マサラドライブ
【まさらどらいぶ】
ジャンル
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レース
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売・開発元
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ハッピーミール
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発売日
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2023年8月31日
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定価
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500円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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IARC:3+
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判定
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良作
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怪作
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ポイント
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徹底的に拘りぬいた「マサラ」 常時目に突き刺さるサイケデリック「マサラ」なグラフィック
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概要
80年代のゲームセンターを彷彿とさせるエレメカ風のレースゲーム。
2017年に無料で配信された(現在は配信停止)スマホ用ゲームの移植作で、インドを舞台に多くの乗客をバスに乗せてゴールを目指す。
タイトルにある「マサラ」とはインドで使われるミックススパイスの総称だが、そこから転じて極彩色で多種多様な文化を織り交ぜたインド文化を表現する言葉として定着している言葉でもある。本作はその意味の通り、マサラ色溢れるグラフィック表現やBGMを特徴としている。
特徴
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プレイヤーはバスを左右に操りながら、何故か公道の真ん中で待つ乗客を拾いながらゴールを目指す。
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インドのバスと言えば、外にあふれるほどの乗客の過剰乗車で有名で、それに沿うかのように乗客数の目標達成には毎ステージ100人以上の客を乗せる必要がある。乗客の中には羊、豚、鶏もいる。
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乗客数は単なるスコアに留まらず、新規客を特定人数集めることにより「マサラボーナス」としてガネーシャ像が出現する。これを拾うことで無敵のチャクラパワーで一定時間爆走する「マサラターボ」が使用可能となるため、タイムアタックはもちろん通常クリアを目指す場合も重要なファクターとなる。
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基本的に客は公道でバスを待つが、道路脇にバス停(というかベンチ)が存在し、そこでは大量の乗客を乗せることができる。
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当然公道には他車や自転車などの障害物が存在し、それにぶつかると乗せた乗客がバスから振り落とされてしまう。しかし、再びその乗客に触れることで再乗車させられる。
あまりにタフすぎる。
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クラクションを鳴らすことで減速しながら他の車両に車線変更を促せる他、マサラターボ中は他車にぶつかっても減速せず乗客も無事なまま突き進める。
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障害物の中でも牛にぶつかると一発でゲームオーバー、しかもマサラターボ中でもNG。これはインドにおいて、牛はシヴァの乗り物「ナンディ」として神聖視されているからである。
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ゲームオーバー時も牛を轢いてしまって…ではなく、牛が強調されてバスが弾き飛ばされるという演出になる。
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いきなり牛が現れるわけではなく、事前にブッダアイを描いた手の平が警告してくれる。
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燃料の概念があり、公道に落ちている燃料を拾って補給する。途中で燃料が0%になってもゲームオーバー。
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メインモードの「インドの旅」ではインド東部のコルカタから始まり、ニューデリーを経由して最終的には南インドのバンガロールを目指す、全9ステージから成る。
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前述の乗客数ノルマの他、一度も事故を起こさずゴールすること、そしてコースには何故かカレーが落ちているので7つ全て集めることがそれぞれアンロックの条件になっている。
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アンロック条件の達成数に応じて、スタート時にマサラターボが使用可能になる、カスタマイズ要素が解禁されるなどの特典が得られる。
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ゴールがなくひたすら走り続けるエンドレスモードも用意されている。ここではマサラターボなしで他車や障害物にぶつかってしまってもゲームオーバーとなるので、ノーミスでどれだけ乗客を多く乗せられたかを競う。
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「ある週末の日」と題されたミニゲームも存在する。
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インドでポピュラーな球技であるクリケットをプレイできるが、内容はバッターを左右に動かし投げられるボールを打つという、ピンボールに近いもの。
評価点
徹底的に拘りぬいた「マサラ」
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タイトル画面を始めグラフィックは極彩色豊かな色調表現で統一されており、否が応でもインドマサラの世界に浸ることができる。
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所々にヒンディー語が併記されていたり、数字フォントの後ろにインド数字が重なっていたりとUIにもインド要素が散りばめられている。もちろんこれらが読めなくとも支障は一切ない。
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BGMも徹底してインド映画風の楽曲や、インド発祥の「ゴアトランス」を採用している。
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ラストステージ「バンガロール」ではタイトルBGMがステージBGMに採用されているという胸熱な要素も。
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モノラル再生ではあるが、それもまた味である。
