剣と魔法の世界

登録日:2022/07/16 Sat 18:34:03
更新日:2025/05/02 Fri 15:12:00
所要時間:約 95 分で読めます




剣と魔法の世界(Sword and sorcery*1)とは、特定のファンタジー作品において読者のいる世界(あるいはそれと似た世界)とは異なる劇中世界を指す。

異世界モノも該当するがアニヲタでは認識上「読者のいる地球とは別の世界に移行する主人公の物語」と定義している。詳細は異世界モノの項目を参照のこと。

以下、剣と魔法の世界に出てくるか否かに関わらず、ファンタジーを扱う幾つかのライトノベル, 少女小説, 二次創作小説, Web小説及びそれらの影響下にあるコンテンツにおいて共有されている使用頻度の高い項目に関して説明する。


■概要

剣と魔法の世界は今日日本でファンタジー(特に「和製ファンタジー」と呼ばれ「ハイ・ファンタジー」かつ「ヒロイックファンタジー」に分類されるもの)の世界としてイメージされるものとおおよそ合致している。そうした単なるファンタジーとの違いはロールプレイングゲームのシステムを再現したかのような設定や、古典文学を含む他のファンタジー作品から借りたような設定である。これらはまた異世界モノのジャンルの中でシェアワールドのようにゆるやかに共有され、独自の語彙や概念を形成している。

剣と魔法の世界は具体的な定義を持たない。作者および読者は剣と魔法の世界としてタグ付けされたいくつかの作品から類推して大まかなイメージを掴んでいるに過ぎず、したがって厳密にこうでなければ剣と魔法の世界でないだとか、剣と魔法の世界ならばある設定を使うべきだとかいう制約はない(これは設定だけでなく物語の展開にも言えることである)。

しかしながらそれでいて剣と魔法の世界に関する設定は読者および作者に共有されており、作者が採用した設定には多くの場合共有された名前がついているので、読者はその作品の世界にその設定が存在することを瞬時に理解することができ、その設定について(細かい部分が違うとしても)大まかなイメージを掴むことができる。

このような構造には内外から内輪ノリとして苦言を呈されることもある。しかし物語が読者として想定される層に合わせて説明の量を変えたり、物語の内容そのものを変えたりするのは今やなんらおかしいことではない。

また、このような設定の流用は独自性のないものとして解釈されがちだが、そもそもこうしたシェアワールドは設定そのものというよりは設定を取捨選択してなんらかの物語を起こすための土台としての意味合いが強い。もちろんこうした既存の観念を逆に利用し、ジャンルの範囲で適切に読者の意表を突き充分な異化作用を与えることは古くから他ならぬライトノベルで主流の文化である。

こうしたゲームっぽいファンタジー世界やそれを舞台にした作品はそのままジャンル名として「ゲームファンタジー」と呼称されることもある。
元を正せばゲームが剣と魔法の世界を舞台にしているのだが、冒険者ギルドや魔法の回数制度、人間とエルフの能力差など
ゲームシステムの都合が「ファンタジーっぽさ」として取り入れられた剣と魔法の世界は多く、現在は相互に影響を与えるものとなっている。

剣と魔法の世界における各種設定の元ネタは小説・戯曲, 神話, 民話, 哲学書, TRPG, CRPG, MMORPG, 特撮映画, 果てはゲームブックやパーティーゲーム, FPSなど多岐に渡る。メルヘン的な世界観は設定・モチーフ共に用いられることは比較的少ないものの、主人公の思想や魔法のあるべき姿などとして稀に現れる。



■設定・用語

設定に関する語彙は読者の間で共有されている。用語は共有されたものとそうでないものとに関わらず、作品の中では一般名詞との混同を避けるために外来語や漢語を用いた造語によって表される傾向がある。とくにWeb小説においては英語を用いたネーミングが多い。

こうした共有は以下のようなプロセスで行われると思われる:

1. 独自な設定を持つファンタジー小説が生まれる。または、独自な演出をもつ映像等の作品やゲームのシステムなどを合理的に説明するための設定が生み出され、ファンタジー小説に取り入れられる。
2. 「小説家になろう」などの幾つかの小説投稿サイトのコミュニティでその設定を借用した設定が用いられはじめる 。
3. その設定が定着し、特定の語で包括的に呼ばれるようになる。

作品内の描写として、固有名詞や用語に現地の言語を使うというようなことは少なく、地球と似たような響きであったりだとか、あるいは意訳していると捉えられる(しかしながら、例えば段位の「メートル」や、地名が名前の由来である「ハンバーグ」のような単語は使うのが躊躇われる傾向にある)。

【描写の省略されがちな要素】

ネーミングについても言えるが、特に食べ物等生活の質に関わる部分に関しては既存の小説で度々言及された部分があるため、しばしば描写が省略される。代表的なものとして黒パンと白パンの違いや都市の清潔さに関わるものがある。特にマヨネーズやオセロが存在しないことに関しては主人公が現代知識で無双する展開をするために頻繁に使用されたネタである。

これらに関しては通常、特に描写されない限りは魔法的なもので現代レベルのものになっていると解釈される。戦闘シーンではリアルさを演出しながら、他のシーンでは児童文学のように当然のようにハンバーグやパフェを出してくる作品もある。

【地球】

異世界を扱ういくつかの作品では読者のいる世界(と似ている世界)から異世界へと移動するものや元の世界と異世界が地続きになる展開が見られる。異世界と元の世界とを具体的に指し示す呼び名は共有されていない。
このため異世界作品全般を扱うコミュニティでは移動した先の世界のことを単に異世界と呼び、読者の世界と似ている方を現実世界または地球と呼ぶ。
ただし、異世界が元の世界の歴史の一部が異なった分岐世界(いわばIFストーリー)や男女逆転・醜美逆転のような一部の価値観が異なっているものは異世界と呼ばず並行世界(パラレルワールド)と呼ばれることが多い。
(以下、本記事では物語の中に存在する読者のいる世界と似ている側の世界を「地球」、似ていない側を「異世界」と呼ぶ)。

多くの場合、異世界と地球とは地続きではなく、科学技術を超越した特殊な方法でなければ行き来できない。

〔転移/転生/召喚/憑依〕

地球で死んだ人間が来世で異世界に生まれ変わる事を「異世界転生」、死なずにそのまま来る事を「異世界転移」と呼ぶ。転生/転移をした人間は作品によっては転生者/転移者などと呼ばれる。
また、転移ないし転生が異世界人の魔法や儀式によるものである場合、召喚された者を「召喚者」と呼ぶ。
別世界からきた彼らに対し、その世界に元々いた存在は「現地民/現地人」等と呼ばれる。

また転生といっても、赤子として生まれ直すものの他、ある程度成長した現地人に対して転生者/召喚者の精神が突然に憑依するケースも多い。
その場合に起き得る事象に関しては肉体の乗っ取りを参照。

