名探偵ピカチュウ(映画)

登録日:2019/05/17 Fri 21:38:20
更新日:2024/12/11 Wed 17:16:26
所要時間:約 16 分で読めます






見た目はカワイイけど……



中身は“おっさん”!?



『名探偵ピカチュウ(英:Pokémon Detective Pikachu)』とは、2019年公開の映画。
2016年に発売された、『ポケットモンスター』シリーズから派生した同名のゲーム作品を原作としている。


【概要】

原作のゲームは「失踪した父を探す少年と、彼にしか聞こえない人の言葉を話すピカチュウがコンビを組み、事件の解決に奔走する」という内容だが、なんとピカチュウが「渋い男性の声で喋る*1という、衝撃的な設定で話題を呼んだ。

映画化の企画は2017年12月に発表。
監督は『シャーク・テイル』などのアニメ映画で知られるロブ・レターマン。
脚本は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』等のニコール・パールマンと『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』などのアレックス・ハーシュが担当した。
製作会社は『パシフィック・リム』や『ジュラシック・ワールド』、更にあのゴジラをアメリカナイズドしたモンスター映画を十八番とするレジェンダリー・ピクチャーズ。

配給は米はワーナー・ブラザース映画、日本では東宝が担当。
また『ポケモン』の祖国であるからか日本では先行公開がなされ、全米より1週間早い2019年5月3日から上映を開始した。
映画化にあたって改変された部分も多いが、大まかなストーリーはゲームに沿っている。

本作は「『ポケモン』初の実写長編作品」ということもあり、ポケモン達の表現もゲームやアニメと比べてリアルになっているのが特徴。

錚々たる面々が関わっており、原作も世界中で知名度のあるゲームだが、公開前に発表されたビジュアルにおいて、
  • 体毛がはっきりとわかるピカチュウやプリン
  • 鱗で覆われているのがこれまたはっきりわかるリザードン
  • が某AAキャラにしか見えないの皮膚がいかにも人間っぽい質感のバリヤード
などといったものに抵抗を示す声も少なくなかった。

というのも、日本のフィクション作品において、実写化されたものの出来が玉石混交だったため、実写化ということ自体に反感を覚える人が多く、また、日本語吹き替え版では、メインの登場人物を人気俳優が演じるということも合わさってか、本作も当初はそれほど期待されていなかった。

……しかし、いざ公開されると「ポケモンと人が生きる世界の映像表現」を高く評価する声が続出。
観た人からは「子どもの頃に夢見た光景そのもの」「ライムシティに住みたい」「ポケモンファンが全力でやりたいことをつめこんだ映画」「映画を観終わってからポケモンが何処にも見当たらないのが辛い」と、概ね好評を得ている。

また、メインポケモンであるピカチュウもゲームやアニメとはまた違った可愛らしさで多くの人を魅了した模様。
予告映像にも出たとある場面で見せた表情から、「しわしわピカチュウ」(略して「しわチュウ」とも)なる愛称で親しまれている。
また、予告編のBGMはかの学園ドラマ『スクール☆ウォーズ』の主題歌として有名な麻倉未稀の「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」が流れていた。

そして原語版でピカチュウの声を担当するのは俺ちゃんだよ!!ライアン・レイノルズ
実写ピカチュウ役のオファーが来た際のレイノルズは「身長違い過ぎるでしょwというか俺あのデッドプールだよ?本当に俺でいいの?」とかなり困惑したようだ。
しかし、試作映像として自身が演じた『デッドプール』の台詞を喋るピカチュウを見せられると「意外と合ってるじゃないか」と納得。それからは出演に前向きになったという。
声のみならずモーションアクターも担当しており、演じるにあたって「ピカチュウと同じ目線で生活」したり、体重を合わせるべく減量しようとしたりして医師に止められるなどの奇行役作りには念を入れたという。

メインの登場人物の吹き替えに俳優を起用したことを危惧する声もあったが、元々アフレコ経験のある人達ばかりなため実際の演技や声量に問題はなく、特にピカチュウ役の西島秀俊の演技は好評を博している。

映像面以外だと、特に『赤・緑』から『ポケモン』を追い続けている世代にはたまらない小ネタがちりばめられている他、吹替版ではアニポケでお馴染みの声優陣が多数参加しているのも見逃せない。

