聖塔神記 トリニティトリガー

【せいとうしんき とりにてぃとりがー】

ジャンル アクションRPG


対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Windows(Steam)
発売元 フリュー
開発元 スリーリングス
発売日 【Switch/PS5/PS4】2022年9月15日
【Win】2023年4月26日
定価(税込) スタンダードエディション: 8,580円
デラックスエディション: 10,670円
(DLC:追加シナリオセット+武器セット)
アルティメットエディション: 14,960円
(DLC:追加シナリオセット+武器セット
 +欠片・アイテム・素材オールセット)
プレイ人数 1~3人
セーブデータ 3個+オートセーブ1個
レーティング CERO:B(12才以上対象)
判定 なし
ポイント 『聖剣伝説2』を思わせるアクションRPG
装備変更や味方AIの不自由さ
薄味なモブ会話とサブクエ
前時代的なグラフィック
シナリオやアクションの根幹部分は及第点


概要

聖剣伝説2』などを彷彿させる、トップビューのアクションRPG。
「発見」をキーワードにした「王道RPG」を謳い、
ゼノブレイド』のキャラデザを手掛けた風間雷太氏、 『聖剣伝説』シリーズの作曲を担当した菊田裕樹氏など
著名なクリエイターが複数参加していることを一つの売りにしている。


ストーリー

その昔、秩序の神々と混沌の神々が世界の覇権をめぐって争っていた。
大きな武器が地上に落ちていき、世界は崩壊をはじめる。
そこで各神はそれぞれの代理者「神々の戦士」を選び、
その者達の戦いをもって勝者と決めることとした。
時は流れ………
小さな村で静かに暮らしていた青年シアンは
ある日、自分が混沌の神々に選ばれた「混沌の戦士」であることを知る。
エリス・ザンティスとともに運命に抗う旅へ出るシアンだが
「秩序の戦士」ヴァイオレットの力に圧倒され、混沌の戦士としての運命を悟る。
自分が死ねば、世界に秩序が訪れる―――――

(公式サイトより引用)


キャラクター

パーティキャラ

+ クリックで開閉
  • シアン・エルレウス(CV.市川太一)
    • 主人公。辺境の村「ウッドルース」にて妹と二人で暮らし、聖塔探索をする「ブリンガー」を生業とする。 しかしある日、自分が「混沌の戦士」であると知り、数奇な運命に巻き込まれていく。
    • 妹のフィルンや、彼女の両親と血の繋がりはない。 実の家族のことは何も知らないが、自分を育ててくれた両親や妹のことを本当の家族として心から愛し、感謝している。
    • 得意武器は剣。
  • フラム(CV.小原好美)
    • 正体不明のトリガー。属性は火。
      • 記憶喪失で自分が何者なのか知らないが、シアンの瞳の紋章に見覚えがあり、記憶を取り戻すためにシアンのパートナーとなる。
      • フィルンの前では人語を解すトリガーであることを隠し、動物として振舞っている。
  • エリス・クオイズ(CV.中村カンナ)
    • 「混沌の戦士」であるが故に、命を狙われるシアンを守るために現れた謎の少女。 宿命の戦士が背負う運命を変えようとしている。
    • 性格は勝ち気で行動的。やや思い込みの激しい一面がある。
    • 得意武器は弓。
  • ウィズ(CV.ファイルーズあい)
    • エリスが召喚したトリガー。属性は水。
    • 深い知識を持つ理知的な性格。暴走しがちなエリスのブレーキ役となっている。
  • ザンティス・ゲルダイン(CV.岩崎諒太)
    • 秩序の神に仕える神官でありながら、神託を受け「混沌の戦士」を守るためパーティに加わる。
    • パーティ最年長にして、三度の飯より酒が好きなムードメーカー。いい加減な発言をしては、エリスに手厳しいツッコミを入れられている。
    • その軽いノリとは裏腹に、かなりの腕利きで神官としての地位も高い。
    • 得意武器は斧・拳。
  • ライ(CV.井澤詩織)
    • ザンティスが召喚したトリガー。属性は雷。
    • 少年のように直情的な性格の熱血漢。友達のような感覚でザンティスに接する。