転移/転生という用語は先に読者の側で広く定着し作品を区別するために用いられているため、本来は混同されるべきではない。

転移者/転生者/召喚者は世界を移動する際に特殊な技能の習得などなんらかの恩恵を得る場合がある。
また、多くの場合彼らは異世界に来た段階で異世界の言語による会話が可能になっている。

主に所謂女性向け作品において、しばしば地球と異世界とは密接な関わりを持っているものとして描かれる。
例えば悪役令嬢と呼ばれるジャンルで異世界に相当するのは、転生者が生前遊んでいたファンタジーゲームの世界である。


【世界表現:〇〇風】

架空の世界を簡潔に説明するために現実の国名や時代を用いる、比喩法の直喩に該当する表現技法の一種。
あくまで比喩表現であり剣と魔法の世界以外でも使用例はあるが、他のジャンルに比べて定義の広い剣と魔法の世界での使用率がもっとも高い。
作品を相手に伝える際に世界観から丁寧に説明していくと小説でありがちな「設定語り」に陥って、読者が興味を失ってしまいかねない、そのため自分が伝えたい情報のために舞台などを現実の世界の情報を使用して簡略化する際に使用される。
基本的に作中で使用される場合は物語と共に世界が深掘りされていくので、大抵導入時にのみ使われその後は言及される事は少ない。
シェアワールドのような明確に設定があるわけではなく、どちらかというとエスニックジョークのような大衆が抱く大雑把なイメージの方が近い。
そのため〇〇風と言われても個々によりイメージが異なる場合もある。


使用するべき上で以下注意すべき点

1.比喩が相手に理解されない
 例えば日本風と言われても日本が分からなければイメージしようがない。
相手の知らない物に例えてしまわないよう留意する必要がある。
それでもアニメや漫画等なら視覚的なイメージも付随させられるが、挿絵も無い小説の場合は非常に困難になる。
あくまで補助的役割なのでそのまま読み進めれば世界観を理解して貰えるだろうが、様々な作品が出ている今では掴みに失敗してそのまま続きを読まれないなんて事になりかねない。
使用する場合は世界観だけでなく使用する名詞も、一般的に普及している名詞や大多数が理解できる様なもの(教科書や新聞、旅行パンフレット等に掲載されている様な情報等)から引用するのが良いだろう。

2.比喩物の印象を引きずってしまう
 日本風の架空作品を作るうえで日本に対して作者が好印象の場合と悪印象の場合では出来上がる作品が違う。そして同じように好印象もしくは悪印象を抱いている読者では見解がことなる。同じ方向性の作者と読者なら問題はないだろうが印象の違う組み合わせだと比喩表現を介して日本を美化しているあるいは貶めようとしているという主張を繰り広げたりする場合もある。現実にある名詞を使用する場合は比喩対象の印象も勘定に入れたうえで使用には注意しよう。
ただし、万人から嫌われるものはあっても万人に好かれるというのは難しいので気にするのはほどほどに。

3.比喩表現を現実の情報と同一視してしまう
 こちらは作者側ではなく読者側で発生しがちな問題。基本的に創作世界の全体像を把握しているのは作者だが作中の全ての情報を読者に伝えるのは難しく一から全てを説明し続けるのは本題から外れかねない。そのため本題から逸れる事柄程詳細な説明は省かれやすく不明な情報となりやすい。
物語の中で不明な情報があっても読者が周囲の情報から推測して考察をしたりするのだが中には比喩表現をそのまま同一視した上で語ってしまう。当然、架空の世界と現実の世界では同じ条件の世界ではないため齟齬が出てしまうのだが現実の情報は実際に有った出来事として正しいと捉えて架空世界側の問題として主張してしまう。
作中の実名は天の声・地の文・果ては異世界転生等での個人の主観的感想の中で出てきた場合でも基準にしてしまうことも多い。
考察と明確な違いとしては「作中の情報から推測し空白部分は自論で保管している」のであくまで自説なのに対して同一視している場合は
「作中の比喩表現を同一視して現実の情報を持ち出して組み立てた結果の齟齬を矛盾として主張する」と自分で思考している要素が無いのが特徴。
そのため自説の要素が無いので他者も引用しやすく作品内の情報で語っているわけでもないので類似作品に対してそのまま主張を引用しやすいのも特徴。
同一視の代表例としては「ジャガイモ警察」の代名詞にもなっているジャガイモが有名。


尚、同一視した結果矛盾を主張する上での要素として『時代』・『地域』・『実物名』が必要となる。
例えば、中世ヨーロッパ風異世界で登場するじゃがいもに対して「異世界=中世ヨーロッパ」と捉えて「架空のジャガイモ=現実のジャガイモ」として現実の経歴を当て嵌めてた上で「中世にはない」と主張する訳だが逆に言えば
  • ジャガイモがオリジナル名といった別名になっているとジャガイモの歴史を持ち込めない
  • ヨーロッパ風とだけ書かれるとジャガイモが有った時代なのか特定できない
  • 中世風とだけ書かれるとジャガイモが有った地域なのか特定できない
とそもそも主張が出来なくなってしてしまう。
実のところ同一視した場合の主張には架空世界=現実世界という前提があるためじゃがいもの場合
  • 架空世界=中世ヨーロッパが同じであること証明
  • じゃがいもの経歴が同じであることの証明
  • 魔法や魔物などの現実に無い要素が短縮要素となっていないことの証明
などが必要になってくる。
例えば異世界ですと言われれば歴史は参考にできても証明には使えないし、元々自生してると言われれば経歴は役に立たず、瞬間移動の魔法が有れば陸路の輸送を短縮できてしまう。
また、現実で情報が確認できるのが前提になるため中世ヨーロッパ風異世界でドラゴンが登場しても「中世にはいない」と主張することはない。
これは現実でもドラゴンの存在が架空であり生息地域や生活サイクルなどが定義化されていないため引き合いに出せないため。
もし作中内容を否定する場合はそれの情報が作中の情報で語られているか注意しよう。


同一視化した結果の主張として以下のようなものがある。

①そんなものはないと情報を否定してしまう
 実名に対しての起源や来歴を基準にした考え方。
中世ヨーロッパ風と言われれば中世ヨーロッパそのものと捉えてその結果として中世ヨーロッパに存在しない物が存在すると「(現実の世界では)そんなものはなかった」と否定行為をしてしまう。また、物語に対しての必要性の有無に関わらず来歴や起源の説明を要求する傾向にある。
中世のように時代を逸脱したものを対象にしたものが多いが分かりやすく逸脱したものよりも近い時代のもの程過剰反応しがちで、国名を比喩に使った場合はその後登場する名詞に対して現実で2つ以上の国が起源を主張している場合起源主張の場になりやすい。

