ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿

【はっぴーだんがんろんぱえす ちょうこうこうきゅうのなんごくさいころがっしゅく】

ジャンル 希望育成ボードゲーム
対応機種 Nintendo Switch
PlayStation 4
Steam(Windows)
発売元 スパイク・チュンソフト
開発元 メイン トイディア
シナリオのみ スパイク・チュンソフト
発売日 2021年11月4日(Switch)
2022年7月21日(PS4/Steam)
定価(税別) 単体(DL専売) 2,200円
トリロジーパック 4,980円
※アイテム課金あり
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12才以上対象)
コンテンツアイコン セクシャル、暴力
判定 なし
ポイント V3』のおまけモードを個別作品化したボードゲーム形式のRPG
1』『2』『V3』『絶女』各作品キャラの新規ミニイベント収録
ミニイベントだけを見に来たファンにもある程度応えられる内容
RPG要素自体は悪くないが強い作業感は否めず
ダンガンロンパシリーズ


概要

『ダンガンロンパ』シリーズの主要キャラが勢揃いした、お祭りゲーム系の外伝作品。
ゲーム本編第3作『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』収録のおまけミニゲームである「超高校級の才能育成計画」が元になっており、これを1つのゲームとして分離、再構成したものである。
「才能育成計画」とシステムの大枠は共通だが、イベント等は刷新されており、「才能育成計画」を遊んだプレイヤーでも楽しめる。

本作は、本編シリーズ『1』~『V3』のカップリング作品『ダンガンロンパ トリロジーパック』のSwitch版に追加収録されている。
そのほか、ダウンロードでは本作のみを単品購入することも可能。約2,000円のロープライス帯となっている。


特徴

  • 本作には主に、「育成」と「バトル」の2つのモードがある。
    • 「『育成』でキャラクターを作成、育てる」→「育てたキャラを『バトル』モードで使用して先に進む」→「『バトル』モードで入手したメダルで新たに獲得したキャラを『育成』で育てる」→…という流れ。
    • 『V3』の「~才能育成計画」モードで言う「才能育成計画」モードが「育成」に、「絶望のダンジョン」が「バトル」に当たる。
  • オートセーブであり、全ての行動は完了した時点で自動的にセーブされる。