サブキャラ

+ クリックで開閉
  • フィルン(CV.井上ほの花)
    • シアンの妹。兄が旅立った後、一人で我が家を守るしっかり者。少々ブラコンの気がある。
      • シアンを育てた夫妻の実子であり、シアンと血縁は無いが「お兄ちゃん」と呼んで実の兄同等に慕っている。
      • シアンの方が料理が上手いことを若干気にしており、兄に「美味しい」と言わせようと健気に努力を続けている。
    • 両親は数年前に、流行り病で他界している。
  • ライム・ヴェール(CV.Machico)
    • 兎のような耳を持つ「レプレ族」の技師。マナタイトの作成を生業とする。エリスとは古い付き合い。
      • 貴重な素材を求めてモンスターの巣窟に飛び込むなど、向こう見ずな面がある。
  • ヴァイオレット(CV.青木瑠璃子)
    • シュタール王国の王女にして「秩序の戦士」。 シアンを倒して世界に秩序をもたらすことを、自らの使命と信じて疑わない。
    • 自分にも他人にも厳しい、凛とした性格。
    • 使用武器は剣・双剣。
  • ルクス&アンブラ(CV.長妻樹里&石谷春貴)
    • ヴァイオレットが召喚した二人組のトリガー。属性は光と闇。
      • 通常、一人の人間が召喚できるトリガーは一体のみだが、何故か彼女だけは二体従えている。
  • バルト王(CV.田村真)
    • 世界最大の国「シュタール王国」の王。 表には出さないが、過酷な運命を背負った娘のことを内心心配している。
  • ノワル(CV.加隈亜衣)
    • シュタール王国の側近護衛官を務める女性。ヴァイオレットに救われた過去があり、彼女に尽くすことを何よりも優先している。
    • 使用武器はハンマー。
  • ネロ(CV.田丸篤志)
    • シュタール王国の側近護衛官の男性。寡黙な性格で、考えが読めない。
  • アーテル(CV.赤羽根健治)
    • 豊富な知識でバルト王を支える、シュタール王国の側近護衛官。礼儀正しく穏やかな性格。
  • コル・デ・グリーズ(CV.佐久間元輝)
    • 義賊団「金剛石の翼」を率いる団長。遥か昔、シュタール王国に住処を追われた一族の末裔で、王族とは今も因縁が続いている。
    • 豪快な性格で、団員からの信頼は厚い。
  • コル・デ・ローザ(CV.柚木尚子)
    • グリーズの妻。面倒見がよく、団員からも慕われている。彼女の作る料理は絶品。
  • イオニア・シモンズ(CV.小形満)
    • シュタール王国の貧民街で暮らす墓守の老人。貧富の格差が広がりつつある、王国の現状を嘆いている。
  • グレイブ・シルヴェスタン(CV.平林剛)
    • シュタール王国槍斧騎士団の団長を務める貴族。バルト王の良き相談役でもある。
  • クラテール(CV.遠藤綾)
    • 秩序でも混沌でもない「調和神リーブラス」に仕える大神官。 リーブラスの神託を受けることが出来る。
    • 外見はエリスと同年代の女性だが、エリスらが生まれる遥か前の出来事にも精通しており年齢不詳。

