競馬シミュレーション 本命
【けいばしみゅれーしょん ほんめい】
| ジャンル | 実用ソフト(競馬予想) |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売・開発元 | 日本物産 | 
| 発売日 | 1989年4月28日 | 
| 価格 | 9,800円 | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 正しくはクソ実用ソフト 膨大なデータ入力を強いるのにいい加減
 まったく気の利かないシステム
 ワンパターン同然な模擬レース
 レースの時間だけはムダにリアルタイム
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概要
1989年に日本物産から発売された実用ソフトでありゲームではない。
競馬新聞などからデータを入力してレースの予想を行う。
予想の結果を単に出力するのではなく画面上でレースを見せる形で行う。
内容
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新聞などから入手した開催データを入力して結果を予想する実用ソフト。
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データを入力して「レース」を選ぶと、ターフビジョンの小画面で模擬的にレースが行われる。
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レースが終わると着順が5着まで表示される(6着以下は無視)。
 
    
    
        | + | 入力するデータの詳細 | 
コースデータ
 
開催地
「東京」「中山」「京都」「阪神」「新潟」「中京」「福島」「小倉」「札幌」「函館」の中央競馬10場と「その他」がある。
それぞれの競馬場を選んだら、それから対象の馬場(芝・ダート)と距離を選び、内・外の回りがある場合はそれも選択。距離は左記の内容からそれぞれ現実で用いられている距離区分から選ぶ形。
「その他」は地方競馬を想定しており馬場はダートのみ。
 
出走馬データ
 
予想記号
「◎(本命)」「○(対抗)」「▲(単穴)」「△(連穴)」「×(穴馬)」「…(無印)」の6通りから選択。
「◎(本命)」・1着が最も有力視される。
「○(対抗)」・「本命」の次に有力視される。
「▲(単穴)」・1着は少々難しいが2.3着程度ならば有力。
「△(連穴)」・1着は難しいが2.3着程度ならば可能な見込み。
「×(穴馬)」・基本的には難しいところだが何らかの要因で1着の可能性もありそうな馬。
「…(無印)」・まったくノーマーク。
 
脚質
主に道中でのポジショニングの取り方で「逃げ」「先行」「差し」「追込」「自在」「不明」の6通りから選択。
「逃げ」・最初から先頭を奪い、逃げ切りを狙う。
「先行」・「逃げ」程ではないが前の方に位置する。
「差し」・中段からやや後ろよりに位置して温存し、直線で勝負をかける。
「追込」・「差し」を更に極端にし道中は後方でとことん脚を温存し、直線で勝負をかける。
「自在」・「逃げ」から「追込」までをこなせる。
「不明」・まったくわからないもの。主な例としては外国馬や「新馬戦」に出走する馬が該当する。
 
休養明け
「1戦目」「2戦目」「3戦目」「4戦目以上」「休みなし」の5通りから選択。
「休み」とは基本的に2ヶ月以上出走がない期間を指す。
 
馬齢
性別「牡」「牝」と年齢(3~9歳)を入力。騙は「牡」として入れろとのこと。
 
獲得賞金(クラス区分するための「収得賞金」)
10万円単位で、0~最大99990万円(9億9990万円)。
収得賞金で10億円超を達成した馬は2021年現在もいない。
 
持ちタイム
前走タイム
各馬の自己ベストと、対象の距離(基本はレースと同じ距離を入力するが、その距離の経験がない場合、近いもののベストが使われる)。
距離と、それに対応したタイムを入力。
タイムは「分1桁」「秒2桁」「1/10秒1桁」の4桁で表記する。(例・「2253」→2分25秒3)
 
コース成績(同じ開催地でのみの成績)
芝成績(芝レースのみの成績)
ダート成績(ダートレースのみの成績)
総合成績(過去すべての成績)
8桁の数字が並んでおり、左から「1着(勝利)」「2着」「3着」「着外(4着以下)」の順で2桁ずつ入力。(例「06020715」なら「6勝、2着2回、3着7回、着外15回」)
 