ちなみに地上波テレビ初放送は、アニメシリーズを放送しているテレビ東京ではなく「金曜ロードショー」枠が当てられた。
つまり日本テレビ系で『ポケモン』が放送されるという、クロスネット局以外では異例の出来事となった。


【あらすじ】


ティム・グッドマンは、ポケモンが大好きでトレーナーを夢見ていた少年。
しかし、探偵業を営んでいた父・ハリーがポケモンに関わる事件の捜査に向かったきり、帰ってこなくなったことで彼を疎むようになり、やがてポケモンそのものとも距離を置くようになってしまっていた……。

それから年月が経ち、保険会社の社員としてポケモンと縁のない暮らしをしていたティムだったが、ある日、父と同僚だったというヨシダ警部補から連絡を受ける。
君のお父さんが亡くなった」と――。

複雑な思いを胸に、人とポケモンが共存する街……ライムシティに辿りついたティム。
遺品整理のため父が住んでいたマンションの部屋へ入ったそのとき"運命的な出会い"を果たす。

そこにいたのは……なんと、自分にしか聞こえない人間の言葉を喋るピカチュウだった!?


【登場人物】


■ティム・グッドマン
(演:ジャスティス・スミス 日本語吹替:竹内涼真)
本作の主人公で、21歳の青年。11歳の時に母親を亡くし、その後は祖母に育てられた。

かつての経験からポケモンと距離を置くようにしており、パートナーと呼べるポケモンは持っていない。現在は保険会社勤務。
遺品整理に向かった先で父の相棒ポケモンだったというピカチュウと出会い、なんやかんやで共に真実を求めて奔走することに。
原作の主人公と同名だが、設定は「しっかり者で推理力に優れた白人系の少年」から「普段は冴えないがヒラメキに優れた黒人系の青年」と大幅に変更されている。


■ルーシー・スティーヴンス
(演:キャスリン・ニュートン 日本語吹替:飯豊まりえ)
コダックをパートナーにつれている、テレビ局「CNM」の新米記者。
行動力のある女性で、ティムと共にハリー失踪の謎を解き明かそうとする。
研究所へ向かった時の服装が『Pokemon GO』の女性トレーナーに似ている。
吹替担当の飯富氏はブレイブな恐竜戦隊の二代目バイオレットでお馴染み。


■ヒデ・ヨシダ警部補
(演・日本語吹替:渡辺謙)
ハリーと共に活躍していた警部補。パートナーポケモンはブルー
父を亡くしたティムの身を案じている。
映画オリジナルキャラだが、立ち位置は原作のベイカー所長とホリデイ警部を足して2で割ったような感じ。


■ハワード・クリフォード
(演:ビル・ナイ 日本語吹替:中博史)
CNM会長で、長きにわたってポケモンを研究し続けてきた。
人とポケモンが共存する世界を目指しているが、息子ロジャーにかまってやれなかったことに負い目を感じてもいる。
ハリーは彼の依頼で捜査をしていたらしく、事件の顛末についても知っているようだが……?
パートナーはメタモン。人間に「へんしん」した彼に車椅子を押してもらっている。


■ロジャー・クリフォード
(演:クリス・ギア 日本語吹替:三木眞一郎
ハワードの息子でCNM社長。先述の理由もあり、親子仲はあまり良くはない様子。
吹替担当の三木氏はラブリーチャーミーな敵役の男の方でお馴染み。


■ミス・ノーマン
(演:スキ・ウォーターハウス)
ハワードの側近の女性。
非常に寡黙なのか、一切台詞が無い。


■セバスチャン
(演:オマール・チャパーロ 日本語吹替:三宅健太
リザードンを連れている男性。荒くれ者だが、リザードンを「Baby」と呼ぶなど手持ちへの愛情は確かなようだ。
かつてハリーのピカチュウに散々に打ち負かされたようで、そのことを根に持っている。

吹替担当の三宅氏はアニポケでロケット団ボスの二代目声優でもある他、幾多のポケモンの声を担当。


■アン・ローラン博士
(演:リタ・オラ 日本語吹替:林原めぐみ
ハリー失踪の事件にかかわる、とあるポケモンについてのレポートを記していた女性学者。
吹替担当の林原氏はラブリーチャーミーな敵役の女の方でお馴染み。


■ティムの祖母
(演:ジョゼット・サイモン 日本語吹替:犬山イヌコ)
母親が死去し、ハリーが仕事に家を開けている数年間、ティムの面倒を見てくれていた模様。
吹替担当の犬山氏は元祖人の言葉を喋るポケモンでお馴染み。


