検証依頼」が出ています。対応できる方はご協力をお願いします。依頼内容は「Switch版の相違点の追記」です。


本項は初出のPS5/XSX/Win版をメインに、後発のPS4/One版とSwitch版も併せて解説しています。


ホグワーツ・レガシー

【ほぐわーつ・れがしー】

ジャンル アクションRPG




対応機種 プレイステーション5
Xbox Series X/S (ダウンロード専売)
Windows(Steam/Epic Games Store)
プレイステーション4
Xbox One(ダウンロード専売)
Nintendo Switch
発売元 【Switch版以外】Warner Bros. Games(Portkey Games)
【Switch版】セガ
開発元 Avalanche Software
発売日 【PS5/XSX/Win】2023年2月10日
【PS4/One】2023年5月3日
【Switch】2023年11月14日
定価 【PS5/XSX】9,878円
【PS4/One/Win】8,778円(全て税込)
【Switch】7,980円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:C(15才以上対象)
備考 デラックス・エディションにはDLC「闇の魔術パック」同梱
判定 良作
ポイント 『ハリー・ポッター』の世界が舞台のオリジナルストーリー
魔法界をオープンワールドで完全再現
原作のキャラクターなどは一切登場せず
取り返しのつかない要素・バグや不具合が多め
ハリー・ポッターシリーズ


概要

J.K.ローリング作の大人気ファンタジー小説(及びそれを基にした映画)『ハリー・ポッター』シリーズの世界観・設定をベースにしたオープンワールドRPG。
原作の約100年前となる1890年代を舞台にしており、ストーリーもオリジナルとなる。


ストーリー

1890年。魔法界は後のヴォルデモート卿やゲラート・グリンデルバルドが暗躍する時代のように暗雲が立ち込めていた。

過激派の小鬼(ゴブリン)を率いるランロクによる大規模なテロが勃発する中、ホグワーツの入学式に参加する主人公は魔法理論教授のエリエザー・フィグと共に魔法省高官のジョージ・オズリックが手配した馬車に乗車した。

5年生からの途中入学は異例と語るジョージは、フィグの亡き妻のミリアムからおそらく高度な魔法がかけられた謎の箱を死に際に預かったことを伝える。

主人公はジョージがどんな手を使っても開けられなかった箱の開け口が光っていることに気づく。しかしフィグとジョージにその光は見えない。そして主人公が箱を手に取った途端、開け口が自然に開き、中から鍵が現れる。

そんな奇妙な現象を目の当たりにした一同は、背後から襲撃を仕掛けたドラゴンにジョージを喰い殺されるも、鍵がポート・キーになっていることに気づいた主人公とフィグは、辛うじて生き残った。

だが、この襲撃は魔法界の運命を賭けた闘いの始まりに過ぎなかったのだった。
(日本語版Wikipediaより抜粋)


システム・特徴

キャラクター

  • 主人公はアバター型で、性別などは自由に設定可能。男女でストーリーに差はないが、原作設定を反映して男性にすると女子寮に入れないといった制限がかかる。
  • 原作の約100年前ということもあり原作の人物は登場しない。その代わり、シリウス・ブラックの高祖父にあたるフィニアス・ナイジェラス・ブラックなど原作の人物の先祖や血縁にあたる人物が多数登場する。
    • 例外として、年齢的な問題に縛られないゴースト達は原作の人物がそのまま本作でも登場する。

マップ

  • ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』ではホグワーツ内部を探索できたが、本作ではそれに加えホグズミード村や禁じられた森などの周辺地域も探索できる。煙突飛行粉を使ったファストトラベルも可能。
    • 各地には地下洞窟や鉱山といったダンジョンも多数。敵やトラップも満載だがお宝が眠っていることも。いくつかの拠点には「悪名高い敵」と呼ばれるネームドエネミーもいる。
    • 他にもムーンカーフやユニコーンといった魔法生物の巣があり、捕まえて飼育することも可能。素材が手に入ることもあり、後述の装備の強化で使用する。
    • 中盤以降は箒やヒッポグリフに乗って空中から探索することも可能になる。探索効率が飛躍的に上昇するが、屋内やホグズミードでは乗れず高い山は越えられないといった制約がある。

