アルマジロ
【あるまじろ】
ジャンル
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2Dアクションゲーム
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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IGS
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発売日
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1991年8月9日
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定価
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6,900円
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プレイ人数
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1~2人(交互プレイ)
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セーブデータ
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要周辺機器(バトルボックス)
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判定
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なし
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ポイント
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ポップで個性的な世界観 多種多様なアクション 看過できない操作性の欠点
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概要
80年代後半から数年間だけゲーム事業に参入していた会社、IGSが発売したファミコンゲームの一つ。
二足歩行の擬人化されたアルマジロを操作する2Dスクロールアクション。
制作・キャラクターデザインは『奇々怪界』の薮崎久也氏が担当した。
ストーリー
テキサスにすむアルマジロの「ビリー・ザ・シェル」には、恋人がいた。
彼女の名は「シェリル」、テキサスで一番かわいいと噂されているアルマジロだった。
ところがある日、悪の集団「くろまめだん」にシェリルがさらわれてしまった。
"シェルの恋人救出作戦"が始まった。
ゲーム内容
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『マリオ3』型のワールドマップシステム&ステージ選択方式を採用。
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いわゆるワールドに相当する「ラウンド」は8つあり、順々に攻略していく。各ラウンドに4~8面のアクションステージがある。
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ラウンド1のテキサスから始まり、ラスボスを追ってメキシコやアマゾンなど南北アメリカ大陸を駆け巡る。
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上記ストーリーの通り、このゲームは現実世界の地名で舞台設定がなされている。
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マップ上には主人公とともにボス(くろまめだん幹部)のアイコンが配置されており、各ステージをクリアしてボスまで辿り着くのが各ラウンドでの目的となる。
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ボスと同じマスに入るとボスステージとなる。倒すとストーリー上でのラスボスの行き先が判明し、次のラウンドマップへ。
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主人公が1マス動くごとにボスは主人公から遠ざかるように1マス動く。一度通過したマスを移動する場合はボスは動かないので、地道に踏破していればいつかは追いつめることができる。
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ステージはごくオーソドックスな構成。
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横スクロールで進んでいき、登場する敵や障害物を下記のアクションやアイテムを駆使し乗り越えていく。
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主人公のアクションはAボタンでジャンプ、Bボタンで体を丸めることができる。
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この丸まりがアクションゲームとしての本作のウリと思われる。この能力をフルに活かしクリアを目指すことになる。
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丸まった状態であれば体当たりで敵を倒すことができる。少数の例外を除き無敵になり、ステージ上にあるトゲに触れてもダメージを受けない。
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丸まり状態でもジャンプでき、Aボタンを押しっぱなしにして弾みをつけることで通常時ではできない大ジャンプが可能。
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この状態で各所にあるスロープや下り坂を転がると当然スピードが出る。
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壁に向かってジャンプすることで、壁に張り付くことができる。
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あくまで張り付くだけで、そのままでいようとしても少しずつずり落ちてしまう。
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方向キー+Aボタンで三角飛びが可能。
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ステージ中のアイテム
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アクションステージ中にアイテムが沢山出てくるのもこのゲームの特徴。ステージ中にあるプレゼント箱に丸まって体当たりすると、アイテムが出てくる。
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中でも開発陣が力を入れて作ったと思われるのが変身アイテム。鳥・魚・カンガルー・カタツムリの4種あり、取得するとその動物に変身が可能。
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鳥→飛行、魚→水中をスムーズに移動、カンガルー→大ジャンプが可能に、カタツムリ→動きは遅くなるが壁や天井を這って動ける。
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鳥のみアイテム取得と同時に変身かつ一定時間のみの効果だが、他の3種はBボタンでいつでも人型と変身を切り替えられる。
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動物の状態で敵と当たると残機は減らないが、変身能力は失ってしまう。
