天地を喰らう (GB)
【てんちをくらう】
ジャンル
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RPG+SLG
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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カプコン
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発売日
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1994年04月22日
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定価
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4,700円(税抜)
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判定
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なし
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天地を喰らうシリーズ
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概要
ファミコンで2作を出し、人気を博したRPGの『天地を喰らう』がGBにも進出。
特徴
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他ハードの同名作品と同じく劉備の勢力を天下統一に導くのがゲームの目標だが、展開は前2作とも毛色が違う。
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序章は桃園の誓いの前、黄巾の乱勃発初期。それから一本道で赤壁の戦いまで歴史を再現した後、好きな順で大陸全土の城を攻め落として天下統一を目指すSLGパートになる。
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通常の武将戦
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敵味方それぞれ最大3ユニット。ターンの行動順は常に味方の上から下→敵の上から下で固定。
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ユニットは通常攻撃・秘策(FC版でいう策略)・道具を使えるというよくあるRPGに準ずる。
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秘策を使うのに軍師任命が不要になり(軍師任命自体は残っている)、またSP値は武将ごとになった。
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派生としてイベント戦の一騎打ちがあり、こちらは行動順が敵→味方で固定となる。
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兵力はHPと別概念になり、攻撃力がHPと無関係になった。
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兵士戦
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通常武将戦闘の代わりに、両軍の兵士を激突させるもの。勝敗は兵数で決められる。
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武将戦と一切干渉せず、武将戦を行えば兵士の数は関係なく、兵士戦を行えば武将のステータスが戦況をほとんど左右しない。一応先攻後攻に関わる。
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兵士を増やすには、町や村で一部の住民に話しかけると加わる他、兵士を持っている敵に勝利すると敵兵が寝返ってくる事がある。
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負けイベントじゃない戦闘でも敗北でタイトルに戻されることはなく、所持金半減などのペナルティで済んですぐに再戦出来る。
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SLGパート
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エンカウントで敵将と戦い、勝ったら仲間になりたいと申し出てくることがあり、受け入れれば仲間にできる。
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城の守将はランダムで決められ、歴史上全然違う勢力に属する者が出てくる。少なくともそこは劉曹の二元対立ではないようだ。
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城の占拠には太守候補の将が必要。人材を集めよう。ただし人数制限はかなり厳しいため、あまり気軽に加えているとお気に入りの武将を仲間にできなくなるかもしれないので注意。
評価点
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前2作と比べて各システム処理が速い
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濃かったDQ色を拭い去り、煩雑だったメッセージ処理が大幅に減少。
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拾得アイテムの所在が全部可視化
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ほとんどが宝箱になり、地形に隠されて攻略情報がなければとても見つけられないものが皆無。
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桃園の誓いの義兄弟である劉備・関羽・張飛を最後までパーティーに連れまわせる
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ファミコンでは2作とも武将として永久離脱の憂き目に遭うので、彼らを存分に使いたいファンには吉報。
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質の高いBGM
賛否両論点
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変わったシナリオ
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董卓討伐戦時、町で
呂布の姉
なる者が出会えて、彼女に手紙を書かせたら虎牢関で呂布にどいてもらえる。呂布の姉というのは、純然たる本作のオリジナル人物である。
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最終決戦は
劉備vs曹操の一騎討ち。
史実や三國志演義などのイメージから大幅に乖離した超展開と言えるが、『天地を喰らう』ならむしろこれでイメージ通りなのである。評価点の項目に書かれた「劉備を最後まで使える」と同様、曹丕や司馬懿に終盤の大敵の座を取られて最後の敵としては戦えなかった曹操がラスボスである展開は『天地を喰らう』ならでは。
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文官不利なゲームバランス
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各人の秘策習得ラインナップに違いが出れど武力重視の猛将でもそれに困ることが稀、また知力が秘策の威力・抵抗力に関与せず、秘策は全部必中。ゆえにHP・通常攻撃力・防御力で後れを取る文官は戦闘において明らかに不利。
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これも一般的な「三国志」では無く『天地を喰らう』の世界なのだと考えれば、豪傑優遇・文官冷遇はイメージ通り。
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SLGパートで太守となる将を配置する必要がある故、文官が椅子を温める役に甘んじることはなく、戦闘をすべて劉備・関羽・張飛の3人がこなして文官を狙って勧誘という賢い遊び方もある。
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味方の文官はというと、軍師を任命すればマップ上で「助言コマンド」を使い現在のゲーム目標を教えられるという、低年齢層プレイヤーの啓蒙となる設計。また武将戦で「軍師まかせ」というコマンドでユニットがオート行動する。戦闘を猛将に任せ、謎解きは軍師に助言してもらおうという一風変わったゲームデザインである。