必要の部屋

  • 中盤に解禁される主人公の拠点。
    • 詳細のわからない装備の鑑定や魔法薬の調合、魔法植物の栽培、捕まえた魔法生物の飼育といったゲームを進めるうえでの機能をほぼカバーでき、家具なども自由に配置できる。

装備

  • 装備はメインウェポンとなる杖と服などの身体装備に分類される。装備によって外見も変化する。性能を変えずに外見だけ変更することも可能。
    • 杖本体は最初に選んだもので固定。身体装備は手袋・帽子・メガネ・服・マント&ローブ・靴の6種類。前者3種は攻撃力、後者3種は防御力に補正がかかる。
    • 身体装備は初期所持のスタンダードを除き、上等・極上・非凡・伝説の4段階のレアリティがある。装備自体のレベルとレアリティに応じて性能も高くなる。
    • 中盤以降は魔法の織機で、基本能力を上乗せするップグレードと特定の戦闘効果を強化する特性の付与が可能。
      • ただし、強化できるのはレアリティが極上以上のものに限られる。
    • 杖は柄のカスタマイズが可能(性能は変わらない)。

魔法

  • 原作(および映画)に登場する数10種類に及ぶ呪文が使用可能。基本はパレットにセットして使用する。
    • 作品の性格上、戦闘時と非戦闘時とも使用制限はほとんどなく、一部を除きどちらの局面でも使用可能。効果もゲーム向けにアレンジされているが、概ね原作通りとなっている。
    • 魔法パレットは初期で1つ。後述の才能ポイントを使うことで最大4つ使用可能。
    • 戦闘時はリキャストタイムがあり連発できないが、非戦闘時はすべての呪文でリキャストタイムがなく連発が可能。
    • 習得は「先生や友達に教えてもらう」といった原作ならではの形式となっている。なお習得はシナリオ進行に必須のもの以外は任意。
  • 魔法にはパレットにセットされない「必須」、戦闘に使われない「万能」「変身術」を除けば「制御」「強制」「攻撃」「許されざる呪文」の4種類(色)があり、戦闘では「どの敵にどのカテゴリ・呪文で弱点をつけるか」を考えるのも重要。
+ 魔法一覧。長くなるので格納

制御魔法

  • 主に対象の動きを止めたりする魔法。
    • アレスト・モメンタム
      • 対象の動きを遅くする。
    • グレイシアス
      • 対象を凍り付かせる。炎を消すことも可能。凍った敵は次の一撃のみ防御力が大きく落ちる。
    • レヴィオーソ
      • 対象を一定時間浮遊させる。足場を浮遊させて高い場所に登るといった使い方もできる。
    • 変身術*1
      • 対象を別の姿に変化させる。

強制魔法

  • 対象を動かす魔法。
    • アクシオ
      • 対象を引き寄せる。攻撃ボタン長押しで継続可能で、通常のオブジェクトであればウィンガーディアム・レヴィオーサに派生可能。
    • デパルソ
      • 対象を吹き飛ばす。
    • ディセンド
      • 対象を地面にたたきつける。
    • フリペンド
      • 対象を上向け(仰向け)にひっくり返す。

攻撃魔法

  • 文字通り対象にダメージを与える呪文。戦闘でのメインダメージソースになるほか探索でも意外と使う。
    • インセンディオ
      • 対象を燃やす。燭台に火をつけたり蜘蛛の巣を燃やしたりと探索でも出番が多い。射程が短いのが欠点。
    • ディフィンド
      • 対象を切り裂く。
    • エクスペリアームス
      • 敵にダメージを与えつつ、武器を手放させて隙を生む。
    • ボンバーダ
      • 爆発を発生させる。大きな岩はこれでないと壊せない。
    • コンフリンゴ
      • 火球を飛ばして相手を燃やす。インセンディオより射程が長いが威力は劣る。