育成

  • 「バトル」モードで使うキャラクターを育成するためのモード。
  • このモードでは、希望ヶ峰学園が主体として実施した「卒業プログラム」に掛けられたという設定で、『2』の舞台「ジャバウォック島」で50日間を過ごすことになる。
    • 本モード内では、『1』『2』『V3』の各キャラクターは、希望ヶ峰学園における同学年の生徒(同じ作品のキャラは同じクラス)という設定のパラレルワールドとなっている。
    • シリーズ本編のようなモノクマが主催するデスゲーム「コロシアイ」も発生しておらず、全ての生徒が平穏に学生生活を終えようとしている。
  • 育成・操作できるキャラクターは、シリーズ本編である『1』『2』『V3』の3作に、外伝『絶対絶望少女』(『絶女』)のキャラを加えた総勢62名。
    • 『1』『2』『V3』からは、ゲームの中心人物となる生徒達のほか、敵役のモノクマや「モノクマの妹」であるモノミ等が登場。
      • 操作キャラではないが、『V3』に登場したモノクマの子供達「モノクマーズ」も登場する。
    • 『絶女』からは主人公である苗木こまるの他、敵役である小学生「希望の戦士」5人やサブキャラであるクロクマ・シロクマ、『1』に登場した生徒である葉隠の母親・葉隠浩子が登場。
    • 各キャラクターは「N」「R」「S」「SR」のレアリティが設定された4種類のカードとなっており、62名×レア4種類=248枚のカードについてそれぞれ育てることができる。
      • 最初は、各作品の主人公のレアリティ「N」のカードしか持っていない。他のカードは後述のガチャで集めることになる。
      • レアリティはレベルアップやイベントでのパラメータの成長率に影響するほか、高レアリティでないと見られないイベントがある(後述)。
      • レアリティ「S」ではキャラが水着姿となっており、この水着姿の立ち絵は本作の新規描き起こしである(ポーズ等は本編のものの流用)。
    • 各キャラクターは「バラエティ」「スポーツ」「インテリ」の3つのタイプのいずれかに属する。どのタイプに属するかによって、パラメータの成長傾向が異なる。
      • ターン開始時に、タイプに応じたボーナス(カードが貰える/サイコロの出目が倍・攻撃力アップ/お金が増える)を得られることがある。
      • 戦闘でも、タイプ固有のコマンド(回復+1ターン防御/1ターン力を溜め、以降の攻撃力アップ/このターン強攻撃)を1戦闘に1回のみ使うことができる。
      • 同じタイプでも、「幸運」の伸びやすい苗木、「忍耐」の伸びやすい山田といったように細かい成長傾向は複数タイプ存在する。
  • ゲームが始まると、1ターンに1度すごろく形式でサイコロを振って進んでいく。
    • 特に進行方向の指定はなく、『桃太郎電鉄』シリーズのように各ターン自由に進むことができる。
    • 1ターンが作中設定での1日に当たり、50ターン経過で強制終了となる。それ以外に終了条件はない。
      • 後述の通り、このボードゲームに短期的な目的は設定されているが、あくまでターンの経過以外に終了条件はない。目的を無視して50ターン無駄に過ごしても終わるし、目的を全てクリアしても50ターン経過するまで終了はしない。
    • 最終的には、操作しているキャラクターに設定されているRPGとしてのステータスを可能な限り上げることが目的となる。
  • 進んでいくマップは『2』の舞台「ジャバウォック島」になっており、「中央の島」から周囲にある「第1の島」~「第5の島」の5つの島にそれぞれ独立して繋がる構造となっている。
    • スタート地点は「第1の島」の砂浜。後述の戦闘で敗北した場合はここに戻されてしまう。
    • 「仲良しマス」の多い「第2の島」、「才能マス」の多い「第3の島」など、島によってマスの配置傾向は異なる。
    • 「第1の島」⇒「第2の島」⇒ … ⇒「第5の島」と進むほど、敵の強さ、経験値やお金の入手倍率が高くなっていく。
    • それぞれの島には特定のマスから行ける「ダンジョン」のマップ(主に原作で殺人現場となった場所)があり、ダンジョンマップの奥には中ボスが存在する。
  • サイコロの代わりに「カード」を使うこともできる。
    • カードには、サイコロの出目を操作する「倍進むカード」「3進むカード」や、直接他のマスに移動できる「ショップカード」「第1の島へカード」に加え、キャラクター強化などその他の「幸運カード」「ムキムキカード」等がある。
    • 移動補助系のカードはサイコロの代わりに使うため、使用したターンはサイコロを振れず、複数組み合わせて使用することもできない。「幸運カード」等の移動に関係しないカードはターンの消費がなく、同じターンでサイコロを振って移動できる。
    • 後述のランダムイベントの際に自動で使用され必ず確率判定を成功させる「成功カード」など、ターン行動選択以外のタイミングで勝手に使われるカードもある。
    • カードの所持上限は基本的に5枚。6枚目以降を入手すると、その場で溢れたカードを選択して捨てることになる。
  • マスに止まると、止まったマスに応じてイベントが発生する。マスのパターンは以下の通り。
    • 戦闘マス(赤)
      • 雑魚モンスターと戦闘になり、勝利すると経験値とお金が貰える。出現する敵は戦う場所によって異なる。
    • 成長マス(青)
      • 経験値が貰えレベルが上がる。お金は貰えないが、戦闘がなく貰える経験値も大きい。
    • イベントマス(ピンク)
      • 人生ゲーム』をパロディしたような2択のイベントが発生する。選んだ選択肢によっていずれかのパラメータが上昇する。
    • 仲良しマス(ピンク)
      • 本作独自のミニ会話イベントが発生する。イベント内に出て来たキャラによって特定のパラメータが上昇する。
        会話イベントはランダムで10種類まで発生し、それ以降はパラメータの殆ど上がらないモノクマーズの1言コメントイベントしか発生しなくなる。
