ヨッシーの万有引力
【よっしーのばんゆういんりょく】
ジャンル
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かたむけアクション
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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発売元
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任天堂
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開発元
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アートゥーン
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発売日
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2004年12月9日
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定価
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4,571円(税別)
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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3個(EEPROM)
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レーティング
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CERO:全年齢(全年齢対象)
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備考
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カートリッジに傾きセンサー内蔵 ゲームボーイプレイヤー非対応 |
判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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ヨッシーである必然性皆無 ある意味タイトル詐欺な一面も ユニークな操作感は評価できる
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ヨッシーシリーズリンク
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概要
ゲームボーイアドバンス末期に発売されたヨッシーシリーズの一作。
『コロコロカービィ』『まわるメイドインワリオ』などと同様、ハードを傾けて遊ぶ「傾きセンサー」を内蔵したカートリッジが特徴。
しかし、ヨッシーシリーズならではの特徴を活かせていない内容がネックとなり、評価を得ることができなかった。
ストーリー
各地で悪事の限りを尽くしているクッパ。
腹を立てた本の大精霊「ゴッホン」は、すべてのモノを取り込み「飛び出す絵本」にする禁断の「トビダセ本」で、
ヨッシーアイランドにいるクッパを島ごと封印してしまいました。
困り果てたヨッシーたちの前に本のプチ精霊「びっくり大好き精霊」が現れます。
「この本の最後のページまで行ってクッパを封印すればゴッホン様はきっと島のものすべてを絵本から出してくださるはずだヨ~!」
ビックリ大好き精霊が授けてくれた本の中の世界全体をかたむける”力”を使って、ヨッシーの冒険がはじまりました。
(公式サイトより)
ゲームシステム
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ゲームは全体通して8つの「しょう(章)」構成。各章いくつかのステージとなる「コース」に分割されている。ただし、内2章はクッパとの対決イベントのみで実質ワールドではない。
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各コースには担当する「プチ精霊」がおり、彼らの出す課題クリアを目指すのが目標になる。いくつかのコースは2人の精霊が担当する「ダブルミッション」となり、双方の条件をクリアしなければならない。
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各精霊の特徴は以下の通り。
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精霊の詳細
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かわいいの大好き精霊…クッパの魔力でリンゴにされてしまった「タマゴじん」を食べて一定数元に戻すのが目標。
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お金大好き精霊…指定された枚数以上のコインを集めるのが目標。
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強いの大好き精霊…ステージ内で敵キャラを一定数以上倒すのが目標。
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はやいの大好き精霊…制限時間内にゴールにたどり着くのが目標。
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やさしいの大好き精霊…強いの大好き精霊とは逆に、一定以上敵を倒さずにゴールにたどり着くのが目標。
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こわいの大好き精霊…必ず他の精霊とペアで登場する。強制スクロールで背後からトゲの壁が迫る中でもう1人のミッションを達成する。
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コースはいくつかの「エリア(ゲーム内では「ページ」と呼称)」に分かれている。
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ページは「チェックポイント」に触れると進行でき、一方通行で引き返すことは出来ない。最後のページにある「ゴールポイント」にたどり着くとそのステージはクリアで先に進める。
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この際精霊の出した条件を満たしていれば、「しあわせメダル」がもらえる。ギリギリで達成していれば銀メダル、高評価なら金メダルがもらえる。先に進むためには銀で十分だが、金を一定数集めると…。
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ステージ自体はゴールにたどり着けばクリアだが、その章の中で一定以上メダルを手に入れないと先の章に進むことはできない。
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ライフとなる「にこにこメーター」。
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今回は『ヨッシーアイランド』と異なり、敵にぶつかったり爆弾にぶつかるとダメージを受け、にこにこメーターがゼロになるとミスとなってしまう。
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にこにこメーターは、満タンだとサングラスをかけたオレンジの太陽のような外観になる。ダメージを受けるとサングラスが無くなって黄色くなり、太陽のトゲのような部分が花びらのように散っていく。
このトゲの部分が0になると青くなり、その状態でダメージを受けると色が白くなってミスとなる。