万能魔法

  • 主に探索で使用する魔法。便宜上、魔法生物が対象の魔法もこのカテゴリに属する。
    • 目くらましの術
      • 姿を隠し、探知されにくくなる。
    • ルーモス
      • 杖の先端に光を灯す。他の呪文を使ったり、もう一度使うと消える。
    • レパロ
      • オブジェクトを修復する。ただし何でも修復できるわけではない。
    • ウィンガーディアム・レヴィオーサ
      • 対象を浮遊させたまま移動させる。
    • 動物の飼料/撫でブラシ
      • 魔法生物の世話で使う。
    • 捕獲袋
      • 魔法生物を捕獲する。
      • 捕獲した魔法生物はインベントリに入り、「必要の部屋」内のアトリウムで世話することができる。

変身術

  • 必要の部屋のカスタマイズに使う魔法。それゆえ必要の部屋以外では使用不可能。
    • 出現呪文
      • ムーンストーンを消費して家具などを出す。
    • 変化呪文
      • 家具などの色・タイプを変える。
    • エバネスコ
      • 家具を消し、ムーンストーンに還元する。

許されざる呪文

  • 使用禁止レベルの凶悪な魔法。それゆえ戦闘中、敵に対してのみ使用可能。
    • インペリオ
      • 一時的に敵を操り、同士討ちさせる。
      • 呪い状態により防御力は下がるが、他の敵に対する防御力がは上がる。
    • クルーシオ
      • 敵にスリップダメージを与え呪い状態で防御力を下げる。更に一部を除く敵は苦痛で動けなくなる。
    • アバダ・ケダブラ
      • もはや説明不要、敵を即死させる。ただし、一部のボス敵を倒すことはできず、クールタイムも長い。

必須魔法

  • パレットにセットせず、固有のコマンド・状況で使用する魔法。
    • レベリオ
      • 一定時間、周囲の敵や干渉可能なオブジェクトをハイライトする。感覚は『ASSASSIN'S CREED ORIGINS』などのアニムスパルスに近い。
    • プロテゴ
      • 自身の周囲に障壁を張る。持続時間が短く、防げない攻撃も存在する。
    • ステューピファイ
      • プロテゴからの派生攻撃。ダメージはないが、一時的に敵をマヒさせて防御力を落とす。
    • ペトリフィカス・トタルス
      • 気づかれずに接近した敵に即死級の大ダメージを与える。あくまでダメージなので、体力の高い敵は倒しきれないことも。
    • アロホモラ
      • 鍵を開ける。この魔法のみ最大で3のレベルがあり、習得レベル以下の鍵しか開けられない。
    • 基礎呪文
      • 通常ショットにあたる呪文。威力が低いが通常・戦闘時双方で連射が可能な唯一の魔法。
    • 古代魔術
      • 戦闘中のみ使用可能な、主人公の必殺技の位置づけになる大技。
      • 使用には敵の攻撃を当てることで貯まっていく古代魔術ゲージを1本消費する。ゲージは初期値が2本、最大で5本となる。
      • 敵に雷を落としたり思い切り振り回して叩きつけるといった派手な効果が多い。
    • 古代魔術の投てき
      • こちらも戦闘中のみ使用可能。樽などのオブジェクトを敵にぶつける。
      • 古代魔術ゲージは消費しない代わりに、周囲に投げられるものがないと使用できない。

才能

  • いわゆるスキル。レベルが上がるごとに入手できる才能ポイントを消費して、魔法の効果拡張や追加魔法パレットの解禁といった強化が可能。レベルに応じてより上位のスキルが解禁されていく。

