7年後で待ってる
【ななねんごでまってる】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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Nintendo Switch
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メディア
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ダウンロード
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発売元
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room6
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開発元
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fumi
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発売日
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2021年2月4日
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定価
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1,500円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC 3+
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セーブデータ
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7箇所(+自動セーブ1箇所)
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判定
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良作
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ポイント
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複雑で完成度の高い物語
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概要
2018年にiOS/Android配信されていた作品をNintendo Switchに移植した作品。人物・背景のグラフィックが3Dのボクセルアートで描かれるサウンドノベルに近い構造をしたゲーム。
生まれ故郷の西方に帰省したハルトは、病院にいる友達や町の人々とかかわりながら大切な約束と自分の過去に秘められた秘密を思い出していく。
あらすじ
ハルトは7年分の記憶を失っていたが、奇妙な夢を見るようになっていた。
夢の中では見知らぬ女の子と7年後の4月1日に再会することを約束しており、その約束の日まであと4日。
ハルトは大切なことを思い出せる気がして、どうしても約束の場所に行ってみたかった。
主な登場人物
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ハルト
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養子として引き取られており本当の父母については知らない、17歳の男子高校生。
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7年前に生まれ故郷である西方から引っ越していたが、義母に自分の生い立ちをきいたところ、「西方病院」のことを教えられたので、春休みを利用して西方病院を訪れる決心をする。
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病院にいるうちに昔の記憶を断片的に思い出していくが、どこか周りの人の記憶とは食い違うところもある。
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アオイ
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ハルトがときおり思い出す回想に出てくる女の子。7年前にハルトと再会の約束をしたその人のようだが…。
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LMDという病気が原因で7年前に死んだらしいが…。
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一木先生
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ハルトの義母の知り合いの医者。西方病院の近くの一木医院にこもりっきりの生活をしている。
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昔のハルトを知っているようなそぶりを見せる。
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西方病院で会った友達
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病棟で会った子供たち。年齢はハルトと概ね同じくらいで、みなハルトのことは覚えている。
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サキは心臓の病を抱え、ホノカとカケルはLMDという病気に冒されている。
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サキとホノカは親友と呼べる間柄で、カケルには兄のリクがいて、リクはLMDの治療法について調査している。
物語中のキーワード
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LMD
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発症する前は無症状であるが、15歳頃の発症後に肺とその他諸々の筋力が衰えていく病気。
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患者はみな子供で幼い頃に罹患を診断される。発症後には臓器移植しないと3年生存率0%とのこと。
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西方病院
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LMD患者を集め治療法を研究しているとのことだが、リクは病院が何かの不正を行っていることを疑っている。
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西方病院は7年前にとある研究棟が爆発し、多くの犠牲者を出した。病院の不正と関係性があるらしいが…。
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LMDの研究記録、手術記録についての機密文章を警備する部署を持っている。
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タイムリープ
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ハルトが体験している謎の現象。数日先の未来の記憶を保持したまま、3月29日の一木先生の診療室に戻ってきてしまう。
システム
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操作方法
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鳥瞰図のように表示される町並みや病院施設内が舞台となっており、左スティックや十字ボタンでキャラクターを縦横に移動させられる。斜め移動は不可。
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人物にめりこむように歩くことで自動で話しかけ、「!」のアイコンが出ている物体は近くを歩くことで調査することができる。
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ストーリー中にハルトが口走ったり思いついた場所に、赴くことでストーリーが次へ進捗していく。
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Aで文章を送り、Xでバックログを確認できる。
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バックログは過去約60行分まで表示される。ロードして再開したときはバックログがまっさらにされる。
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セーブ
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イベント発生中以外であれば、いつでもセーブすることが可能。
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チャプター終了時にもセーブする機会が設けられる。