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満タンだとトゲが8つ。1回ダメージを受けるとトゲが3つ無くなる。これだとトゲが2~1のときにダメージを受けるとミスになるように思えるが、トゲが2~1のときでも青くなるだけでミスにならない。
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コースにあるハートを食べるとにこにこメーターがトゲ1つ分だけ。大きいハートを食べると満タンになるが、限られたコースでしか登場しない。
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アクションゲームお馴染みの即ミスもあり、その場合はにこにこメーターの状態に関わらない。
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最大の特徴はカートリッジに内蔵された「傾きセンサー」。
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この要素を最大限活かすようにステージは構成されている。これを用いてゲーム機本体を傾けることで、ゲーム内のステージも傾く。
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垂直な壁が坂になったり、上から落ちてくるアイテムの位置を調整したり、球を転がしてギミックを解除したり等、様々な用途に用いることになる。
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傾きセンサーがあることを除けば、ゲーム自体はごく普通の2Dアクションとなっている。基本的には十字キーでヨッシーを動かし、Aボタンでジャンプ、Bボタンで舌を伸ばす操作を行う。
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なお、ゲーム起動時にGBAでプレイするか、GBASPもしくはDSでプレイするか決めることが出来る。
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流石にゲームボーイプレイヤーは選択できず、上記の通り公式でも推奨されていない。ただし、二人で協力したり、ゲームキューブ本体を抱えて傾ける事で無理矢理プレイする事も出来る。
問題点
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「ヨッシーらしさ」の欠如。
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過去作に比べて大幅にアクション面が劣化している。
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踏ん張りジャンプが一回しか出来ない上に飛距離も短い、タマゴ投げもヒップドロップも不可能。
また、敵を食べると勝手に飲み込んで放屁にしてしまうので、タマゴにする事はおろか、口に含んで何かするということすらも出来ない。
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ゲーム内容自体が非常に薄味で地味。
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そもそもストーリー自体が皆無に近い。アクションゲームにそこまでストーリー性を重視する人はいないにしても、各章冒頭に新登場の精霊がチラッと顔見せに登場して会話するだけ。
それ以外ではボス戦でちょっとした小話があってエンディングがある程度で、それ以外のストーリー描写はほぼ皆無。
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各章ごとの個性も薄く、難易度が上がっていくことと、新しい精霊が増える以外に章ごとの特性はほとんどない。
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ボス敵はニセクッパとクッパの二体のみ。それ以外に目立った強敵は一切いない。この手の展開でありそうな「大精霊ゴッホンが裏切る」といったビックリ展開も無い。
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冷静に見るとストーリー構成自体、ヨッシーはただの被害者でしかなく、雑な仕事をした大精霊ゴッホンの尻拭いをさせられているだけの不条理な物である。
プチ精霊達も、元々ヨッシーの土地であるヨッシーアイランドに勝手に居座っての通せんぼであり、悪い印象を持つプレイヤーも少なくないだろう。
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ゴッホンは上記のストーリー通りヨッシーアイランドにいるクッパを島ごと封印している。
これは悪事をしているクッパを止めるためにはやむを得ないと考えられるが、冒頭ではそれを謝罪したり申し訳なさそうに振る舞う様子も一切なし。
ちなみに協力者的存在であるビックリ大好き精霊はヨッシーアイランドを巻き添えにすることに反対するというプレイヤー目線の行動を行うが、そのせいでゴッホンの怒りを買いプチ精霊をクビにされているという、パワハラ上司もいい所な振る舞いをしている。
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章の各プチ精霊も上記通り勝手に居座っての通せんぼだが、ミッションとなる頼みを理解できないプチ精霊もいなくはない。
かわいいの大好き精霊ならば、本の最後のページに向かうまでのついでの人助けとも取れる。強いの大好き精霊は、章開始時の台詞から最後のページに向かってクッパと戦うための修行とも見れる。
お金大好き精霊はしあわせメダルも通行料と呼ぶ拝金主義者だが、コース内で集めたコインが没収されることなく全てヨッシーのものにできる。
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しかしやさしいの大好き精霊の「4たいいじょう てきをたおすと オシオキざーます!」は明らかにヨッシーに対して差別的で下手をすれば嫌悪感を抱くかもしれない。
ヨッシーが敵からダメージを受けても敵に対しては特に咎めはなしで、ヨッシーが攻撃していなくてもコース内で倒れた敵は倒した扱いにされ、平和を心掛けているのに反してストイックな性格。
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こわいの大好き精霊に至ってはもはやノルマすら与えられず、ただの自分の趣味である。
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尤も、クッパを封印することができたエンディングでは、プチ精霊達が感謝をしてゴッホンも感激してヨッシーを持て成したことが判明している。封印していたヨッシーアイランドもこれは失礼と言いながら元に戻している。
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演出も過去作と比べると地味。
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疑似3Dで描写されたテカテカしたヨッシーが不気味という意見もある。GBAの解像度で常時3Dは無理があったのではないだろうか。
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一部障害物の断面が段ボール風になっていたり、背景も絵本っぽくなっている等、一応の工夫こそされてはいるが、『ヨッシーアイランド』の演出の足下にも及ばない。
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そもそもヨッシーアイランドのGBA移植が2年前の『スーパーマリオアドバンス3』の時点で実現しているのに、それに演出面で負けているというのは…。
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最終戦はビックリ大好き精霊が一枚絵で「クッパはこのさきのどうくつのなかに いるいるいるゾ~!」と喋った後、ステージに突然放り込まれて戦闘になるというかなり投げやりな演出。
ヨッシーがミッションをこなしながら本の最後のページまで到達する間、クッパはずっとこの洞窟に佇んでいたのだろうか?