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敵の行動パターンが全員同じ
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文官は通常攻撃が弱いくせに秘策を多用してくるように設定されておらず、純粋に猛将より弱い敵になる。
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ターン開始時、ダメージ系の秘策でこちらにトドメをさせると判断したら
絶対にしない
という変わった手加減ルーチン。しかしそれは1人しか秘策を使わない場合で、2人以上が秘策で集中砲火したらやはりこちらにトドメをさせることがある。
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味方内の人員強弱
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上述の猛将有利なゲームバランスに基づき、猛将として最高のステータスを持ち、強力な専用武器まである関羽・張飛が文句なしに最強を誇る。最序盤から加入するから武将戦は最後まで彼らになりがち。FC2作の冷遇返上と表裏一体ではあるが。
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バグ
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防具が全く装備者のステータスに影響しない。全部換金アイテムと化す。
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「毒針」なる
市販アイテムを売ると莫大な資金が手に入る
、あるNPCから無尽蔵に兵力を補充できるというゲームバランス崩壊必至なバグがある。
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進行を妨害するバグが皆無なのが美点ではある。
GBというハードの関係上セーブデータが吹っ飛びやすいのはどうしようもないが
問題点
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イベント演出のしょぼさ
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容量のせいか、赤壁の戦いは画面上で3隻の船が燃やされておしまいという寂しいもの。
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秘策の演出がくどい
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ダメージ系の秘策が5段階に分けられ、段階の分エフェクトを繰り返すものだが、当然高階になると演出が長くなりテンポを損なう。全体的に演出が簡潔な分気になるところ。
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「盗賊」「追剥」「黄巾」「兵士」といったザコ敵はこちらのレベルに応じて強さが変動するが、こちらのレベルが上がったゲーム後半ともなると彼らでも攻撃系の秘策を使ってくる。
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武将加入システムの不備
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戦闘に勝利した後戦った将が仲間になる可能性があるが、その判定は
先頭の1人にしかない
。2人目・3人目にしか出てこない武将は加入させる手段がない。
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そのせいで姜維など蜀の名将として知られる者たちも先頭の1人になる登場パターンがないせいで仲間にすることができない。
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趙雲や諸葛亮など一部の武将はイベントで仲間になるが、多くの武将は史実で劉備と敵対した事の無い簡雍や麋竺、それに関羽の息子である関索までも戦って倒さないと仲間になってくれない。
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劉備の息子である劉理に至っては仲間にする事さえできない。
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先頭判定とは別に、せっかく最後まで死亡せず専用武器がある呂布も、スポット参戦の機会があるものの、やはりSLGパートで仲間にすることができない。そのくせ終盤になっても呂布専用武器が無駄に店で売られている。
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蜀ではない将軍を仲間にできる機会は多くなったが、それっきり。
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三国志のキャラゲーとして、首を傾げる調整と言わざるを得ない。
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防衛戦
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SLGパートで1つの敵城を攻め落とした後、領地を再び攻め込まれる可能性があるが、その調整は劣悪といえる。
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兵士戦を強要され
、武将戦で工夫する余地はない。また攻めてくる兵数がたった数百から2万までランダムで決められる。
Bボタンで城を放棄して兵力を温存する選択が出来るのが救い。
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そのため、万人で攻めこまれたら兵士を全滅される上城を失い、後のエンカウント戦・攻城戦において痛く響く。その対策とはセーブロードで防衛戦を回避もしくは少人数の兵士を相手にするというみっともなき手。
総評
蜀側として熱い三国志戦記を体験できるFCシリーズと比べて、違う着眼点で表現したい作りが見えてくるも、ハードの制限を鑑みても調整不足でゲームとしての面白さが今一つになってしまった。
余談
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文字数制限のため、張遼や劉表はそれぞれ「チョウリョ」「リュウヒョ」と表記されている。そして南蛮武将の兀突骨(ゴツトツコツ)はなぜか「ゴツトツイ」となっている。確かに『骨』の字と『胃』の字は似ているが…「ツ」を1つ減らすのでは駄目だったのだろうか?
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黄巾賊の首魁・張角のお供に「チョウライ」なる謎の人物が登場する。
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荊州では「チュウホウ」なる謎の人物とエンカウントする事がある。その攻撃力の高さを見るに、恐らく張飛の息子・張苞(チョウホウ)の事かと思われるが、姜維と同様仲間にはならない。
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并州(ヘイシュウ)が「ベンシュウ」になっている。『并』を『弁』と間違えたのだろうか?
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益州では、とある洞窟で手に入る「まことのしょ」というアイテムを持っていないと武将が登場せず、かわりに龍・麒麟といった幻獣や虎・狼といった猛獣が襲ってくる。彼らは幻らしく、経験値や金を得られず、仲間にもならない。
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一部の武将はFC版天地を喰らうII 諸葛孔明伝の顔グラフィックが使い回されているが、なぜか別人の顔になっている者もいる。例として孫権はFC版の徐晃、馬謖はFC版の司馬懿、そして賊系雑魚がなんと関羽の息子・関興の顔になっている。
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説明書のイラストでは馬超の顔はFC版天地を喰らうの物になっているが、実際のゲーム中での顔は異なっている。
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「三國英雄傳」というタイトルで繁体中文版が発売されたが、仮名しかないオリジナル版とは異なり全編が漢字(繁体字)で表記されている。武将戦でもFCシリーズよろしく漢字の本名が晴れ晴れしく映る。
最終更新:2022年08月12日 17:35