特徴

戦闘

  • キャラクター・グラフィックともに3Dで描写されているが、視点変更・画面回転などの要素はなく、実質2DアクションRPGとして遊べる。
  • 攻撃を行う度に「シンクロゲージ」が減少していき、シンクロ率が低いほど攻撃力が下がる。 攻撃しない時間を挟むことでゲージは回復していく。 『聖剣伝説2』の%ゲージに近いが、あちらに比べると火力の減少率は緩やか。
  • 通常攻撃は「トリガーアタック」と呼称され、3連携までコンボが可能。
    • コンボの1段目・2段目・3段目にそれぞれ2種類の技が用意されており、組み替えて好みのコンボを構築できる。
  • 武器はシナリオの進行に伴って増えていく。剣・槍・斧・拳・双剣・弓・魔銃・魔杖の全8種類。
    • 所持武器は全キャラ共通だが、トリガーアタックの種類や得意武器による火力増強など、多少だがキャラ差はある。
  • 武器が光っている時に必殺技「トリガーストライク」を放てる。
    • 発動後は、一定時間経過することで再度使用可能になる。
  • キャラアイコン左下のゲージがMAXになっていると「ウォポンオーラ」が使用可能。
    • 自身に何らかのバフ効果をかける。効果は「徐々にHP回復」「シンクロゲージが減らなくなる」など武器ごとに異なる。
    • ゲージは攻撃ヒットで溜まっていく。
  • 画面右下の黄色ゲージがMAXの時、トリガー3体の合体攻撃「トリニティインパクト」を発動できる。
    • ゲージは敵の弱点を突いた時や、ダメージを受けた時に溜まる。
  • ボスは画面上部の体力の下に表示されている「アーマーゲージ」をゼロにしないとダメージが通らない。
    • アーマーがゼロになったボスは一定時間ピヨり状態になり、復帰するまでの間のみHPにダメージを与えられる。
    • 弱点を突くことで、アーマーゲージを多めに削れる。またトリニティインパクトはアーマーを無視してHPを直接削れる。
  • 武器の変更/アイテム使用は「リングチェンジメニュー」を開くことで、戦闘中含めいつでも可能。こちらも見た目は完全に聖剣シリーズのリングコマンド。
    • アイテムはカテゴリごとに一つだけショートカット登録が可能。登録したアイテムは、自動で味方AIに使わせることも出来る。
  • 3人までのオフラインマルチプレイが可能。オンラインマルチには非対応。

マナタイト

  • 「マナタイト」と呼ばれる装飾品で武器を強化できる。設定上は、武器にはめ込む加工した鉱石。
    • 本作の武器はイベント入手のみで、防具の概念は存在しないため、このマナタイトが実質装備品の役割を果たす。
    • こちらもシナリオ進行とともに装備箇所が増えていく。上限は攻撃系マナタイト3箇所・防御系3箇所の計6箇所。
      • 装備効果は攻撃系なら「攻撃力UP」「クリティカル時にHP回復」「ウェポンオーラゲージ上昇率UP」、 防御系なら「防御力UP」「回避時にシンクロゲージ回復」「特定の状態異常防止」など。
    • マナタイトの着脱はいつでもノーリスクで可能。入手方法はクラフト(=鍛冶)・店での購入・ドロップ・宝箱・イベント入手など。
      • この内、クラフトで入手したものは通常より性能が高くなる。クラフトにはドロップやオブジェクトの破壊で集めた特定の素材が必要。
  • マナタイト以外に、消耗品もクラフト可能。高位の回復アイテムなどはクラフトでしか手に入らない。

育成・収集・寄り道要素

  • 敵を倒すと経験値の他に「トリガーポイント」を入手できる。これを任意の通常攻撃に割り振っていくことで技の威力を強化できる。
  • ストーリーの進行に応じて、サブクエストが受注できるようになる。
    • 内容は「特定のアイテム入手」「特定の敵を一定数撃破」「イベントボス撃破」など様々。報酬は素材アイテム・マナタイト・クラフトのレシピなど。
    • クエストの発生する場所やボスの居場所には!マークが表示され、ファストトラベルもあるので攻略は難しくない。
  • 各地で見つけた「名産品」を、自宅のフィルンにお土産として渡すことが出来る。全9個。
    • 渡しても実利は無いが、ムービー鑑賞・自宅のBGM変更といったおまけ機能が解放されていく。
  • 「発見」をテーマにしているだけあり、マップの隅々まで探索しないと見つからない隠し通路・隠し宝箱なども豊富。
    • 脇道に逸れることで、場違いな実力を持つ強敵と戦えることも。そのようなルートの前には、しっかりと警告も存在する。

