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アナザーガンダム(ガンダムシリーズ)

登録日:2011/12/06 Tue 23:53:23
更新日:2026/07/23 Thu 07:58:07
所要時間:約 14 分で読めます





『アナザーガンダム』とは、1994年の『機動武闘伝Gガンダム』以降に始まった、物語の舞台が宇宙世紀ではないガンダムシリーズの事を指す。



【概要】

「平成ガンダム」と呼ばれる事もあるが、平成以降も宇宙世紀を舞台とする『機動戦士ガンダムF91』や『機動戦士Vガンダム』、
機動戦士ガンダムUC』などが継続的に発表されており、区別としては適切とは言えないため、宇宙世紀シリーズと区分するためのものとして『アナザーガンダム』という呼称が生まれ定着することとなった。発祥は定かではない。

アナザーガンダムの歴史は、宇宙世紀と繋がらないパラレルだと認識されていたが(というか繋がっていないという前提でこの名称が生まれたのだが)、『∀ガンダム』にて黒歴史という設定が登場し、アナザーガンダムの時代設定も宇宙世紀と同様に∀の時代「正暦」に至るまでに含まれていることが判明した。
ただ、2015年開催のトークショー「「夜のG-レコ研究会 ~富野由悠季編~」によれば、∀ガンダム劇中の黒歴史もあの時代の黒歴史でしかないとの富野による発言もあり、他の時代はどうなっているかは現状不明である。

公式では明確な区分となる呼称が存在していなかったため、アナザーガンダムという名称はガンダムファンの間で完全に周知のものとして定着していたのだが、
2024年のガンダム45周年記念特番では、前述した『∀』なども含んだ広義のアナザーにあたる作品群が『オルタナティブシリーズ』と紹介された
それ以降公式としてはこちらの呼称でシリーズ展開しているのだが、あまりにも今更な命名であるが故、イマイチ浸透していない。
ちなみに理由としては海外展開を見越したもの。アナザーよりもオルタナティブの方が単語の意味としては適切だとか。

【作品の分類について】

概ね「平成三部作」「土6日5ガンダム」はアナザーガンダム/オルタナティブ作品とされ、これに対する大分類として『宇宙世紀』『SDガンダム』が確立されている。
しかし、「富野由悠季が手掛けて一応宇宙世紀と繋がっていると名言されている∀とGレコ」「そもそもガンダムを作中作と見做した現実と地続きの世界であるビルドシリー」に関しては、オルタナティブに含むかどうかも公式で意見が分かれる上、さらに分類問題として「正史と異なる宇宙世紀を描いた作品をどうするか」というのも絡んでくる。
先の特番では「∀、Gレコに加えビルドシリーズもオルタナティブシリーズである」とされたが、すぐに「ビルドはビルドシリーズ」とされた。
それでも「ビルドはオルタナティブの一部に含むか、UC・オルタナティブと並び独立したシリーズにするか」「∀とGレコは年号重視でオルタナティブにするか、世界観重視で宇宙世紀にするか」は公式ですら割れており、特にエクバでは「サンボルとGQuuuuuuXもオルタナティブ扱い」になっている。
ただサンボルとGQuuuuuuXは今までの作品と矛盾点が多くなりすぎる事から「宇宙世紀だけど分類はオルタナティブ」で扱うことはファンの中でも共通とはなっている。

また、ボンボンやガンダムエース発のオリジナル作品やパロディ漫画についても、宇宙世紀のパロディギャグ漫画である『機動戦士ガンダムさん』が2014年にアニメ化された『ガンダムさん』はオルタナティブとみなされることがある他、2025年に連載が始まった完全新規世界観の漫画『機動戦士ガンダムエイト』はオルタナティブシリーズに含まれると明言されている。
この他のオリジナル作品やパロディ作品(原作『ガンダムさん』、『機動戦士ガンダムALIVE』、『機動絶記ガンダムSEQUEL』、『アラサーOLハマーン様』など)は「宇宙世紀でもオルタナティブでもないその他の作品」として扱われる他、ガンプラを扱った作品であってもビルドファイターズ以前に展開された『模型戦士ガンプラビルダーズビギニングG』、実写作品である『ガンダムビルドリアル』はビルドシリーズとは別枠となる。

【特徴】

大まかな特徴・傾向としては、
  • 宇宙世紀(以下UC)以外の年号が使われた世界を舞台とする
  • 過去のガンダム作品を意識したキャラクターや設定が用意される
  • 作品間で世界観が独立しており年号が連続しない
  • ハッピーエンド、または救いのある結末を迎える
  • 上級職に就く女性が増加した現実を反映し、女性艦長や女性為政者等の登場頻度が増加している
  • ガンダムタイプとそうでない機体を区別する明確な定義が存在する
  • ガンダム以外の宇宙世紀に登場したMSをオマージュしたオリジナルMSが登場する
など。

ただし、『アナザーガンダム』と呼ばれる作品全てが当てはまるわけではなく、例外も存在する。

前述した通り富野由悠季が監督、脚本、主題歌の作詞等でガッツリ関わっている『∀ガンダム』や『Gのレコンギスタ』は、
年号こそ異なるが宇宙世紀の遠い未来という設定であり、ほとんど別の世界と化しているが世界観自体は同一である。

『SEED DESTINY』は『SEED』の続編であるため、同じ年号(C.E.)が連続して使われている。
その『SEED DESTINY』や『鉄血のオルフェンズ(第二期)』等は、戦争(戦乱)が終結したという意味合いでは(世界にとって)救いのある結末だが、
主人公の陣営・組織が敗北したり、壊滅しているなど、主人公やその関係者にとってはバッドエンドという印象が強い。

新しい時代設定を一から作り上げた上で世界観を構築しているのも特徴で、戦記物となっている既存の宇宙世紀ガンダムよりも新規獲得を目指している傾向がある。
その代表例として戦記物ではなく冒険物語を描いた『Gのレコンギスタ』がある。

