ダービースタリオンII

【だーびーすたりおんつー】

ジャンル シミュレーション
対応機種 スーパーファミコン
発売・開発元 アスキー
発売日 1994年2月18日
定価 12,800円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント スーパーファミコンで進化したグラフィックとサウンド
まだまだ中途半端で全体的にスローテンポが目立つ
新しい目標「凱旋門賞」
ブリーダーズカップによる対戦人気の始まり
後の人気無料種牡馬のデビュー作
ダービースタリオンシリーズ


概要

1994年末に発売した競馬シミュレーションゲーム「ダビスタシリーズ」の3作目(「全国版」を2作目とみなせば4作目)*1
ファミコン系ハードでは2作目(『全国版』はナンバリングに含めない)としてナンバリングを『II』としている。
基本的なシステムは前作から引き継がれているため、本項では変更点のみにとどめるものとする。


変更点

  • 牧場に名前が付けられるようになり、牧場のセーブ枠も3枠用意された。
    • ちなみに前作までは1つのみで、既存のデータを消さなければやり直せなかった。
    • アスキーが発売していた外部記憶装置であるターボファイルII及びターボファイルツインにも対応している。
  • レースプログラムが1994年準拠になった。
  • 牧場や厩舎での馬がグラフィックになった。
    • 前作は文字のみだったが、グラフィックとして描かれ、牧場では歩き回る姿が見られる。
  • 「美浦」「栗東」それぞれの厩舎が完全所属になった。
    • 入厩時に選択可能。それぞれ10頭ずつ預けられる。ただし一度でも出走させると転厩はできない。
    • 異なる地方に遠征させる場合はレースごとに直前輸送(滞在は不可)となり、そのたびに馬体重が減少する。
  • 出走頭数が最大12頭になり、出走頭数も変動するようになった。
    • 併せて馬連馬券が導入(9頭以上の場合のみ)*2
  • 配合時「ニックス」要素が導入。
    • 系統同士の好相性で成立か否かが決まり、中にはまったく対象外の系統もある。
      • 効果としては全体の底上げであり、マイナスの可能性もあった「インブリード」と違ってノーリスクとはいえ気持ち程度の効果しか期待できないので「ないよりはマシ」という程度。
      • しかし、実態は……(後述)。
  • 血統表で、その馬から見て3代までの種牡馬はすべて名前が表示されるようになった。
  • 牝馬の産駒が誕生するようになり、更に現実同様牝馬限定レースが導入*3
    • 牝馬は引退後、牧場に戻して繁殖牝馬として起用することも可能になった(前作では牝馬は生まれなかったので繁殖牝馬の購入が必要だった)。
      • 因みに世代を重ねるほど牝馬は生まれにくくなる*4ので自家生産だけでは自ずと行き詰まる。
  • 毛色が正しく設定されるようになった。産駒や種牡馬のパラメータとしても明記される。
    • 前作までは「栃栗毛」は「栗毛」と同じ色、「黒鹿毛」「青鹿毛」「青毛」も全て同様の黒っぽい色だったが、本作では全て異なる色である。
    • 突然変異の「白毛」も登場。自家生産牝馬の産駒としてのみ、非常に低い確率で誕生する。
      • 珍しいだけで特別な能力があるわけでもないのだが、(白毛馬が活躍する)漫画『みどりのマキバオー』の連載時期と重なったこともありプレイヤーを喜ばせた。
  • パドックの導入。
    • レース前にパドックでそれぞれの馬体重と、解説者の見た所感を聞くことができる。
  • レース展開に「最終コーナー」が追加。
    • 「スタート」→「道中」→「最終コーナー」→「ゴール前最後の直線」→「着順掲示板(結果告知)」という順番。
  • レースタイム及びレコードタイムが導入された。
    • 優勝馬のゴールタイムが測定される。ファミコン版では空欄のままだった掲示板のタイム欄がしっかり表示されるようになった。
    • それぞれの競馬場でそれぞれの距離に紐づいてレコードタイムが記録されている。この一覧は厩舎で見ることができる。
    • 対象のレースで、それを上回るタイムを出すたびに更新されていく。
      • 初期状態は1993年終了時に準じており、ここだけは実名で登録されている。
        つまり何十何百年とプレーすると、架空(自分の馬)やなまった名前だらけになる。
      • ただし、プレイヤーが見ていないレースではレコードが更新されることはない(そもそも処理的にはプレイヤーが見ていないレースは実際に行われていない)。
  • 「芝」「ダート」に加えて新しい調教メニューが追加された。効果は低めだがリスクも小さいので、木曜(2回目)の調教向き。
    • 「ウッドチップ」
      • 「単走」のみで「馬なり」「強目」「一杯」を選択。
        ダートと同様スタミナ強化で、大体ダートの「単走」とさほど変わりはない。違いとしては脚への負担が小さいものの疲労が抜けにくい。
        レース後すぐの調教には不向きだが、休養後など疲労のないときに短期間でスタミナを回復したり、馬体重の微調整をしたい時には便利。
    • 「坂路」