評価点

手堅い王道ストーリー

  • 本作における神は、ほぼ全員がギリシャ神話の神々のように愚かで横暴な存在。 人間達は理不尽に神々の争いに巻き込まれ、終始振り回されることになる。
    • そうして人間の無力さを強調すると同時に、運命に抗おうとあがく主人公達の葛藤もクローズアップされる。 「ちっぽけだが必死に生き抜こうとする人間のひたむきさ」をしっかり描けている。
  • 序盤は「対抗勢力と戦う力をつけるために各地の聖塔を回る」というややスロースターターな展開だが、中盤以降は 「主人公の出自」「意外な黒幕の正体」「黒幕が本編前から仕掛けていた罠」など衝撃の事実が次々に明かされ、プレイヤーを物語に引き込んでいく。
    • 敵対していた人物との共闘など、ベタだが燃える一幕もある。
  • 「宿命の戦士同士の戦闘で死亡した場合は戦いの決着がつくが、それ以外の原因で死んだ際は戦士の選び直しが行われる」というルールがあり、 膠着状態狙いでシアンの命を狙う第三勢力がいるので、常に適度な緊張感がある。

魅力的なキャラクター達

  • 「誠実で前向きな主人公」「勝ち気だが優しいヒロイン」「三枚目だがいざという時に頼れる兄貴分」というバランスの取れたプレイアブルの三人組は、いずれも好感度が高い。
    • 宿命の戦士であるシアンは、中盤で自分に課せられた運命の重さに自暴自棄になりかけるが、仲間に支えられて立ち上がり、 最後は強い意志を持って運命に立ち向かうようになる。キャラクターの成長が明確に感じられる。
    • 主人公以外にも「肉親への愛情と、公的な立場との間で板挟みになる人物」 「人間的な感情と、神から与えられた使命の間で葛藤する人物」など、人間味を感じさせるキャラクターが多く登場する。
  • 武器兼マスコットキャラである「トリガー」達は、にしだあつこ氏をはじめとする「ポケットモンスター」シリーズのデザイナー達が手掛けているだけあり、 嫌味のない非常に可愛らしいデザインで愛着が湧きやすい。こちらも三者三様の性格付けがなされており、差別化にも成功している。
    • トリガーは世界観にも大きく関わる役割を持ち、解説役・お目付役としても存在感を放っている。
  • 声優陣は有名どころはあまり起用していないが、皆熱演でありストーリーの盛り上げに一役買っている。
    • 中でも黒幕のキャラが本性を現した時の豹変っぷりと、邪悪さ・狂気が溢れ出す怪演は見事。

独特で壮大な世界観

  • 「戦いの際に神々が落とした巨大な武器が『聖塔』となり、周囲の環境に影響を及ぼす」「自然の力から召喚され、マスコットのような外見でありながら様々な武器に変形するトリガー」 といった、ファンタジー色が強くオリジナリティのある設定は、独自の世界観を生み出している。
    • 聖塔の影響は「大地を豊穣にする」といったプラス効果から「周囲の物質を硬化させる」のような毒にも薬にもなるもの、 「大量の瘴気を発生させる」という明確に邪悪な効果まで多種多様。
      • 中でも「周囲の人間を強制的に幸せな気分にする」という影響を受けた街「フェスティバーナ」は、本作の中でも特に異様な空気を放っている。 ここで発生するイベントも色々と考えさせられる。