    • 才能マス(橙)
      • 戦闘で使う技「スキル」を習得するのに必要な「才能のカケラ」をサイコロの出目に応じて入手できる。
    • カードマス(紫)
      • ルーレットで2枚のカードを入手できる。ルーレットは目押しが可能。
    • 宝箱マス(紫)
      • ルーレットで装備品やレアカード1つを入手できる。ただし、当たると何も貰えずペナルティを受ける罠もルーレットの出目に混じっている。
    • ショップマス(緑)
      • お金を使ってカードや、戦闘時のパラメータが上がる装備品(武器/防具)を買うことができる。要らないカードを売ることもできる。
        サイコロ勝負で「襲う」ことでお金を払わず商品を強奪することもできるが、失敗すると戦闘で敗北した時のようにスタート地点に戻されてしまう。
  • マスイベントの後、マスとは関係ない9種類の「ランダムイベント」が発生することがある。
    • 純粋なマイナスイベントはお金が奪われるイベントぐらいで、それ以外はプラスイベントか確率でプラス・マイナスが決まるイベント。
    • 特に『パワフルプロ野球』の「ダイジョーブ博士」イベントをパロった「手術イベント」は、確率で成功・失敗が決まるが成功すると全てのステータスが大幅に上がるため、育成のキーとなる。
  • 戦闘ではターン制、ダメージ等はメッセージで表示するレトロRPG形式で戦う。「育成」での戦闘は、後述の「バトル」より大幅に簡略化されている。
    • パーティは現在操作しているキャラ1人で、仲間は存在しない。そのため、敵は補助技などを一部しか使ってこなくなっており、ステータス勝負の面が強くなっている。
    • キャラのパラメータ傾向によって進みやすさに差が出るのを防ぐため、HPに当たる「発言力」以外のステータスはほとんど統合され、攻撃力や防御力は装備品と操作キャラの「一番高いパラメータ」の値のみで決まるようになっている。
    • 戦う雑魚モンスターは「モノクマムル」「モノクマ仙人」「モノージョ」など、同じスパイク・チュンソフトの『風来のシレン』シリーズのモンスターのモノクマ版パロディとなっている。
  • 才能マスやランダムイベントで集めた「才能のカケラ」を消費して、現在操作しているキャラに「スキル」を覚えさせることができる。
    • 才能のカケラは「赤(物理攻撃・防御系)」「青(魔法攻撃・補助攻撃系)」「緑(回復・魔法防御系)」に分かれており、習得したいスキルによって必要な才能のカケラの必要数は異なる。
    • スキルは最大レベル10までのレベルがあり、既に覚えたスキルは才能のカケラを追加消費することでレベルを上げ強化することができる。
    • スキルの習得可能数はキャラのレアリティによって決まっている。最高レアのSRは5個まで覚えられるのに対し、最低のNは2個しか覚えられない。
  • 最初は「第2の島」~「第5の島」には行けず、通り道をモンスター「モノケモノ」が塞いでいる。モノケモノに会い、戦闘で倒さないとそれぞれの島には進めない。
    • 5種類のモノケモノはそのまま戦おうとするとかなり強く、かなり高めのレベルが必要になる。「虎の巻」「鳥の巻」などの対応する「秘伝の書」を取得すると大幅に弱体化し、倒しやすくなる。
    • 秘伝の書はひとつ前の島のダンジョンの中ボスを倒すと手に入る。「第2の島」の入り口を塞いでいる「モノケモノ(トラ)」を弱体化させる「虎の巻」であれば、「第1の島」のダンジョンでボスを倒せば手に入る。
    • そのため、基本的には「第1の島で中ボスを倒す」→「第2の島入口のモノケモノを倒す」→「第2の島で中ボスを倒す」→…と繰り返していき、第5の島を目指すのが当座の目的となる。
      • 前述の通り、与えられたこの指針に従うことは必須ではないが、次の島に進んでいかないと取得経験値が増えずさっぱり成長できないので、オーソドックスな流れとしては素直に従うことになる。
  • キャラのレベルは通常99まで。隠しイベントをこなすと100に上げることもできる。
    • レベルによるパラメータの成長はこのように打ち止めがあるので、イベントマス・仲良しマスや手術イベントといった「レベルに頼らない」パラメータ成長手段は特に強いキャラを育てようとした場合に重要になってくる。
  • 特定数ターンが経過すると、「文化祭」「キャンプファイアー」などの固有イベントが発生し、キャラクター固有の会話イベントが見られる。
    • イベントの発生により、選択肢に応じた才能のカケラが貰えたり、パラメータが上がったりする。
    • 高レアリティであるS・SRでプレイしていると、別途専用のイベントが発生し、そのイベントでもパラメータが上昇する。
  • 50ターン経過して終了した後は、操作したキャラのデータを「バトル」モード用に保存できる。保存前に未使用の「才能のカケラ」でスキルを習得させることも可能。
    • 装備品やお金は「バトル」にも次の「育成」にも引き継がず破棄される。あくまで成果になるのはステータスと習得スキルだけである。
    • 既に同一キャラかつ同一レアリティで育てたデータがある場合は、今回の育成をそのデータに上書きして保存するか、破棄して元々のデータを残すか選べる。
    • 既に保存したキャラを追加で育成することは一切できない。あくまで50ターンでどれだけ育てられたかの1回勝負となる。
    • この工程を繰り返して複数のキャラを育てていく。
  • 1度でも50ターン育て終わったキャラの種類数(レアリティ違いは無視する)が一定数に達する度にイベントが発生し、クリアすると特典が付与される。
    • 特典は「入手経験値・お金1.5倍」「ゲーム開始時にお金を1000所持」など非常に効力は大きい。1度得た特典は永続的に付与されるため、有ると無いとでは育成効率が全く違ってくる。
    • 全62キャラをレアリティ問わず育て終わると、『1』の主人公・苗木を中心とした最終ストーリーが開始される。これをクリアすることで本作のメインストーリーは完結となる(その後も育成は可能)。