評価点

自由な探索と原作再現

  • 前述のようにオープンワールドで再現されたホグワーツと周辺の村々を自由に探索できる。
    • ホグワーツは原作の構造をほぼ完全再現。マップ無しでは一瞬で迷子になるレベルの複雑怪奇な構造に加え、動く階段など原作通りの仕掛けや謎解きも満載。
      • 難易度も少し頭を捻ればクリアできるものから、本腰を入れて考えないと解けないようなものまで様々。
    • 箒に乗ったり、魔法の授業を受けたり、クラスメイトと仲良くしたりと憧れの学園生活を送れる。原作ファンなら一度は夢見たホグワーツの学園生活を楽しめる。
    • 選択次第では原作でも描写されていないハッフルパフの寮にも入れる。
    • 昼間は多くの生徒が雑談に興じていたり魔法の練習に励む光景が見られる。夜も夜でゴースト達が思い思いに生活しており、探索していて飽きることがない。
    • 自動で動く物や建物、映画でお馴染みの動く肖像画など魔法の世界の再現も評価される。
  • ホグズミードや禁じられた森、ホグズミード駅などホグワーツ以外のスポットも抜かりはない。
    • ホグズミードの店は概ね原作と同じだが、やはり店主が原作の人物の先祖だったりといった違いがあり、ファンなら原作と比較して楽しむのも一興。
    • 前述のように箒やヒッポグリフに乗って空中探索も可能。基本的に屋外であれば使用に制限がほとんどないので、一部の謎解きを箒で強引にクリアしたり戦闘から逃げるといった芸当もできる。
    • 他のオープンワールドのゲームと比べてもかなり広く、入れる建物も多い。
  • 雰囲気ゲーとしては文句無しであり、発売前の時点でも「シリーズファンにとっては極論これだけでも買う価値がある」と言われていた

サイドクエスト・人間関係クエスト

  • クラスメイトの悩みや相談を聞いて助けたり、協力したり、または村の魔法使いの頼みを聞いたりと実に多種多彩。
  • 動物や密猟者の討伐や洞窟・宝の探索、クラスメイトとゲームに対戦できる。
  • 箒のレースは負けてもクリアしたことにできるため、レースゲームが苦手な人でもクリアできる。

多彩な立ち回りが楽しめる魔法戦闘

  • 正面から魔法戦を挑むもよし、目くらましの術&ペトリフィカス・トタルスでアサシンばりのステルスキルを決めていくもよしとプレイヤー次第で様々な戦略がとれる。
    • ステルスで数を減らし、アバダ・ケダブラで強敵を仕留め、様々な魔法を駆使して敵を蹴散らしていけば気分は魔法使い。
      • マンドレイクなどの魔法植物や魔法薬など補助手段も豊富で、使いこなせればさらに楽になる。
    • 魔法も組み合わせ次第で高いシナジーを発揮するものもあり、自分だけのオリジナルコンボを作る楽しみもある。アクシオで相手を引き寄せてからのインセンディオなどは鉄板ともいえるコンボ。
    • もちろんごり押しで突破するのもあり。敵の攻撃には明確な予備動作があり、すぐに回避モーションや防御呪文を使用すればノーダメージで突破できる。
      • また、防御や回避はこちらが攻撃モーション中であっても即座に発動させることができる。そのため、理不尽にダメージを喰らうことも少ない。
    • 魔法での戦闘というかなりオリジナリティの高い部分も評価の1つである。
  • 敵も魔法使いなので強力な呪文を撃ってきたり障壁を張ってこちらの魔法を弾いたりと一筋縄ではいかない。いかに相手の呪文を捌き、障壁を打ち破ってダメージを与えるかが腕の見せ所。
    • 敵の障壁は色に応じた魔法でないと破れない。例えば紫色の障壁はアクシオなど強制系の呪文、黄色の障壁はグレイシアスなど制御系の呪文を当てることで打ち破れる。
    • 一方で敵によって明確な弱点が設定されており、弱点を突くことで大ダメージを与えることも可能。例えば、魔法の発動中にエクスペリアームスで杖を手放させると術を制御できなくなって自滅する、といった具合。
      • 最初は苦戦した敵も使う魔法を考えれば楽に勝てるようになるので、自身の上達も実感できる。
  • 一部のクエストではNPCが同行して一緒に戦ってくれる。
    • AIもそこそこ優秀で、一部のイベントを除き基本はプレイヤーの行動に追従するので暴走されてフォローに回らされるといったことも少ない。