宇宙世紀ではやれない事を盛り込む、という大きな魅力も存在する。
様々な部分で独自性が見受けられる為、また別の楽しみ方ができるシリーズでもある。

世界観はそれぞれ別ではあるが、多かれ少なかれ他のガンダム作品を意識したキャラクターが出てきたり、ストーリー展開をなぞったりするのは伝統となっている。特に仮面キャラはアナザーであってもいつものように登場する。「もしあのキャラが戦死せず生き残ったらこうなっていたかもしれない……」などと想像力を掻き立ててくれる人物も多い。

作品ごとに世界観を一新する理由としては、既存の枠組みにとらわれず、時代の流行を取り入れて個性豊かな作品を作るためである。

また、一度大きな戦いが終わった後に続編を作ろうとしても争いの規模は小さくなりがちで盛り上がりに欠け、仮に再び大きな戦乱が起こったとしたら前作で主人公たちが必死に戦った意味がなくなってしまうというのもある。

また、アナザーからガンダムに入った人はアナザーの個性故に、他のシリーズに対する偏見もさほど強くない傾向がある。


【作品群】


◆TVシリーズ


機動武闘伝Gガンダム

監督:今川泰宏
構成:五武冬史
キャラクターデザイン:逢坂浩司(島本和彦協力)
メカニックデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、山根公利
音楽:田中公平

ガンダムファイト、レディー・ゴー!

1994年春期作品。
この作品を含む平成三部作と、本番組の前の作品『機動戦士Vガンダム』はテレビ朝日での放送(ZZまで及びUC0096と異なり、メ〜テレ発ではなくテレ朝発)。

F.C.(未来世紀)を舞台としたガンダム。
4年に1度、地球圏の覇権を賭けて各国がガンダムによる戦いを行う」という、アナザー1発目にして最大級のイロモノ
これは作品制作当時の格闘技・格ゲー・サッカーブームの影響が大きい。
キャラクターの原案には漫画家の島本和彦が関わっている。
ガンダムファイター(ガンダムパイロット)が技名を叫びながら必殺技を放つ、主人公が修行して明鏡止水の境地に至るなど、従来のスーパーロボット的な演出は、
UCシリーズを見てきた古参のファンには賛否両論だったものの、初めてシリーズに触れる子供たちには人気を博した。

シリーズのテーマである「NTに覚醒することで相互理解を果たせる」という点は「ガンダムファイターが拳をぶつけ合う中で他者を理解していく」という風に置き換えられている。
また、従来の地球とコロニーの対立関係も本作の世界観に置き換えて戦争の空しさを伝えている。
他にも「心を通じ合わせること」「荒廃した地球の再生」「宇宙・地球の対立」という宇宙世紀世界のガンダムが持っていた要素はしっかりと受け継がれており、
一見すると子供向けにも思える作風ながら、実は大人も楽しめる作品になっている。

ぶっ飛んだ要素であるガンダムファイトについても、戦争の代替手段として大真面目に設定されている。
地球がリングというルールゆえにファイトが行われるたびに地球が被害を被るという負の側面も描写されており、
スーパーロボットものにありがちな派手なロボットプロレス要素というだけではない。

ガンダムとしては異質だが、ストーリーの本筋は少年漫画的な王道のバトル物で分かりやすく、主要キャラクターたちの人気・評価は純粋に高い。

この作品によるブレイクスルーが後年のガンダムシリーズに新しい道を切り開いたことから、その功績は非常に大きい。
特にメカデザイナーの大河原邦男は本作への思い入れが非常に強く、現在までガンダムが続いているのはGの功績が大きいと各所で語っている。

なお、本作の方針を、『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』に近い、所謂「ロボットプロレス」にしようとしたのは他ならぬ富野由悠季監督である。
今川監督が起用されたのも、ロボットプロレスをやらせるなら今川しかいないという富野監督直々のご指名である。
ちなみに今川監督は当初、地球に帰還しようとする火星移住者と地球の争いという後の『∀ガンダム』のような構想を持っていたそうな。


新機動戦記ガンダムW

監督:池田成(途中で高松信司に交代したが最終話まで池田名義でクレジット)
構成:隅沢克之
キャラクターデザイン:村瀬修功
メカニックデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、石垣純哉
音楽:大谷幸

少女が見た流星

1995年春期作品。

A.C.(アフターコロニー)を舞台にしたガンダム。
ロボットプロレス的な描写が目立った『Gガンダム』とは打って変わり、今度は「5人の美少年がガンダムに乗って反政府運動を行う」という作風。

巨大財閥ロームフェラ財団の私兵である秘密結社「OZ」に対抗するべく、少年たちはオペレーション・メテオに参加。隕石に偽装してガンダムと共にコロニーから地球に降り立つ。
冷戦が終結した世相を反映して大国同士の衝突ではなくゲリラ戦が主体となり、『閃光のハサウェイ』に続いてシリーズでは二作目、TVシリーズとしては初のテロリストが主人公となった。

5人のガンダムパイロットとヒロインをはじめ、敵も味方も男も女もみな一癖も二癖もある強烈な個性を持っている作品。
昔から特徴的なキャラクターが多いとされるガンダムシリーズの中でも特に際立っており、始めから終わりまで視聴者を飽きさせない。
特に第1話から発揮された一部キャラのブッ飛んだ思想や行動の数々は視聴者に大きなインパクトを与えた。

この作風は本来の視聴者の少年だけでなく女性にも大きく受け、シリーズの女性ファンはかなり増加した。いわゆる「イケメン戦隊」というフォーマットは池田監督の過去作「鎧伝サムライトルーパー」を踏襲しており、女性に受けたのはある意味必然だったとも言える。