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各ステージは端的にインドの街の特徴を表現している。
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ガンジス川の麓なので左右のフレームで川が流れているバラナシ、首都故に人口(道路に散らばる乗客)が多いニューデリー、ピンクシティの異名があるためピンク色で統一されているジャイプール、国際空港があることから飛行機が視界を邪魔するギミックがあるムンバイ…といった具合。
快適な操作性
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元々スマホゲーだったこともあり操作はシンプルで、ハンドル操作とクラクション兼ブレーキ、そしてマサラターボのみ。
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インディーズソフトに有りがちな「レスポンスの良くない操作性」という欠点は存在せず、操作性は良好。
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それどころか「スティックを上に入れながら左右に振ると細かいハンドル操作ができる」という細かい気遣いも。
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素早くハンドリングすることで路肩に出ても減速しないテクニック「マサラスライド」も搭載。
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結果的に「路肩の客をマサラスライドで減速せず集客し、ガネーシャ像を効率よく集め、マサラターボでタイムを競う」という見た目のハジケっぷりに反して硬派なタイムアタックが楽しめるというゲーム性になっている。
爽快感溢れるマサラターボ
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座禅のオーラを纏いながら疾走するマサラターボはそのスピードも相俟って爽快感抜群。
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一般車や障害物は到底避けきれないほどのスピードが出るが、使用中は無敵状態になりノーダメージで弾き飛ばせるため問題ない。
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もちろん路肩でもダッシュできるため、加速中は全力で蛇行して乗客を拾い集めていくのがセオリーとなる。当然この時に触れた障害物は牛と電車以外全て蹴散らしていくので豪快そのもの。
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あるテクニックを使うとマサラターボの持続時間を更に延ばす事が可能。タイムアタックでは欠かせない一方で、無敵時間は延びないので無事故狙いの時に迂闊に使うと速度が乗ったまま無敵状態が解除されて失敗しやすくなる一面も。
その他
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画面の向きを変えられる
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元々スマホゲーだけあり縦長画面となっているが、テーブルモードを想定してか設定で画面の向きを90°回転させることも可能。
スタンドの向き?気にするな
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ゲーム画面外のフレームのデザインも余すことなくマサラ全開。
問題点
あまり目に良くない
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評価点の欄でも述べたグラフィックであるが、サイケデリックな色合いのため長時間見るには少々キツい色使いである。
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アイテム類の視認性は良好だが、道路に広く点在する乗客は位置と色合いによってはパッと見で気付きにくいことも。
高めの難易度
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障害物である他車や自転車などの出現にランダム性があり、「カレーを取ろうとしたら自転車にぶつかった」などの事故が多々ある。
事前に知らせてくれるとはいえ、当たれば一発ゲームオーバーの牛の存在はやはり辛い。
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「アグラ」には牛の他に当たると一発アウトの電車が登場するのだが、電車に当たると一発アウトという説明がゲーム中で一切ない。
このため電車は聖なる生き物というスラングがプレイヤーの一部で広まっている。
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上記の問題から隠し要素のアンロック条件である「ステージ内でカレーを7つ集める」「一度もぶつからずゴール」「規定数の客を乗せてゴール」の達成難易度を上げている。
一部カスタマイズの性能差がノーヒント
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アンロック要素でもある内装のカスタマイズのうち、ハンドルは横移動速度が、バス外観は最高速度が変化するようになっている。しかしゲーム中にそれらの説明はなく、性能差を知るには実際に使って比べるしかない。
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ゲームシステムのシンプルさ故に、比較そのものは至って容易。
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ハンドルはともかくバスの種類に関してはデフォルトより速いものが「魔法の絨毯」だけで、中には遅すぎてほぼクリア不能になる車種もあるのでどちらかというとオマケ要素に近い。
総評
少々の問題はあれど、ここまで「インド」「マサラ」に特化したゲームは他に無い。ネタ偏重に見えてプレイ感覚も総じて快適。
BGMも相当数が収録されており、ゲームを中断してゴアトランスの世界に浸るのも一興。
価格も500円と安く、破格のコスパを誇る。マサラ文化に興味がある人におすすめである。
余談
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タイトル画面の象をクリックすると鳴く。意味は無いが。
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タイトル画面そのものがインパクト抜群だが、左上のアイコンをクリックすると登場演出をもう一度再生できる。
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言語設定を英語にするとタイトル画面のターバンを巻いたオッサンがサングラスをかける。こちらも意味は無い。
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ゲーム中のフォントはヒンディー語を模したデザインで統一されているため、一見インド製だと思ってしまうが、制作会社の「ハッピーミール」は日本の会社、つまり本作は日本製である。
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Switch版発売以前にスマホ版名義でサントラが発売されている。なお楽曲自体はスマホ版とSwitch版で同じ。
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Steam版はSwitch版に遅れて2024年7月1日に配信された。
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公式サイトにはTシャツやサウンドトラック等の関連グッズも取り扱っており、サントラの方はリモコンキー型USBメモリとかなり凝った形になっている。
最終更新:2024年07月14日 20:26