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変身以外のアイテムも、1UPや無敵といった定番から、敵の動きを止めるストップウォッチ、落下時の速度を落とすパラソルなど多彩に用意されている。
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中には「体が緑色になり、通常判定と丸まり判定が入れ替わる」というやや扱いの難しい一風変わったものもある。
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また、ステージ中の小鳥(非敵キャラ)が落とすリンゴを取ると、アルマジロが小人サイズになり特定の狭い通路を通れるようになる。
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その場所には有用なアイテムがあったり、後述のかせいじんが居たりすることが多い。
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その他のお助け要素として「かせいじん」や「すしバー」がある。
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特定のステージには「かせいじん」がおり、会うとUFOを貸してくれる。一度だけワールドマップの好きなところに移動できる。
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かせいじんに会った後、UFOはそのステージ内を改めて探す必要がある。「このちかくにまたせてあるからつかっていいよ」との弁の通り、大体はかせいじんに近い地点にある。
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UFOでいきなりボスの隣まで行くことも可能だが、それをやると大体逃げられてしまう。上手く捕まえたいなら頭を少しひねるべし。
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ステージ中にある「SUSHI」あるいは「すしバー」と書かれた建物に入ると、マスターがゲームのヒントをくれる。
評価点
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個性的なゲーム世界
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「テキサスなどの現実の場所を舞台に、擬人化アルマジロが活躍する」という独特の世界観を、ポップなセンスでよくまとめている。
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キャラクターはシンプルな造形でかわいらしい。
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主人公、敵ともにアニメパターンが細かく作られており、プレイヤーの目を楽しませてくれる。
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各ステージも、舞台となる実際の地名のイメージと結びつくような雰囲気をよく出せている。
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サンフランシスコやテキサスのような都市の明るさ、アマゾンやニューヨークの地下鉄の湿った暗さといった土地ごとの個性を、凝った背景やBGMで演出している。
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ラウンド3ラスベガスの、トランプをモチーフにしたステージの不思議な空気感は特に印象深い。
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「かせいじん」や「すしバー」の存在もシュールで、ユーモラスな魅力がある。
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特にすしバーはアマゾンの真っ只中でも営業していたり、「寿司にワサビの代わりにタバスコをきかせたが人気がない」と零すマスターがいるなどクスリと笑わせてくれる。
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多様なアクション
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ゲーム内容の項に記したように、変身まで含めればアクションの種類は中々の数。FCゲームにしてはかなり頑張っている。
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動物への変身に関して言えば後述の仕様の問題はある。が、クリアに必須なのは通常時アクション(丸まり、壁張り付き)のみなので、取得しないという手もアリ。
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敵キャラの種類が多い
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20種類以上の通常敵キャラが登場し、それぞれが中々印象的な攻撃を仕掛けてくる。
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「左右に踊り狂う棒人間」「蛇行するヒヨコを飛ばす」「床からにょきっと出現しBoo(文字そのまま)を飛ばす」などなど。印象に残ったプレイヤーも多いだろう。
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能力が実質被ってしまっている敵も中にはいるが、少なくとも見た目は個性的に差別化されている。
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程よい難易度
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序盤から終盤まで、簡単すぎず難しすぎずの難易度が保たれている。
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終盤になると落下死や一撃死(丸まり状態でも吞み込んでくる敵がいる)の危険が高まるが、それでも突出した難所などはない。
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後述のように操作性に難があるゲームではあるが、慎重なスタンスで臨めばどのステージも無理なく突破できると思われる。
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道中で1UPアイテムがかなりの頻度で手に入る他、上記のかせいじんも最終ラウンド(ニューヨーク)以外で利用可。
賛否両論点
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テンプレ的ストーリー
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ストーリーはさらわれた恋人を追って悪党と対決、という発売当時の感覚からしても「いつもの」感溢れるもの。
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2Dアクション、それもFC時代の作品に凝ったストーリーを求める人は少数派と言えばそれまでだが、ここまでひねりがないのも逆に珍しいのではないか。
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とはいえ、ポップでかわいいセンスのこのゲームにはこのくらいのノリが丁度いいのかもしれない。
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セーブに周辺機器が必要
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セーブするにはなんと「バトルボックス」というIGS発売の周辺機器が必要。