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BGMが電子音バリバリで違和感がある。聞けないほど酷くはないが、ヨッシーの柔らかい世界観にはあまりマッチしていない。
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また、曲自体のバリエーションもそれほど多くない。各プチ精霊は章の始めのデモとステージが同じBGMであり、クッパ戦も中ボス・最終ボス関わらず同じBGMである。
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売りのはずの「傾ける」操作が地味。
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傾けると言っても左右1段階だけで、それ以上の細かな傾きはない。「万有引力」という大層なゲーム名に反して天地をひっくり返すような大胆な操作は不可能。
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「傾けて足場を作る」「傾けて球を転がす」と言った程度の仕掛けが過半を占め、操作性がユニークな割にギミックが地味。
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同じく傾きセンサーを内蔵した『まわるメイドインワリオ』の豊富なプチゲームとアイデアと比べると、かなり見劣りしてしまう。
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また、傾きを認識する角度は一定であり、45度未満の少々の傾きは認識すらしない。こうなるといっその事重力の操作をLRボタンに割り当てても問題無いようにも思えてしまう。
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ボリューム不足。
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総50+2コースだが、一つ一つのステージが短いうえに、実質全6章しかない。
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シビアな難易度。極端に難しいわけではないが、全体的に意地悪。
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トゲゾーンが『ヨッシーアイランド』と同様に触れると即ミス、いわゆる即死エリアと化している。
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多数配置されている場所も多く、慣れない傾き操作でうっかり転落事故が多発しやすい。
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一応ギミックを使えば倒せるのだが、タマゴが使えないせいでパックンフラワーが自力では倒せなくなってしまっている。
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コースが進行すると、チェックポイントやゴールポイントが罠のような存在となり得る。
小さな足場の下にチェックポイントが敷き詰められており、落ちると強制的に次ページに移動させられてしまう等。
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その為、目的を達成しないうちにうっかりチェックポイントに触れて次ページに強制移動といった事態になりやすい。こうなるとやり直しが非常に面倒くさくなる。
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後述の「シャッフルモード」「シャッフルモードEX」では、意図なくゴールしてしまうことがミッション失敗に繋がりやすく、ある意味『ゴールポイントをどう制するか』が求められる。
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また、ゲーム後半には跳ねながら傾きに応じて縦横無尽に暴れまわるという、理不尽にも程があるチェックポイントやゴールポイントが現れる。
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「おかね大好き精霊」のミッションが非常に多い。
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2章から登場する精霊で、コインを目標数集めるだけというシンプルな条件からか、他の精霊と比べて明らかに出番が多い。ついでに「ダブルミッション」では、他の精霊とダブルミッションで組み合わせられる事も多い。
幸い時間制限は基本的にないのでじっくり探索すれば達成しやすく、このミッションを受けるほど1UPできるというメリットこそある。
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これだけ出番が多いにもかかわらず何故かステージBGMの優先度も高く、ダブルミッションでも「こわいの大好き精霊」とのペアを除いてほぼ確実に彼のテーマ曲がBGMになる。
設定ミスなのか彼が居ないステージにまで流れる。後述の「ぷれぜんと」である『ヨッシーだいジャンプ』『ヨッシーのかいぞくせん』のBGMも追い打ちが如くこの曲。半ばおかね大好き精霊の曲がメインテーマ曲と化してる。
評価点
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アクションゲームとしては極端に出来が悪いというわけではない。
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ヨッシーを主人公に据える必然性はさておいて、ゲームそれ自体の完成度は決して低くない。一つ一つのステージ構成は、独特な操作スタイルを活かせるようそれなりに練られている。
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「傾けてステージを操る」という発想はなかなかユニークで、これを生かしてステージを攻略する道筋を考えるのは結構楽しい。
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3D描写にする意義はないものの、キャラグラフィック等もGBAという事を考えればそこまで極端に出来が悪いものではない。