バトル

  • 「育成」モードで育てたキャラを使ってダンジョンを進んでいくモード。
  • 「絶望の塔」100フロア、「超絶望の塔」100フロアを合わせた200フロアを全て踏破することが本モードの目的となる。
    • 各フロアは3連戦で構成されており、全滅せずに3連戦を倒しきることで次のフロアに進める。既にクリアしたフロアの再挑戦は何度でも可能。
    • 特定のフロア(主に10の倍数)にはボスキャラクターがおり、3連戦の最後に待ち受けている。
      • 特定のボスキャラを倒すと、「育成」モードのショップに終盤の武器や、本来ボスを倒さないと入手できない秘伝の書が安価で売られるようになり、大幅に進めやすくなる。
    • 各フロアには「20ターン以内にクリア」「誰も死亡せずにクリア」などの「ミッション」が3つ設定されており、3つ全て達成*1すると報酬のメダルが貰える。
  • 戦闘は「育成」モードと同じRPG形式。ただし、こちらの方が複雑性は高い。
    • 物理攻撃力と魔法攻撃力が区別されていたり、防御力の概念が存在して「体力」「忍耐」のパラメータが機能していたりと、パラメータがそれぞれ本来の役割を果たしている。
    • 全体的に敵は強く、ゲームを始めた頃に「育成」モードで届くであろうレベル30~50程度では浅層のクリアすら覚束ない。かなり早い段階で、「育成」モードでレベル99まで達成することが前提となる。
  • 既に育成したキャラから、最大4人のパーティを組んで戦う。
    • 同じキャラは1人まで。同一キャラをレアリティ違いで複数入れることはできない。
    • それ以外の縛りはなく、物理攻撃特化系の「スポーツ」キャラ4人で固めるなどの偏った構成にしても問題はない。
    • 組んだパーティは5つまでプリセットに保存できる。
  • 敵を倒すと、確率で「素材」をドロップする。特定の素材を消費することで「バトル」用の装備品を作成できる。
    • 装備品は「武器」「帽子」「制服」「シューズ」「お守り」の5種類あり、それぞれ1キャラ1つずつ装備できる。特にキャラ単位の装備制限はなく、何でも装備できる。
    • 素材は「牙」「眼」「肉」「皮」「毛」の5種類。「カタナ系の武器には牙が必要」といったように、装備品の種類によって必要な素材の種類は決まっている。
    • 素材には、同じ「牙」でも「小牙」「大牙」「硬牙」のようなランクがある。フロアを進んでいくとランクの高い素材をドロップするようになり、それに合わせたより強力な装備品を作れるようになる。
    • 素材のほか、「育成」で育てるキャラを入手するためのメダルもドロップすることがある。