負担重量
30~89kgで入力(大体40kg台後半から60kg程度が一般的)。
 
単枠指定
単枠指定がある場合、これで枠番(1~8)を手入力する。
デフォルトは出走頭数に合わせた基本の形(単枠指定なし)に割り振られる。
 
人気
人気順を「1番人気」「2番人気」「3番人気」「4番人気」「5番人気」「6番人気」「7番人気」「8番人気」「9番人気」と「10番人気以下」を選択。
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問題点
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膨大な量のデータを要求する割にあまりにいい加減な予想。
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その上、2メガ程度の容量なのに価格も9,800円と高額。
 
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まるで気の利かないシステム。
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「芝成績」と「ダート成績」を合算すれば「総合成績」になるはずなのにそれすらしてくれず自分で入れさせられる。
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数字にしても、この頃の標準仕様として0でマイナスの操作をすれば普通は9にしてくれるはずだが、それすらない。
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膨大な量の入力を要求されるのに、事もあろうかバッテリーバックアップ非搭載なため、電源を切った時は当り前で、リセットを押すだけでも容赦なく消される。
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しかもデータは1レース分しか入れられない。1日12レース×最大3場開催もあるのに、とても入れられたものではない。
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普通に考えれば次のレースまでの短時間に上記のような膨大な量のデータ入力などまず不可能。「ソフト36本とファミコン本体を36台買え(総額税込91,2168円)」ということか?
 
 
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ありえない数値が入力できて、しかもそれをスルーするいい加減さ。
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タイムに関しては6以上を入れる必要のない2番目(「秒」の10の桁)でも6以上の値が入れられる(「9999(9分99秒9)」が入れられてしまう)。
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単枠指定を選ぶにもなんと1番が8枠、24番が1枠なんてありえないことまでできてしまう。ついでに5頭レースでも全部8枠(1~7枠がないのに)なんてことも。
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上記の「芝成績」+「ダート成績」=「総合成績」になっていなくても無視。
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人気にしても5頭立てなのに「6番人気」「10番人気以下」なんてありえないのが入れられる。
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こんなことをしてエラーの1つも出さない。後述通り意味のないものばかりだが。
 
 
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模擬レースのあまりにいい加減でワンパターン同然な展開。
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実際の競馬では道中でも多少は抜きつ抜かれつのポジショニングがあるのだが常に画面内に表示されるのが3頭だけ。
 そしてそのままゴールする。結果も上位3頭が僅差で、4~6着が少し離れてゴールインするワンパターン。
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例えば1頭だけ逃げで、他を全部追い込みにすれば本来ならば画面内には1頭だけポツンという形になるはずなのだが、この場合でも普通にターフビジョンの画面で3頭表示される。
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出走頭数を最低の5頭にしても、最初から画面に見えている3頭がゴール盤を通過した後、あと2頭しかいないはずなのに後ろからもう3頭(つまり5頭立てなのに6頭以上走っている)が画面内に入ってくる。
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こんなことなら結果だけすぐ見せてくれた方がまだマシだったかも…しかも、こんないい加減なレースなのに時間だけはリアルタイム進行(つまり3000mクラスの距離なら本当に3分以上かかる)。
 
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そもそも、わざわざ画面内の一部であるターフビジョン(更に小さい画面)で見せるより画面全部で見せた方がいいのでは?
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取扱説明書に過去の名馬のデータがあるので、これを入力して伝説の名馬同士のドリームマッチ(シンザン・ハイセイコー・トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラス・マルゼンスキー・ミスターシービー・シンボリルドルフ等)をシミュレーションできると書かれてはいるが、後述の通り入力されたデータの大部分を無視したいい加減なレースなのでドリームマッチ感は全くない。
 
