ジャックジャンヌ

【じゃっくじゃんぬ】

ジャンル 少年歌劇シミュレーション
対応機種 Nintendo Switch
発売・開発元 株式会社ブロッコリー
発売日 2021年3月18日
定価(税込) 通常版 8,580円
限定版 13,530円
判定 良作
ポイント “逆”宝塚歌劇団の乙女ゲー風ADV
恋愛より友情重視のスポ根物語


少女は、少年を演じた。




概要

歌劇をモチーフに、「男だけの世界に女(主人公)が混ざったら?」という乙女ゲー。
舞台は男性専門劇団「玉阪座」が運営する私立男子校「ユニヴェール歌劇学校」。
(現実の「宝塚歌劇団」ならびに私立女子校「宝塚音楽学校」の関係がモチーフ)
タイトルの「ジャックジャンヌ」は主人公が男役(ジャック)と女役(ジャンヌ)を演じ分ける様子から。

本作の特筆すべき点として「主人公は自身の性別を偽り続けている」という点があり、
これにより平時は全員が男子高校生として色恋無しのスポ根あふれる稽古風景が繰り広げられる。
つまり「シナリオ最終盤までは直接的な恋愛イベントが存在しない」という珍しい乙女ゲーとなっている。
公式Q&Aでも「Q.乙女ゲーですか?⇒A.恋愛もできる努力友情勝利の青春群像劇で、男女問わずお楽しみ頂けます」とされている。

製作陣は企画・販促をブロッコリー、原作者としてシナリオ監修・キャラクターデザイン・イベントスチル・世界観設定などほぼ全てを石田スイ氏(漫画家。代表作:東京喰種トーキョーグール)、シナリオ執筆を十和田シン氏(小説家兼漫画家。代表作:小説版東京喰種トーキョーグール)が担当している。


ストーリー

男性だけで構成された劇団、玉阪座。 男性が女性も演じる玉阪座は、役者を育てつつ公演を行う ユニヴェール歌劇学校も有しており、そのどちらが行う公演も 圧倒的にきらびやかな世界が観る人の視線を1秒たりとも逃さない。

ユニヴェール歌劇学校では狭き門を突破して入学した 才能ある生徒たちが4つのクラスに分かれて歌劇を学び、 ユニヴェール内で最優のクラスという称号を勝ち取るため、競い合っていた。

舞台の道を諦めていた主人公「立花希佐」は、とある出来事から 2つの約束を条件にユニヴェール歌劇学校の生徒になることを特別に許可される その条件とは、1年の最後にある最終公演で主役になること。 そして、女性であることを隠し通すこと……

自身の夢を叶えるため、所属するクラスのため、 「歯車」となって仲間たちと絆を深めていく主人公。 仲間たちと過ごした先に主人公を待ち受ける未来とは……? (公式サイトより引用)


主要キャラクター一覧

ユニヴェール歌劇学校は生徒の性質・希望に合わせてクラス分けをしており、
・オールラウンダー志向で男役/女役の配役を劇によって変える「クォーツ」
・ダンスに注力し、血気盛んで筋肉質な男役が活躍する「オニキス」
・歌唱に注力し、女子にしか見えない女装男子達が女役として活躍する「ロードナイト」
・奇才が集まり、優れた1人に従属することで化け物じみた統率力を発揮する「アンバー」
の4クラスに分けられる。
主人公は「クォーツ」に所属し、クラスの同期・先輩と一緒に稽古を積んでいく。

主人公

  • 立花希佐(たちばな/きさ) (CV:寺崎裕香 ボイスON/OFF切り替え可能)
  • 役割:ジャック(男役)兼ジャンヌ(女役)
    • 主人公。幼少から玉阪座に憧れていたが、性別ゆえに夢をあきらめていた少女。
    • 偶然にも「性別を偽り続け、優秀な成績を修めれば」という条件で受験資格を得る。
    • もとよりスレンダーな容姿とボーイッシュな性格であったため、女装男子も数多く在籍しているユニヴェール歌劇学校では「日常生活から女役稽古に徹している少年」として受け入れられている。