②こうあるべきだと描写の主張してしまう
 実名の対しての成り立ちや仕組みを基準にした考え方。
技術Aが存在するなら前提として技術Bと技術Cが必要だ、と現実の歴史で確立した流れをそのまま当て嵌めてしまう。
その結果として作中に説明のない技術等を前提にして描写シーンに対して「(現実の世界では)技術Bが有る筈で正しい描写はこうだ」と主張行為をしてしまう。
厄介なことに前提に対する説明が有ってもそこから更に技術Bに対しては技術Dと技術Eが必要と深掘りすることが出来てしまうため最終的には①のような起源と来歴に到達してしまうことが多い。技術だけでなく王権といった政治体制のような組織体制なども対象になりやすい。

③これぐらい必要なはずだと必要量の主張をしてしまう
 実名の物の作成方法を基準にした考え方。
この物を作ろうとするれば「(現実では)これだけの素材や燃料が必要だ」と必要な計量をそのまま当て嵌めてしまう。
また、「(現実では)このような有害成分が発生する筈だ」と副産物に対しても主張する場合もある。
特に公害やオイルショックような不足要素などがそのまま引用されやすい。


TRPGにおいて
TRPGような異世界を舞台にした場合においては上記のような実名による同一視は発生しづらい。
理由としてはプレイヤーがその世界のキャラになりきってプレイするため現実の情報の持ち込んで主張してもGMやプレイヤーからしてみれば「それ現実の話だよね?」で済む話であることに加えてプレイヤーにはミッションを課せられているため「それでシナリオにどう影響するの?」とその主張がクリアに必要な要素を含んでいない限り相手にされ辛いからである。
楽しむためでもなくクリアのためでもなくただ現実の情報と照らし合わせての矛盾主張はただの水を差す行為にしかならず執拗に繰り返すようならGMから退出を要求されかねない。

一方で同一視化がまったくないかと言えばそうではなくシナリオに対して発生しやすい。
シナリオに対して同シナリオのプレイ経験があったりプレイ動画視聴していたりすると「(別のGMの)同じシナリオorプレイ動画ではこのロールでダイス修正を受けていた」などといった成功経験の持ち込みといったいわばシチュエーション対するアクションの同一視や原作のTRPG化やサンプルシナリオの改変シナリオなどの元ネタがあるの場合は「原作or元のシナリオでは~」等を原典の情報を理由に道具や敵の出現の否定を主張してしまう場合がある。また、GMがNPCロールする際にも有名NPCの場合は「あんな台詞言わない」や「こんなことしない」などといった振る舞いや言動に対する解釈違いも発生させやすい。
同じシナリオやNPCでもGMどころか個人によって判断基準もキャラに対する認識が違うのだから「GMとってはそのような認識でいる」という相手の考えを許容する姿勢でいないとただ自分の考えを押し付ける原作厨や設定厨といった誹りを受けかねないので注意が必要である。



【中世ヨーロッパ風】

おそらくもっとも使用頻度の多い語のひとつ。現代的な機械が存在せず、西洋的な外観をしていることを意味する。
科学まだ発達しておらず錬金術や森の人狼といったファンタジー要素があり、国同士の争いなどといった魔物以外にも戦いの場があり、身分階級により成り上がりや身分差恋愛要素などといった様々なジャンルに幅広く対応している。
機械が存在したり西洋のものではない外観であったりするような異世界作品も存在する(特に少女小説やソーシャルゲームに多いように思われる)が一般に異世界といえば「中世ヨーロッパ風」であることが多い。

なお中世ヨーロッパという語とは裏腹にその実態は史実の紀元後5世紀から15世紀のヨーロッパの姿とは異なっている。ここでいう中世とは主に封建制に代表される文明誕生以降近代以前の価値観や法制度等を指し、またここでいうヨーロッパとは主に西欧の特徴的な外観を持つことを指す。
特にモデルとなりやすいのは主にドイツ等における城郭都市やウェールズなどのケルト諸語圏が多いようだ。

「中世ヨーロッパ風」にする利点は第一に作者/読者の属する現代日本文化に対する上層の文化としての異質さと身近さが共存しているからである。これはかつての西洋の小説等における「オリエント風」だとか「中国」「ジパング」といった存在とも通じるのかもしれない。
第二に西洋近代的な価値観からの類推で西洋的なもの全般が洗練されたものに見えるからであろう。
第三に、最大の利点として、西洋圏は文字を持つためかなり多くの資料が文献として残っており、加えて日本との交流が活発であるためにそれらの邦訳されたものも多く、資料集めが楽であるという点である。
作者の側としては突飛な世界観や多くの世界観の混在は設定の整合性に気を配る必要性が生まれるため、できることなら既存の(すなわち実在する)、単一の地域をモデルにして創作を行った方がコストの面で楽である。

史実における中世ヨーロッパとの相違点は、主に以下のようなものが挙げられる。

・様式が近世以降のものである
当時の美術はロマネスクやゴシックといった時代に分類されるものであり、たとえば衣服はいくつかの柄を継ぎはぎしたようなものや、ジョースと呼ばれる男性用長靴下が特徴的であり、後期にはサラセンの影響を受けて長く尖ったものが増えた。
ナイフやフォークはギリシャ・ローマで発展したがその後衰退し、以降は手づかみで食べるのが習慣となっている。
また当時のヨーロッパでは香辛料を取り寄せる際にはイスラム教の勢力圏を通さねばならず、これが時勢的に困難なため、貴族の多くは権力を誇示するため味を無視し凡ゆる香辛料を使った(もっとも異世界と地球の地理やら植生やらが同じはずもないので、ここはさほど気にする点でもないだろうが)。

異世界における建築物は15世紀のドイツなどに見られるチューダー様式やハーフティンバー様式(木組みの家)、ないし16世紀以降に見られるバロック様式が典型的であり、ゴシックやロマネスク風の街並みはやや少ない。主人公が複数の街を移動するタイプの話の場合、これ以外の様式も用いられる。
2020年頃から徐々に現代的な衣装が入り始めたらしく、特に文明力を示したりするシーンではこうした様式に縛られない。

・覇権宗教、一神教の宗教が存在しない事が多い
中世ヨーロッパの多くの国々ではキリスト教が信仰されていた。
またキリスト教の勢力拡大につれ、土着の宗教はキリスト教的な存在(天使、あるいは悪魔の使いなど)として解釈され、吸収または駆逐された。

異世界が舞台である以上、キリスト教に近い宗教、延いてはキリスト教そのものが存在しないのは当たり前であるが、
それでも登場人物が特定の宗教を信じている、多くの人々から信仰される巨大宗教が存在するということは必ずしも多いわけではない。
またなんらかの宗教または神話が広く信じられていてもそれらは一神教ではないことが多い。これは複数の神や宗教がある方が争いが起きやすく物語になるからだろう。

ただし「多神教」VS「キリスト教をモチーフにしたと思われる一神教」のような構図の対立を描く作品もない訳ではない。例えば狼と香辛料など。
往々にして土着の宗教を無理に排除したり、逆に新しい宗教を徹底して拒んだりする登場人物がいる。
この対立が物語のメインである場合は、双方の価値観を示して読者に道徳を問うような形になっていることも。
しかしメインでない場合は単純にどちらかが悪人の集団になっており、その「悪の教団」側に据えられた宗教組織はだいたい2パターンに分けられる。
  • 唯一神の名の元に他国を侵略したり、経典で異種族を差別しているなど、大々的に悪いことをしている教団
  • 邪神を信仰し、貴族や政治の中枢に密かに入り込み操っているなど、密かに悪いことをしているテロリスト系教団

