レインボーシックス ベガス

【れいんぼーしっくす べがす】

ジャンル FPS

対応機種 Xbox 360
Windows
プレイステーション3
発売元 ユービーアイソフト
開発元 ユービーアイソフト モントリオール・スタジオ
発売日 【360】2006年11月22日
【Win】2006年11月28日
【PS3】2007年6月26日
レーティング CERO:D(17才以上対象)
判定 良作
廉価版 【360】プラチナコレクション
 2008年3月6日/2,940円
【PS3】PLAYSTATION 3 the Best
 2008年4月24日/3,080円
【PS3】UBI the BEST*1
 2015年8月20日/2,980円
ポイント 武装集団がラスベガスを占拠
前作のシステムを大幅改善
展開もよりドラマチックに
心強くなった味方チーム
トム・クランシーシリーズ


ストーリー


2010年7月2日 メキシコ合衆国 サン・ジョシュア・デル・モスキエラ

メキシコ国境に位置する街で、7年前にコロンビアのフランス大使館を爆破したテロリスト集団の首領イレーナ・モラレスの所在が確認された。

国際的特殊部隊「レインボー」は直ちにモラレスの逮捕を決定し、実行部隊としてアルファチームのローガン・ケラー、ガブリエル・ノワック、カン・アカハシの3名が現場に急行。

しかしモラレスの仕掛けた罠に嵌り、ローガンは瓦礫によって負傷、ガブリエルとカンは無力化され、テロリストにより拉致されてしまった。

辛うじて脱出したローガンは捕らえられた仲間の救出に向かおうとするも、レインボーの新たな指揮官「シックス」ことドミンゴ・チャベスは彼に別の任務を与える。

その任務とは、モラレス逮捕作戦中に突如発生したテロリスト集団によるラスベガスの襲撃事件の解決だった。


ラスベガスに到着し、ブラボーチームのマイケル・ウォルタージャン・パクと合流したローガンは、カジノに立て籠もるテロリストの掃討を開始。

過酷な銃撃戦を潜り抜け次々と人質を解放していくレインボーだったが、次第に不可解なラスベガス襲撃の裏に隠されたある陰謀が明るみとなっていく…


概要

同名小説を題材とした、特殊部隊による屋内突入作戦をリアルに描くタクティカルシューター『Rainbow Six』シリーズのメイン第5作目*2
前作『Rainbow Six: Lockdown』で大幅に変更されたシステムを引き継ぎ、プランニング要素を撤廃したリアルタイムの突入作戦を1隊員視点で描く。

開発は前作のRed Storm Entertainmentに代わり、『Rainbow Six 3』の開発・移植に携わったUbisoft Montrealが担当。
エンジンは新たにUnreal Engine 3に移行し、グラフィックや物理演算が大幅に強化された。


ゲームシステム

基本操作

  • ほぼ一撃即死だった過去シリーズやHP制だった前作とは異なり、自動回復制を採用。
    • 攻撃を短時間に連続で食らい続けると死亡するが、遮蔽物に隠れるなどして待機することで全快する。
    • ただし防げるのは銃弾だけで、手榴弾やロケット砲などの爆風を浴びると一撃死することも。
    • 攻撃を食らってダメージを受けている際は視界が歪み、正確な射撃を行うのが難しくなる。
  • 操作方法は概ね前作と同様で、右クリックにカバーアクションが割り当てられた都合でADS操作が右クリックからマウス3に変更されている。
    • いくつか限定的な場面で使用可能なアクションも増えており、フックを使ったラベリング降下やドアの下から差し込んで内側を覗く「スネークカム」といったものが追加されている。
  • プレイヤーは基本的に3人小隊で行動し、互いに連携しながら進んでいく。
    • スペースキーを用いて仲間にドアの開錠や爆弾解除、突入などの指示出しを行うことができるほか、接近すれば自分で行うこともできる。
    • また、新たにタグ付けシステムが登場。突入前に「スネークカム」を差し込んで部屋の様子を確認し、屋内の敵にタグを付けることで突入時に味方に優先的に攻撃させることが出来るようになった。
  • 新たに「カバー」という概念が追加されており、壁や花壇などの遮蔽物に接近した状態で右クリックを押しているとカバー状態に移行する。
    • この状態に移行すると三人称視点へ切り替わり、周囲の状況がより広く確認可能。その状態から銃だけ出してブラインドファイア(低命中率)を行ったり、上方向や横方向に身を乗り出して射撃(高命中率)したりもできる。
    • 棒立ち状態で射撃を行うよりも安全な状態で敵を攻撃することができ、シビアな本作で生存率を上げるために必要な動作。