原作を壊さないキャラクター描写

  • ストーリーはオリジナルだが、総じて原作の雰囲気を壊さないように描写されており、原作既読者も違和感なく楽しめる。
  • 原作で言及されていた「ゴブリンの反乱」という原作の下地に当たるエピソードの一部を取り上げた映像化という部分だけでも評価できる内容である。
    • 主人公も(冒険好きでよく抜け出すものの)基本は人当たりの良い優等生なので嫌悪感も抱きにくい。
  • 原作キャラの祖先などが登場して、ニヤリとできる部分も多い。
    • 日本人魔女と日本のクィディッチチームの「トヨハシ・テング」のことが登場したりと、日本人読者には嬉しい要素もしれ っと仕込まれている。

膨大な探索要素

  • コレクション要素として各地のスポット解説やエネミー図鑑などがあり、数も膨大。コンプするには文字通りホグワーツの裏の裏まで知り尽くす必要があり、やり込み要素としても充分。
  • メイン以外にも各地で様々なサブクエストがあり、報酬として新しい呪文を覚えられたりするので、こなしていけばより探索の幅が広がる。
  • 服装もカッコイイ魔法使いの服装やホグワーツの制服から面白い格好など様々。
    • カッコ悪い服が嫌という人には性能を保ったまま見た目を手に入れたことのある服装に変更できる。

賛否両論点

原作のキャラクターは登場しない

  • 前述のように原作の100年前を舞台にしているため、原作のキャラクターはほとんど登場しない。
    • 例外は原作では肖像画として登場していた校長・フィニアス・ナイジェラス・ブラックとほとんど首無しニックや魔法史教授のカスバート・ビンズ、ピーブズといったゴーストぐらいである。
    • 原作との辻褄合わせに縛られずゲームとしての自由度を担保できることや、原作に詳しくなくても楽しみやすいという利点とトレードオフではある。
    • だが、やはりハリー達と一緒に冒険したかったと思うのも人情だろう。もっとも、原作に準拠した『ハリー・ポッター』のゲームは既に何作も出ているが。

主人公

  • 主人公は選択次第で歴史に名が残っておかしくない魔法使いであるが、その後の魔法史には関わらない。
    • ゲームオリジナル主人公にはよくあることではあるし、設定と照らし合わせて歴史の闇に葬られたなど、想像の余地を見ることもできるが。
  • ゲーム的な都合によるものではあるが、学校外にいる闇の魔法使いや小鬼達に対して明確に殺意を抱いて攻撃しているのも評価が分かれている。
    • アバダケダブラなど禁じられた呪文の使用は任意であり習得はプレイヤーの意思によるものだが、通常呪文の中にも燃やしたり相手を物に変化させて*2壊したりなど明らかに殺す気でやってる物がいくつかある。
    • 勝利後のセリフも倒した相手を気遣う様な物はなく、年齢の割に覚悟が決まり過ぎており、特に「全部ランロクのせいだからね」というセリフは疑問符を浮かべやすい
    • 同じく命を狙われていたハリーと比べ好戦的過ぎる*3。時代的に現代より殺伐としていたが故か。