華美なキャラとは裏腹に展開されるストーリーはハードで哲学的。戦争を止めるにはどうすればいいかという問い、敗北してもそこから立ち上がり泥臭く戦う少年たちの姿が描かれる。他にも無骨ながらもキャラクター性を強く主張したメカデザインは男女共に視聴者から評価が高く、アナザーの中では突出した根強い支持がある。
Gガンダムで取り入れられた「個性付けされた複数のガンダム*1が敵味方に分かれ戦う」という構図は本作でより洗練されたものが確立され、以降『00』までは最初から複数機のガンダムが出ることが恒例となった。

ストーリー全体は『ファースト』~『逆シャア』までを凝縮してなぞっていくというオマージュの構成であり、それに本作特有のアクの強いエッセンスが絶妙に加わった結果、見事な化学反応を起こしたと言えよう。

監督が途中で降板したため、後期OP映像の完成が最終回になったりと製作現場は非常にキツかったらしく、作画面での評価はあまり芳しくない。
この降板は他作品とのスケジュールが折り合わず、やむを得なかった降板である。その為池田監督自身を責めたスタッフはあまりいない…と言われている一方で、
「監督が当初書いたプロットからストーリーがどんどん逸脱していき、今後のストーリーが監督の頭の中にしか無い状況で当の監督が突然現場に来なくなった」「30話は制作中、32話以降の脚本は完全に白紙」
という状況だったという証言*2もある。
このような制作状況のため前半と後半で言っている事が矛盾しているキャラクターもいる、と高松監督は語っている。

ゲームスーパーロボット大戦α』では独自設定として、本作から客演したゼクス・マーキストレーズ・クシュリナーダが、
「正史には登場しない幻の機体であるガンダニュウム合金製のモビルスーツを(ウイングゼロも含めて)『アナザーガンダム』と呼んでいる者達も居る」とし、
「ガンダムであってガンダムでない彼らにふさわしい表現」と述べているシーンがある。
同作品においてはアナザーガンダム作品は『W』(と『Endless Waltz』)しか参戦しておらず定義としては少し『W』寄りになっているが、原作の劇中では登場していない用語をゲームの世界観上で落とし込んだ面白い例と言える。


機動新世紀ガンダムX

監督:高松信司
構成・脚本:川崎ヒロユキ
キャラクターデザイン:西村誠芳
メカニックデザイン:大河原邦男、石垣純哉
音楽:樋口康雄

月は出ているか?
荒野の大地に今、最強のガンダムが甦る!!

1996年春期作品。

A.W.(アフターウォー)を舞台にしたガンダム。
今回は戦争が終結して15年が経過した「戦後の世界」となっており、従来よりも荒廃した雰囲気が漂う。

先の大戦で実行された大規模なコロニー落としによって甚大な被害を受けた地球で物語が始まる。
秩序すら失われた過酷な世界観で主人公のガロードたちは逞しく生き抜いていく。
ガロードが出会ったNTの少女であるティファが物語の鍵を握り、その愛も物語の要素として描かれる。
「ポストアポカリプス」にして「ボーイ・ミーツ・ガール」という、ガンダムでも異色性が強い作品の1つ。

NTとして戦い耐えがたいトラウマを負った者、NTを利用しようと企む者、
NTではないと切り捨てられたことで世界に復讐をしようとする者らが交錯し、遂には「世界最初のNT」と呼ぶべき存在が姿を現す。

ニュータイプという用語が重要なキーワードとして登場し*3、コロニー落としという非道な作戦が実行された歴史があるなど、これまでのアナザーガンダムに比べ宇宙世紀のガンダムシリーズを強く意識している。
ちなみに監督の高松信司氏は『Ζ』や『ZZ』に演出などで関わっている。
「過去の戦争を生き抜いてきた年長者」と「これからの未来を築いていく若者」の2つの視点が提示されていて、そういう点では後記の『AGE』の要素を先駆けてやった作品ともいえる。

また、本作は「機動戦士ガンダム」という作品そのものを取り巻く状況を題材としたメタフィクショナルな構造を持っている*4。作品としてのガンダムはシリーズが続き、ファンが様々な論争を繰り広げてきたが、(本作独自の解釈ではあるが)ニュータイプという概念に一定の結論を出している。終盤でD.O.M.E.がガロードに投げかけた言葉は主な視聴者層である10代の少年たちへのメッセージにもとれる。いわばガンダムを総括するガンダムというのが大きな特徴といえる。

『G』『W』にこれを合わせた3作は連続で放映されたため俗に「平成3部作」と呼ばれる。

視聴率は打ち切られるほど低くなることはなかったが、外野の事情で1クール分の放送期間短縮となってしまった。また全2作がいずれも破天荒な作風であったことから相対的に地味な印象を与えてしまった点は拭えない。

しかしボーイ・ミーツ・ガールを軸とするしっかりした王道のストーリー、丁寧なキャラクター造形などから高評価を受ける事も多い。
話数短縮を喰らって終盤が駆け足気味ではあるが、話はまとまっている。

ここまでの3作品共通の特徴として、「最低1機は腕が伸びるガンダムが出てくる」というものがある。
これは『G』に登場したドラゴンガンダムの玩具が主役であるシャイニングゴッドガンダムに次いで売れたことを受け、後の作品でも踏襲したため。
また、宣伝ポスターにキャッチコピーが記されるようになったのもテレビシリーズでは本作品から。


∀ガンダム

監督:富野由悠季
キャラクターデザイン:安田朗(原案)、菱沼義仁(設定)
メカニックデザイン:シド・ミード、大河原邦男、重田敦司、沙倉拓実
音楽:菅野よう子

ふたつとひとつの巡り合い
人は癒され、ガンダムを呼ぶ

1999年春期作品。この作品のみフジテレビで放送。

正暦/C.C.(コレクトセンチュリー)を舞台にしたガンダム。
アナザーで初めて、富野監督が総指揮を務めた作品。
地球に住む人々と、に住む人々であるムーン・レィスの接触と衝突に端を発する戦争が描かれる。
近未来を描いたSFという雰囲気の従来のガンダムシリーズとはまるで異なり、地球の街並みは産業革命期のヨーロッパ、まるで世界名作劇場を思わせる作風となっている。
実際は、水素を吸着する「フロッジストーン」と呼ばれる燃料を使い、水素エンジンで車などを運用するなど、その技術レベルは高い。