軽快なアクション戦闘

  • アクションはレスポンスが良く、弱点を突いたりマナタイト装備・トリガーアタック強化で火力を底上げしたりすれば 高速で敵を殲滅していけるので、バトルのテンポはかなり良い。
  • 敵の攻撃には後隙が発生し、シンクロ度の存在もあるので、メリハリの効いたヒットアンドアウェイ戦闘を味わえる。
    • 減ったシンクロ度はキャラチェンジで回復させられる他、消費アイテムやマナタイトでも回復や軽減が出来るので、完全な「待ち」の時間は発生しにくい。
  • 回避の性能が高い。ボタンを押した瞬間から長めの無敵時間が発生し、 攻撃モーションをキャンセルしての発動も可。連発によるデメリットもない。
    • また敵が大技を出す際には赤枠で攻撃範囲が示されるので、慣れればノーダメージでのボス撃破なども可能。

武器を使い分ける楽しさ

  • ほとんどのザコ・ボスには弱点となる武器が設定されている。また特定の武器でしか壊せないオブジェクトや、ある武器で敵を倒した時のみドロップする素材もあるので、各武器を適材適所で活かしていく快感がある。
  • 斧ならスーパーアーマー付き、弓ならクリティカルが出易いなど、8種の武器は明確に個性付けされている。耐性さえなければ弱点以外の武器でも充分戦えるので、お気に入りの武器を決めてそれをメインに使っていくのも一興(ただし、一部の武器を無効にする敵はザコ・ボス問わず存在する)。
  • トリガーアタックは「単発だが高威力」「威力低めのラッシュ攻撃」「広範囲攻撃」「クリティカル率UPなど追加効果付き」 など多様な性能の中から組み合わせられる。自分のプレイスタイルに合ったコンボを探していくのも楽しい。

やり甲斐のある育成要素

  • トリガーアタックを強化すると、目に見えてダメージが上がるので、武器を鍛えるモチベーションになる。
    • さらにクリア後には、一部の武器の攻撃力を大幅にアップさせられるサブクエも発生する。
  • マナタイトも最適解と言える組み合わせは無く、自分なりの強ビルドを模索していく楽しみがある。
    • ストーリーが進むにつれ敵のスペックも右肩上がりになるが、高性能のマナタイトを付けることで格段に楽になる。
    • こちらもクリア後には、チート性能ともいえる一品物のマナタイトが入手できる。

美麗なアニメーションムービー

  • 要所で、深夜アニメ顔負けの良作画のフルボイスムービーが挿入される。
    • 挿入箇所は序盤と最終盤のみで数も少ないのが惜しいところだが、キャラデザを忠実に再現しておりクオリティはかなり高い。 条件を満たせば自宅で何度でも見返せるのも嬉しい。

賛否両論点

マナタイトクラフトのランダム性

  • 作成したマナタイトには一定確率で★が3つまで付与され、★が多い程性能が上がる。また★の数に応じて「ステータスUP」「経験値UP」「状態異常防止」などの追加効果がランダムでつく。 そのため最高効率を求めると、★3が出るまでセーブ&ロードを繰り返してガチャを回すことになる。
    • 特定の武器で敵を倒した時に手に入る「混沌の欠片」などの欠片アイテムを任意の数消費することで、★が付く確率を飛躍的に上げられるが、 欠片アイテムを大量に集めるのはそれなりに骨が折れる。また有用な追加効果にまで拘るとさらなるリセマラ地獄と化す。
    • ただ強力なマナタイトが出来た時の達成感はあるので、一概に欠点とも言い切れない。 またそこまでシビアにクラフトをしなくてもクリア出来るバランスではある。