異世界に登場する固有名詞(剣、英雄の名前など)は実在の神話から取られていることが多いが、宗教に関しては実在の宗教の名を出すとまずいからか、あるいは異世界なのだから地球の宗教と同じものが存在するのはおかしいという判断が働くのか独自の名称であることが多い。

・衛生意識が高い
ヨーロッパでは古代ローマに見られたような水道設備は廃れることなく残ったが、公衆浴場が売春目的で使われたことにより規制され復興と衰退を繰り返した。
また清潔さは小賢しさとして忌避されるようになったりしたため、黒死病のような病気も流行した。
このため例えばイギリスでは14世紀から15世紀にかけて公衆の衛生状態を良好に保つための法律や制度が作られたり、公衆便所が作られたりした。*3

異世界においてはこのような問題は存在せず、その理由は魔法や古代の技術等に求められる場合が多い。

・人種が違う
中世ヨーロッパには白人だけでなく黒人やアジア人が少数派として住んでいたはずだが剣と魔法の世界には存在せず、出る場合は「異国からやってきた」という設定になることが多い。
特に主人公が黒人である作品はほぼない。

・思考方法が現代の先進国と大きく変わらない
これは主に説明の時間を省くためでもあるが、たとえば自分の心の中に自分にも分からない部分・無意識が存在することが理解されていたりする。
また「情報」や「血清」といった高級語を用いることも少なくなく、稀に会社や社会保障制度のある国が登場することも。
平民等が識字率や計算能力を持っているかどうかについては作品によってまちまち。肉体労働をする女性の割合も多い。

一方、現実世界に存在するような差別や異質・奇異に対する嫌悪等の感情が市民に描写されるとは限らず、またそのことに理由が与えられることもある。
敵キャラクターに関しては威厳や風格の観点から必ずしも合理的な言動をしない。
主に仲間キャラクターに関して、主人公の故郷の価値観を受け入れようとする傾向が高い。

〔中華風/アラビア風/その他〕

ヨーロッパ風の世界ではなく、他の地域をモデルにした作品もいくつか存在する。これらは物語の構造としては他の異世界モノと似ている部分があるものの、設定においては他の作品との共通点が比較的少ない。
ヨーロッパ風のファンタジーでも一部の地域や民族の性質が日本やその他の国々のものと似ている場合がある。

このような舞台で描かれる風習は多くは着物や和食のようないわゆる特定の国家を代表するものであることが多く、国家に吸収されていない村落共同体のような小集団の持つ性質は見られない(例えば、郷土料理や妖怪伝説のようなものは登場しない)。

中華風ファンタジーは主に少女小説に多く、その中でも宮廷で君主の結婚相手になるために政治的な戦いを繰り広げる「宮廷モノ」と呼ばれるジャンルが古くから人気を誇っている(10年代以降に発展した「悪役令嬢モノ」との共通点がみられる)。
古代中国が強大な権力を持つために壮大な世界観を描くことができ、宮廷という空間が戦いを繰り広げる女性たちのそれぞれの背景を描きやすいためであると思われる。

〔和風〕

時代としては妖怪などの闊歩する平安、戦乱の世の戦国時代、近代系の場合は魔法と科学が織り交ざった物が使用されやすい。
戦闘物では日本をモデルにしているためか島国であることが多くそのため戦国時代ベースでもない限りは直接的な人間同士の争いが表立ってないため相手が魔物や組織内での派閥抗争の類になることが多い。
基本的に作中で登場する語録は西洋系ファンタジーから和風のものに置き換えられているか別枠を設けられる。
魔法使いの場合は陰陽師、退魔士、巫女、忍者といった役職で使用できる力というよりも使用目的で分類化されている。
魔物は妖怪をモデルにした場合が多くそのまま妖怪や単に妖(あやかし)と呼称される。妖怪との婚姻の話などもあることから共存する妖やその結果生まれる半妖なども存在もある場合もある。人間側の味方を付く妖としては狐(九尾)、鬼が代表的。敵である代表も狐(九尾)、鬼であることが多いのだが
力の源も魔力だけでなく霊力、妖力、神力がなどと呼称され単に使い手の違いで同じ力である作品からそれぞれが全く違う性質を有している作品まである。
島国の場合で外の魔物が登場する場合は魔物狩りから逃れてきた魔物が自生したりした結果であることが多い。
同様の理由で追いかけてきた海外の討伐者や近代物の場合は他国の技術を学ぶ留学生などは組織の代表や少数であることが多い。
神に関しても肉体を持たない概念的なものから肉体を持ち土地を支配するような形態もあり肉体がある場合は治療や神殺しなどといった内容で物語に関わってくることも多い。

【ゲーム風】

異世界の雰囲気をゲームに寄せることはよく行われる。同じゲームが元ネタといっても、それがMMORPGなのかTRPGなのかで印象はガラリと変わる。キャラごとのいわば属性は早い段階から「ゲームに寄せている」という意識が薄れてキャラ文芸特有の表現として確立していったのに対し、こうした小説では意識的にゲームの要素をどう小説で表現するかということに焦点が当てられている。

一方でドラゴンクエストのように「魔王と勇者」をテーマとする作品は少なく、「〜風」というよりはそうした特定のゲームのパロディ的な意味合い(いわば「典型的なイメージ」としての扱い)が強くなるようだ。
同様の理由から絵本や、あるいは少年漫画のように純粋にオリジナルな設定でのファンタジーをこれらのゲーム風の世界観と中途半端に混ぜてしまうと浮いて見えてしまう。

【魔物/モンスター】

化け物を指す語だが、異世界における魔物は通常森林や洞窟などの人里から離れた場所に生息し、目に見えず触れることのできない幽霊のようなものばかりではなく、実際に目に見え物理的に触ることができるものが多い。

特に典型的な魔物として有名なのはゴブリン, トロール, オーク, ドラゴンであり、特に前三者は多くの作品で古典的な神話に見られない特徴的な設定を持つために、序盤に登場させることで異世界であることの記号のように用いられる。

神聖な存在のことを「神獣」などと呼んで区別することがある。


〔ネームド〕

Web小説の読者の間で用いられる用語で、名前のついている重要な脇役のこと。ただし作中では、個体名のついている魔物(ネームドモンスター)を指す場合がある。主に何度も逃げ延びた個体や甚大な損害を与えた個体や外見が著しく異なる個体など通常の個体と一線を画す存在であるあることが多い。
ネームドモンスターは他のモンスターよりも高い知能と戦闘能力を持つ。単純に知能や強さによって名前がつく場合もあるが、名前を持つこと自体に強くなる効果がある設定もある。