      • 単走のみで強度も選択不可。
        芝「強目」と同じスピードアップが図れる。脚への負担は芝よりも小さくて済む。
        体重の減りは2kg又は4kg。この調教で直接故障はしないが疲労が溜まり、これを行った週にレースに出すとレース中の故障率がアップする。
        ダートの併せ馬と交互に行うことでバランスよく鍛えることができ、使い勝手の良いメニューとなっている。
      • 設定上はウッドチップの坂路なのだが、通常のウッドチップ調教とは性質が大きく異なる。
    • 「プール」
      • 単走のみで強度も選択不可。
        ダート「強目」の半分ほどのスタミナがアップ。泳ぐ格好なので脚への負担はゼロで疲労も残らない。
        体重の減りは2kg又は4kg。この調教で直接故障はしないのは「坂路」と同じ。
        レース直前の木曜にもう一絞りしたい場合はうってつけで、軽度の故障(跛行・ソエ)を負った馬でも安全に体重調整できる。
  • セリ市の導入。
    • 前作までは単に購入するだけの市場だったが、オークション形式となり値段がガンガン吊り上がるようになった。
      • そのため、できるだけ安く購入するには終了ギリギリまで待つ必要がある。
    • 併せて「持ち込み馬(受胎済馬)」が導入された。
      • 売られている繁殖牝馬の中には受胎済みのもいる、それらはサドラーズウェルズ*5、カーリアンなど、プレイヤーには直接種付けすることができない海外のエリート種牡馬である。
        ただし、持ち込み受胎済の繁殖牝馬は高齢なのに、種付け時8歳の若い馬と同額なので割高。翌年以降は受胎できないことも多く、最悪の場合は出産前に死亡してしまうリスクもある。
        総じて費用に見合った効果が期待できるとは言い難く、有り余った資金の使い道としてのおまけ要素に近い。
  • 海外遠征による隠れGI「凱旋門賞」*6がコンシューマー機初登場(なお「凱旋門賞」自体の初登場はPC-98版)
    • 出走条件もかなり厳しく「皐月賞を除く2000m以上のGIを2勝以上した5歳~7歳の馬が、その年の宝塚記念を勝った後、出走させずに(放牧は可)9月1週に健全な状態で入厩している」というもの。
      • 出走してくるライバルはいずれもジャパンカップ以上に強力なのは言うまでもない。まさに本作最難関レースと言えよう。
      • レース自体はもとより、前走から3ヶ月以上空いてしまう上に、1ヶ月間の遠征中は調教が一切行えないので体調管理が非常に難しい。
    • また一度出走した馬は再び条件を満たしても二度と挑戦できない。チャンスは一度きりである。
  • ブリーダーズカップの導入*7
    • 4歳~9歳で一度でもレースに出走した馬であれば、それぞれの牧場から直接出走でき、パスワードで友達の馬を登録しての対戦も可能。
      • パスワード発行は有料で100万が必要*8
    • そのため未勝利のまま5歳となりレースに出走できなくなっても、このために調教を続けることが可能。
    • このレースでは自分の馬もライバル馬同様の扱いとなるので故障はしない。
  • 主に1984年生組までのライバル馬が引退。
    • タマノクロス(タマモクロス)、ベリーナイス(メリーナイス)などがライバル馬から外された。これらの中には種牡馬入りしているものもいる。
    • しかしイナリアン(イナリワン)や1983年生まれのメジロデュラン(メジロデュレン)やホーリックスなどそのまま現役続行しているのもいる。
  • レースVTR機能。
    • レース前に「録画予約」しておくと、そのレースが記録され、後でいつでも見直すことができる。
    • 最大10枠まで保存可能。
      • これは牧場単位ではなく、ソフトの中での保有枠で牧場3つで共有しているような形。またブリーダーズカップも録画可能。
      • ターボファイルにも保存可能。1つのバンクに最大3つ分(計30枠)を保存できる。
  • 牧場の拡張。
    • 初期段階では競走馬6頭、繁殖牝馬2頭まで。資金と飼養馬の数が増えると拡張できるようになる。
      • 第2段階では競走馬10頭、繁殖牝馬4頭まで所有することができる。
      • 更に拡張した第3段階では競走馬16頭、繁殖牝馬6頭まで所有することができる。
  • 予後不良時に専用の背景と共に生涯成績がスクロールする。
    • 前作では発生したレースが終わった直後にデモ演出が流れていたが、その週のレースをすべて終えた後に流れるようになった。
    • レース後に予後不良の診断が下されたとのメッセージがレクイエム調の音楽と共に現れ、生涯成績としてその馬が出走した全レースの着順がスクロールし、最後に*戦*勝と表示される。
    • 前作は黒背景に白文字(しかも予後不良の文字は大文字)と非常にトラウマチックだったが、本作では夕日に照らされた墓標らしき場所に馬の顔が残像のように浮かび上がっている背景に白文字(文字の大きさはすべて同じ)がスクロールする。いずれにせよトラウマチックであることには変わりないが、レクイエム調の音楽がそれほどトラウマを抉らないのが救い。