作中世界において、過去の宇宙で起こった戦争の歴史は「黒歴史」と総称されており、
その記録は一部の月の民しか触れることを許されず、「冬の宮殿」で厳重に封印されている。
「黒歴史」には宇宙世紀世界のみならず、本来は世界観が連続しないアナザーガンダムの世界も含まれていることが明かされており、今作で初めて宇宙世紀ガンダムとアナザーガンダムの接点が構築された。


既存の文明を黒歴史へと葬ったのが、主人公の乗る「∀ガンダム」である。石像の中で眠っていたが、ムーン・レィスの襲撃に呼応するかのように突如目覚めたという衝撃的な登場を果たし、何かと謎が多い。主役機でありながらデウス・エクス・マキナと呼べるような恐るべき力を持っており、やがて兄弟機とされるターンXとの戦いを迎える。

主役機ターンエーは世界的デザイナーであるシド・ミードがメカデザインを担当。
シドは工業デザイナーならではの独特な造形は富野監督すら驚かせた。三日月形の髭のようなパーツを顔から生やした主役機というのはガンダムシリーズのみならずロボットアニメ全体で見ても極めて稀だろう。

「ヒゲガンダム」に代表されるとにかく独自のデザインのMSが多く、これを苦手とする人間も多い一方、アイデアと躍動感溢れるアクションシーンなどから「動くと評価が変わる」とも。
また、安田朗によるキャラクターデザインと産業革命期のヨーロッパのような世界観から、どこか牧歌的な雰囲気があり、「世界名作劇場ガンダム」なんて呼ばれる事も。
再編集された劇場版「地球光」「月光蝶」も2002年に公開された。

今でこそ高く評価されているが、本作の放映からSEEDが開始されるまでは、ガンダムシリーズも遂に終わりを迎えるだろうという雰囲気が広まった。
Xから続くシリーズを総括する流れ、本作の余りにも『完結編』に相応しすぎる高い完成度、新作の製作が途切れたことが影響している。SDガンダムも縮小傾向であった。
加えて、一部ではガンダムシリーズのみならず「巨大ロボットアニメジャンルは役目を終えた」という悲観的な論調が広がっていた。

また直接の関係はないが、同時期に人気を博したロボットアニメシリーズである『勇者シリーズ』が終了したり、
超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズメタルス』の作風が所謂ロボットものからかけ離れたものだったことも挙げられる。

具体例としては、『G』以来欠かさずコミカライズを載せていたコミックボンボンが本作後ガンダムに見切りをつけてガンダム漫画を切ってしまい、次回作を連載しなかった*5一方でマガジンZ版のコミックス1巻が飛ぶように売れて編集部が上から大目玉を食らい、過去のガンダムを手掛けた漫画家を探し出して100ページ一挙掲載というとんでもない依頼をした


機動戦士ガンダムSEED

監督:福田己津央
構成:両澤千晶
キャラクターデザイン:平井久司
メカニックデザイン:大河原邦男、山根公利
音楽:佐橋俊彦

決闘(DUEL)暴風(BUSTER)電撃(BLITZ)(AEGIS)攻撃(STRIKE)、5機のガンダム現る!!

2002年秋期作品。
この作品以降、オルタナティブ作品はMBSでの放送に移った他、音楽面の制作がキングレコードからソニーミュージックに移行した*6

C.E.(コズミック・イラ)を舞台にしたガンダム。
地球連合と宇宙移民国家プラントとの戦争に巻き込まれ、
成り行きで連合の最新鋭MS“ストライク”に乗り込むことになった主人公・キラが、戦火の中を戦い抜くというストーリー。

『∀』でガンダムシリーズは締め括られたと思われていた中で発表され、放送前の期待はかなり大きかった。
21世紀の1stガンダムというコンセプトで作られたため、初代こと『機動戦士ガンダム』のオマージュ的な部分が多く、
宇宙→地球→宇宙と移り変わる舞台、スペースコロニーが登場したりと宇宙世紀シリーズに近い作風だが、一方でMSの動力源がバッテリーだったり、戦闘シーンの割合が低くドラマパートに比重を置いているなど独自要素も多い。
特にそのストーリーの根幹には人種差別や民族紛争が置かれているのが特徴で、大量破壊兵器なども多く登場する。

「終焉を迎えた」と思われたガンダムシリーズが久々に大々的に展開された事に加えて、ネット環境の普及時期であった事も手伝い大反響を呼んだ。
その際たる例が、SEEDファン大量流入(とそれに伴うアンチの増加)による2ちゃんねるのシャア板分裂であり、現在も対立は根強く残っている。

平井久司がキャラクターデザインを行った事でキャラクター人気が極めて高く、『W』以来久々にそのテの業界を席巻した。
メカニックデザインやスピード感重視の戦闘演出も合わせてどこか煌びやかな第一印象を感じさせるが、その反面過激な描写も少なくない。

作中の兵器設定に対してSF的考察がしっかり行われているのも特徴で、様々な武器にペットネームがしっかりとつけられていたり、組織名略称のアクロニムは本作品の特徴としてよく語られる。設定が二転三転することも少なくはないが……
また、新世代のガンダムシリーズとしてか「ガンダム」という概念にも改めて向き合った結果、作中の兵器は所謂「ガンダム顔」であっても「ガンダム」と正式名称に付くものは存在しないとされ、
「ガンダム」という単語は主人公ら一部のキャラが使う非公式の愛称という扱いになっている。*7

『SEED』シリーズ10周年となる2012年からは、新規作画の追加と再編集を行ったHDリマスター版が放映された。

本作から始まる『∀』以後のアナザーガンダム作品群は、Gジェネレーションシリーズでは「新世紀ガンダム」と呼ばれている。


機動戦士ガンダムSEED DESTINY

監督:福田己津央
構成:両澤千晶
キャラクターデザイン:平井久司
メカニックデザイン:大河原邦男、山根公利
音楽:佐橋俊彦

戦う意思が未来を変える。
その手で未来をつかめ!!