ゲーム進行

  • 全6章構成のFPS。各章は連続しており、ミッション選択要素は撤廃された。
    • ミッション開始前のムービーやブリーフィングテキストなどは廃止され、全てリアルタイムでHUDに表示されるシステムとなった。
  • 前作同様に綿密なプランニング要素は撤廃されており、作戦は現地での即時対応型。システムとしてはゴーストリコンシリーズに寄っている。
  • 道中はオートセーブ方式となっており、これによって難易度は前作よりもやや上昇。
    • 前作では可能だった無限ロードによる運頼みのごり押し突破が使えなくなり、きちんと偵察、タグ付け、味方への指示を徹底しないと先に進めないようになった。
  • 難易度はノーマルとリアリスティックの二種類。ノーマルモードは通常のFPSプレイヤーでも十分クリア可能なバランスだが、リアリスティックモードでは旧来の虹六古参ファンでも手こずるシビアな戦いを楽しめる。

武器・装備

  • プレイヤーはミッション中各所に配置されている装備品ボックスを利用して自分の武装を整えることができる。弾薬やグレネードの補給も可能。
    • 武器は装備品ボックスで変更するもののほか、新たにテロリストの使用しているものを鹵獲することも可能に。AUGやP90など、さまざまな武器を気軽に拾って持ち替えられるようになった。
    • 前作同様武器本体の他にカスタム要素もあり、スコープを装着したりサプレッサーを付けて音を出さないようにしたりといった好みのカスタマイズを施すことができる。
    • 味方チームの武装の変更は不可能となり、アサルトライフル一択(隠密指示状態ではサプレッサー付きサブマシンガンを装着)となった。
  • また、新たにプレイヤーの着用する防具もカスタマイズが可能となった。軽装備にして移動力を向上させたり、防護面積の多いものを着用して生存性を高めたりと実用性にも影響する。
    • これらはゲームを進めていくことでアンロックされ、見た目のバリエーションがだんだんと増えていく方式となっている。

味方チーム

  • プレイヤーの操作するローガン以外に2人の仲間が随伴し、待機・随伴の指示や隠密・攻撃の切り替えなどを命令して協力することができる。
    • また、任意の場所にクロスヘアを合わせて指示を飛ばすことで突撃させたり、退避させたりといった行動も可能。付近に遮蔽物がある場合は自動的にカバーに移行する。
    • ドアのある場所では突入指示を出すことができ、単にクリアリングを行う以外にも閃光弾や手榴弾を投げて敵を排除させるなどの命令ができる。
    • 味方NPCもプレイヤーと同じく自動回復制で、攻撃を食らってHPが無くなるとダウン状態に移行する。ダウン中は接近して薬剤を打ち込むことで復帰させられるが、死亡するとゲームオーバー。

評価点

大幅に向上したグラフィック

  • 前作で用いられていたUE2.0から変わり、本作ではUE3が採用された。これにより、主に光源などの表現力が大幅にアップ。
    • 現在からするとややエフェクトがキツすぎるきらいもあるものの、ラスベガスの煌びやかなカジノの雰囲気を再現することに成功しており、タイトルの名に恥じない豪華な表現を特長としている。
    • エンジンの変更に伴い、破壊表現も大幅に向上。飛び交う流れ弾がスロットマシンを粉砕し、ガラスを叩き割り、煙が宙を漂う。

歯ごたえのある戦略性の部分的復活

  • 「ヌルい」「戦略性がない」と不評だった前作の反省を活かし、自動回復や仲間の復活といったカジュアル要素を取り入れつつも全体的には高難度に仕上がっている。
    • プレイヤー個人で雑に突撃するようなプレイは許されず、前進するには状況の把握や仲間との連携が必須。スネークカムによる偵察&敵タグ付け機能も増え、屋内突入もより戦略的に実行できるよう変化している。
    • 任意セーブが撤回されオートセーブになったことで、成功するまで突撃を繰り返させる運頼みの肉壁戦法も封じられている。

賢いAIと頼れる仲間

  • 敵AIはきちんと連携行動やカバー動作が取れるようになっており、撃ち合いのそれっぽさはなかなかのもの。射撃だけでなくブラインドファイアによる牽制も行える。
    • 前作では厄介で無能だった味方NPCも大幅に賢く・タフに変更され、非常に頼もしい性能となった。プレイヤーの指示にも忠実で、連携行動もとりやすい。
  • 道中での会話シーンや得意分野の違いなどによって各仲間キャラの性格描写も掘り下げられるようになり、より感情移入しやすいようになっている。

楽しい武器選び

  • 新たに死亡したテロリストが落とした武器を拾って使うことができるようになり、武器選びの選択肢が大幅に広がった。
    • 初期装備であるSG552の武器の弾が切れそうになったので粗雑だが弾が入手しやすいAKを拾う…といった臨機応変な武器変更が可能となり、使用武器が適宜変わることで戦闘にもメリハリが生まれている。
    • 落ちている武器の種類も非常に豊富。全体的に敵勢力の組織規模が大きいのもあって、サブマシンガンから軽機関銃までさまざまな武器を拾うことができる。

臨場感と奥深さの増したストーリー

  • ムービーシーンやブリーフィングを撤廃し、全てリアルタイムで演出するようになったことで迫力が大幅に向上。
    • シナリオ部分も渦巻く陰謀や裏切り、全滅の危機、悲しい別れ、2勢力同士の頭脳戦などこれまでにない様々な展開が待ち受けており、プレイヤーを飽きさせない。