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大量に入力させられるデータのうち予想に反映されているものは少なく、ほとんど意味のないものばかり。
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実は「獲得賞金」と「総合成績」以外全然見ていなかったりする。
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例えば本来は大事な要素である「負担重量」が蔑ろもいいとこで一度模擬レースを行って1着になった馬の負担重量を最大の89kgに、他の馬の負担重量を最小の30kgにしてもう一度レースしても結果が同じだったりと、大した意味のないものになっている。
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実際ハンデ戦でも、いくら飛び抜けた力を持った馬に対して課せられるハンデでも60kg以上背負わされること自体も相当稀なケース。別定戦では賞金に応じて決められるため理論上無制限とはいえ事前に計算できるので60kgも65kgも背負わされることがわかっているなら、不利は明白で故障の確率も高いなどリスクが大きすぎるため、まずそんなレースには出走させない。つまり上記のようなことをして勝てること自体不自然極まりない。そんな大事なものを軽視しているのは、シミュレーションとして致命的欠陥。
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馬体重も人気も結局意味がない。人気はまだしも馬体重を999kgにしても前走から増減100kg以上とか現実では考えられないとんでもないことをしても勝つ。
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どうせ1レース分しかデータ枠がないので「レース番号」も無用の長物(単に演出的に着順掲示板に表示するためだけ)。
 
評価点
残念ながらまったくないが、強いて挙げれば下記ぐらい。
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データ入力ではスタートボタンで、それぞれの解説が出るので、子供が競馬ごっこのツールに使いながら本物の競馬を覚えるのには役に立つ可能性がある。
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折りしも時代はオグリキャップブームの真っ只中なので、競馬そのものに興味があった子供も多かった。
 
総評
ここまで清々しいほどに堂々と、そのいい加減さをさらけ出せるのはある意味で立派だが、言うまでもなく実用性ゼロのクソゲーならぬクソ実用ソフト。価格も9,800円と光栄のソフト級に高額では買う価値なし。
俗に「やみくもに1番人気に大金を突っ込むのはバカの買い方」と言われるが、ファミコンの「本命」を買うことを思えばまだ有意義な買い方に違いない。子供が自分の空想設定の競馬を楽しむ「クーソーゲー」としての用途に価値を見出そうにも、こうもいい加減では、それすらもままならないだろう。
その後の展開
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日本物産は1990年4月にも続けてファミコンソフトながらゲームではない競馬予想シミュレーションソフト『黒鉄ヒロシの予想大好き!勝馬伝説』を発売している。
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キャラデザインなどに競馬愛好家で有名な漫画家黒鉄ヒロシ氏を起用している。同時に黒鉄氏のコメントなどもあり、多少は楽しめるようになった。
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バッテリーバックアップがついたり実用性は増して値段も8,000円と幾ばくか良心的になった。
 
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『本命』というタイトルを引き継いだものとしては1994年2月28日にスーパーファミコンで『スーパー本命 GI制覇』を発売している。
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こちらはちゃんと『ダービースタリオン』のような競走馬育成ゲームになっているし、本作のような予想モードもある。
 
余談
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もはや恒例だが説明書の目次をめくると「あなたがこのソフトのレース結果予想を基に投票されたすべての結果に関して当社は一切の責任を負いません」とある。
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上記の通り、あまりのいい加減さからプレイヤーにとってはいちいち言われるまでもないし、9,800円もあればそれで馬券を買う。
 
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こんなゲーム性ゼロ、実用性ゼロでクソ高ソフトなんか売れてないに決まってら!と思うだろうが実はなんと発売から3週間連続で売上ベスト20にはランクインしていた。
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まさか本当に1日のレース予想をすべて行うために36本買った人がいた…いやそんな人たちの心中は察するに余りある。
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ある意味そんなクソソフトでもそれだけ売れたのだから味を占めて翌年同じようなのを出したのかも知れない。
 
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前年12月に発売された同じくゲームではないファミコン実用ソフトの『'89 電脳九星占い』(インダクションプロデュース)も2メガ程度の容量で9,800円という高額ソフトだった。
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タイトル通り「1989年のみの対応」だが必要情報の入力は全然手軽で一部の占いは年に関係なく使えるので本作の入力の手間が膨大な上に何年だろうが使えたものではないことを思えばだいぶマシと言える。
 
最終更新:2025年01月02日 09:24