攻略対象キャラクター

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  • 1年
    • 織巻寿々(おりまき/すず) (CV:内田雄馬)
    • 役割:ジャック(男役)
      • 同期。長身でフィジカルに長けたムードメーカー。
      • 主人公と共に「努力はするが劣等生」というポジションからのスタート。
  • 世長創司郎(よなが/そうしろう) (CV:佐藤元)
  • 役割:ジャンヌ(女役)
    • 同期。主人公と幼馴染で、生徒内では唯一主人公の正体を知っている協力者(苦労人)。
    • 優しく真面目だが地味で自己主張が薄いことが悩み。主人公に依存しがち。
  • 主人公、織巻、世長は1年生トリオとして一緒に行動することが多い。
  • 2年
    • 白田美ツ騎(しろた/みつき) (CV:梶原岳人)
    • 役割:ジャンヌ(女役)
      • 先輩。ジャンヌ向きの容姿・歌唱力を持つ歌姫。淡々と後輩を指導する実力主義者。
      • その性分から実力以外で他人を信頼できず、自分の実力の限界に焦燥している。
  • 3年
  • 高科更文(たかしな/さらふみ) (CV:近藤孝行)
  • 役割:アルジャンヌ(花形女役)
    • 先輩。舞台上では完璧な舞姫だが、私生活は飄々とした優男。
    • 日本舞踊の名門出身であり、息苦しい実家と距離を置いて生活している。
  • 睦見介(むつみ/かい) (CV:笠間淳)
  • 役割:ジャックエース(花形男役)
    • 先輩。優れた身体能力と“誰とでも演技を合わせられる”対応力を持つ寡黙な男。
    • 不遇な幼少期の影響で感情が薄く、満たされない孤独に苛まれている。
  • 根地黒門(ねじ/こくと) (CV:岸尾だいすけ)
  • 役割:ジャック(男役)兼ジャンヌ(女役)、脚本、演出、作詞作曲、クォーツ組長
    • 先輩。ふざけた言動でメンバーを攪乱しつつあらゆる役割をこなす超人的な監督。
    • 一見してコメディリリーフだが執拗にハードワークに拘る姿が闇を覗かせる。

サブキャラクター

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  • 鳳京士(おおとり/きょうじ) (CV:室元気)
    • 主人公と同じクラスの同期。クォーツ1年トップの成績を誇るエリート志向。
    • 劣等生なのに目立つ主人公達1年トリオを目の敵にするが、稽古を通じてお互いを認め合っていく。
  • 「オニキス」の面々
    • 組長の「海堂岳信(かいどう/だけしん)」が率いる、ダンス重視&ジャックを主役とするクラス。
    • 筋骨隆々・スポーツ万能な生徒で構成され、男性劇らしい正統派の力強さを持っている。
  • 「ロードナイト」の面々
    • 組長の「忍成司(おしなり/つかさ)」が率いる、歌唱力重視&ジャンヌを主役とするクラス。
    • 主人公よりも女子力の高い女装男子達やぽっちゃり男子など、男子校らしからぬファンシーな面々で構成されている。
  • 「アンバー」の面々
    • 組長の「田中右宙為(たなかみぎ/ちゅうい)」が率いる、「優れた一人(=田中右)を主役とする」異色のクラス。
    • 田中右の異様な演技力に心酔する生徒で構成され、全員が田中右のためだけに動く徹底した統率力を持つ。
  • 教師の面々
    • 主人公が性別を偽って入学するきっかけとなった胡散臭い校長や主人公の性別偽装を陰ながら助ける担任、登場するだけで画面がうるさくなる専門教師など個性たっぷりな教師達。彼らにもサブイベントがある。
  • 茜あお(あかね/あお) (CV:岡咲美保)
    • 主人公の親友。ユニヴェール歌劇の熱烈なファンで、玉阪市近隣の女子高に進学している。
    • 乙女ゲーの親友キャラ定番の「主人公と正反対な美少女」であり、豊満な体形かつアホの子&ドジっ子。
    • 彼女と休日を過ごすたびに玉阪市周辺の観光地やデートスポットなどを巡り、本作のフレーバーテキストに触れることができる。

特徴

  • 本作は少年歌劇シミュレーションというジャンル付がなされているが、中身はフルボイスのテキストアドベンチャー、とりわけ「乙女ゲー」に近い。
    • 主人公の名前は変更可能(名字は固定)。プレイヤーは主人公に自分を投影することもできるし、デフォルトネームの立花希佐という個人として見ることもできる。なおADVの定番としてデフォルトネーム時は各キャラがデフォルトネームをボイスつきで呼ぶようになっている。
  • 任天堂公式サイトなどのカテゴリ上は乙女ゲー扱いされているが、乙女ゲーとして遊ぶか青春群像劇ものとして読むかはプレイヤー次第。
    この点は開発側からも「Q.これって乙女ゲームですか?恋愛ゲームですか?」
    ⇒「A.物語の結果として恋に落ちることもありますが、友情努力勝利の青春群像劇なのでどなたにでもお楽しみいただける作品です。」と説明されている。
  • ゲーム進行
    • ゲーム進行の大筋は「夏公演」「秋公演」など各公演ごとに以下の①~⑥のイベントを経由し、
      「最終公演」直前時点で分岐条件を満たした攻略キャラクターと恋愛ルートへ分岐可能となる。
      ※ただし後述の通り親密度管理がシビアであるため、八方美人では誰の恋愛ルートへも分岐できない。