2004年秋期作品で、アナザーのTVシリーズでは初となる続編。

前作『SEED』の2年後が舞台。
前作が1stのオマージュを取り入れていたように、こちらはZのオマージュを導入しているのも特徴。

前作が好評だったので期待されていたが、いざ放送されると脚本面を中心に賛否がバッサリと分かれ、シリーズ史上稀に見る大論争を巻き起こした。
特に、物語後半で新主人公から前主人公に物語の主軸が移る構造は視聴者の度肝を抜いた。
しかし、その分固定ファンからの支持は現在でも強く、アニメ誌の年間アニメ最優秀賞等を受賞した実績もあったりする。
ヒロイックなMS群も好評で、ゲームなどでの露出も多い。
主観を捨てて評価をすれば、『作品』としての評価こそ極端に分かれるものの『商品』としては紛れもなく成功しており、
後のシリーズ継続への一端を担った功績は無視できない。

こちらも2013年から新規作画なども加えたHDリマスターが放送。
最終回などの一部の回は新規作画や編集などで話の流れや登場MSが変更されている。

放送終了後も外伝などが展開され続けており、そちらも一定の成功を収めた。
終了後展開の目玉となる劇場版続編は長く予告されていたが、2024年に『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』として公開された。


機動戦士ガンダム00

監督:水島精二
構成・脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:千葉道徳(高河ゆん原案)
メカニックデザイン:海老川兼武、柳瀬敬之、福地仁、寺岡賢司、中谷誠一、鷲尾直広、大河原邦男
音楽:川井憲次

ガンダムによる全戦争行為への武力介入を開始する

破壊による再生がはじまる
その再生を破壊する

2007年秋期・2008年秋期作品。
制作の都合上2クールずつの分割放送となった。

シリーズで初めて「西暦」の世界を舞台にしたガンダム。
地球全土でエネルギー資源を巡って冷戦状態が続く中に現れた「武力介入による紛争根絶」を目指す謎多き組織、ソレスタルビーイングの戦いを描く物語。
その独特すぎるMSデザイン、『W』以来のテロリスト主人公だった事や、
前作と現実の9.11同時多発テロがテロリストに対する悪印象を煽っていった影響などで始まる前は不安視されていた。

が、蓋を開けて見れば、前作の反省を経て気合いを入れた戦闘シーン、己の信念を貫こうとする「濃い」キャラクター達、リアリティのある世界観設定で好評となった作品。
特に、(劇場版も含めて)主人公・刹那の成長と変化を描いた部分や、積み重ねによる対比への評価は高い。
キャラクター原案がその手の業界で人気の高河ゆんであり、『W』や『SEED』程ではない感はあるがしっかり盛り上がった。
メインスタッフも「新しいガンダムを作る」という意図の元これまでのシリーズから大幅に刷新されており、キャラクターデザインの千葉道徳や、メカニックデザインの海老川兼武、鷲尾直広、寺岡賢司などは以後のシリーズ作品にも多く関わっている。

一方で、「Wはいけても何故か00はキツい」と苦手意識が取れない人も多いとか。
作品のテーマが難解で現実を強く意識させる要素が強く、「合う人には合うが、合わない人に合わない」という分かりやすい作品である。
また様々な勢力の描写が描かれており、CB含めて善悪面での区別が付かない一期に対し、
二期はCB対アロウズ(を操るイノベイド)と一見すると勧善懲悪的な絵面になったのでしっくり来ない人もいる様子。
ただし、これはやはりアニメというものの時間帯の都合上メイン視聴層が子供である以上は仕方のないところかもしれない。
メインテーマがブレているわけでもないので、これだけを理由に作品の質を語ることはできないだろう。


機動戦士ガンダムAGE

監督:山口晋
構成:日野晃博
キャラクターデザイン:千葉道徳(長野拓造原案)
メカニックデザイン:海老川兼武、石垣純哉、寺岡賢司
音楽:吉川慶

三つの運命が歴史になる--

2011年秋期作品。
A.G.(アドバンスド・ジェネレーション)を舞台にしたガンダム。

孫までの3世代を描いた大河ドラマ的物語や、正体不明の敵勢力との戦いが描かれる斬新な設定が話題となった一方、
幼年層を意識したキャラクターデザイン、ライバル雑誌コロコロコミックへの移籍、
レベルファイブが製作主導な事、メイン脚本が社長の日野晃博であること等々、『00』とは別ベクトルで賛否を呼んだ。

第一世代ではストーリーの不安定さを指摘する声が目立ち、本格的にエンジンがかかるのは第二世代以降まで待つことになる。
といっても最後まで所々不安定な点もあり、アセム編終盤では声優から一部脚本の改変を嘆願されたなどのエピソードもある。
更に本作はゲームとアニメを同時に制作していたため、そういったシナリオ面での縛りがテコ入れや軌道修正の妨げとなってしまったという意見も。

子供向けと言われがちな作品であるが、物語自体はそれまでのガンダムと同様、テーマ性が強く各キャラクターの思惑が複雑に絡み合ったものである。
また、あっさりした心理描写、簡潔な台詞回しが心掛けられており、話の流れは追いやすいがキャラの内面を掴みにくくなっている。
『00』や『Gレコ』とは違う形で色んな意味で難解な作品。

各編のインターバル期間が10年単位ということもあり、空白期間を活かしたキャラの心理描写やセルフオマージュが魅力。
また、ガンダムは各世代で1機が原則と1st同様の「限られた存在」であり、以降の作品は『W』とは逆で「最初から登場するガンダムは1機」が基本になる。
「新しさの中にガンダムの伝統を抑えた」味方量産機、一方でこれまでのガンダムでは少なかった有機的なデザインを持つ敵MSも特徴的。
戦闘描写も4クールを経て洗練されていき、かなりレベルが高まっていった。特に最終決戦前後においては「ベテランパイロットによる量産機での獅子奮迅の活躍」「ニュータイプ的能力を持たないキャラが(事実上)最強」など、「ガンダムが少ないゆえ」の渋さも見受けられる。