評価点

  • 新しい目標「凱旋門賞」「全重賞制覇」。
    • 前作までは全GIの制覇のみだったが、今作での全GI制覇に凱旋門賞は含まれていない。そのため牧場運営と競走馬育成を継続する新たなモチベーションにもつながる。
    • また、優勝したGIIとGIIIも記録されるようになった。エンディング画面でしか確認できないが、優勝したことのある重賞の名前が全て表示されるようになった。
      • ただしコンプリート特典は無く、抜けがある場合もプレイヤー自身がチェックしないとわからない。次回作以降は「トロフィー」として展示室に可視化されることで改善。
  • 馬たちがグラフィックで見られるようになった。
    • 前作の扱いが文字だけだったことを思えば、より馬を生きているものとして感じられ、愛着も湧きやすい。牧場でじゃれあったりする様子を見れば心が和むだろう。
    • 毛色も正しく設定されるようになったので、青毛や栃栗毛、白毛といった希少な馬を眺める楽しみもある。
  • 前作のように関東/関西は「ただ、そこにいるだけ」だった点が所属になり、現実味が増している。
  • ブリーダーズカップの普及とその盛り上がり。
    • 牧場で発行されるパスワードを共有することで、2020年代と比べオンライン環境が貧弱なためゲームの同時対戦がほぼ不可能であった1994年当時においては非常に画期的な「遠隔地に住んでいる者同士によるゲームの対戦」を実現した。
    • 前述のようにブリーダーズカップ自体はPC-98版が初導入であった。しかし当時のパソコン普及率は低かったため、その人気は限定的なものであった。当時大変普及していたスーパーファミコンソフトで導入されたことで公式大会やパソコン通信上での対戦が非常に盛り上がり、ダビスタ自体の人気上昇にも大いに貢献した。
    • その盛り上がりぶりは当時の公式戦優勝者のインタビュー記事が現実のスポーツ雑誌である『Number』の競馬特集に掲載されたほど。(参考