       ①演目発表
       ②平日の自主練(ADVパート、パラメータ上昇)
       ③休日の散策 (ADVパート、親密度上昇)
       ④合同稽古  (ADVパート、親密度上昇)
       ⑤合同稽古  (音ゲーパート、上昇無し)
        (②~⑤を繰り返し)
       ⑥本番公演  (ADV&音ゲーパート、成績発表)

       上述のうち②で上昇させたパラメータの種類・レベルに応じて③のイベント解放数が増えていく。
  • ジャックとジャンヌ
    • ユニヴェール歌劇学校では男性役をジャック、女性役をジャンヌと呼ぶ。その中でもジャックの主役をジャックエース、ジャンヌの主役をアルジャンヌと呼ぶ。
    • ユニヴェールに存在する4つのクラスのうちジャンヌ中心のクラス、ロードナイトにはいわゆる男の娘が複数在籍している。ユニヴェールは男子校、どんなにかわいくても男です。
  • 主人公の育成
    • 平日はレッスンを受け、主人公のパラメータを育てる。パラメータの育ち具合によって個人賞が決まる。
  • 休日
    • 各々が休日をどのように過ごしているかが見られ、メインキャラ6人に会った場合は親密度が上がる。親密度とストーリーの進行に応じて親密度イベントが発生することも。
    • 親密度が存在しないサブキャラクターたちに会うこともでき、一定の条件を満たしたうえで立花希佐ルート(メインキャラの誰とも恋愛をせず、演劇に打ち込むルート。後述)をクリアすると最終日にサブキャラクターとの個別エンドを見ることもできる。
  • リズムアクション
    • 稽古パートと本番パートに発生する音ゲー。本番では背景に主人公達の3DCGが音ゲーに合わせて歌い踊る映像が挿入される。
    • 「ダンスリズムアクション」「歌唱リズムアクション」の2種類があり、操作が異なる。
      ダンスリズムアクションは4つのボタンをノーツに合わせて押す、いわゆる「タップノーツ&ロングノーツ」方式。
      歌唱リズムアクションはカーソルを一つながりのノーツに合わせて左右移動させる、いわゆる「スライドノーツ」方式。
      稽古での評価はイベントに影響せず、本番での評価(難易度は関係しない)が公演後のクラス順位を決定する。

  • 各公演クリア後の「台本」閲覧機能
    • 公演をクリアするたびにその劇の「台本」を読むことができる。
    • 作中では主人公視点のダイジェスト版で描写されていた物語が、描写されなかった範囲まで含めて全て台本形式で書き下ろされており、さながら1冊の書き下ろし小説のようになっている。
  • 誰とも恋愛しない「立花希佐ルート」
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    • 恋愛要素の有るADVゲームで「誰とも恋愛しないルート」というと八方美人のまま独り身で過ごすだけの結末を想像しがちだが、本作における「誰とも恋愛しないルート」は「攻略キャラ以外で交友を深めたサブキャラクターとの学園生活を描くルート(サブキャラクター8種類)」、「主人公がリーダーとなり、攻略キャラ達全員と協力して学園の危機を乗り越えるルート」の2種類を指す。とくに後者は攻略キャラ6名のグッドエンドをコンプ後に解放される総決算的な位置づけであり、それまでの恋愛交じりの各ルートとは異なる大団円となっている。
  • 前述の通り本作では終盤のルート分岐まで性別を偽り続けることになる。女バレする過程は最初から知っていた者、途中で気づいてしまう者、最後まで気づかない者、良心の呵責に耐えられず主人公のほうから女であると打ち明けられる者などキャラによって様々。