その他

  • 購買部
    • メダルを消費してガチャを回し、カードやアイテムを入手できる。
    • 入手できるものは以下の3種類。カードは1種類1枚であり、同じものを再入手してダブることはない。
      • キャラカード…「育成」モードで育成するためのカード。「育成」モード記載の通り、62キャラそれぞれにレアリティ4種類がある。
      • ワクワクカード…持っていると「育成」「バトル」それぞれの戦闘中に補助効果を得られるカード。62キャラそれぞれに10種類ずつある。
      • アイテム…「育成」モードでの育成効率を上げる消費アイテム。「育成」モードの開始時に2種類まで使用できる。
      • それぞれのカードには、現実の物販におけるキャラクターグッズなどにも使用されていた、イラストレーター作画のデフォルメイラストが描かれている。
    • メダルは「バトル」でのモンスタードロップや、後述の実績「ウサミフラワー」の報酬として手に入る。
    • メダルは「モノクマメダル」「モノミメダル」「金のモノクマメダル」の3種類あり、レアリティの高いメダルを使うほど高レアのアイテムやカードが出やすい。
    • その他、DLCとして実際の現金を使用することで、特定レアリティのキャラカードまたはワクワクカードを自由に手に入れることもできる。
  • ウサミフラワー
    • 本作の実績システムであり、特定の条件を達成すると実績が解除される。達成した実績に応じてガチャのメダルが手に入る。
    • 難易度別に「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の4段階あり、手に入るメダルも難易度で異なる。
  • イベントギャラリー
    • 「育成」モードで既に見たことのある固有イベントを見返せるギャラリーモード。それぞれのキャラ別に整理されている。
      • 選択肢によって分岐のある固有イベントもあるが、「育成」モード中で既に見た選択肢に関わらず全ての分岐のイベントを見られる。
    • 各キャラで見られるイベント数は、基本的には「仲良しマス」で見られるイベント10個+ターン経過で見られるイベント5個(高レアリティのキャラカードでしか見られない2個含む)の15個となる*2