〔ハイ-, グレーター-, レッサー-〕

モンスターや下記の異種族/亜人, 後述のジョブ等につけられる語根。ハイ, グレーターなどとつくものはそれらのつかないものよりも位が高く、レッサーと名の付くものは低い。作品により位が高くなるにつれ人間の世界から離れて肉体のしがらみから解放されるか、あるいは逆に人間の世界に近づいて肉体を得る。

〔スタンピード〕

Web小説でたまに使われる用語で、「モンスターが大量発生する」現象のこと。
多くの場合はstampede(殺到)の名の通り、モンスターが人里に押し寄せて、戦記ものや貴族もの作品なら軍隊の出撃、チートものなら主人公による無双シーンなどの展開に繋がる。
よくコミカライズで大量の怪物を描く漫画家が死にそうになっている
元々は動物が恐怖のために同じ方向に一斉に移動することを指す語で、現在の意味で用いられたのは2004年刊行のライトノベル「ガンズ・ハート」が初と思われている。他の作品で本格的に使われ始めたのは2014年頃からとみられる。

〔トレイン〕

複数の魔物が人の後を追って列車のようになる現象。元はMMORPGにおいて敵の注意を引き付けて一網打尽にする(しばしば迷惑行為にあたる)狩りの方法。

【異種族/亜人】

人間とは異なるが似ている身体や心理の形態をとる生き物を魔物と区別して異種族または亜人と呼ぶことがある。また、人間を含めそうした人間のような存在を区別するための単位として種族または単に民族という用語が用いられる。魔物の場合と比較すると、オリジナル(後述する「アプリオリ」志向)の種族はあまり作られない傾向がある。

魔物との区別は必ずしも自明ではなく、ゴブリン・ハーピィ・オーガ等の知覚種族を亜人として扱ったり、逆にダークエルフを魔物扱いするなど、定義は世界設定によって大きく変動する。
また設定によっては「人型化能力」がたびたび登場することも人と人外の垣根を曖昧にしている。

現実世界において生物学的に異なる者同士は交配しても子供が生まれなかったり、生まれても生殖能力が無かったりするが、異なる種族同士や人間と魔物の間の恋愛やおせっせを描く作品ではこうした問題は生じないことが多い。
これについて「亜人の分類は魔法学的なものである。生物学的には「ヒト」の範疇であり、現実世界における『人種』程度の違いしかない」「見た目や能力の差違はそれぞれの種族の『魔力』の性質に起因するものである」といったように設定されていたり、「相手が肉体を人間のそれに変化させた」などといった形で解決したりなど、問題が発生しないよう説明がなされる場合もある。

同じ食堂を使ったり冒険で食料を共有したりと、食性もあまり大きな差はないようだ。


設定によっては神が実在することがある。
神は一つの世界に複数いる場合もあれば、それぞれの世界につき一柱ずついたり、あらゆる世界を統括するただ一柱の神がいたりする。

異世界にはしばしば宗教のようなものはない。もしくはキリスト教的な一神教というよりは多神教的であり、信仰または崇拝する対象は個人個人で異なったり、神だけとは限らなかったりする。またそれぞれの教義は寛容であることが多く、宗教が原因で紛争となるような作品は多数派ではない。

神はしばしば主人公が地球から異世界へ行く小説において、主人公が異世界に行く理由となったり、異世界へ導いたりする存在である。

神の名は北欧神話やギリシャ神話から取られることが多い。神の配下たる天使の名前はアブラハムの宗教における天使の名前から取られることもある。

・「世界の意志」
魔法やスキルの仕組みに関わる存在として、世界そのものを代表する存在が現れることも。魔法が「世界を騙す」仕組みだったり、世界そのものに教わるものだったりする。

【精霊】

魔力またはなんらかの精神的なエネルギーの集まるところに発生する、意志を持った存在として描かれる。
精神的なエネルギーは信仰心によって生み出されるので、信仰心が少ない精霊は知性や実体を持たず、知性を持った精霊でもどのような信仰を受けるかで姿が変わったり、信仰されないと消えたりする。

ある種の魔法は精霊と交信し、精霊に代わりに魔力を使ってもらうことで使用するため、術者本人は魔力を消費しない。


【魔法/スキル】

詳細は魔法を参照。

異世界における魔法は主にマナあるいは魔力と呼ばれるエネルギーを消費して使用し、魔力やマナが尽きた状態で魔法を使うことはできなかったり、使うと意識を失ったりする。*7これは物語において主人公らの動作に制約をつけることにも一役買っている。
魔法を使う人のことを魔法使いや魔術師と呼ぶほかに、作品により魔法士、魔導士などと呼ぶ。*8魔女などの語はメルヘン的な連想から特別な意味が与えられていることがある。
魔法を行使している人物を術者、魔法の効力を受ける人物を被術者と呼ぶ。

多くの場合、直接魔法にかけられて変質したものは魔法使いが死ぬと元に戻る。また魔法には効果範囲や効きやすさがあり、被術者と離れれば離れるほど魔法の効き目や動作の正確性が低下し、魔法の技量などが高い相手に対しては何らかの理由で魔法が効かない。

魔法という語は、例えば「治癒魔法」「攻撃魔法」のように、複合語の後部要素にすることで前部要素に関わる魔法であることを意味する。

攻撃魔法を含む戦闘用の魔法の多くは、銃のように遠距離から相手に当てることができる。このため魔法の使い手はスナイパーのように敵の射程の外に居るのが基本であり、接近して戦うのに必要な筋力は持っていないことが多い。

映像や漫画等における多くのファンタジー作品では、魔法の動作は身振りや手振りなどと関係している(たとえば何もないところから火の玉を呼び出して敵に命中させる場合、指か杖のようなものを振ることでその位置をコントロールする)。異世界ファンタジーの場合も例外ではない。*9

効果が必中である場合を除いて、効果を引き起こすものをかわすことができれば、魔法は効果を発揮しない。この射程距離は数10cm〜せいぜい数十メートルであり、これより射程の長いものを扱う者は強い魔法使いである。
この種の魔法は通常身体の末端や杖, 魔導書(まじないの書かれた本)などから放出される。軌跡は光る帯または弾丸のようにして見えることがあり、この場合、帯や弾丸は目で追える程度には低速である。

魔法に対する過度な説明はしばしば魔法の神秘性を損なうものとして見做されるが、設定に整合性を持たせ読者に適度な興奮を与えるためには魔法の効果や使用可能な条件等に制約を設ける必要がある。このため異世界では魔法という語の代わりにスキルあるいはギフトといった用語が用いられる場合がある。

また、魔法は「魔法」と「魔術」とで用法が異なることも少なくない。二つの力の根源が同一である場合も、魔術はしばしば「体系化された」「小手先の」技術とされる。


〔素材〕

道具を作ったり魔法を使ったりするのに特別な素材が必要となる場合がある。

・オリハルコン/ミスリル
オリハルコンは主に20世紀以降のオカルトにおいて未知の新素材の一種とみなされた金属であり、ミスリルはトールキンの小説「指輪物語」に登場する架空の金属。
ファンタジーにおいてはこれらは剣など武器の材料や、魔法の媒体として優秀な特性を持つ金属である。
伝説の金属の項目も参照。