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サイドストーリー・エピローグ
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チャプター40まで読み進めて本編をクリアすると、新規に開放されるストーリー群。サイドストーリーとして番外的なお話や、エピローグとして本編のチャプター40以降のお話を収録してある。
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エピローグでは本編で約束を守る決断をしたハルトのその後のストーリーを、アオイ目線で描く。サイドストーリーでは、ハルトが本編で体験した出来事を、別の登場人物視点で見ることになる。
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登場人物の日常を垣間見るようなストーリーもあるが、本編で起こった事件をハルト以外の視点で読み解き謎を補完するようなストーリーも収録されている。
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ここではセーブやキャラクターの操作は出来ず、文章を送るだけになっている。
評価点
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飽きさせない工夫
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ストーリーの流れを二転三転させるような新情報が小出しにされるので、ストーリーへの熱がさめにくい。
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チャプターの終わりにはほぼ確実に、主人公が知らない新たな情報が語られる。暗転しつつ重要な発言だけピックアップされるような見せ方をしているのでなおのこと印象に残りやすい。
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ストーリーの設定の完成度は高め
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すばやく読めば数時間で読み切れてしまう量ではあるが、登場人物の設定や本作の世界観は奥が深く1周分の読解では難解な部類。
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本作は重要な情報を小出しするようなスタイルをとっている。さりげなく登場する人物も多いのだが、大抵の人物は後に物語に重要な意味合いを持つようになる。
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たくさんの設定が出てくるが、作中で設定が大きく矛盾したりはしない。
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ネタバレ注意
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主人公のハルトは、とある理由により記憶を消される以外にも一部記憶改変をされており、彼の間違った記憶がストーリーのミスリードとして上手に機能する。ハルトの実の父母も本作のメインテーマに深く絡んでくる。
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タイムリープを題材とする物語は珍しくは無いが、本作はタイムリープができる原理もかなり筋道立てて説明してくれる。本作でさりげなく咲いている花を原料に、上記の記憶操作技術を活用していることがなんとなくわかる。
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タイムリープは良いことづくめではなく時空的な副作用も発生させる。またそれを研究で解明・解決しようとする医師がいたり、タイムリープのさらなる可能性で汚い商売をしようとする病院の医師同士の諍いも描かれている。
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キャラクターについて
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ゲームの物語の長さに対して、主要な登場人物が10人程度。その中でそれぞれが物語に重要な役割を持っており、いるだけになっている人物は基本いない。
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めいめいが重い決意を抱えており、時には誰かのために命を懸けるほどの決断をする。
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ネタバレ注意
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自分が死んでも誰かに幸せになってほしいという感情は本作の一種のテーマであり、西方病院の院長の幼馴染が死に際に残したメッセージは本作の感動ポイントの一つ。ハルトと一緒に生き残るために、ハルトと別れてからの7年間を1万回以上もタイムリープで繰り返すアオイのシーンも、思うところが多いイベントである。
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BGM
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フリー素材の音楽をBGMに流用したものではあるが、30種類以上収録されておりバリエーションが多い。
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フレーズが耳に残る良曲もちらほら存在する。日常のワンシーンであっても、ピアノの悠々とした雰囲気の曲が流れたりする。
問題点
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本編をクリアするまで、物語の情報を整理するメニューが閲覧できない
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バックログこそあるが、登場人物の解説やストーリー中の次の目的や謎といった情報はプレイヤー側がきちんと頭で管理する必要がある。
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Chapter1~10あたりまでは、本作の世界観や登場人物のひととおりの説明がなされる部分である。このあたりのさりげないフラグが後々回収されることもままあるので、このあたりの情報の理解が疎かになっていると、その後の物語の理解に差し障る可能性がある。
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評価点と関連している部分にはなるが、プレイヤー側にあえて分かりづらいように情報を出してくるような側面もある。
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タイムリープを題材にしているので、色々な時間軸の話が交錯しつつ語られるほか、記憶操作されている人物の発言がプレイヤーをミスリードしたりもする。
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エピローグとサイドストーリーはその限りでもないが、本編にはチャプターセレクト機能がない。
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目的地のガイドが不足している
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地図や行き先をガイドする情報が存在しない。行ける範囲は決して広くないので地形を覚えてしまえばいいのだが、時間を空けてからゲームを再開し、次にどこへ行ったらイベントが発生するのかわからず迷子になる事態は考えられる。ロードするとバックログも消されてしまうので参照できない。
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ハルトが約束をした井戸の場所やハルトの友達が集まる病棟の場所が、ややはなれた所に存在するので初見だと若干わかりにくい。
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その他細かい問題点
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様々な時系列に話が飛び飛びになる本作ではあるが、どの時間軸の話をしているのか類推ができない。よく登場人物の話をきいていないと時系列を誤解する可能性は十分にありうる。
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「!」のアイコンが指定する位置がわかりづらい。アイコンの近くでウロウロすることでようやく調査を開始することが多い。
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ゲームのメインメニュー画面からゲームを始める際、何も考えずにAボタンを連打してしまうとニューゲームで開始してしまう。
総評
7年前にした再会の約束とは何だったのかというテーマで牽引されるSFチックな物語であるが、主人公をとりまく登場人物の意思や、舞台となる病院で行われてきた事にはきちんと考察の余地があり、物語をひっくりかえすような衝撃の事実を時折はさみつつ、複雑ながらも丁寧に張られた伏線により読み手を存分に引き込む作品といえるだろう。
最終更新:2024年07月22日 21:32