賛否両論点

  • 血統の楽しみ方が拡大した。
    • 牝馬の産駒が繁殖牝馬として使えるようになり、血統を作り上げる楽しみが増した。これにより次の代を見越して配合するなど、計画性が非常に大事になった。代重ねは通常プレイでも最強馬育成でも有効な手段。
      • ただし代を重ねるほど牝馬が生まれにくくなり、三代目以降ともなると牝馬が産まれる前に繁殖牝馬が寿命で死んでしまうことが多い。最強馬生産にはターボファイルツインが必須。
  • 広がった調教の手段。
    • 特に脚部が弱い馬には、追加された新しい調教パターンが活かせる。
      • ただし、時間効率ではかなり悪いものになった。
  • 良くも悪くもリアル志向であること
    • 前作よりハード性能が著しく向上した本作でも、従来同様にゲーム上で重要なパラメータや仕様がゲーム中では現実の会話に即したようなリアルな(あいまいな)表現しかされない。シリーズ全体を通して賛否が分かれやすい部分である。
      • そのため基本的な仕様はもとより、ゲームに影響を及ぼす重要なバグや設定ミスを素人が自力で把握することが困難。もちろん気づかなくても問題なく遊べるのだが。
    • また、出遅れや故障等レース内外のアクシデントもリアルさながら かそれ以上 に起こりやすい。繁殖牝馬もよく早逝する。
      • この頃はまだ調教やレース登録を調教師に「おまかせ」できないので、故障を防ぎつつ馬を鍛えて適したレースに出すノウハウは全て手探りで構築しなければならない。
      • 血統面においても、この配合によってどのような能力や適性の馬が生まれやすいか、という指針も示されない。

問題点

  • 仕様上は有効なはずのインブリードとニックスでスピードアップ・スタミナアップ効果が出ない。
    • ニックスは本来スピードとスタミナを強化するはずが、何の効果もないものになってしまっている。
      • インブリードも同様だが、底力アップ・気性難・ダート適性アップ効果などはしっかり出る。
    • 結果としてスピードを高める手段が「短距離適性の種牡馬を付ける」「実績Aの種牡馬による底上げを期待する」しかなく、特に序盤は攻略の幅が非常に狭くなってしまっている。
      • 距離適性下限1000mかつ実績Aのスティールハートが最強種牡馬と呼ばれる理由である。
    • 発売から20年以上ほとんど知られていなかったのだが、初期の大会優勝者も完全アウトブリードで生産していた等、当時から知っている人は知っていた模様。
    • 前作までと比べて本作の難易度は高いと言われていた。当てにしていた強化要素が実はほぼ無効だったとなると当然である。
  • 操作のレスポンスがやや鈍い。
    • 特にそれが顕著に感じられるは月単位のスキップで、飛ばすにもボタンを押してからタイムラグがかなり長い。
  • パドックのメッセージが遅い。しかも1頭単位で飛ばせない(まるごと全部スキップは可能)。
    • そのため自分の馬は大外の12番枠だったりすると、かなり長い間待たされる。
      • これは次作で改善。
  • 牧場(セーブデータ)に名前を付けられるようになったが、平仮名しか使えない。
    • 初期状態ではカタカナが使えているのだから少々不親切。
  • 騎手の漢字表記とリストに相違があるものも見られる。
    • 例えば美浦の大塚栄三郎*9も「おおづか」ながらパドックの横断幕では「犬塚」になっていたり、栗東の岸滋彦*10は「きす」だが、パドックの横断幕では「騎士」となっているなど。
      • 一応続編の『III』ではこのパドックでの漢字表記が使われているが、栗東の田原成貴の「たわら(FC版およびII)」「田薔薇(PC版およびIIの横断幕)」「田茨(III)」のように表記がバラバラな例もある。
  • 折角の対戦モード「ブリーダーズカップ」が導入されたものの、プレイアビリティや仕様に問題が多い。
    • 東京競馬場の4パターンしかない。芝はマイル(1600m)・クラシック(2400m)・ディスタンス(3200m)と主要距離が揃っているが、ダートは2100mのみ。
    • パスワード入力した馬のデータが保存されない。そのためレースのたびにパスワードを入力する必要がある。
    • 自分の馬は牧場から直接出せるが、ベストのタイミングで出すにはその場でパスワードを取って入れなければならない。あるいはターボファイルに保存する必要がある。
      • これも次作で改善される。
    • 馬の実際の能力は一定値以上は反映されなくなる。その代わりに「戦績ボーナス」が加算される。
      • このため最強クラスの馬であってもブリーダーズカップで実力を再現するには60勝近い戦績が必要。逆に、それより弱い馬でもさらなる戦績を重ねると同レベルのスピードになるため、単純な実力勝負とはかけ離れたものになる。
      • なお戦績ボーナスを含めてスピードを上げすぎるとオーバーフローを起こし弱体化する。このため最強馬生産においては、どこまで戦績を積むかの見極めも必要だった。
  • 初期状態で保有できる馬の数が大幅減少。
    • FC版ではデビュー前&現役馬を10頭、繁殖牝馬を5頭保有できたが、本作ではそれぞれ6頭と2頭しか持てない。
    • 牧場拡張により最終的にはFC版より多く持てるようになるが、そのためには計13億円かけて2段階(最大)まで拡張する必要がある。
    • 特に、生産馬を繁殖牝馬にするシステムが登場したにもかかわらず初期状態では2頭しか持てないのは非常に厳しい。
      • 基本的には「仔出しのいい牝馬を残して他は売却する」ことになるだろうが、まずは繁殖に上げてみないことには真価はわからない。
    • 逆に、現役馬を最大16頭も保有できるのはオーバースペック気味。おまかせ調教は存在しないので、初期状態の上限である6頭でも同時に育成するとなると管理が煩雑で、思考が回らなくなることが多い。
      • エンディング後は同一レースに自分の馬を何頭でも出せるようになる(クリア前は2頭まで)のでダミー馬を出走させることにより少しは勝ちやすくなるが、最難関である凱旋門賞には出走条件の関係で1頭しか出せないためあまり意味がない。
      • あるいは、思い入れのある馬を手放さずに残しておきたいプレイヤーのためのシステムとも言える。次回作以降は専用の「功労馬」という枠ができたが、本作でもそれに近いことは可能。
    • 最大まで拡張すると牧場画面でスクロールが発生するようになり、ゲームのテンポが悪化するのも問題。