評価点

  • ジャバウォック島で過ごす面々のミニシナリオが非常に多数収録されており、これについてはファンの需要に十分応えてくれる出来。
    • 本作に収録されているミニシナリオは実に1000近くにのぼる*3。クオリティについても高い水準でまとまっている。
    • 前身となる『V3』の「才能育成計画」にも同様のミニシナリオは存在したが、本作では『絶女』の各キャラが追加されたことでキャラの取り合わせの幅が増えており、もちろん『1』~『V3』内での新しい組み合わせや、同じ組み合わせでの新しい会話もある。
    • パラレルワールドであるが本編のネタも多数拾っており、それがシリーズ他作品のキャラを絡めることで拡張もされている。
    • 各キャラのイベント数が約15個とほぼ決まっていることもあり、キャラの登場回数にも大きな偏りはない。作中での活躍、人気の有り無し問わず出番が与えられている。
  • ストーリーは本作のシステムに寄せたものであるため大きな驚きはないが、最終ストーリーに関しては一度見ておいても損のない出来。
    • 『1』の主人公である苗木を主役として展開される。現行の時系列最終作であるアニメ版『3』ではあまり主体的な役割を持てず活躍に欠けたきらいもある初代主人公・苗木が、因縁の敵であるモノクマに立ち向かう姿は面目躍如の感があり、大変頼もしい。
    • イベントについてはあくまでミニシナリオ集であるため演出は強くない本作であるが、この最終ストーリーについては固有の演出も多数入れられている。
  • ボードゲームのマップは『2』のジャバウォック島が3Dで描かれており、よく再現されている。
    • 『2』作中の施設が(内部まで描かれているのは「ダンジョン」になっている建物だけだが)いずれも存在し、懐かしい気持ちに浸れるだろう。
  • 後述の通り全体に強い作業感が漂うものの、本作のミニシナリオを見たいという目的だけで買うのであれば、そこまで大した作業もなく楽しむことはできる。
    • 止まると各キャラ10種類の固有イベントが見られる仲良しマスは序盤の「第2の島」に多数配置してあるため、50ターンあればゲーム序盤でも全て見ることは楽に可能。
    • レア度S(水着)までのキャラカードは実績報酬で多数手に入るモノミメダルで比較的楽に手に入るので、ターン経過のイベントもレア度SRのキャラカードが必要なもの以外は簡単に見られる。
    • 結果的に、各キャラ15個用意されているイベント中14個ずつは特に作業要素を必要とせずに見ることは可能。
      • とは言え、あくまで1周で見られるのはそのキャラのイベントだけなので、全キャラのイベントを見ようとすると62回の周回は必要となるが…
  • ただ遊ぶ分には「育成」モードはそこそこ楽しく、バランスも割と練られている。
    • キャラ間で難易度の差があまり付かないように調整されていたりと配慮は感じられる。1回2回遊ぶ程度でストレスが溜まることはまず無いだろう。
  • モノクマのボイスを『1』『2』の大山のぶ代氏版と『V3』のTARAKO氏版から選べるなどの配慮も行われている。

賛否両論点

  • コロシアイが起きておらず、かつ卒業間近という設定から、全体的に平穏な雰囲気が漂う。
    • 「超高校級の『暴走族』」の大和田や「超高校級の『極道』」の九頭龍といった荒れがちなキャラも大分丸くなっている。『2』の西園寺や『V3』の入間の毒舌っぷりは相変わらずだったりと例外も複数あるが、全体的に雰囲気は穏やかに進む。
    • シリーズ本編に不足していた和やかなやりとりを補完できることに十分な需要はあるだろうが、見方によっては人間関係が安定し過ぎておりストーリー的な起伏にやや欠けると言えなくもない。
      • 非常に多数のシナリオがあるため十分許容できるラインではあるのだが、本当にただ和やかな世間話をするだけで何の捻り・オチもなく終わってしまうようなシナリオも複数存在する。
  • DLCの導入
    • 発売前の事前情報になかったこともあり、ガチャをDLCで購入できるという仕様はやや賛否を呼んだ。
    • とは言えクリア自体はDLCがなくとも十分可能なレベルなので、DLCとして大きな問題があるという程ではない。