評価点

  • キャラクターの成長
    • 主人公とメインキャラクター6人は公演毎に異なる課題にぶつかる。それらをいかにして乗り越えていくかが本作の見どころ。友情・努力・勝利の積み重ねで彼らは着実にステップアップしていく。
  • 乙女ゲーの枠にとらわれない濃厚なシナリオ
    • 本作は少年歌劇シミュレーションのジャンルの通り、舞台に真摯に向き合う少年たちの姿が描かれる。どこまで行っても歌劇のことを中心に展開されるシナリオは本作が乙女ゲーとしての側面を持っていることを忘れさせるほどプレイヤーを歌劇の世界に熱中させてくれる。主人公のことも終盤のイベントで女であることがバレたり自ら打ち明けたりするまでは同性として見ているため、フラットな関係で絆を育んでいく。
  • 膨大な文章量
    • 文庫本換算で20冊分のシナリオを収録。
    • メインだけで攻略キャラ6人+立花希佐ルートの計7ルート。さらにサブキャラクター8人の個別エンド有り。
    • 全てのキャラに日付ごとに別々のランダムイベントが書き下ろされており、1周の中でダブり会話が一切発生しない。
    • 標準的な読了時間としては「1周目は20時間~30時間」+「2周目以降は既読スキップで1周約5時間×6ルート」=60時間相当。
  • 大量の各種グラフィック
    • 30人以上の表情豊かな立ち絵差分を石田スイ氏が描き下ろしており、なおかつ攻略キャラや親友には複数の私服姿が用意されている。
    • 私服差分の豊富さはいわゆる「乙女ゲーあるある」の一つ。
    • イベントスチル用の1枚絵も160枚以上を石田スイ氏が描き下ろしている。
  • 声優陣の演技力
    • キャラ本来としての演技に加えて5つある劇中劇すべてでそれぞれ異なる役をこなしてみせる。
      • さらに「演技がだんだん上達していく過程」も表現しきっている。例を挙げると主人公は初めてのジャックである夏公演初期は「かわいい」と注意されていたのが立派に男性役をこなせるようになっていく過程を声だけで表現している。
    • 上記の攻略キャラクターやサブキャラクターを開くと解るが、寺崎裕香氏が演じる主人公以外の在校生全員が男性声優で統一されている。ライバルキャラクターに女装男子が多数登場する本作であるが、彼ら全員を「女声の上手い男性声優」で固めることで「男の園」の完成度を上げている。
  • 劇中歌・BGM
    • 本作では劇中のBGMと公演の歌曲をすべて小瀬村晶氏が担当。作詞は石田スイ氏が担当している。
    • 歌劇のオーバーリアクションを意識した、声を張りあげる歌唱の数々は本作ならではのもの。
      • 特に冬公演はダンス曲・歌曲ともに必聴。
  • 劇中劇の面白さ
    • 喜劇や悲劇など5つのオリジナル歌劇を公演することとなり、「石田スイ氏書下ろしの短編オムニバス」としての完成度も高い。
    • 稽古パートではプレイヤーに提示される情報は「①ジャージなどの稽古着」「②あらすじと、演者が苦労している代表的なシーン」「③歌曲のみ」という断片的なもののみで、概要は分かるが全容は把握できないようになっている。
    • 本番パートになってようやくプレイヤーの前に「①全員が衣装を纏い」「②全てのシーンが通しで流れ」「③歌曲がダンス映像とともに流れる」ことでプレイヤーは劇の全容を観劇することができる。
  • システムのシンプルさ
    • 本作の分岐はキャラ別の親密度とレッスンで上げられるパラメータでキャラ別ルート分岐、公演本番中のリズムアクションの結果によってクラスの順位が変わると至ってシンプル。
    • 学園ものらしく4月からシナリオが始まり、クリスマスまでに一定以上の親密度イベントを見ていれば個別ルートに入ることが可能になり、エンディングまでにキャラと対応するパラメータが最大になっていればベストエンドを見られる。といった具合である。難しいフラグ立てや親密度管理は必要なく、プレイヤーはシナリオに集中できる。
      • ただし分岐に必要な親密度及びパラメータは高めに設定されているため、ある程度は一人に絞って休日に会いに行ったり対応するパラメータ上げのレッスンを選んだりする必要がある。
  • 豊富なサブイベントと、それらの担当キャラとの個別エンド
    • 本筋の公演とは無関係なサブキャラクターとのイベントが豊富に含まれている。
    • なおかつ誰も攻略せずサブイベントを進めると、最終公演後に親友の茜あおとの百合エンドや他クラスライバル達との友情エンドへと分岐する。
    • 「友情努力勝利の青春群像劇なのでどなたにでもお楽しみいただける作品です」という公式コメントに違わぬ充実ぶり。
      • 特に親友の茜あおの水着立ち絵&水着一枚絵はプレイヤーの男女を問わず「この爆乳で乙女ゲーは無理でしょ」と満場一致している
  • 音ゲー需要に則した難易度設定
    • リズムアクションのシステムは本格的な音ゲーとなっているが、乙女ゲージャンルゆえに当然ながら初の音ゲーとなるプレイヤーも多く、その配慮として難易度は極めて優しい難易度から地獄のように厳しい難易度まで自由に設定することができる。難易度はあくまで自己満足の範囲であり、実績解除などには影響しない。
      • 特定のルートをクリアすることで最高難易度が解禁されていく。これは本編とは関係なくリズムアクションのみを楽しむモード専用の難易度であり、この最高難易度で最高評価を取るとトロフィーがもらえる。
  • 公式Q&Aの徹底した親切さ
    • 公式サイトのQ&Aが異様なまでに親切かつ具体的。なんと「NintendoSwitchと同Liteの違いは?」というハード購入前の相談から始まり、その後も手取り足取りサポート文章が並んでいる。
    • 他の乙女ゲー・ギャルゲーと比べてもここまでQ&Aを用意するゲームは早々無い。
    • 公式サイトおよび各種広報が新規開拓に注力している様子が見受けられ、乙女ゲー初挑戦の女性ならびに男性をターゲットにしたものと推測できる。

