サラブレッドブリーダー
【さらぶれっどぶりーだー】
| ジャンル | シミュレーション |  | 
| 対応機種 | スーパーファミコン | 
| 発売元・開発元 | ヘクト | 
| 発売日 | 1993年8月25日 | 
| 定価 | 9,700円(税抜) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | グラフィックは美麗だが動きが単調 架空オールスター"ヘクトカップ"
 成長力ゲー
 距離適性に応じた馬の育成が求められる
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| サラブレッドブリーダーシリーズ 無印 / II / IIPLUS / III / 世界制覇編
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概要
93年以降に数多く出た、SFCで発売した競馬ゲームの一つ。
6つの架空の大レース群「ヘクトカップ」を制覇するのを目的としている。
ゲームの特徴としてはスピード・スタミナ値を廃止することで距離適性を際立たせることを狙った。
また馬の「成長」が重要視され、繁殖させて能力を引き継いでいくことで強力な馬を作っていけるようになっている。
システム・特徴
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ライバル馬、種牡馬、繁殖牝馬には実名が使われている。
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騎手は実名ひらがな。顔グラ付き。
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一部は愛称。「よこてん(横山典弘)」「えびまさ(蛯名正義)」など。
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「しばた」(柴田政人、柴田善臣)と「こじま」(小島太、小島貞博)が二人いる。
 
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スピード・スタミナ廃止と距離適性値
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適性距離は2歳時コメントで教えてもらえる。1200、1600、2000、2400、3000の5種類。得意距離のエキスパートに育てるのが基本。
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ダビスタのようにスピードもスタミナもあって短距離も長距離も得意といったような非現実的な馬にはしにくい。
 
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各競走馬のデータ画面ではその馬の顔アップ画像を表示し、表情で状態を視覚的に示している。
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例えば休養後のズブい状態では目を閉じている。当然このような状態で出走しても実力を発揮できない。
 
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レースは常に8頭立てで「スタート」「最終コーナー」「ゴール前の直線」の3パートに分かれている。
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発走前に「ダイジェスト」を選ぶと「ゴール前の直線」のみを見ることになり時間短縮になる。
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故障は「ゴール前の直線」でのみ発生し、視点がバックし急に対象の馬が画面前方ギリギリになるまでスクロールし、その馬が急に一気に後退する。
 
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調教は設定した調教を週送り時に自動で実行するか、その場で「実行」を選択して行う形で、4人いる「調教助手」に4つのパターンを登録し、それを各馬に「担当」として振り分ける。
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調教は坂路(短距離)・本馬場(中距離)・プール(長距離)の3種類で、強さはしない・軽め・強め・一杯の4種類。
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現実のプール調教は脚への負担がないので脚部不安を持つ馬に優しいものだがゲームではどれも馬にかかる疲労や脚部へのダメージは同じ。
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調教助手は振り分けられた調教がやさしいと笑顔になり、スパルタだと怒った顔になる。
 
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通常の調教とは別に「臨時」で個々の馬に対しその週の調教を設定して実行することもできる。レース前等の微調整に役立つ。
 
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馬が故障すると黄色と赤の十字マークが出る。黄色は軽症(破行など)、赤は重症(骨折や屈腱炎など)。
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破行の馬に調教するとかなりの確率で重症に悪化し、レースに出せばまず予後不良。
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故障したら軽症であっても休養させるのが鉄則である。
 
 
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馬を休養させる場合は、放牧、温泉、笹針のいずれかを選択する。
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放牧が最も一般的で疲労が完全に抜け、馬体重も戻る。
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疲労の溜まり具合によって帰厩までの期間が異なる。故障してればさらに多くかかる。
 
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温泉は放牧より若干早く回復するが体重・能力の変動が起こらない。
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笹針は厩舎に入ったまま4週間休んで疲労を抜くがそのぶん効果は小さい。
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使うたびに効果が低くなっていくので、いずれは放牧か温泉休養が必要。休養させれば笹針の効果も元に戻る。
 
 
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架空の大レース「ヘクトカップ」
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条件を満たすことで、12月4週に週送りをした時にヘクトカップに招待される。全てのヘクトカップをプレイヤーの馬で勝利することでエンディングになる。
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出走条件を満たせれば複数年にわたって何度も出場できるが、1頭の馬で全部取るような育成は不可能。短距離馬ならスプリント、長距離馬ならターフといった具合に別々のカップを目指す事になる。
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出走しても体重や疲労は変動せず、自動で絶好調の状態になる。有馬記念からの連闘でも大丈夫。
 