・魔素
マナを生み出す物質または魔物にとってのエネルギーとなる物質。

・魔石
魔素が多く含まれる石。作品によって、鉱物の一種として鉱山があったり、魔物の体内などから出て来たりする。

・エーテル
古代ギリシャで天を満たすと考えられていた第五の元素であり、物理学においては光の媒質を表していた語。
ファンタジーにおいては魔法または神に関係するなんらかの霊的な物質として描かれる。

・モンスターの素材
モンスターハンターのごとく、倒したモンスターの素材を使って道具や装備を作ることがある。


〔属性〕


ファンタジーのさまざまな物(特に魔法や魔力)には属性が存在し、属性ごとに共通の効果を持っていたり、特定の属性の魔法が効きやすい魔物がいたりする。
たとえば、水属性を持つ魔法は火属性の魔物に強く、雷属性を持つ魔法は水属性の魔物に強い。
また、例えば川など水辺では水属性の魔法や魔物が強くなる。

ヨーロッパの四元素の名を借りた地水火風やそれに光や闇を加えたものもある。四元素説は主に錬金術や医術において用いられ、錬金術の多くの用語がそうであるように、水や火といった名称はそれそのものでなくそれらに象徴される物質の状態を指すが、ファンタジーにおいては水や火に関連するものという意味で用いられる。
また、東洋の五行説のように木火土金水の五属性としたり、雷や氷や陰や陽といった独自の属性を扱ったりするものも多い。

・魔法剣/エンチャント
武器に魔法で火を灯したり電気を流したりすることで威力を高めたり、特殊な効果を付与したりすること。魔法剣を使う戦士のことを魔剣士または魔法戦士などと呼ぶことがある。

・無属性
属性がないか、または中和されている魔法。もしくは真空や虚空、虚無などを操る魔法。

・属性攻撃, 属性防御
属性のついた攻撃と、その攻撃に対する防御力。属攻, 属防。

・耐性
ある属性や効果を持つ魔法や攻撃を受けたときに、それを緩和するような特性。火属性耐性, 毒耐性など。

・無効
特定の属性や効果を持つ魔法や攻撃を受けても効果がないこと。火属性無効, 即死無効, 束縛無効など。

・反射
特定の属性や効果を持つ魔法や攻撃を術者に返す性質。

・吸収
特定の属性のものが身体に触れると傷が癒えたり、力を増したりする性質。
または、相手の持つ力などを吸い取る魔法のこと。スキルの名前としては「〜ドレイン」が使われる。例えば(ウィザードリィのエナジードレインのように)相手のレベルを吸い取るものは「レベルドレイン」と呼ばれる。
上記の反射ともども、吸収/反射の項目も参照。

〔アライメント〕

個人あるいはジョブ等に設定される、善悪や混沌/秩序等の属性。詳細はアライメント(ゲーム用語)を参照。

【トラップダンジョン】

魔物が存在し、罠が仕掛けられている洞窟や迷宮のこと。単に「ダンジョン」とも呼ばれる。

ダンジョンには資源やスキルを得られる宝箱が存在したり、あるいはダンジョンで出る魔物を倒すと貴重な資源を得られたりするため、こうしたものを求めてダンジョンに赴く人がいる。

ダンジョンは普通いくつかの階層があり、階層が下がるごとに魔物は強く、報酬も多くなる。CRPGやMMORPGをより意識した作品等では、各階層に一体ずつボスモンスターがいる。また、階層を下ると景色が一変し、空があるかのように見えたりすることもある。

ダンジョンの出自は作品によってまちまち。単なる廃墟だったり、魔物の住処であったり、中には「ダンジョン自体が魔物と共生して人間を誘き寄せ捕食する生物である」という作品もある。

突然の崖や水溜り、疫病を運ぶコウモリネズミ等が存在するかどうかは作品次第。

〔ダンジョンに関する諸要素〕

ダンジョンは常人が入り込むと命を落とす危険な場所であることが多く、事前準備が大切である。

・パーティ/仲間
通常、剣と魔法の世界の冒険者は、互いの弱点を補う別々のジョブを持つ複数人で「パーティ」を組んでダンジョンに潜る。
少ないのは手数が足りなくて危険な一方、「人数が多すぎると冒険が赤字になる、ダンジョンの狭さで上手く戦えない」など多人数の欠点から2人~6人程度で入ることが多い。
「大勢で入るとモンスターが狂暴化する」など環境的な制限がされることもある。
大本を辿るとTRPGを遊んでいた人数をそのまま持ってきたものと思われる。

一人でダンジョンに入る/冒険する者は「ソロ」と呼ばれる。

・光源
たいまつ、ランタンなどが使用される。
ダンジョンの壁が藻類などで光っていることもあり、明かりを持ち込む必要がないこともある。

・食料
冒険には食べ物も必要だが、ダンジョンの入り口に町が併設されていて日帰りで冒険が終われる場合は最低限の食糧しか持たないこともある。
魔物を食べるなどして凌ぐ作品もある。

・積載量
金属の武具を差して重い鎧を着こみ、大量の食糧とポーションを持ち運び、沢山の財宝を持って帰ろうとすれば
当然荷物がいっぱいになり、悩みの種になるのが「アイテムのかさばり」である。
剣と魔法の世界の物語では以下のような解決策が見られる。
  • 重さやサイズを無視できる「魔法のアイテムボックス」が存在し、そこに収納できることにする
  • 「荷物持ち士」や「ポーター」と呼ばれる、アイテム持ち運び専門のジョブが同行していることにする*12

【冒険者ギルド】

史実におけるギルドは中世から近世にかけて存在した同業者組合を指す。
ファンタジーにはダンジョンを探検して資材を得たり、村を襲う魔物を退治したりすることを生業とする「冒険者」が存在し、そうした人々が混乱を起こすことなく働けるようにするために特定の組織に属するようにしたものが冒険者ギルドである。登録された冒険者にはギルドごとに異なるルールが課せられる。

冒険者ギルドの本拠地は通常酒場になっていて、他の冒険者との出会いの場となる。
個人または集団が報酬と引き換えにギルドに依頼をし、冒険者がその依頼を遂行する。

ギルドに登録された冒険者は酒場に張り出された依頼の中から好きなものを選んで出動する。場合によっては大規模な集団でダンジョン等に駆り出すこともあり、そうでない者のことは「ソロ」などと呼ばれる。