問題点

  • 共通ルートが非常に長い
    • 前述「ゲーム進行」の通り、攻略対象キャラへの分岐は最終公演直前。つまり全シナリオの4/5が共通ルートである。
      そのため本作をセーブ&ロード無しでコンプリートするには「4/5が共通するシナリオを7周する」必要があり、周回する際に壁になりやすい。
    • 幸いにも前述「豊富なサブイベント」の通り、休日の親密度イベントや親密度による差分追加だけでなくサブキャラクターとのランダムイベントや連続イベントが大量にあるため、既読スキップを活用する分には飽きがこない配慮がなされている。
    • この長い共通ルートの中には各キャラの個別ルートへ分岐した後に重要になってくる要素が多分に盛り込まれているため、同じ話でもきっちり読むことで個別ルートをより楽しむことができるという側面も持っている。
  • 序盤の「女性が女役で受賞する」というタブーへの違和感
    • 序盤に主人公が個人枠で金賞を取った場合、劇中人物視点では違和感が無いもののプレイヤー視点では違和感を生じる場面がある。
      • 他クラスが「男子が女役になるために努力している」なか、主人公は「女子が女役をやっている」だけで金賞を取っている。
      • 中盤以降に各男子生徒が「女性よりも女性らしい演技」を身に着け始めると印象は薄れるが、そうではない序盤については引っかかる。
  • 鳳京士の扱いについて
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    • 序盤に「嫌味なエリートから、親しい仲間への転身」という美味しい役を持つ彼だが、中盤以降はどのシナリオでも「出番は有るが活躍は無い」という地味な役回りで出番を終えてしまう。
    • 攻略対象を誰も攻略しない「立花希佐ルート」では、親友の茜あおとの百合エンドや他クラスライバル達との友情エンドへの分岐が用意されているのに対して、同じぐらい出番のあるネームドキャラである鳳京士にだけフォローが無い点を惜しむ声も多い。
  • とある公演にて主人公の演技に不整合を生じるルートがある
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    • とある公演は選択肢次第で「他ルートと同じ演目だが、主人公の演じる性別が反転する」という展開となる。
    • 服装は元々中性的なもので、稽古パートでは主人公の徹底した演じ分けによって「男役なのか?女役なのか?」が明確に区別される。
    • しかし本番中のボイスならびにダンスリズムアクションは共通のもの(女役演技)が使われているため、男役が女性らしい演技をしている部分に違和感が生じている。
  • パラメータについて
    • 本作では攻略対象キャラと親密度イベントを発生させるには、キャラに対応するパラメータを一定レベルまで上げる必要がある。
    • ベストエンドを見るためには対応するパラメータを上限まで上げる必要があるのだが、上限が近づいてくると極度に上がりにくくなるため、まんべんなく上げているとルート入り後にベストエンドに行けなくなっている……といった事態になりがち。後述のトロコンを狙うことも考えると最初に誰のルートに行くか決めておくとよい。
      • ちなみにベストエンドはグッドエンドのスタッフロールの後に挿入される形で読めるため、グッドとベストで2周する必要はない。
    • 歌唱やダンスのリズムアクションの練習後に「歌唱・ダンスの稽古をしておくと歌い・踊りやすくなる」とコメントされるが、「歌唱」「ダンス」のパラメータを強化していても難易度に変化は一切ない。実は「音ゲーの“歌唱リズムアクション”と“ダンスリズムアクション”を練習してプレイヤースキルを磨くと、本番の音ゲーでも高スコアが採れるよ」という当然のことを指しているのだが、メタ発言にならないよう「リズムアクション」という言葉を省略したことが裏目に出ている。なおかつ練習でノーミス&パーフェクトを採ったとしても「歌唱・ダンスを稽古しろ」というセリフが変わらず忠告されるため誤解するプレイヤーが続出している。
  • トロフィーコンプリートが大変
    • すべてのイベントを見るという項目が壁になる。休日イベントも選択肢差分も平日にランダムで発生する挨拶イベントもすべて網羅しなければならない。トロコンにこだわりがなければ関係ないが。