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ハーフパイプでジャンプして親指を立てる、ルーレットを止めてほくそ笑みながら結果を待つ、ゲームオーバー時に暗闇で泣くといった、ヨッシーのリアクションも程々充実している。
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一つ一つのステージが短いという欠点も、裏を返せば再プレイが手軽だという利点にもなる。
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また、金銀のメダル更新、タマゴじん集めなどやりこみ要素もそこそこあり、後述する5種のオマケミニゲーム「ぷれぜんと」も存在する。
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久しぶりにヨッシーシリーズでモーフ(変身)が登場した。
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もっとも、ジャンプできるか否かの違いしかないヨッシー舟・ヨッシーボート、操作性が非常に独特で動かしにくいボール形態など、ここもイマイチ練り切れていない印象を受けるが。
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音源はさておき、プチ精霊のテーマBGM自体はそれぞれに非常に合っている。
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バックの鈴の音が可愛らしさを引き立たせている「かわいいの大好き精霊」や、いかにも恐怖シーンらしい曲調で不安を煽る「こわいの大好き精霊」等、それぞれの精霊に専用曲が用意されており、イメージに合っている。ステージ中のBGMも依頼主の精霊のテーマ曲になるので現在、何のミッションを受けているのかが分かりやすい。
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ダブルミッションの時には片方の精霊のBGMが適用されるが、どちらが優先されるかはステージ毎に決まっている。これが上述した「お金大好き精霊」のBGMがマンネリになる問題に繋がっているが…。
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ゲーム起動時に使う機種が選択出来るので、機種変更にも対応できる。また、傾きを認識する角度の矯正をする事も可能。
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やり込み要素の1つ「ぷれぜんと」。
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特定の条件を満たすとビックリ大好き精霊からぷれぜんとしてもらえてプレイできるようになる、いわゆるオマケ要素。いずれのぷれぜんとでも、3rdまでの上位記録が残る。
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「タマゴじんずかん」完成で『ヨッシーだいジャンプ』『ヨッシーのかいぞくせん』『ヨッシータイムアタック』。
更に全コースクリアで『シャッフルモード』、全コースで金メダルを獲得すると『シャッフルモードEX』をぷれぜんとしてもらえる。
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同記録の場合は最後にプレイしたものがハイスコアとなるため、同記録が出ても少しだけ嬉しい。
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『シャッフルモード』は、全てのコースのうちからいずれか1ページを対象としたミッションが与えられ、それを連続でクリアする記録を目指すモード。
各ページにあったチェックポイントは全てゴールポイントに変わっており、ミッションを失敗するか、にこにこメーターが全て無くなってミスすると記録がそこで終了。
にこにこメーターは次のミッションに移行してもそのまま引き継ぐが、コインは引き継がず1UPすることはできない。100ページをクリアすると専用の演出が発生してそこで自動的に終了となる。
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『シャッフルモードEX』は、ミッションの難易度が上がったモード。
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特にかわいいの大好き精霊とやさしいの大好き精霊は、必ず完璧を求められる。100ページをクリアするのはとんでもなく難しい。
総評
一個のゲームとしては致命的に完成度が低いわけではないのだが、とにかくヨッシーシリーズとして作ったのが間違いだったという印象の作品。
ユニークな操作性を採用した割に、全体的に酷く地味であり「傾きセンサーを内蔵しただけの凡作」といったところである。
余談
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漫画『スーパーマリオくん』では「ペーパーマリオRPG」の連載中だったため、短編の番外編として取り上げられた。マリオが不在の状況を狙ってゴロツキタウンを襲撃してきたクッパを偶然居合わせたヨッシーが迎え撃つといったオリジナルストーリーで、精霊達は一切登場しない。
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ちなみにこの漫画内ではヨッシーが「万有引力」と称して漫画のコマを90~180度とダイナミックに回転させてクッパを翻弄するという本作以上に傾き要素を活かした芸当を披露している。
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「無意味な3D化」「電子音によるチープさが目立つBGM」は同じくアートゥーン作のGBAソフト『ピノビィーの大冒険』と共通する欠点である。この点は発売から3年も経っているのに殆ど改善されていない。
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「キャラクターの部位の肥大化演出」は本作でも存在するが、こちらは控えめにされている。
最終更新:2024年11月19日 12:06