ギルドにはしばしばギルドへの登録や依頼の管理を行う受付嬢が存在する。

【軍】

ギルドに所属する冒険者との対比でしばしば国家に所属する「正規軍」が登場し、騎士などと呼ばれる。
女騎士は華があり人気の職業である。

貴族

ファンタジーにも社会があるが、身分差は必ずしも存在するとは限らない。身分差がある場合、貴族が存在する。

異世界モノの爵位といえば「辺境伯」がよく使用される。
「辺境伯は辺境=国境を守る貴族の爵位で、有事に動ける独立性と戦争に備えた強い軍備を持ち
他国との交流により文化が発展した領地を持つ高位の貴族である」という設定がWeb小説で広く共有されており
現実の歴史上の誰が辺境伯かも知らない人でも概念について知っていてもおかしくないほどになっている。


【大陸】

ファンタジーで語られる世界観うち、国家を超えた範囲が「大陸」と呼ばれることがある。
これは現実世界の大陸のように地続きの範囲全域を指すこともあれば、現実世界におけるヨーロッパ世界や中東アラブ圏、中華冊封体制などの文化圏を指している場合もしばしば見られる。

地形・気候


【ジョブ】*13

スキルや占いなどによってそれぞれの人物に付与された役割。職業。
ジョブに応じて主に戦闘において有用な特殊な技能や恩恵を得られる。

一般に「〜師」「〜士」という語根は語の前部要素に関わる職であることを意味する。風水士, バリア師など。
二つの漢字は分けられていることもあり、特に「士」は戦士という意味合いが強い。昔のオタクは間違えると叩かれた。


〔不遇ジョブ〕

剣と魔法の世界では特定のジョブが「不遇」と呼ばれ、侮られることがある。
不遇な理由も色々ある。
  • 単純に弱いため
  • 攻撃能力が低いため
  • 「遠くから攻撃する」「死体を利用する」など、戦い方に卑怯・邪悪なイメージが伴うため
戦士や攻撃魔法使いなど、派手で攻撃的で正々堂々と戦うジョブが不遇と言われることはあまりない。

他にも特定の方向の能力は高いのだが、それ以外の判断基準で評価されてしまい侮られるパターンがある。
(機転が一番の武器だが「戦士としては弱い」と言われてしまうゴブリンスレイヤーなど)

装備

各ジョブにはそれぞれの役割に合った装備が必要である。
キャラクターを個性付けする大事なものとなっている。


武器の王様。剣と魔法の世界と言うだけあって最も基本的な武器。
戦士はもちろん魔法使いが装備する事もある。
メジャーなのは西洋風の片手持ち長剣。時々両手持ちの大剣、たまに細身の剣だの蛇腹剣だの変形する剣だのだの電光剣だのといった変り種。
中東風なら片刃の曲刀、和風なら日本刀など、ジョブや風習に沿った刀剣が選ばれる事も。
たまに、ビジュアル重視なのか鞘に収まりそうもない形状の物があるのはご愛嬌。

短剣
小ぶりな刃物。手にして振るうだけではなく投擲や隠し持ちにも用いられる。
これを主武器として扱う者は、盗賊などの技巧者や、魔法使い等の非力な者である事が多い。
戦士等の力ある者でも、補助武器として携帯する事がある。
戦闘以外にも罠解除ツールや生活道具として登場する事も。

長柄武器
リーチの長い武器だが剣と魔法の世界では「ダンジョンで使うには不利」などと言われ、どちらかというと雑兵の武器として、町の衛兵などが持って佇んでいる事が多い。
あえて冒険に持ち出す場合はスピードファイターや技量巧者などの曲者が使う。
投げ槍として活用する者は更に少なく、投槍器もない。だって弓あるし…。
槍衾による対騎兵装としての強みが活かされる事も少なめ。(集団による騎馬突撃そのものが少ないという事情もある)
一方、水中戦では、水の抵抗により武器の振り回しが難しいという理屈から、銛や短剣が重宝される。
特筆すべき点としては(後述の斧もだが)柄も含め全金属製のものが多い点と、「ランス」が歩兵装備として普及していることが多い点。
特にランスは「全金属製で手元では数十センチにもなるヴァンプレートを備えた大型円錐状の歩兵装備」という史実とおおよそかけ離れた「剣と魔法の世界のランス」とでも呼ぶべき存在がメジャーとなっている。
ちなみに装備ではないが、高度な機構の罠として飛び出し槍が登場する事もある。簡易版は棘々や尖った杭など。

鈍器
主にパワーファイターや野蛮な敵が使う。
たまに怪力の少女がギャップを出すために持っている事がある。
ドワーフや巨人の記号として用いられる事もしばしば。
デザインとしては現実のものに比べ刃・頭部分がかなり大型化している傾向がある。
なお万能ツールであるはずの手斧は、短剣よりも創作で描写される機会が格段に少ない。


魔法に次いでポピュラーな遠距離武器。狩人や斥候などのテクニカルな冒険者が使う。
戦争や前述のスタンピードからの防衛など大規模戦の描写で使われることも。
種族に紐付けられる場合はエルフの武器として描写されることが多い。
現実では「○○一の弓取り」と言われるように力持ちの豪傑が持つこともあったが、
創作ではパワーと射程を併せ持つことになってしまうからかあまり見ない。
あえて力持ちの弓取りを出す場合は一人で戦況を動かす規格外の英雄のような扱いが多いか。

・銃器
ファンタジーでは存在しないか、存在してもかませ犬としての登場である事も多い。
構造も火縄銃などの原始的な物がほとんど。しかし威力だけは絶大で、雷の如き轟音と共に死をもたらす異質な武器として扱われたりする。
一方で実用的なものとして登場する作品も存在し、魔法と組み合わせた魔弾・魔銃として猛威を振るう事も。
実用化されている場合、銃の最大の利点の一つが「刀剣類より遥かに訓練が楽な事」にもかかわらず従来の武器を駆逐する程普及していないのは、
魔道具故に扱える者自体が少ない」「最新鋭兵器・開発中の試作品・遺跡やダンジョンからの発掘品・職人による一点もの等故に数が少ない、量産できない」といった点が理由に挙げられる。

・防具、鎧兜
ミニスカで藪の中を歩いたり、逆に全身プレートメイルのままダンジョンを昇ったり降りたりするなど現実で考えたら大変そうなことをしているが、
そうした事情はビジュアル優先で無視するか超常的な理屈をつける(魔力を使うために特定の衣装が必要、など)ことが多い。

【ステータス】

いくつかの作品では腕力(攻撃力)や敏捷性, 耐久力, 魔力, あるいは特定の技能およびその熟練度を数値や名称として見ることができる能力または見せてくる存在があり、このような数値および名称をステータスと呼ぶ。*16

・レベル
RPGのレベルのように、強さの指標となる数値。魔物などを倒すことで得られる経験値と呼ばれるステータスが一定の値に達すると上昇する。レベルが上昇するごとに他のステータスが上昇する。
ごく稀に、ダンジョン等の外にレベルが持ち越されないことがある。


【ランクアップ】

魔物やジョブが力を増したことで別の魔物やジョブに変化すること。
変化した後の魔物やジョブには「アーク~」や「ハイ~」などの接頭辞がつく。
魔物のランクアップに関してはゲームブック『モンスターの逆襲』等に元ネタが存在する可能性がある。