総評

大胆にもシナリオの4/5を友情描写に割り振ることで、乙女ゲーの枠を超えて愛されるキャラクターとシナリオに仕上げた作品である。
「文庫本20冊相当の文章量」「1枚絵160枚、立ち絵30人×表情差分多数」という怒涛の大ボリュームは乙女ゲー・ギャルゲーどちらの業界でも稀にみる大作ADVであり、なおかつ高品質かつ高密度なそれらによりプレイヤーの没入感を誘うこと間違いなし。
豊富なサブイベントや書き下ろし台本など本筋以外の遊びも提示されており、楽しみ方は自由自在。
あなたの食指が動くかについては幸いにも販促用にプロローグ~1回目の公演まで収録した無料体験版があり、なおかつ体験版相当のシナリオ序盤の雰囲気を味わえる公式動画がYouTubeにて配信されている。歌劇や男装女子、学園ものというキーワードに興味を持ったならこれらを一度プレイもしくは視聴すると良いだろう。


余談

本作の公称製作期間は4年半。2016年夏に(株)ブロッコリーが石田スイ氏に企画を提出し、石田スイ氏が十和田シン氏と共にシナリオをブラッシュアップした末に2021年春の発売となった。
シナリオ執筆担当である十和田シン氏は石田スイ氏の実姉で、過去にも「東京喰種」のノベライズで協業実績がある。姉弟ゆえに製作中に徹底した突き合わせができるとのこと。

2021年4月24日に外伝小説「ジャックジャンヌ -夏劇-」とファンブック兼設定資料集「ジャックジャンヌcomplete collection」の2冊が発売された。前者は本編では語られなかった夏休みの一幕が描かれ、後者はゲーム中の全スチル等多数の製作資料と製作者へのインタビューを収録。

2021年9月18日に本作の歌曲・ダンス曲のフル尺が収録された「ジャックジャンヌ Vocal Collection」とBGMのサウンドトラック「ジャックジャンヌ Original Soundtrack」が発売された。さらに2022年2月17日以降、本作の歌曲・ダンス曲が全曲カラオケで歌えるようになっている。カラオケはゲームサイズver.とフルver.から選べる豪華仕様。

発売から1年強が経った2022年GW、公式サイト(ならびにTwitter・YouTube)にて「JJのGWは金色のきらめき」という企画名と共に「①幻の新人公演『ビスケットとお菓子の家』の脚本公開(石田スイ直筆の没シナリオを清書した脚本型小説。なんと2万字の大ボリューム)」「②作中の各曲をミュージックビデオとして公開(最終章のMV以外は企画終了後も常時公開)」の2点が実施された。

  • 金色のきらめき、というワードは作中の劇中劇のセリフが出典。

2022年11月17日、書籍「ジャックジャンヌ ユニヴェール歌劇学校と月の道しるべ」が発売された。内容はゲームの開始から新人公演までをノベライズしたものとなっている。……が、注目するべきはその分厚さ。執筆にあたった十和田シン氏などから写真がツイートされているので見てみるとよいだろう。このゲームのボリュームがわかるはずだ。

2023年3月18日よりスマホアプリへの移植版がリリースされた。テキストやボイスなどのボリューム満点なゲーム性はそのままに、リズムゲームパートをカットするなどの変更点が加えられている。新人公演までは無料でその後課金をすることでセーブデータを引き継いで続きを遊べる仕様となっている。

2024年3月15日のジャックジャンヌ3周年特番により、続編制作が発表された。

最終更新:2024年03月18日 07:24