問題点

取り返しのつかない要素が多め

  • 近年のRPGとしては珍しく、取り返しのつかない要素が多い。
    • 最初の寮の選択では、当然ながら自分が所属する寮以外には入れなくなるほか、所属寮によって発生するクエストが異なる。
      • その寮についても原作再現により、女子は男子の部屋に入ることが可能だがその逆はできない*4ため、全部の部屋を回るなら必然的にキャラメイク時に女子を選択せざるを得なくなる。言うまでもないがプレイ中性転換する魔法などはない。
      • さらに、特定クエストクリア時のトロフィー/実績が所属寮によって分けられているため、コンプリートするには最低4回プレイする必要がある。
    • 才能ポイントは最大入手ポイントが36ポイントに対し覚えられる才能が48種となっているうえに後からの振り直しも不可なので、不要なものを慎重に見極めて切り捨てる必要がある。
    • 選択次第ではNPCがいなくなってしまい魔法を習得できなくなるケースもある。
      • 該当するのがアバダ・ケダブラなどの許されざる呪文。原作的には覚えないのが正しいのだが、覚えればゲームの難易度が下がるのが悩みどころ*5
    • 一部のダンジョンは1度限りで、クリアすると2度と入れなくなる。
      • 文字通り取り返しのつかないアイテムがほぼないのが救いではあるが。
  • そして、2023年5月時点で周回プレイ系のシステムは実装されておらず、そのデータで回収できない要素を回収するには一からやり直すしかない。

マップが使いづらい

  • 本作のマップは大きくホグワーツ、ホグズミード、それ以外のワールドマップに分かれているが、肝心のホグワーツとワールドマップが使いづらい。
    • ワールドマップはクォータービューのうえ回転ができず、死角になる部分の地形が確認しづらい。マーキングもできないため、気になった場所があっても忘れてしまいたどり着けないことも。
    • ホグワーツは回転や拡大・縮小はできるもののファストトラベルポイントなどの位置しか確認できず、内部の構造が全く分からないためポイントとの距離感も掴みづらい。
    • 一見目的地のそばにあるように見えるポイントに飛んでも、大回りさせられて他のポイントの前を通る、ということも起こる。
      • さらに、任意の場所へのウェイポイント設定もできないので、クエストなどの目的地になっていない限り自力で探索して見つけ出す必要がある。
      • 箒等の乗り物に乗ると道のナビゲーションが消えてしまう。下記のように乗り物での侵入制限があるため乗り物での最短ルートが分からない。
    • 逆に各地にあるダンジョンではミニマップしか確認できず、全体が確認できない。
  • 箒等の移動が制限される。
    • ダンジョン内やホグズミードなど、一部の区域では箒に乗れない。特にホグズミードは走る以外の高速移動がなく不便。
    • また、マップ南東部は徒歩で鉱山を突破する必要があり、箒では到達できない。

インベントリの少なさ

  • 後述の金策にも直結するが、装備の所持上限が初期で20個とかなり少ないため、ダンジョン探索を行うと事前に整理していてもあっという間に上限に達する。予備のインベントリもないので、自分が持っているものが全てとなる。
    • マップのマーリンの試練を一定数クリアするごとに上限が拡張できるが、それでも最大40個と少なめ。

アイテム売却制限による金策のしづらさ

  • 本作で売れるアイテムは装備と捕まえた魔法生物のみ。序盤からコンスタントに入手できる素材や魔法薬は一切売却できないうえ、敵からのドロップや拾えるお金は雀の涙。
    • その一方でレシピの入手にはそれなりの金額が要求されるため、序盤~中盤は金欠にあえぐことになる。装備を売るにしても前述のインベントリの少なさとの相乗効果で頻繁な整理を要求される。
    • 目くらましの術を覚えればお金が入った宝箱を開けられるが、それらも1度限りであるため、中盤以降は密猟者も顔負けの魔法生物売却に手を染めることになる。
    • 難易度によっては道具が大量に余る。魔法薬や魔法植物の売買の方が魔法使いらしいのに何故しないのか。
    • サイドクエスト「勝手なビジネス」で自分の店を持てるのだが、装備の売却金額が高いだけで道具が売却できるわけでもない。