シナリオ最終盤において、少々スッキリしない点がある

+ 本編ラストのネタバレ
  • ラスボス戦後、神々の戦いを一時的に止めるためにシアンが人ならざる者になってしまう。
    • しかしこれはあくまで戦いを停滞させる手段。 問題を先送りしたに過ぎず、根本的な解決が出来ていないので消化不良感が残る。
      • とはいえ「全ての神を殺す」といった手段はどう考えても無理なので、今出来る現実的な策を取ったとも言える。
      • 抜本的な解決を諦めたわけでもなく、「その方法はこれから探していく」という前向きな姿勢で終わっている。所謂「戦いはこれからも続く」エンド。
  • またシアンがどういう存在になったのかいまいちわからず、今まで通り自宅でフィルンと談笑したり仲間と冒険に出たりと、 普通に生活している。少々説明不足なエンディング。
+ クリア後のネタバレ
  • クリア後の最後のクエストで、唯一人間の味方である神から試練を与えられる。 各地を回って神々の戦いについて記された5つの石碑を読み、 強化された過去のボスを倒した後、その神自身と戦うことになる。
    • しかし石碑には新しい情報はほとんどなく、単なる今までのまとめ。また再生ボス達が何者だったのかも語られない。 極めつけに神に勝っても「強くなったな。お前には運命に抗う資格がある」のようなことを言われるだけで、特に何もしてくれない。 何のための試練だったのかわからず、クリア前から何も状況が好転していない。
      • むしろこの一つ前のクエストで味方側のあるキャラが消滅しており、状況が悪化しているとすら言える。
      • このキャラがいなくなったことを悲しむ人物や、フォローなども少ないため非常に後味が悪い。 本編のエンディングは問題未解決ながらも、希望を持たせる爽やかな終わり方だったのだが…
  • 最終クエストの後に、あるサブキャラが「神々との全面戦争」とも取れる意味深な台詞を言うが、それは特に回収されない。
    • 好意的に考えれば続編への布石と見れなくもないが、本作内ではただの投げっぱなしである。

問題点

システム関連

マナタイト装備の面倒臭さ

  • マナタイト装備の組み合わせは武器ごとに個別管理。武器を変更する度に、手動で付け直さなければならない。
    • 「今装備しているマナタイトを、別の武器にそのまま移す」「よく使う組み合わせを登録しておく」といった便利機能はない。
    • 装備箇所は6つまで増えるので、毎回6箇所×3人分をちまちま設定し直すのはとてつもなく手間。
    • 前述したように武器変更の機会が多いゲームなので、この欠点は重くのしかかる。
    • 「同等の性能のマナタイトを複数作って別の武器につける」という対処法もあるがその分素材も使うし、前述したクラフト時のランダム性もあるので、それはそれで手間が増える。

頭の悪いAI

  • 攻撃は積極的にしてくれるが、回避はかなり下手で攻撃をガンガン食らう。
    • 一応「非操作キャラは被ダメージが激減する」という仕様があるが、終盤ボスの高頻度&高火力の攻撃に晒されれば、被ダメ補正をもってしても仲間のHPがガリガリ削られていく。 必然的に、後半のボス戦は頻繁に回復アイテムで仲間を介護する展開になり易い。
      • おかげで、肝心な時に操作キャラを回復しようとしたらアイテムが尽きていた、といった状況も起こり得る。
      • かといって死んだ仲間を放置してプレイヤー一人でボスを倒そうとすると、火力不足でかなり時間がかかる。
  • 「ウェポンオーラ」「トリガーストライク」といったゲージ消費行動は一切使ってくれない。定期的にキャラチェンジしてプレイヤーが使ってあげないと、ゲージが無駄になる。
  • また「特定の武器で倒した時のみドロップするアイテム」「敵が無限湧きするゲート(経験値稼ぎ等に有用。何度か攻撃を与えると消滅)」が存在し、 不用意に攻撃したくない場面も多々発生するが、仲間はお構いなしに敵を殲滅してしまう。
    • 仲間の行動を細かく指定できる作戦コマンドなどがあれば良かったのだが。

シナリオ関連

無味乾燥なモブの会話

  • 「君もブリンガーなのかい?」「お腹空いたなあ」「今虫採りしてるんだ」といった無意味な台詞が大半を占める。
    • 世界観を掘り下げるわけでも、有益な情報が得られるわけでもないので、モブと話す意味が感じられず、段々と探索が億劫になってくる。
    • 一応、聖塔のある町には塔の由来を神秘的な一枚絵付きで話してくれる老人がいる。 また隠しアイテムの場所を教えてくれる子どもなどもいるが、9割のNPCの発言は上記のような淡白な日常会話である。