■ジャック
(演:カラン・ソーニ 日本語吹替:梶裕貴
ティムの友人で、彼の相棒にカラカラを勧めゲットさせようとした。
吹替担当の梶氏は、カロス地方の電気タイプ使いのジムリーダーを演じていた。


■ポケモントレーナー
(演:竹内涼真)
劇中の宣伝映像で登場。赤い上着に赤い帽子と、レッドさんを彷彿とさせる服装がトレードマーク。
スタジアムでギャラドスウインディを連れた女性トレーナーとバトルしていた。
演者である竹内氏は上記したように日本語吹き替え版でティムを演じているため、「吹き替え版限定の一人二役」というちょっと珍しい現象が起こっている。
なんでも、宣伝のため来日した監督がティムの吹き替え担当として対面した竹内氏に惚れ込んで出演を打診したとか。


■ハリー・グッドマン
探偵。上述の通りパートナーはピカチュウ。本作の重要な鍵を握る人物。

ティムの父親で、彼とは離れてライムシティで暮らしていたが、息子と亡き妻のことは今でも大切に思っている。
ハリーが死んだと言う知らせを受けたティムがライムシティへと行くことになるのが本作の発端。


【主な登場ポケモン】


■ピカチュウ Pikachu
(声:ライアン・レイノルズ/大谷育江(鳴き声) 日本語吹替:西島秀俊)
本作の主役であるねずみポケモン。頭に乗せた探偵帽子がチャーミング。
カフェイン中毒コーヒーが大好き。

ティムの父ハリーの相棒だったらしいが、記憶喪失に陥ってしまっている。しかし、ハリーはまだ生きていると信じている。
人間の言葉を話すがこれはティムにしか伝わらず、他の人にはあのお馴染みの大谷さんボイスの鳴き声にしか聞こえない。
技は一応使えるようだが、人前だと緊張してしまい上手く出せない。また「ボルテッカー」は本人いわく「痛い」らしい。しかし、終盤では……。
何故喋れるのかについては映画の中できちんと語られる。


■コダック Psyduck
(吹替版音声:愛河里花子)
ルーシーのパートナーのあひるポケモン。ストレスを受けて頭痛がひどくなると……!?
目付きはヤバいが慣れてくると可愛く見えてくる。
また意外にも体表はモフモフな質感だが、「あひるポケモン」なのでむしろ理に適ったアレンジかもしれない。
吹替版ではアニポケ同様に愛河さんが声を充てている。


■メタモン Ditto
(吹替版音声:金魚わかな)
ハワードのパートナーのへんしんポケモン。
なんと人間にも変身できる。しかし目だけは……お約束通り。
吹替版音声の金魚わかな(現:美波わかな)氏は、『サン&ムーン』のナギサ(スイレンイーブイ)、『スマブラSP』でポケモントレーナー(女)を演じている。


■リザードン Charizard 
セバスチャンのパートナーであるかえんポケモン。
以前にハリーのピカチュウにコテンパンにやられたらしく、その時の傷が残っている。
「R」を使用し、ピカチュウにバトルを挑む。


■エイパム Aipom
ライムシティに棲みついているおながポケモン。
偶然摂取した「R」がきっかけで突如凶暴化し、ティムとピカチュウに襲い掛かる。
本作に出てくるポケモンで一番怖いと専らの評判。


■バリヤード Mr.Mime
パントマイムが得意なバリアーポケモン。
ビジュアル公開に際して間違いなく一番の話題を掻っ攫っていったニクいやつ。
ちなみに本作の監督を務めたロブのお気に入りのポケモンとのこと。

事件について知っているらしく、ティムとピカチュウに尋問される。
当初は十八番のパントマイムでピカチュウをからかうなどして真面目に協力する気は無さそうだったが、ティムの予想外のパントマイムの上手さに恐れ入ったのか(?)口を割った。


■ベロリンガ Lickitung
ライムシティ行きの列車にいたなめまわしポケモン。
父のことで気分が優れないティムのもとへ近づき、慰めてあげようと顔を舐めた。優しい性格の個体のようだ。
……が、舌がリアル過ぎてありがたくない。気持ちはありがたいけど、ね。


■ゲッコウガ Greninja
実験台として研究所に収容されているしのびポケモン。「みずしゅりけん」が得意技。
天井から忍び寄ってくるシーンはあからさまにニンジャなのだ!