バグ・不具合

  • この手のゲームでは恒例行事だが、バグ・不具合がかなり多い。
    • 中にはアップデートによってクエスト進行が不可能になったものもある。

Win版の最適化不足

  • 本作のWin版は、2023年基準でかなりの重量級。Denuvo DRMによる負荷の増加や、VRAMにパフォーマンスがかなり左右される。
    • 特にNvidia系GPUでは影響が躊躇で、特定場面では比較的安価なRTX 3060 12GBモデルが、高価なRTX 3080 10GBのパフォーマンスを上回るほど。
      • AMDハードウェアのPS5/XSX向けに開発されたタイトルであるが故*6、全体的にRadeon系GPUに向けて最適化が行われており、近い性能のNvidia GPUとAMD GPU(例: RTX 3070とRX 6700 XT)では、VRAMの影響もありAMDのほうが快適に動きやすい。
  • スペックにも寄るが、シェーダーキャッシュの問題故スタッターも結構な頻度で発生し、人によっては不快感を感じることも。
    • また、スペックが微妙に足りていないハードウェアで、PS4相当のGTX 750 Tiなどではfpsは安定して出ても画面の表示が崩壊してゲームにならないユーザーも多かった。
      • 一部の問題は度重なるアップデートによって改善されてはいるが、それでも本作の高い要求スペックに注意は必要。
  • ハードウェア次第では、ゲームを起動する度に「シェーダーを準備中」というロード画面が1~2分ほど表示されてしまう。しかも「ハードのカタログスペックが高ければそうはならない」というわけでもないのが困りどころ*7

Nintendo Switch版の問題点

  • 大幅な解像度の劣化。オブジェクトの表面がざらついて見えるほど。
  • フィールドはエリア制。シームレスな移動が出来ず、エリアの切り替えには長めのロードが入る。
    • シームレスでないだけで、移動に制限がかかっていたりフィールドが狭いというわけではない。
  • 音声は英語しか収録されておらず、他の言語(日本語を含む)の音声に切り替えたい場合は別途ストアから言語パックのダウンロードが必要(無料)。

原作再現できていない部分

  • 上記のように全体としてはかなり原作の要素を再現していると言える作品ではあるが、再現できていない部分もありがっかりとしたという意見も聞かれる。
  • 原作でもトップクラスに有名な呪文である「エクスペクトパトローナム」が使えないことは嘆くユーザーが多い。
    • パトローナムチャームが有効な魔法生物としてレシフォールドが存在しており、ディメンターが出せないにしてもそちらを出す事は可能だっただろう。
  • 原作では多くの恋愛要素があったため、恋愛要素も期待されたがそれもない。
    • 今の時代、恋愛要素はLGBTなどの観点で難しいのかもしれないが…。
  • 魔法の授業もゲーム故に一回出れば終了であり、魔法学園生活の体験としては物足りない部分もある。
  • 単独でゲーム化もされているクィディッチは「負傷者が出た」という理由で中止されており、残念ながらプレイすることはできない。
    • 本作のクィディッチ未収録は発売前からアナウンスされており、マップには原作由来の競技場や箒に乗ってちょっとしたミニゲームも楽しめることから何らかの事情で収録を断念したのではないかと推測されている。
    • ポートキー・ゲームズもこの点については気にしていたのか、レーベルの次作としてクイディッチに特化した『ハリー・ポッター:クィディッチ・チャンピオンズ』を2024年9月に発売することとなった。

やや善プレイが不遇

  • 悪性ロールプレイ向きの「許されざる呪文」はどれも強力だが、善プレイにそれを補える強力な呪文ない。
    • ゲーム上は使ったからといって特にペナルティもないので、一種の縛りプレイとなる。

一部面倒くさい部分

  • アロホモラの鍵解除は少々コツのいる解除方法で面倒くさい。しかもフィールド全域の無数にあるためプレイ時間の増加に繋がる。
  • クエストの連続呪文の練習はやや入力時間制限が厳しくなっている。
    • 上記2つは最低難易度の「ストーリー」に変更することでスキップできるようになったが、毎回難易度を変更するのも面倒。