とってつけたようなサブクエスト

  • クリア前に33個、クリア後はさらに追加で18個のクエストが受注できるが、内容は 「見ず知らずのモブに『薬草を取ってきて』などと唐突に頼まれ、薬草を渡したら大したイベントもなく終わる」 のような、脈絡のないお使いイベントがほとんど。正直、ボリュームの水増しと捉えられても仕方ない。
    • 雑なモブの台詞や、後述する低クオリティなグラフィックとの負の相乗効果で、 ゲーム全体に薄味な印象を与えてしまっている。
    • シアンの背景に関わるものや、サブキャラを掘り下げるサブクエも無いわけではないが、極一部に留まる。
  • 一応、期間限定のものが無いのは評価点ではある(本作に取り返しのつかない要素は無いと言っていい)。

ボリューム不足

  • 本編クリアまで、速い人なら20時間弱。ゆっくりやっても30時間はかからない。
    • クリア後の追加クエスト・隠しボスを全て網羅すると50時間程度かかり、及第点にはなる。
      • ただし前述したAI問題・装備変更問題・クエスト関連の問題点が足を引っ張る。 クリア後は敵の強さが大幅に上がっているので上記の諸問題がより一層ストレス要素になり、 全てのやり込みをこなすのは苦行感・作業感がある。

グラフィック関連

低レベルなグラフィックやエフェクト

  • 1~2世代前相当のグラフィックであり、SwitchやPS5の性能を明らかに持て余している。
  • イベント中、キャラの3Dモデルが度々アップになるが、表情が全く変わらず臨場感に欠ける。 細部の作り込みもお粗末で、せっかく有名絵師を呼んだのに元絵の良さを活かしきれていない。
    • モーションもクオリティが低い。「敵に全然痛くなさそうな攻撃をする→敵が痛がる→呑気に歩いて逃げる」 のような雑な動きが散見され、本来盛り上がるはずの場面であっても興醒めしてしまう。
  • 戦闘中のモーションは比較的頑張っているが、こちらはエフェクト・SEに問題がある。
    • 通常攻撃のエフェクトと、トリガーストライクのエフェクトの差があまりなく派手さが無い。
      • SEも同様。ヒット時のSEは通常攻撃も含めて全体的に軽く、爽快感が今一つ。
    • 剣だろうが銃だろうが全て「エネルギーの炸裂」のようなエフェクトで統一されている。 銃なら火器らしい、杖なら魔法攻撃らしいエフェクトにするといった工夫はなく、武器の個性を薄れさせている。
  • ボス撃破時は、何の前触れもなく急に画面が切り替わり「ゴゴゴゴ…」とボスが崩れていく。
    • ここだけシームレスで無くなっているので倒した実感が薄い。 ボス消滅のエフェクトもやはり迫力に欠け、せっかくの見せ場なのに爽快感がない。

総評

コンセプト・シナリオ・世界観といった素材は悪くないが、いかんせん作り込み不足や調整不足が目立つ。
「ここさえ直せば…」という惜しい点が多く、勿体無い作品。
ただゲームとして致命的に破綻しているわけではなく、RPGとしての体裁は整えられている。
製作者がやりたかったであろうことの幾つかも、きちんと実現できている。
長々とやり込んだり、何周もしたりする作品ではないが、「サクッとクリア出来るRPGを遊ぶ」「王道なシナリオを手軽に味わう」といった割り切り方をするなら、充分楽しむことは可能だろう。


余談

  • 『聖剣伝説』シリーズと何かと共通点の多い本作だが、 作曲を担当した菊田裕樹氏・世界観ビジュアルを担当した結城信輝氏*1へのインタビュー内で、 ディレクターの礒部たくみ氏は「『聖剣伝説』のようなゲームを作りたい」と思ったのが、本企画の出発点であったことを明かしている(参照)。
最終更新:2023年11月14日 22:55

*1 『聖剣伝説3』『クロノ・クロス』でキャラクターデザインを手掛けたイラストレーター。