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ライバルはエクリプス・スピードシンボリなどの古今東西の名馬。
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ダートレースもあり、ダートの鬼を育てることがクリアに必須となっている。ダートG1すらなかった当時のゲームには珍しい。
| ジュヴナイル | 3歳 | 芝1600M |  
| スプリント | 4歳上 | 芝1200M |  
| ディスタフ | 4歳上・牝 | 芝1800M |  
| クラシック | 4歳上 | 芝2000M |  
| ターフ | 4歳上 | 芝3000M |  
| マイル | 4歳上 | ダート1600M |  
 
 
 
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レースでの獲得賞金が20億を突破するたびに、その週の間のみ種付け・購入が可能な「スーパー種牡馬・繁殖牝馬」が登場する。達成したのが2月~5月ならスーパー種牡馬を種付けでき、6月~1月ならスーパー繁殖牝馬を購入できる。
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種牡馬はニジンスキーなど伝説の種牡馬たちが揃っており、繁殖牝馬のほうは牝馬三冠のメジロラモーヌなどいい馬が揃っている。
 
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特定のレースを連続して勝利することで新聞に載る。例えば短距離レースを勝ち続ければ短距離王として称賛される。
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本作では特に見返りはないが、これが後の『サラブレッドブリーダーIII』にて星取表システムに昇華することになる。
 
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パスワードによる対戦
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パスワードを取った馬はコールドスリープされて時間経過が止まる。同月同週でないと解凍できない(パスワードを取ったターンで即解凍可)
 
評価点
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美麗なグラフィック
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馬の描画を大きめにとることによる、当時にしてはリアルで書き込まれたグラフィックによる迫力あるレースシーン。
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グラフィックそのものはいいのだが……(問題点に後述)
 
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馬のデータ画面の顔アップ。全身図を廃してアップにすることでややコミカルにデフォルメされた豊かな表情をよく書きこんでいる。
 
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調教メニューを登録して自動実行することにより、毎週調教を選択する手間が省ける。
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距離適性に応じて調教の種類を決めたら、あとは状況に応じて強さを調整するだけで済む。複数の馬の管理が大変ということがなく、同時進行で別々の馬を育てやすい。
 
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競走馬の特徴は一通り説明される。
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誕生時と牧場にいる仔馬の1歳時・2歳時に距離適性・芝ダート・成長型・成長力などを教えてもらえる。
 
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自家生産馬同士を交配できる。
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牡馬は本賞金1億円以上、牝馬は総賞金1億円以上で繁殖入りできる。牝馬のほうが条件が緩いので、初代馬を育てるなら牝馬が安定。
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市場の馬は能力値に限界があるが、自家生産馬ならそれらを超えるような強い馬も作ることができる。ただし血が濃くなりすぎる近親配合はできないので、そこは考えて作らねばならない。
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自分の馬なので特徴をつかみやすく、距離適性に応じたエキスパートも作りやすい。代を重ねて能力を引き継いで行けば、いつか必ずヘクトカップに手が届くような強い馬が出来上がる。
 
 
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疲労に気を付ければ馬が故障しない。
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丈夫な馬はもちろん、脚部不安の馬も無理をさせなければ故障させずに繁殖まで上げられる。成長が大事な本作にとって故障は大敵。予後不良なんてもってのほかである。
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疲労をためすぎると能力が成長せず逆に下がっていくので休養は必須。
 
賛否両論点
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スピード・スタミナ廃止により、とりあえずスピードがあれば良いというものではないゲームの構築に成功している。
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現役馬のレース面の他、長距離種牡馬がスピードに欠けて使いにくいような格差の是正にもなっている。
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「スピードがあれば何とかなる」という初心者への解りやすいセーフティが無いとも言える。
 
問題点
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サブパラは親のものを確実に遺伝する。
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例えば気性:激と気性:激を掛け合わせると絶対に激(最悪)になる。
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各パラメータは競走馬の能力的には早熟と普通で普通早など5段階だが、繁殖馬の能力は3段階評価。先の例なら早熟。
 
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重要パラである「成長力」も該当するので、お気に入りの血統を育てようとしても、それが成長力:小になる配合ではそこから強い馬を出すことは困難。
 
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最重要能力「成長力」の扱い
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成長力が小だとG2に勝つのも困難だが、大ならG1を狙えるくらいには成長する。
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仔馬の能力は親馬の能力をほぼ引き継ぐので、成長力小の馬は産駒の能力も低いということになってしまう。馬の成長・繁殖に重点を置いているこのゲームでは不利。
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さすがに成長力大でも適正年齢を過ぎると衰えてくるので、ヘクトカップを1代で勝つのは難しい。成長させた馬を交配して仔馬に能力を引き継いでいくことが重要になってくる。
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繁殖馬としてはマスクデータであり、攻略情報を知らないとデフォルトの繁殖馬から優良な馬を選ぶのは困難。
 