総評

全体的にはファミコン版からの順当なグレードアップには違いない。スーパーファミコンへの移行によりグラフィックやサウンドが強化、牝馬限定レースも加わり、より現実の競馬に近づいた。自家生産牝馬はそのまま繁殖入りできるため血統を作る醍醐味も味わえるようになった。また対戦モード「ブリーダーズカップ」が人気を博したことにより、ダビスタ自体の人気が大いに向上したことも無視できない功績である。
一方でレスポンスやテンポの悪さなど全体的にスロー気味な展開が目立ち、プレイ中はややストレスがたまりがちになる一面もある。また「ブリーダーズカップ」の使い勝手の悪さ、夏場の北海道開催がないなど現実競馬の再現も充分とは言い難く、まだまだ改良の余地が多くある点も否定できない内容だった。


その後の展開

  • 1994年9月30日『ダービースタリオン エキスパート』がPC-98で発売。通称『EX』。
    • 既に発売されていたPC-98版のアップグレード版。種牡馬や繁殖牝馬の追加、ゲームバランスの調整などが行われている。
    • ブリーダーズカップ登録馬のパスワードが32文字になり『III』との互換性がある。
  • 1995年1月18日『ダービースタリオンIII』がスーパーファミコンで発売。
    • 北海道の競馬場や、中央4場(東京・中山・京都・阪神)と同時にローカル開催など、だいぶ現実の競馬に近づいた形になっている。
      • またシステムとして「おまかせ厩舎」が導入され、調教のセオリーや出すべきレースが分からない入門層に対する敷居がだいぶ下がった。