ただし、設定については一昔前のアニメのようにふわっとした形を取っており、理屈づけがなされていない部分が多い。
実際、漫画版や小説版では大まかなあらすじこそ同じであれど、描写や設定が異なっている事が多々見られている。
前々作『SEED』、前作『00』のようにディティールを突き詰め気味な作品と比べ「公式設定」は非常に希薄で、自由な形で解釈することができる。
これを受け入れられるかどうかで大きく評価が変わる作品。
メカニック本には作中で語られない数々の公式・準公式設定が載っているため、その辺が気になる人は是非読んでおきたい。


Gのレコンギスタ

監督/脚本:富野由悠季
キャラクターデザイン:吉田健一
メカニックデザイン:安田朗、形部一平、山根公利
音楽:菅野祐悟

君の目で確かめろ!

2015年春期作品。
ターンエー以来の富野由悠季によるガンダム。
MBS主導だが、TVシリーズでは初の深夜アニメとなった。
宇宙世紀、∀ガンダム期の正暦の後のR.C.(リギルド・センチュリー)を舞台に、謎のMS「G-セルフ」を駆るベルリ少年と宇宙海賊の「姫」アイーダの冒険を描く。
吉田健一・あきまんなど一部スタッフが重なっているせいか、作風は明るめでキングゲイナーに近い。

話の軸としては、複数の勢力によるエネルギーの扱いを巡る抗争劇であるが、予算があまり貰えず、さらに2クールで展開したせいか話が圧縮され気味という指摘がある。キャラクターの心理描写も少なく、イマイチ入り込みにくいという意見もあり、富野もこれを認め詫びるコメントを出している。
それを踏まえてから後の劇場版では分かりやすくなっている。

徹底して明るく牧歌的な雰囲気や、富野監督らしい見応えのある独特の演出などに魅せられた熱狂的なファンも少なくない。
作画クオリティも非常に高く、作品そのものを嫌う層からも作画に関しては好意的なコメントも少なからず見られる。
普段自分の作品に否定的な富野監督も「Gレコ、売れなかったでしょ」といつもの自虐ジョークを飛ばしつつも、
「スタッフ達が自分の予想以上の仕事をしてくれた」と褒めるコメントも残しており、監督なりに得るものは多かったようだ。

世界観が宇宙世紀から直接の地続きであるため
2015年開催のトークショー「「夜のG-レコ研究会 ~富野由悠季編~」の富野によれば、本作は『∀』の約500年後をイメージして作ったという。
この発言を受け、2018年に開かれた展覧会「富野由悠季の世界」の公式サイト上では、「『∀ガンダム』終了から14年後に制作された「ガンダム Gのレコンギスタ」は、「∀」からさらに数百年後の世界が描かれる。」と設定に反映された。


2017年に全5部作に再編集した劇場版の公開が発表され、2022年に無事完結。
基本的には過去のガンダム映画と同じくTV版の再構成だが、全体の時間も長く圧縮されていたテレビ版より見やすい。またTVシリーズで描かれなかったシーンの追加が多く行われていたり一部設定やエピソードが整理されたりと、
実質的な完全版ともいえる内容となっており、一気見しやすい構成となっている。


機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

監督:長井龍雪
構成:岡田麿里
キャラクターデザイン:千葉道徳(伊藤悠原案)
メカニックデザイン:鷲尾直広、海老川兼武、形部一平、寺岡賢司、篠原保
音楽:横山克

いのちの糧は、戦場にある

2015年秋期・2016年秋期作品。
P.D.(ポスト・ディザスター)を舞台にしたガンダム。時間帯も再び日5に戻された。
長井龍雪監督・マリーこと岡田麿里の『あの花』コンビが手掛ける。キャラクターデザインは『皇国の守護者』『シュトヘル』の伊藤悠。
『00』と同じく分割4クールで製作されるが、当初から分割放送が一部で告知されていた『00』と違い、本作の2期放送は1期の最終回まで伏せられていた。
もっとも1期の展開上、2期が制作される可能性が高い事は多くの視聴者から事前に予測されていた。
また、話数のカウントは1期と2期で連番になっており、2期1話は通算26話目として扱われているが、1期と2期の間の年月の経過については言及されていない。

「厄祭戦」と呼ばれる大戦から300年後の世界で、火星で生きる民兵団の少年兵たちが大人たちに反旗を翻し、平穏な生活を勝ち得るために戦うストーリーが展開される。
世界観がなかなか荒廃しているが、これまでの作品とは違う意味で非常に泥臭く生々しいハードな作風で、どこか任侠作品めいた物々しい雰囲気が漂う。
特に「ビーム兵器が存在せず、従来作品レベルの実弾銃も豆鉄砲に過ぎない」というMSの装甲設定は大きな特徴のひとつ。
このため実弾兵器と近接戦闘による重厚で無骨な荒々しいMS戦やこれまでに無い斬新な艦隊戦の描写が充実しており、この作品独自のものとして評価されている。