■ドダイトス Torterra
研究所の庭で飼われているたいりくポケモン。成長力を上げる薬を投与されている。
庭で飼われているのはそんなに大きくなさそうだったが……?
ファンからは、公開年の11月に発売された『剣盾』の新要素・ダイマックスの先駆けと言われる事も。


■ミュウツー Mewtwo
(声:星埜李奈&コタロー・ワタナベ 日本語吹替:山寺宏一&木下紗華)
最強と言われる力を持ついでんしポケモン。
20年ほど前にカントー地方から逃げてきたらしい。
研究所に収容されていたが、ある日脱走する。ハリーの事件に大きく関わっている重要な存在。

吹替版の山寺氏は劇場版ゲスト(特にミュウツーのコピー元の声)、木下氏はアニポケのエーテル財団代表役でお馴染み。
また山寺氏は本作公開後の2023年に発売されたゲーム「帰ってきた 名探偵ピカチュウ」でピカチュウの声を担当した。


■コイキング Magikarp
その呆れるほどの弱さに定評のあるさかなポケモン。
ライムシティの地下に秘密裏に設けられている闘技場の水槽で飼われている。
そこでおこったある騒動で水槽から放り出されるが、ピチピチとのたうちまわる姿が生々しい……。
予告編でもオチを担当しており、本編中においても「R」を摂取してしまってもたいしたことなかった。

……と、思いきや?




この他にもカラカラプリンルンパッパキモリニューラフシギダネネマシュ……などなど、初代から第7世代までのたくさんのポケモンが登場する。
中にはカイリキーのように、話の筋に関わらないようなモブポケモンながら強烈な印象を残す者も。
キミのすきなポケモンは出ていたかな?探してみよう!
なお公開の約半年後には新作発売を控えていたが、アニメ版のように先行出演ポケモンはいない。


【血清「R」】

ポケモンを狂暴化させる効果のある紫色のガス。しばらく暴れた後は疲れ切ってしまい、暴れていたことも忘れてしまう。
ハリーはこの薬品を調査し、ミュウツーが関わっていることを突き止めていた。
ティムがアンプルを発見・偶然流出させたことでエイパムを暴れさせてしまうが、これをルーシーに見せたことで事件の真相に近づくこととなる。

原作ゲームでもこれにまつわる事件が物語の中心であったが、この実写版ではさらなる力を持つことが判明。黒幕はそれを利用して……?


【余談】

  • 作中ではバルーンや看板、ポスターなどで見慣れたいつもの姿のポケモンを見ることができる。どうやらあちらの世界では「デフォルメされたポケモン」が我々のよく知ったポケモンの姿になるようだ。

  • 公開当時はちょうど『名探偵コナン 紺青の拳』も公開中で、日本生まれの探偵たちが同じ時期にスクリーンで大活躍することとなった。

  • 公開年の5月24日には、東京都港区でアニポケの音響監督である三間氏とキャスト陣のトークショー付き応援上映が開催され裏話が披露されたほか、入場者特典としてライムシティ行きのチケット(劇中でティムが持っていたのを再現したもの)が配られた。


  • 映画を始めとする映像作品の本編、または一部がインターネットの動画サイトなどに無許可でアップロードされてしまうのは世界中で問題になっており、各社は厳しく対応している。中には制作スタッフの手元から流出したものが、映画が公開されるより前にアップロードされてしまうことも……。当然これは守秘義務違反、著作権法違反である。
    本作も同様で、公開早々に「POKEMON Detective Pikachu:Full Picture」というあまりにそのまんまなタイトルの動画が、なんと全米公開よりも前にアップロードされていた。動画の尺も本編と同様の104分。これには声を演じたレイノルズもTwitterで反応している。
+ ネタばらし
動画の正体はピカチュウが104分リズミカルに踊るだけの映像。アップロードしたアカウント(Inspector Picachu)の正体は不明だが、おそらく公式が用意したもの。
要するに違法動画をパロディにした宣伝動画というわけである。


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  • あふれ出る原作愛
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  • 実写
  • しわチュウ
  • 2019年
最終更新:2024年12月11日 17:16

*1 演じたのは大川透氏。大谷育江氏以外が演じたピカチュウというだけでも珍しいが、男性の声で人語を話す個体となると更に貴重。