余談

  • 初期状態の牧場名は「アスキー牧場」「ダビスタ牧場」「ベスプレ牧場」となっている。
    • 「ベスプレ」とはダビスタ同様、薗部博之氏が手掛けたシミュレーション野球ゲーム『ベストプレープロ野球』(1988年7月発売)であり、シリーズ初作は『ベスト競馬 ダービースタリオン』と、その亜流だった名残がこんなところに垣間見える。
      • 本作のオープニングでは競馬実況風のボイスが流れ、そこでは「ベストプレー」と「ダービースタリオン」が競走馬の名前として登場する。
      • 『III』では牧場枠が2つになり「アスキー牧場」「ダビスタ牧場」だけになった。
  • 「もちかね牧場」
    • 牧場にこの名前をつけると初期資金1500万に100億プラスと潤沢な資金を持ってスタートできるが、ブリーダーズカップへの登録(パスワード発行)ができない。登録しようとすると調教師に拒否され、パスワードの代わりに意味不明な数字の羅列*11が表示される。
      • しかし初心者がこのゲームのシステムに慣れるエントリー層向け要素として愛された。
      • またエンディングを展示室からいつでも見ることができ*12、普通ならなかなか見られない税務署イベントも開始から1か月進めるだけで簡単に見ることができる。
    • これとは逆に「ぼんびー牧場」で始めると初期資金が200万に減少した状態でスタートする。ただでさえ余裕のない初期の資金繰りがさらに厳しくなり、維持費や預託料の発生も考えるとしばらく破産と隣り合わせという「ハードモード」のような形で始めることも可能。
    • 「しずかな牧場」で始めるとBGMが一切流れなくなる
    • これらの特殊な状況で開始できる牧場名は『III』や『96』でも名称を変えて引き継がれている*13
  • 『III』の回転馬のように馬体重を回転できるが、能力上限突破バグは発生しない。
  • 実力ナンバーワンの「おたべ」の漢字表記。
    • モデルは岡部幸雄でパドックの横断幕では「小田部」(『III』ではこの表記になっている)だが、現実でこの名字の読みは「こたべ*14」や「おだべ」が圧倒的に多く、上記のような呼称は滅多にない。
      • そもそも「おかべ」をなまらせた結果が上記なので、それに無理矢理漢字表記をくっつけたのだから仕方ない話だが。
  • 晩成型は3歳時の牧場長コメントで「どうもオク手のタイプのようでデビューは遅れるかもしれません」と言われる。
    • 「オクテ」とは「早稲(ワセ)」の対義語で「晩稲」と表記し、本来は遅くに実を付ける作物のことであり、これが転じて大器晩成的な意味合いで使われるようになった。またはそれが転じて「晩生」などの表記もされるようになった。
    • また「奥手」という言葉自体も元来存在するものだが「奥の手」と言う意味で使われ、一種「とっておきの大技」のような意味合いである。いずれにせよ元々晩成的意味合いで使われる「オクテ」の「テ」は「手」ではない
      • だが競馬ブーム最中の人気ゲームであるダビスタシリーズで「オク」と表記されたことで晩成的な意味での「奥手」が一般的になり「奥手男子」などのような言葉が生まれるに至っている。