ガンダムらしい政治的駆け引き、各キャラの思惑がややこしく交錯するドラマも細かく描かれるため、1期では戦闘のある回が減っていることを嘆くファンも多く、
その声を受けて2期では改善がされたが、それでもこれまでの3スタ作品に比べると少なめ。しかし、その分多く描かれた多様なドラマ展開は多くの視聴者を惹きつけた。
『滅びの物語』がコンセプトであり、特に二期は主人公サイドが追い詰められた末に敗北する重く苦しい展開となった。
当初の構想では主人公陣営がほぼ全滅する壮絶な終わり方だったものの、岡田が「主人公達に『救い』を与えたい」と考え、敗北の中にも一抹の希望と未来への展望を残すようになったと語る。
ただ、この変更の影響か(大筋の流れはごく自然なのだが)終盤の演出面では悪い意味でのご都合主義な部分も目立ち、話がまとまっていた一期と比較して二期終盤については酷評する意見もある。
とはいえ、作品自体の終着点は最初から決められており、一期から結末を示唆する伏線は張り巡らされていた。ゆえに主人公陣営の敗北も自然な結末で運命だったと好評する意見もある。
実際、この結末を決めた長井監督は「仲間以外に酷いことをしてきた主人公陣営は『報い』を受けなければならなかった」と述べており、この部分には作品の根幹に関わる念入りな拘りを見出すことができる。

またモビルスーツの内部フレームに細かい設定が付け加えられているのも特徴で、本作のガンダムは「ガンダム・フレーム」という共通のインナーフレームを持つ機体の総称でもある。
劇中設定ではガンダムは72機存在し、その中で現存しているのは26機とされているが、本編と漫画、ソーシャルゲームなどの外伝も含めて登場したのは2022年現在では11機のみとなっている。

長井監督は「ガンダムという作品は、今ではどんなものでも受け入れてくれるひとつのジャンル」とも言及している。
奇しくもこの考え方は既存の枠組みに囚われる必要のないことを主張した富野の考えに近いものがある。
作品全体を通して多種多様な白熱した議論が交わされる作品になってしまったものの、既存の枠組みに囚われない斬新な作品を志した製作スタッフの努力は評価されるべきであろう。

DESTINY同様、アニメ誌の作品部門年間アニメ最優秀賞等も受賞している。
オプション武装を別売りにする「武器セット」方式を復活させ、高品質と低価格を両立させたガンプラがバカ売れしたのも記憶に新しい。
結果的に興行収益は成功を収めたといっていいだろう。


機動戦士ガンダム 水星の魔女

監督:小林寛
構成:大河内一楼
キャラクターデザイン:田頭真理恵、戸井田珠里、高谷浩利(モグモ原案)
メカニックデザイン:JNHTED、海老川兼武、稲田航、形部一平、寺岡賢司、柳瀬敬之
音楽:大間々昂

その魔女は、ガンダムを駆る

2022年秋期・2023年春期作品で、4クールではなく2クール作品。
A.S.(アド・ステラ)を舞台としたガンダム。
本放送前には前日譚となるエピソード『PROLOGUE』が放送された。

鉄血から実に5年ぶりとなるアナザーガンダム作品となっており、
鉄血を最後に一旦終了していた「日5枠」が本作の放送開始と同時に復活する流れとなった。
監督はOVA版『君のいる町』などを担当した小林寛、シリーズ構成はアニメ『∀ガンダム』でデビューした大河内一楼が務める。

女性キャラが主人公であり、アナザーどころかアニメ・漫画・小説を含めた宇宙世紀の作品を含めても珍しい。
本作の展開より少し前に、ガンダムIPの展開方針として「テレビシリーズで新規獲得、既存ファン向けには劇場版」というのが打ち出されたためか、新規視聴者層の獲得を目指し、学園ものやスポーツもの、お仕事ものの要素を取り込む、主人公とヒロイン(ポジション)が両方女性キャラなど、新しい試みを積極的に取り入れている。
機体も従来の作品とは毛色が異なるが、丁寧な描写や作中の活躍によって好評を博した。
キャラ人気も高く、多数の愛されキャラを輩出した他、主人公とヒロインをはじめとして複数の人物がプラモ化されている。

水星という僻地から編入してきた主人公が、個性豊かな学友と憧れの学園生活を繰り広げる。しかし、今作でのガンダムには禁忌とされる技術が使用されており、主人公の出生、まさかの仮面ポジである主人公の母の目的にもそれが深くかかわっている。
兵器開発のために犠牲になる者が出たり、地球では宇宙側の搾取に耐えかねての紛争が頻発しているなど、表面上は明るいものの世界観や描写のハードさでは他のガンダム作品にも負けておらず、また「家族」や「責任」「ジェンダー」といったものもテーマに据えられていて、より現代的なテーマを扱うガンダムとなっている。

「女性主人公」「MSによる決闘」「その勝者がヒロインを婚約者として迎える」という設定は大河内氏が以前小説の執筆を手掛けた「少女革命ウテナ」を彷彿とさせる。この人の存在からも意識的にオマージュしたことが伺える。


◆OVA・劇場作品


新機動戦記ガンダムW Endless Waltz

監督:青木康直/脚本:隅沢克之

俺達は、あと何人殺せばいい?

1997年発売の『W』の続編となる全3話のOVA作品。
後に三部作を編集し新規カットを追加された劇場作品「特別編」が同時期展開の『第08MS小隊』再編集版との併映の形で1998年に公開された。

平和を勝ち得たはずの世界に現れた新たな脅威を前に、主要人物達が最終的に出した「生き方の答え」を描く。
5人のガンダムパイロットたちのTVシリーズでの前日譚も描かれ、彼らの内面がより深く掘り下げられ、またそのテーマについても戦士や政治家だけでなく、市民の目線からも描いているのが特徴的。

非常にレベルの高い作画、カトキハジメによって新たにデザインされたMS等からヒットを記録した。
特に、天使のような有機的な翼を持つEW版のウイングゼロは非常に有名だろう。

その印象的な場面の多さから、OVAという当時のハイエンド商品でありながらファンの知名度が非常に高く、商業的・作品的にもこの作品の残した功績は大きい。
2010年代以降は本作の出来事をベースにした作品も展開されている。


