、中盤以降は何の説明もなくストーリー上から姿を消してしまう。
      • 更には対決直前でスレインに戻ってしまい、結局仇を倒す役目をスレインに譲る羽目に。以後は表層化する事は無いので敵にとどめも刺せず、唯一の見せ場すらも奪われてしまっている。
    • エンディングで自分の肉体を取り戻すのだが、殆どのエンディングでは体が戻った事を喜んでスレイン達に声すら掛けずに去って行く。いくら何でもドライ過ぎではなかろうか。
      • あるエンディングではスレインのフリをして彼の恋人を口説くというキャラ崩壊を起こす。幼馴染であるアネットのエンディングでは無言で棒立ちする*10*11など、全体的に扱いが酷い。
  • 本作の世界観の根幹を成す「精霊使い」についても問題が山積み。
    + ネタバレ
  • 最終的にラスボスを倒して世界は救われるのだが、ラスボスを悪に落とした原因である精霊使いの制度については何一つ解決していない
    • 確かにラスボスは己の欲望のまま世界を危機に陥れたのだが、そもそもそれは「素質があるというだけで家族と無理矢理引き剥がされ、来る日も来る日も修業を強要され、しかしその能力は抑圧され続ける」という精霊使いのシステムの所為で歪んでしまったのであって、ラスボスが生来から特別邪悪だった訳ではない*12
      • 実際、作中でも我が子可愛さに逃亡を図る精霊使いが出たり、家族が精霊使いにスカウトされたせいで家庭崩壊を招くと言った問題点が描かれており、このような事件を起こし得るのはラスボスに限った話ではない事が容易に読み取れる。
      • しかし作中での精霊使いの組織側の意向は「世界の秩序の為」の一点張りで、問題について考える素振りすら見せない。問題がある事はしっかり描写しておきながら、その解決法については触れないという消化不良なオチになっている。
    • また、ラスボスが世界に異変を齎していたのは精霊使いに伝わる秘術であり、ラスボス配下の幹部も各々の理由で総本山を裏切った元精霊使い。更にはここまで事態が深刻化したのは精霊使いが秘密主義故に対処が遅れた為*13であるなど、事件の全ては精霊使いへと収束し、結局の所は精霊使いの組織、体制そのものが諸悪の根源と言えてしまう。
      • しかしそれが解決、或いは改善される事は最後まで無く、今回の事件の教訓を活かそうという描写すらない。これでは遠くない未来で同じ事を繰り返すのは想像に難くなく、グローランサーコレクションにも「ラスボスの欲望はすべての精霊使いに言えること。いつかまた第二第三のラスボスが現れるかもしれない」と書かれている。
      • これら一連の出来事が『I』『II』の発端であると言うのも何とも言えない話である。
    • キャラエンドでは精霊使いと非常に深い関わりのあるスレインは、ある理由によってその宿命から解放された「ただの人間」になり、パートナーと共に自分の人生を歩めるようになる。
      • しかしEDキャラ6人のうち2人は元々精霊使い、2人はエンディング条件を満たすと精霊使いに目覚める。結局殆どの結末で最後まで精霊使いに縛られる。

総評

シリーズの特徴的な戦闘システムを更に完成に近付け、様々な要素も盛り込んだ意欲作。
主人公の性格変化など、以降のシリーズに受け継がれた要素もあり、シリーズの中でも重要な位置付けの作品である。
反面、新要素の幾つかは空回り気味で、結果として本作のみの独自要素となっているものも少なくない。
同時製作という都合もあって前作の路線を相応に引き継いでいるので、原点に回帰しきれていない部分も多く、
ストーリーもボリューム不足且つ尻すぼみな点もあって手放しでは褒められない。
決して悪い作品ではないのだが、どうしても「前作よりは良いが『I』には及ばない」という評価に行き着いてしまうのが残念なところ。