賛否両論点

マルチプレイのサポート不足

  • シングルプレイは高い評価を受けた一方で、マルチプレイのサポートに関しては従来のファンから失望の声を集めた。
    • いくつかの部分についてはパッチで改善されたものの、マルチプレイを遊ぶ上では重要なカスタムサーバー名機能やPing値表示は実装されなかった。
    • また、過去作では可能だったmodやカスタムマップの追加機能はなく、拡張性がないこともコミュニティの反発を生んだ。
    • もっとも、リードプラットフォームがPCではなく家庭用機のXbox360であることを考えると仕方ない部分ではある。

問題点

多すぎる防衛パート

  • ミッション中計4回の防衛パートが存在し、プレイヤーは爆弾解除などの作業中で無防備な仲間を襲撃してくるテロリストから守らなくてはならない。
    • 仲間が強くなったかわりに単独での戦闘はかなり難しいゲームバランスとなっている本作だが、そのせいで単独で迎撃しなければならない防衛戦はかなりの難易度。
    • 防衛パートで配置されている機関銃は一見救済措置のように見えるが、使用中は頭が丸見えのため使用すると逆に攻撃を食らいやすく不利。安定して突破するには、機関銃に頼らず遮蔽物に隠れて適宜応戦する必要がある。

解像度サポートの欠如

  • 家庭用機側に寄った内容のためPC版はやや配慮が行き届いておらず、ワイドスクリーン解像度に対応していない。
    • このため、グラフィックに関しては同時期のPCゲームと比較して劣るようになってしまっている。

続編前提のエンディング

  • 一応ラスベガスの襲撃は鎮圧し、更なる大事件の阻止には成功するものの、エンディング自体はやや消化不良のもの。本作終了時点では全ての疑問が解決するわけではない。
    • 本作で解決されなかった気になる真相は続編である『Vegas 2』で描かれた。

総評

開発体制とエンジンを変更し、不評だった前作のシステムはそのままに難易度や戦略性を大幅改善。
相変わらず虹六伝統のプランニング要素は復活しなかったものの、それとは異なる方向性に前作を昇華させることで新たなシリーズ展開に繋げることに成功した。

従来の「レインボーシックスらしさ」とは異なる新たな面白みを開拓できたことで、シリーズファンのみならず過去作に馴染みのない新規層も開拓。
批評的・売上的にも極めて良好な結果を残し、現在においても多くのファンからの支持を集める作品となっている。



余談

  • ラスベガス市長の抗議
    • ラスベガスのテロ事件を描いた本作の発売に際して、当時ラスベガス市長のオスカー・グッドマン氏が抗議を検討するという珍しい出来事が起こった。
    • 市長曰く本作は「誤った前提」に基づいており、「経済的に有害な可能性があり、言論の自由の対象ではないかもしれない」とし、発禁の可能性について示唆した。
    • 結局この妨害は実現することはなかったが*3、それから約10年後には同シリーズと世界観を共有する『ゴーストリコン ワイルドランズ』にて、今度はボリビア政府との国際問題に発展するという類似する出来事が起こった。
  • 移植
    • 本作はXbox360→PC→PS3の順に発売されている。このうち、後発のPS3版は当時UE3がPS3に対応していなかった都合でUE2.5が使用されている。
    • エンジン変更やスペックの低さといったハードの都合上、一部マップに変更が加えられている。
  • 続編
    • 本作から更に1年後の2008年には、ベガスシリーズの続編として『Rainbow Six: Vegas 2』が発売された。
    • 前作の前日譚~同時期のブラボーチームの動向を描く話となっており、本作では解決しなかったラスベガス襲撃事件の発端とその結末が描かれる。
  • PSP版
    • 北米のみ、PSP版として同名のタイトルが発売された。
    • ストーリー内容・システム共に本作とは異なり、拉致されたガブリエルとカンの救出に挑むふたりのレインボー隊員の活躍が描かれる。
    • 新たに操作キャラ切り替えシステムやHPシステムが復活しており、プレイ感覚も本編とはかなり異なる。
  • 「シックス」の交代
    • 一作目から永らくレインボー司令官「シックス」を務めていたジョン・クラークだが、本作より前に発売された外伝的リメイク作『Rainbow Six: Critical Hour』にてついに引退した。
    • 本作でクラークに代わって新たにシックスの名前を受け継いだのは、初代『Rainbow Six』から『Lockdown』までの主要メンバー・主人公を務めたドミンゴ・チャベス。
      残念ながら2012年にレインボーは一時解散し、2015年に『シージ』で組織が再結成された際はオーレリア・アルノットという別の人物がシックスの地位に就いている。再結成されたレインボーにチャベスは参加しておらず、その後の消息は不明。
最終更新:2025年03月10日 23:30

*1 本作と続編『2』のセット。

*2 スピンオフ含め12作目

*3 ラスベガスを舞台とした犯罪映画の数の多さを考えれば当然である