機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER

監督:西澤晋/脚本:森田繁

星を観る者、スターゲイザー……

2006年夏に1話15分の全3話がガンダム史上初のネット配信で放送され、後に新作カットを加えたOVAが発売された作品。
時系列は『SEED DESTINY』の序盤から中盤にかけてで、宇宙探査機構「DSSD」が開発したMS「スターゲイザー」を巡るストーリーが展開される。
本編では軽く触れた程度である地上被災地の凄惨な状況や、MSが通常兵器にとっていかに驚異的な存在かを丁寧に描いており、世界観の補完に一役買っている。
本編を嫌うファンからも高い評価を得ているが、ある意味一番の不満点は尺が短すぎる事。
この作品をきっかけにネット配信というものに触れるユーザーも増えた為、その意味でも挑戦的な作品だったと言えるだろう。


劇場版 機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-

監督:水島精二/脚本:黒田洋介

最終決戦(来るべき対話)の始まり。それは、人類の目覚め──

2010年9月公開の『00』の劇場作品。
TVシリーズの後日談であり、それ以上に「完結編」とも言うべき内容。
「総集編要素などが含まれない完全新規の劇場作品」はアナザーではこれが初めてで、U.C.込みでも逆シャアとF91に続く3本目、F91からは実に19年振り*8
「外宇宙からの来訪者との対立と和解」という、SFとしては定番ながらガンダムではある種タブー視されていたテーマを描いた事で話題となった。
ファーストガンダムの放映当時の斬新さが、人間同士の戦いを描いたことにあったことを考えれば、『G』以上のイロモノとも言える。

そのため、「ガンダムシリーズの劇場版」としては賛否両論だが、
TVシリーズでは匂わされるだけだったキーワード「来るべき対話」の到来、TVシリーズで刹那が背負った物語のテーマ「相互理解」の果てを描いたその内容は、「00の完結編」としては高い評価を受けている。
TVシリーズでも評価の高かった作画は更に高いレベルにあり、その点でも評価は高い。
公開から数日で大きな興行収入を叩き出したこともあり、ガンダムブランドの継続に大きな役割を果たした。


機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN

監督:綿田慎也/脚本:木村暢

決して交わるはずのなかった2つの運命──

2013年発売の『AGE』のOVA作品。
第二部であるアセム編から三世代編にかけてのストーリーを、アセムとゼハートの視点から再構築したスペシャルエディションというべき内容。
首脳陣は本編の演出担当である綿田慎也と本編のサブライターで『00』の小説版を手掛けていた木村暢が組む形になり、本編の監督と構成をそれぞれ務めた山口晋と日野晃博は監修という形での参加。

総集編という体であり、その中でも「アセムとゼハート(とロマリー、フラム)がいかに30年の戦乱を生きたのか」に絞り込んで描かれている関係からこれ全てでAGEを理解できる訳ではないことには留意されたいが、新規シーンは1000カット60分以上と、気合の入れ方が尋常ではない。
ゲーム版のウェアやMSVのカメオ出演など、コアなファンへのサービスもある。
TV版では「50秒クッキング」と揶揄されたアセムとゼハートの最終決戦が他シリーズの最終決戦と比較しても上位に食い込むほどの熱く濃い内容へと進化していることが度々語り草になる。
特にアセムとゼハートの友情はより鮮明に描かれており、ふたりの最後のやり取りは涙腺崩壊モノである。


機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

監督:福田己津央/脚本:両澤千晶、後藤リウ、福田己津央

私の中にあなたはいます。あなたの中に私はいますか?
未来を掴む自由の翼。

2024年1月公開の『SEED』の劇場作品。
制作発表は『DESTINY』の直後に発表されたが、そこから20年近く続報がなく、多くのファンからは完全に頓挫したものだと思われていた。
TVシリーズの脚本を務めた両澤千晶が2016年に逝去しているため、脚本は前半部分は両澤氏の遺稿を、後半は両澤氏が生前残したプロットを元に監督福田氏とSEEDシリーズの小説版を担当していた後藤氏の共同執筆となっている。

前作『DESTINY』の2年後が舞台で、二度の大戦を経験してもなお戦争が頻発する世界の中で世界平和監視機構コンパスを設立。それでもブルーコスモスとコーディネイターの間で小競り合いが続く、そんな時に新興国ファウンデーションからブルーコスモス鎮圧のため協力したいと申し出があり……

18年ぶりの続編でありながらも『SEED』らしさをしっかりと継承。
前作『DESTINY』で提示された「運命を定められた世界を否定した選択は正しかったのか?」という問いを元に制作されたもので、デスティニープランについて改めて考えさせられる内容になっている。
また『DESTINY』ではろくに描かれなかったキラとラクスの内面について踏み込み、この2人のにスポットを当てた作品でもある。
そして、これまではスパロボとかでしか見れなかった巨悪を打ち倒す主人公たちの痛快な活躍など「これが見たかった」とばかりのファンサービスも旺盛で、18年待ったファンの期待に応える作品となった。
ガンダムシリーズとしての興収記録を初代劇場版Ⅲから40年越しに更新するなどの成功を収めている。






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最終更新:2026年07月23日 07:58

*1 DESTINYまでは最初から登場するガンダム(メテオ機、フラッシュシステム機、前期GAT、セカンドステージ)は5機だった。

*2 証言者の一人はピンチヒッターを務めた高松信司監督のため、信憑性は高いと思われる

*3 宇宙世紀のニュータイプとは似てはいるが別の概念である。本作でのニュータイプに対する言及が宇宙世紀でのニュータイプに当てはまる訳ではない。

*4 監督の高松氏の持ち味であり、「勇者特急マイトガイン」や「こち亀」でも製作現場をネタにした作劇を行っている。

*5 カラーページでの特集や改造ガンプラの紹介などはされていた

*6 この他EDやサントラ、ドラマCDを担当するサブにビクター(SEEDシリーズ、00)、ランティス(AGE、Gレコ、鉄血)、avex(Gレコの2期OP)が参加。

*7 ただ、現実の商業展開などでは「機体名+ガンダム」(例:ストライクガンダム)の名前が付けられることが多い。

*8 冒頭に「第二期のストーリーを劇中政府がプロパカンダ込みで、多分に脚色を付けて再構成した」という趣の劇中劇が挟まれてはいるが