問題点

  • 稼ぎを強いる、かなり作業的な構成。
    • そもそも、62キャラを各1度以上育てないとメインストーリーすら終わらせられないという仕様が大変作業的。
      • 「育成」のボードゲームについては、ゲームを進めると特典のお陰で進めやすくなるぐらいで、内容自体は最後まで特に代わり映えしない。何十回、何百回も繰り返すには厳しい構成である。
      • 育てたキャラ数が増えると経験値・お金アップの特典が貰えて成長速度が上がっていくが、逆に言えば特典が貰えるまでの育成は効率が遅く、「バトル」で実用化できるようなキャラには到底育たない。将来的にはまず間違いなく無駄になってしまう。
      • そのため、本作の最適解はまず「一切キャラを育てず終わらせる」周を数十周こなし、特典を貰ってやっと育て始めるのが一番効率がいいことになってしまう。
      • 参考までに、「育成」は何もせず最速で50ターン終わらせても1周10~12分、真面目にやれば25~30分程度は掛かる。
      • 全てのキャラに「希望のカケラ」を集めさせるというストーリー上の目的に沿ったものではあるのだが、それでも余りにゲームの快適性を犠牲にしすぎである。
    • 「バトル」の方では、装備品作成のためにかなり素材稼ぎを強要させられる。
      • 装備品におけるステータス影響は極めて強く、レベル99~100に育てたキャラでも装備品が弱ければ殆ど活躍できない。パーティー4人分の装備を揃える必要がある。
      • 後半になってくると、1つの装備を作るにも複数の素材を10個20個といった単位で用意しなければならず、非常に面倒。装備は必ず落とす訳ではなく、落とす場合でも複数種のドロップアイテムから目的のものを落としてくれるとは限らず、落とすのも必ず1個ずつである。
    • 終盤になると、最高レアのキャラやワクワクカードを手に入れるために、最高ランクのガチャ用メダル「金のモノクマメダル」が必要になってくる。これは後半のボスにドロップさせるか、一部の高難易度実績・ミッションの報酬でしか手に入らない。
      • これが7、8回ボスを倒してようやく1個手に入るかどうかという確率でしか落とさない代物。後半のボスしか落とさないため、手軽にワンパンで倒せるほど弱い訳ではなく周回もやや面倒である。
      • これでガチャを回しても、出るカードは62キャラの内の1人分。ダブりはないとは言え、当然いつ目当てのキャラが出るかは完全に運。
      • 最高ランクの装備「V3」系の武器については金のモノクマメダルが素材として10個も必要*4。パーティ4人分揃えようとすれば1つの武器につき40個である。作業量は計り知れない。
  • 演出面もプレイ時間に対して十分とは言えず、特に「バトル」モードは「育成」モードの流用感が強い。
    • 「バトル」モードでは戦闘が4人パーティになり複雑化しただけで、結局のところ出て来る敵や背景といった演出面は「育成」モードと全く変わらない。
    • そのため水増し感は否めず、ガワが異なるだけで同じようなモードを遊んでいる感が否めない。これもゲーム全体の作業感に繋がってしまっている。
  • UIにちょくちょく引っ掛かる点がある。
    • 戦闘スピードを3段階に選べるのはいいのだが、これについてはオートセーブの対象外であり、再起動すると設定は元に戻ってしまう。
      • 戦闘スピードを下げるとメッセージ速度だけでなく、各キャラの行動選択を行う際の切り替え時間等も増えてしまう。そんな所までスピードを下げる必要はないのだが…
      • 稼ぎをしていると、最高の3段階目でもやや遅いと感じてしまうかもしれない。
    • 戦闘AIも微妙で、必ずしも最適な行動を取ってくれない。
      • 「魔法攻撃に弱い敵には魔法攻撃を使う」のようにパターンが組まれているため、物理攻撃系のキャラに補助的に魔法攻撃を付けておいたりすると、弱点ではあるが大して効かない魔法攻撃を使って、結果的にダメージは減ってしまったりする。
      • ステータス異常系の技を付けておくと簡単に勝てる敵にもそれを乱用したりと、全く融通が利かず状況に合わせた行動を取れない。攻撃重視・回復重視のようなAIのタイプ選択も付いていない。
      • 稼ぎ作業が必須となる本作において、必要性が高いのはAIによる自動戦闘よりむしろ特定のコマンドを実行し続けてくれるタイプの自動戦闘なのだが、そういった機能は付いていない(戦闘中のコマンドカーソル固定もできない)。稼ぎ作業では特定の行動しか使わないよう習得スキルを調整したキャラを使うか、手動で操作するなどの対策が必要になる場合がある。
  • ネタバレ注意の警告がない。
    • 前身の『V3』ミニゲーム時代から存在した問題だが、本作では「○○と△△は実は同一人物」「黒幕は○○」等のネタバレが容赦なく行われている*5
    • もちろん原作中のネタバレ込みのシナリオがあること自体は全く問題ないのだが、ゲーム開始時の警告等はなく、知らないプレイヤーも普通にプレイできてしまう。
    • 『V3』のミニゲームはクリア後のおまけだったのでまだしもだが、本作は『トリロジーパック』では『1』~『V3』と並列に収録されており、単品でも購入できる作品である。また、同時収録でない『絶女』のネタバレも本作には存在する。一言警告があれば済む話なだけに気に掛かる点である。
  • プレイ中に急にゲームが落ちてしまうバグがあった(現在は解消済)。
    • プレイ時間が関係しているようで、ある程度長時間のプレイになると発生する。プレイ中断の際に電源を落とさずスリープでプレイしていると起こりやすい。
    • オートセーブであるため致命的な損害にはならないのだが、再現性は高くこまめに電源を切るプレイでなければまず遭遇するため、やや印象は悪い。
    • 2022年2月15日配信のアップデートで修正が行われバグは解消されたが、修正に約3ヶ月を要した。
    • それ以外にも、長時間スリープすると、スリープ解除時にかなり長めの読み込みが入る問題もある。画面に明示する形で読み込む挙動ではなく、読み込みの間画面は固まってしまうので、初見では間違いなくフリーズを疑ってしまう。こちらは現在も解消されていない。
  • ゲーム起動時のタイトル表示までの時間が長い。
    • ムービーがある訳でもないのに、「会社ロゴ表示の前」と「タイトル表示の前」に2回も読み込みが入り、いずれも数秒はある。
    • 本来そこまで大した話ではないのだが、上記の強制終了バグの際に再起動する羽目になるため、合わせ技でイライラが大きくなっていた。