総評

オリジナルながら原作を壊さない王道ストーリーと、ファンなら一度は夢見るであろう魔法界での冒険を楽しめる。
問題点はあるものの歯ごたえのある戦闘や謎解きなど純粋なゲームとしての出来も充分以上。
原作未読の人も原作ファンも十二分に楽しめるだろう。


余談

  • 本作発売と前後して『ハリー・ポッター』シリーズと(ネット上の)薩摩藩ネタが融合を果たした「薩摩ホグワーツ」なる概念が生まれ、ネットミームとなった。
  • 『ハリー・ポッター』原作者J・K・ローリング氏のトランスジェンダーへの批判的な発言に端を発した論争が当作にも飛び火。これに関連し、当作をボイコットする活動も一部に存在した*8
    • 発売後、「WIRED」には、原作者と開発陣の悪口をひたすら書き連ね、肝心のゲーム内容についてはほとんど触れないという、レビューとしては本末転倒な記事が掲載された。
    • RTAイベント『Games Done Quick』は当作を含む『ハリー・ポッター』関連ゲームのRTAを禁止したが、原作者の発言や論争を受けた対応と見られている。
    • 実は、本作にはトランスジェンダーと思われるキャラクター(ライアン)が序盤から登場する。ライアンを担当する声優もトランス女性で、ライアンは『ハリー・ポッター』フランチャイズ全体でも史上初のトランスジェンダーの登場人物である。原作者は本ゲームに関わっていないとされるが、これもその証なのかもしれない。
  • 本作は買い切り型のAAAタイトルとして世界中で大ヒットしたのだが、発売元のワーナーにとっては不満があったようで、今後はライブサービス型のモバイルゲームに力を入れると明言している(参照)。

その後の展開

  • 当初の予定ではPS4/One版も発売予定だったが、延期を重ね最終的に約3か月遅れとなる2023年5月3日に発売された。
    • その後、2023年11月14日にはSwitch版も発売された。
    • その後、2025年6月5日にはSwitch2版がローンチタイトルとして発売予定。
  • 移植担当を行ったShiver Entertainment, Inc.はその後2024年5月21に任天堂が全株種を取得し、以後任天堂の完全子会社となった。
    • 健全なファミリー向けとしてのイメージで定着している任天堂が、CERO:C(15歳以上対象)以上の作品などを手掛けるアメリカのソフトウェア会社を子会社化するのは非常に珍しい。
    • なお、任天堂グループに入ってもSwitchを始めとした複数のプラットフォーム向けに移植及び開発業務を行う方針の模様。
最終更新:2025年04月09日 21:38

*1 魔法カテゴリの変身術とは別物。

*2 レベル上昇で爆薬の詰まったタルに変える様になる。

*3 ハリー自身はアバダケダブラを使っても人を殺せる程の殺意を持てなかった。

*4 男子が女子部屋に続く階段を上ろうとすると、レイブンクロー以外では階段の段差が閉じて斜面と化して強制的に滑り落され、レイブンクローでは階段入口の甲冑が通せんぼしてくる。

*5 人に対しての使用が重罪であるとされた呪文を指す。相手を支配下に置く「インペリオ」と、苦しみを与える「クルーシオ」に、即座に命を奪う「アバダ・ケダブラ」の3つ。原作でもすでに使用が禁じられていたが後に特例が設けられるようになった経緯がある。

*6 PS5/XSXともにAMDのZen2/RDNA2 APUを採用している。

*7 筆者の環境では、そこそこ高性能なRTX2080ti搭載のデスクトップPCで毎回2分ほど待たされたのだが、どういうわけかスペック的にはそれより格段に低いモバイル用GPUであるRadeon 680M搭載の小型ゲーミングPCでプレイしたところ、このロード画面は2回目以降の起動では発生しなかった。

*8 欧米にはローリング氏への反発から、原作者であるにもかかわらず徹底的に嫌悪している常軌を逸したファンも少なからず存在している。