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アルマジロ以外では野球ゲーム『バトルスタジアム』、政略ゲーム『陰謀の惑星 シャンカラ』、サッカーゲーム『Jリーグファイティングサッカー(FC版)』の4作のみ対応。
IGSのゲームに順次対応させていく予定だったと思われるが、IGSは'93年にゲーム事業から撤退してしまう。
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アクションというジャンルに限れば、この時代セーブできるゲームは少なかった。コンティニュー機能のみか、せいぜいパスワード制。当時どんな形であれセーブ機能を搭載したのはプラスと捉えられないこともないが…
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ぶっちゃけ慣れれば数時間、アクション慣れしている人なら1~2時間程度でクリアできる内容なのでそこまで問題にはなっていない。
問題点
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常に処理落ちを起こしているかのような動きの重さ
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主人公の形態やステージ内容、表示キャラの数に関わらず、動作がずっと重い。通常形態で歩くだけでも微弱なブレーキがかかっているような感覚がある。
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独特の慣性も含めて、この重い操作感がゲーム中は常に気になってしまう。
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足場が少なくなる後半面(特にリマ)ではそれが攻略に助かると言えなくもないが…
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Bボタンの役割重複
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「丸まり」と「変身」が同じBボタンに割り当てられているため、変身アイテムを取得するとアルマジロの制御が煩雑になる。
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通常であれば人型と丸まりをBで交互に変えるだけだが、アイテム取得時は「人型→丸まり→変身→人型…」という形態ローテーションになる。
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咄嗟の操作が難しくなり、当然ながらミスとストレスの原因となる。
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先述の通り攻略的に取得必須の場面はない。が、状況によってはそれなりに有用なのがまた悩ましい。
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爽快感を味わわせる気のないステージデザイン
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回転アクションを活かしてスピードを出せる場所が少なすぎる。
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転がる用のスロープはところどころ用意されているのだが、大抵はその直後に壁などが立ち塞がる。何のために設置しているのか本当に不明。
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大ジャンプで高い場所に登らなければ進めない地形がちょこちょこあるが、これがまたテンポが悪い。
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敵などもおらず、ただAボタンを押し続けて大ジャンプすれば進めるという地形パターンが多め。Aを押す以上のアクション性がないので無駄な足止め感が強く、地味にストレス。
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全体を通して落下穴や壁、障害物が多く配置され、繊細なジャンプアクションを求められるタイプのゲーム性になっている。
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ステージの地形に明らかな使いまわしが多い
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ゲームを進めていると「あれ、前の面で見た地形?」と思うことが頻発する。
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昔の作品ということを考慮してもあまりに露骨。多少であれば問題とならないかもしれないが、このゲームの使い回しはそういうレベルではない。
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ゲーム全体で見ればステージはそれなりの数が用意されているが、このせいで満足感が減っている。
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単調なボス戦
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ボスの大半が遅い弾を散発的に撃ってくるだけで、丸まって纏わりついていれば簡単に倒せてしまう。
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序盤ならともかく、後半のボスでも変わらないのでさすがに興ざめ。例外は中盤のボス「メカデブアルマジロ」くらい。
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ラスボスはさすがにそれまでのボスとは違う動きをする。が、単調さと難易度的な手ごたえのなさは変わらず。
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ダークな背景とBGMはかっこいいだけに勿体ない。
総評
多様な動きが可能で難易度もちょうど良く、アクションゲームとしてそこそこ良くできてはいるものの、操作性の欠点が大きく気になってしまうのが痛い。
優れたデザインセンスとBGMで魅力的な世界観を提示できているだけに、非常に惜しい出来となってしまっている。
余談
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前述の周辺機器「バトルボックス」使用時はデータセーブだけでなく、キャラ性能の違う「ストーン・アルマジロ」でプレイできる特典がある。
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『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』との作風の類似を指摘されることもあるが、発売時期はほぼ同時(アルマジロが初代ソニックの2週間後)であり、直接影響を受けたわけではないと思われる。実際、プレイ感は全く異なるものとなっている。
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本作の続編『アルマジロII(ファミコン)』と派生作『アルマジロ外伝(ゲームボーイ)』の発売が予定されていたが、IGSのゲーム事業撤退により発売中止となった。
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『アルマジロ外伝』はウルトラマンのSDキャラゲー『ウルトラマンボール』にグラフィックなどを差し替えられた形で1994年に発売された。
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当時の週刊少年チャンピオン(91年4月~92年8月)に見開き2ページの広告漫画が連載されていた。
作者は木崎浩。
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発売中止となったアルマジロIIも漫画だけは連載していた。
最終更新:2023年11月10日 03:57