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極端なレースランク間の難易度差
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G2とG1の難易度が離れすぎている。
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G1の前哨戦なら当然G1級の相手が登場したり、そこで負けても調子を上げれば勝てそうなものだが、本作ではG2に圧勝するくらいの馬でもG1ではまったく相手にならない。
 
 
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古馬G1の出走条件が厳しすぎる上に違和感がある。
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3歳戦やクラシックなどは違和感のない条件になっておりトライアルもちゃんとあるのだが、古馬の方がかなりおかしくなっていて、一番条件が緩いスプリンターズSでも本賞金5001万以上を要求され、安田記念は8001万以上と一番厳しくなっている。現実的なレースの格を考えると違和感が大きい。
 
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単調なレースシーン
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全頭がまっすぐに走る、駆け引きもあったものではない現実味の無いレース。
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当時の他のゲームも直線こそはそうなってしまうものの、先発かつプラットフォームの性能が劣るファミコンの『ダビスタ』で道中はスタート・最後の直線とは違う画面を使って八頭まっすぐにはならないように工夫していた。
 
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最後の直線は絶対に3頭が抜け出して次にその3頭の着差を決める。一気に追い上げてくるなどの展開はない。
 
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解りづらいレース後コメント
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レースに負けると敗因をコメントしてくれる。脚質や単純な力不足は解るのだが……
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「本調子ではない」は調子が低いのではなくベスト体重ではない、「成長が感じられない」は鍛えて成長させろではなく成長しなくなった→衰えなど。
 
 
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調教の「実行」の使い勝手
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登録された調教をすべて実行してしまう。1頭だけレース前でその馬に調教したい時に他の馬への調教を暴発させてしまうことも。
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微調整するにも「臨時」があるので、使う意義が無い。
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ハ行など軽故障馬でもお構いなし(当然悪化させることになる)。
 
 
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種付け可能な通常の種牡馬がランダムかつ6頭しか出てこない。
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年齢バグ
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2月の1週に種付けをすると、12月の3週に生まれる。そしてわずか2週間で2歳になってしまう。
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育成費用をケチることが可能だが、重要な当歳時の能力コメントを聞き逃してしまいやすいという欠点もある。こんなバグに頼らず2月3週以降に種付けするのが無難だろう。
 
 
総評
グラフィックそのものは良いがレースシーンは単調、生産は繁殖馬のマスクデータの把握が必須で、システム的にダビスタのような最強馬を作るのには向かないと、総合的には厳しい目で見られがち。
しかしダビスタのように突然変異で強い馬や弱い馬になったりはせず、自分の力で馬を成長・繁殖させていくことができるので、地道にやればいつか必ずヘクトカップを制覇することができる。
短・中・長距離やダート馬も育てる必要があり、目的に合った繁殖相手を探し出し、または作り出して自家生産馬同士で交配させる楽しみもある。
あまり運に左右されずにのんびりと牧場育成を楽しみたい人にとっては、ダビスタよりも向いている作品と言えるだろう。
その後の展開
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1994年6月8日、同じくスーパーファミコンで『サラブレッドブリーダーII』を発売。
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エンドレスループスタイルから一転、昭和39(1964)年~平成5(1993)年の競馬史30年を舞台に歴代の名馬たちと戦って実績を積み、得点化した実績を求めていく。
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一応30年をプレーしきることができれば、本作のようなエンドレスなスタイルに切り替えることも可能。
 
 
余談
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本ゲーム発売時点ではまだ実績を上げていない後の名繁殖馬が、ゲーム中で格別な能力になっていることがちらほら見られる。スタッフに予言者でもいたのか。
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産駒デビュー前の輸入種牡馬は基本的に距離適性ランダムだが、後の大種牡馬サンデーサイレンスは距離適性固定。
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ビワハヤヒデ・ナリタブライアンの母パシフィカスが登場しているのだが、日本での産駒がGIを勝つ以前なのにスーパー繁殖牝馬と同レベルの最強ランクの能力値。しかも6000万と安い。能力的に6億の間違いなのかもしれないが。
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エアグルーヴの母ダイナカールがまだエアグルがいないのにスーパー枠。オークス馬なら通常の牝馬に色々いるのに。
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エアグルーヴ(父トニービン)はこの年に年生まれたばかりでデビューすらしていない状態で、兄や姉の実績もまるで冴えないものだった。そのため本来なら他のオークス馬を差し置いて優秀になる理由がなく過大評価と取られても文句は言えない。
 
 
最終更新:2024年11月12日 05:37