本作と前作で築いた基盤を昇華し、反省点も活かした『IV』にてシリーズは一つの結実を迎える事になる。


余談

  • 決着のつかない敵の存在や、次回作への続投が想定されていたキャラが居た事などから、当初は続編を作る予定だった模様。駆け足な終盤や消化不良気味の結末もその影響かもしれない。結局、次回作は実質的に無関係の話になったが(後述)。
    • 上記の決着が付かないままフェードアウトするキャラについてはシナリオライターも「続編があるなら彼が事件を起こしてくれそう」と語っており、本作の時点でも少なくとも生存は確定していた。
  • 本作の限定版はラミィのメッセージ入りの目覚まし時計が同梱されていた。
    • その名も『萌え萌えラッキーパック』。しかも当時はまだ「萌え」という言葉が一般にはあまり認知されていなかったにも拘わらず、なんと前衛的な事だろうか…。
  • デバッグ用なのか、本作では主人公に特定の名前を付けると特殊な現象が起こる。
    • ドレイク・ハーデス(敵が強くなる)、デュエル・ダーク(隠し武器入手)、ゴールド・タンク(所持金MAX)、サイキョー・ツヨシ(レベル99)などがある。
  • 今作主人公のスレインはドラクエタイプながら、戦闘中のみ声を発する。
    • 本シリーズでは主人公は台詞も声も無く、ドラマCDや別作品などに出演して初めて声が付くのが普通なので、シリーズ中では珍しいことになっている。
      • と言うのも、上記の通りスレインは暗殺者グレイと体を共有しているという本作ならではの事情がある為、グレイ役の浪川氏が掛け声程度の声を充てている訳である。
    • また、選択肢では「~だぜ!」など、妙に威勢のいい台詞が多い。実際、ドラマCDではクールになりがちな本シリーズ主人公では珍しく、熱血漢として描かれている。
    • 余談の余談だが、浪川氏は後にも同社作品にて「顔なしキャラだが豊富なネタ選択肢を持つ主人公」の役を務める事になる。
  • 前作に続いてイベント戦闘では評価が下されるのだが、今回の結果表示は演出がやたらと派手。COMPLETEだと光が溢れ、CLEARでも流れるような演出が入り、FAILEDではホラーのようなおどろおどろしい事になる。
    • それらに比べると次回作以降はかなり抑え目の演出になっている為、スタッフも後から派手過ぎだったと判断したのだろう。
  • 次回作『グローランサーIV Wayfarer of the time』の妖精キャラ「使い魔D-LM型」は本作のラミィを流用したデザインになっており(型番の「LM」も「ラミィ」から)、声優こそ違うが性格はほぼそのままである。名前の候補には一文字違いの「レミィ」というものがあり、ファンディスクでもその名前で呼ばれている。
    • 他の「D-TP型」「D-LN型」もモデルは存在するが、そちらがあくまでモチーフ程度であるのに対し、「D-LM型」は声優以外殆ど違いが無い。その関係か説明書にも載っておらず*14、本作のクリアデータをコンバートしないと選択できなくなっている(PSPリメイク版では最初から選択可能)。
    • 但し、流用だからと言って作中では他の2体と扱いに差は無い。立ち絵は使い回さず新規に書き下ろされ、ちゃんと個別イベントも用意されており、ラミィと違ってしっかりエンディングが迎えられる*15
    • 専用コスチュームにも本作のスレインとモニカの衣装(スレインの服は女物になっている)があり、本作ファンには嬉しいサービスとなっている。
  • 『IV』は本作までの世界とは独立した別世界の物語であるが、ファンディスクの『グローランサーIV Return』では実は本作や旧作と繋がりがある事が明かされている。
    • 特に本作とのリンクは強く、『Return』のメインシナリオは『IV』の主人公のクレヴァニールが本作の舞台であるキルシュラーンド大陸を旅するというものであり、本作のキャラも何人か登場する。
      • 上述の決着がつかないキャラも登場する。ただし、バッドエンドルートのみの登場の上、台詞も無いというチョイ役であり、残念ながらライターが語ったように「事件を起こして」はくれなかった。
    • また、同作同梱のOVAではエンディングアニメの中に『I』~『III』のキャラが登場するのだが、本作から出演しているのはオルフェウスただ一人。主人公であるスレインやパーティーメンバーを差し置いての出演である。
  • 前作キャラを召喚できるのは上述した通りだが、実はその中でウォーマーだけは元の世界に帰らずこの世界に永住したという設定がある。
最終更新:2023年11月15日 17:07

*1 主題歌「君のあしたへ」も歌唱。作中でもモニカがこの曲を歌うシーンがある。

*2 モニカはイベントを進めて精霊使いに覚醒すると会話できるようになる。

*3 他作品の妖精は何かしらの使命か理由があって付いてきている場合が殆ど。『V』の「コリン」も同行の動機は「何となく」ではあるが、ストーリー後半に主人公にとって非常に重要な役割を果たしている。

*4 召喚に必要なアイテム2つのうち1つはラストダンジョン直前の街で、もう1つは闘技場でかなり戦わないと入手できないので召喚自体も容易ではない。

*5 ストーリー上は拠点に戻る必要性が減る為、仲間が集合するシーン自体が少ない。

*6 そのキャラは『IV Return』にも登場し、過去の行いを恥じている事は描かれるのだが、咎めを受けた様子は無い。尚、小説版では殺害される。

*7 『I』ラストバトルもカウントダウンはあったが、これは手遅れになる前に目的を果たそうとする主人公達にラスボスが道連れにするべく追い縋って来るというもので、流れが全く違う。

*8 過去二作とも最終決戦の場となった建造物。

*9 その為か、『I』のPSP版ではかなり後付けだが設定が追加されており、カーマイン達の活躍が無ければ別の要因で世界は滅びていたという事になっている。

*10 ようやく身体を取り戻したら幼馴染はスレインとくっついていた、という展開なのだが、それに対するフォローや「スレインにアネットを任せる」というようなやり取りも無いので、ただ立場が無いだけになってしまっている。

*11 アネットを誘い、且つ例の装置が無い所為でソロエンドを迎えた場合、グレイとの再会を果たすのだが何とも言い難い雰囲気で終わってしまう。

*12 公式設定なのかは不明だが、小説版ではラスボスの行動を裏付ける悲劇が描かれている。

*13 精霊使いの主が事件のもみ消しを図り、秘密裏に処理しようとして失敗したという体たらくで、しかもそれを二代も繰り返している。その次の代でやっと重い腰を上げたのが今作のストーリーの始まりという事である。

*14 攻略本やPSPリメイク版の説明書には載っているが、イラストは完全にラミィの流用である。

*15 勿論、『Return』でも個別の後日談が用意されている。