総評

恐らく多くのプレイヤーが目当てにするであろう、キャラクターの新規イベントについては問題は少ない。
無論、シリーズ本編各作品における重厚で伏線に溢れたシナリオに匹敵する魅力があるとまでは言えず、あくまでミニシナリオ集なので演出性はやや低いが、それでもその範囲でクオリティは量・質共に十分で価格相応の魅力はある。
あくまでファンアイテムの域は出ないものの、公式のキャラ会話をもっと見たかったというシリーズファンの欲求には応えてくれるだろう。

一方、ゲームとして見ると「ボードゲーム要素」「RPG要素」それぞれ自体に大きな問題はないのだが、「ミニゲームレベルのものを無理に引き延ばして単体のゲームにした」感は否めない。
本作のシステムに60人以上のキャラや200階のダンジョンを進めるほどの奥深さやファンサービスの密度があるかと言われれば、答えはNOである。
「各キャラのミニイベントだけ見てゲームを止められる」選択肢のある設計なのは評価点だが、流石にそれで全てを納得するのは無理だろう。
作業要素によるプレイ時間の引き延ばしがゲームの評価を下げてしまった一例である。


余談

  • 本作というよりは『トリロジーパック』の話になるが、パッケージに描かれるキャラに『1』の山田(髪の頂点が尖っており眼鏡を掛けている人物)が選出されている点はファンからしばしばネタにされる。
    • いかにも重要なキャラのように考える仕草をして格好つけた姿が背景にでかでかと描かれているが、『1』での彼の活躍はそこまでのレベルとは到底言い難い。
    • 公式に言及はないが、フルネームが「山田一二三」であるため、『1』『2』『V3』の3作をまとめた作品だからという理由で選出されたという説が有力である。
  • 赤松楓役の神田沙也加氏は本作発売から1ヶ月後の2021年12月18日に急逝したため本作がシリーズ最後の出演となった。
  • Nintendo Switch版から遅れて2022年7月21日、PS4/Steam版が発売。
    • PS4では元々『トリロジーパック』という形でDL版『1・2 Reload』と『V3』のセット販売が行われていたこともあり、Switch版のようなパッケージ版は販売されず、『S』の単品販売のみとなっている。
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最終更新:2023年08月14日 18:38

*1 1度で全て達成する必要はなく、複数回の挑戦で分けて達成してもよい。

*2 一部、「キャラAで育成した場合にAとBの会話イベントが起きるが、キャラBで育成した場合は起きない」イベントがあるため、16~17のイベントがあるキャラもいる。

*3 「キャラAとキャラBのランダムシナリオ」はキャラAでもキャラBでも発生するが、この重複は省いている。3つの選択肢のあるイベントは最初の選択肢で以降の内容が全く異なるため、3つのシナリオとして数えている。

*4 一応、武器以外については金のモノクマメダルは不要。

*5 直接的にそのように言う台詞がある訳ではないが、明らかにそれを示唆する描写は多数存在する。