無料種牡馬・マチカネイワシミズ

  • 種牡馬の中で一際目立つのは、種付け料別の最下位にいる「マチカネイワシミズ」であり、なんと無料
    • 本馬は父・ファバージ、母ロッチの間に1983年に生まれ、4歳(1986年)4月とかなり遅いデビュー。デビュー後はそれを含む条件戦3連勝の後、菊花賞7着、阪神大賞典2着で5戦3勝の後故障し1年以上かけて復帰を図ったものの叶わず引退したため、これといって実績を残せなかった馬だが、全兄*15にハードバージ(1974年生まれで1977年の皐月賞馬)がいることで血統を買われて1989年から種牡馬として起用された*16
    • 上記の通り競争成績でまったく光るものがないため交配相手が集まらないことを危惧して当初20万に予定していた種付け料を思い切って無料にしたためそれがゲームでもそれが反映された形になっている。実際これが功を奏してわずかながら交配相手が得られた。
      • この「無料」はひときわ目を引く存在に違いなく、スタート時の繁殖牝馬が最低クラスな能力しかない、高い種牡馬をつけても大して強くならない、そもそも名馬を選べるほど初期資金に余裕がないといったことも手伝って、ダメ元という一面も強いが結果的にそれが偶然強い馬を出したりもしたこともあり、ダビスタプレイヤーの間で有名となった。
      • 本作では調教もされず売却前提での利用が多かったが次作では「おまかせ厩舎」が導入されたことで、手間いらずで走らせられるのでデビューすることも多くなり、更にインブリードがちゃんと機能することでナスルーラ重複クロスによる恩恵にもあずかりムラは大きいもののちゃんとレースで実績を上げる産駒も輩出するようになり、一層知名度を上げていく。そして「無料」を活かした活躍を『96』まで続けることとなる。
      • 1995年に種牡馬としては廃用されたので本来ならば『96』では出ないはずだがシリーズで屈指の人気を誇ったため事実に反して特別に残された。
      • 『III』や『96』の頃は競馬ブームが一層熱を帯びてきたこともあってか、その知名度はますますアップし結果的に無冠だった本馬は一応クラシックホースである兄ハードバージよりもその知名度を高めることとなった*17
最終更新:2024年05月23日 13:54

*1 前年にPC版『ダービースタリオン』が発売されている。

*2 中央競馬では1991年から導入済み。

*3 厳密に言えばPC-98版から導入された

*4 3代目以降だと1%しか生まれない。なお当時の最強育成では低確率を乗り越えて牝馬を生産し続けることでスピードを伸ばし切ることを狙う手法が編み出されている。

*5 日本では直接産駒の活躍はなかったが孫にあたるテイエムオペラオーやメイショウサムソンが活躍した。欧州では産駒のガリレオが大繁栄している。

*6 フランスのロンシャン競馬場で行われる世界最高峰の1つに数えられる国際GI

*7 厳密にはPC-98版の「ステークスレース」で先駆けて導入されている

*8 とはいえパスワードを貰えるだけでメモしてリセットすれば実質タダである。

*9 大塚栄三郎とは逃げが得意のベテランジョッキー。知名度はあったが実績は地味で最後までGIを勝てず重賞勝ちも少なかった。

*10 岸滋彦とは当時栗東に所属していた若手ジョッキー。ダイタクヘリオスなどでGIを制したこともあり、当時の現役最強馬ビワハヤヒデの主戦も当初は彼が担っていた。

*11 実は暗号化された馬のパラメータであり、読み取ることで攻略に活用可能

*12 表示される戦績は再生時点の成績が反映される。

*13 「ぼんびー牧場」に相当するものは「5億円多くスタートするが、その分は借金のため分割で返済していく」というものに変更されている。

*14 余談の余談だが偶然にも同年4月に地方競馬で「小田部雪(こたべ ゆき)」騎手がデビューしている。後に交流競争で中央競馬にも騎乗したため、現実の出馬表に「小田部」が実際に掲載された。

*15 競走馬は母が同じ場合のみ兄弟扱いとなる。父も同じ場合全兄弟、父が異なれば半兄弟。父のみが同じは兄弟ですらない。

*16 ただし1974年生(1977年クラシック)の世代は、クラシックに出走できなかった持込馬マルゼンスキーのあまりに次元の違いすぎる圧倒的強さにクラシックホースたちが弱く見られた不遇に遭った。中でもハードバージは一番格の劣る皐月賞の勝ち馬でしかなく、更に惨敗も多く同じ年のクラシックホース3頭の中では実績で最も劣っておりクラシックホースとはいえ強いイメージなどまるでなく、種牡馬としても産駒に活躍馬は皆無なので「その兄弟だから」という理由での種牡馬入りは現在でもナゾである。ただ、血統的には種牡馬として大成功したサクラユタカオーに近い(プリンスリーギフト系×ネヴァーセイダイ系の上、スターロッチの牝系まで共通)。

*17 因みに兄のハードバージは悲惨な末路をたどっている。