【魔王と勇者】

ファンタジーにおいては、魔物のリーダーとして人間に害をなす「魔王」と呼ばれる魔物または種族が存在する。
これは単に人間に仇なす魔物や事象であることもあれば、魔物の王として政治活動を行っている作品もある。
ギャグ寄りの作品だとアットホームな魔王軍の愉快な上司であることも非常にしばしば。
詳しくは魔王の項目を参照のこと。
魔王を倒すために神や運命に選ばれた人間またはジョブは「勇者」と呼ばれる。

この設定は主にファンタジーの象徴として用いられることが多く、ドラゴンクエストのようなゲーム的なファンタジーを連想させるための小道具のように使われることもあれば、「魔王と勇者入れとけば皆んなの思い描くファンタジーっぽくなるだろ」的な軽いノリで使われることもある(実際は異世界ファンタジーで魔王と勇者を扱う作品は多数派というわけではない)。



■考察される要素

ここでは、異世界作品においてオリジナリティを出すためにしばしば深掘りされる要素について述べる。

【概論】

異世界モノのほぼ全てはライトノベルというジャンルに属する。ライトノベルは人物が総体(キャラ)として描かれがちであるという点が指摘されるが、「世界観夢」という用語があるように、それは世界観についても例外ではない。

森下一仁は異世界ファンタジーおよびハイ・ファンタジーをSFのようなものとしている。狭義のファンタジーは読者がデフォルトに持っている先入観を次々と上書きするという点でSFと似ている(たとえば、熊を想像せよと言われた場合、その色が白であると言われるまで読者は熊を黒や茶色のものだと思っている。SFを含む広義のファンタジーはこのような先入観を覆すことによって劇的な効果を生む。)が、単一の事象が他の事象に関わらないという点においてSFと異なる。

SFと(異世界ファンタジーを含む)ハイ・ファンタジーとの違いは、根幹となる原理が虚構か否かによる。
SFの場合は先入観の上書きが虚構のものとしてでなく、まるで現実の延長であるかのように語る。*17ハイ・ファンタジーは現実世界と似たような別の論理を用いて、もう一つの世界がそこにあるかのように語るという点で、SFと同じではないにせよ、似ている部分がある。*18
すなわちSFは「真かもしれない」であり、ハイ・ファンタジーは「虚構的に真」であると言えよう。

異世界ファンタジーはそのようなハイ・ファンタジーにおいて、特に人物や世界観(データベース)が上述の通り属性(テンプレート)の組み合わせであるものをそう呼称していると言ってよい。

よって、異世界ファンタジーはメルヒェンのような印象を重視した、上記においてSFと対立させられているファンタジーでもないし、絵本のようにそもそも先入観を取得する前の読者を相手にするものでもない。
SFや絵本が読者にその新規性・実現可能性によって驚きを与える写実的なものであり、
メルヒェンや前衛文学が読者によって印象の異なる抽象的なものであるとするならば、
剣と魔法とは既に読者に理解された概念を応用する少年漫画的・記号的なものであると言えるだろう。そしてファンタジー作品はこれらの間のいずれかに位置するものと考えられる。

〔アプリオリとアポステリオリ〕

創作言語界隈などにおけるアプリオリとは、「既存のどこからも借りない」ということを意味する。
例えば英語のような言語を作るとしても、英語の語彙を借りず、純粋に複数の言語を観察することによって得られた普遍的な法則性を使って語彙をゼロから作るのである。
そしてその対語がアポステリオリとなる。

この語彙を言語以外にも援用するならば、異世界は中世ヨーロッパをモチーフに既存の世界観を借用したアポステリオリな世界観であると言えるだろう。
これは先述のとおり製作コストやリアリティラインの観点から見て合理的な判断に基づくものである。異世界の言語を細かく作り込むことは(少なくとも常識的に考える範囲において)リアリティラインを侵害し、異世界に人間が住むという前提条件に不自然さを与えかねない。
生物が人間と同じように思考・調音し人間の聞き取れる音で会話するとは限らないからである。

  • フェア
このような世界を作るにあたっては、開始の条件を決めておく事が必要であろう。『日本沈没』という作品はあっても本当に日本が沈没する訳ではないというように、まず非科学的ではあるが前提となる条件を作り、そこからは科学的・論理的にその先を進めるのである。

このような場合、可能性の高い経路を選んだ方が高いリアリティを得られるだろう(言語で言えば、たとえば中国語のようにVO語順でありながら関係節が名詞の前に来る言語は、あるにはあるがごく少数である。英語のように関係節が名詞の後に来た方が良いだろう)。可能性の低い要素を入れるのであれば、それに至った経緯が説明されるべきである(もちろん、可能性の低い経路を適度に織り交ぜた方が全体としては可能性が高いという場合もあるので、一概には言えない)。
このような考えは推理小説におけるフェアの概念とも関係があるものと思われる。

【歴史学からの類推】

文明の発達には土地ごとに差異があり、同じ家畜動物の移動のしやすい気候の揃った広い地域(シルクロード)を持っている大陸では文明が発達する。また地政学的な観点から見れば、様々な民族で同じ土地の取り合いが起こる広い土地(ランドパワー)よりも、そうした土地から文化を吸収しつつ距離をおける島国(シーパワー)の方が平和であるため、近代では流れの急であるドーバー海峡に隔てられたイギリスが発展した。
ユーラシア大陸の人間はまた農耕や牧畜が発達していたため免疫力も強くなった。

交易の中心地であったこギリシャでは複数の宗教に触れ、それらに矛盾を覚える人が増えたために、たとえばタレスのような哲学者を輩出した。倫理学者である和辻哲郎は、地中海の規則的な季節の移り変わりが科学的な発想を産んだと説明している。

【政治・経済】

異世界であることの特徴として社会保障が存在しないことが多いことが挙げられる。しかし、一部の作品には社会保障が存在している。
存在しない場合、冒険者ギルドは働く場所が無い人のためのセーフティネットとして機能していることが多い。

〔貨幣〕

古くは物々交換が主流であり、中世においても農民の間では物々交換が行われていた。年貢として徴用されたり報酬として支払われたりするのも穀物のほかに塩や織物など作るのが困難なものだったりした。

貨幣制度は通貨への信頼によって成り立っている。偽金の作られやすい環境では悪貨が良貨を駆逐し、またインフレが加速する。

【神話】

詳細は神話を参照。
異世界モノにおける神話は多くの実在の神話とは異なり、下品な要素が描写されなかったりする。

地球における神話は単一の神話から分岐し、その後別れた民族ごとにさまざまなモチーフが追加されていった。さらにそれらの神話は借用が繰り返された。

民俗学者の柳田國男は国家に吸収されたものとしての神話と、村落単位で保持されている民話とを区別して考えた。

神話を参考にする際はそれが再話(特定少数の手で作品として再編集されたもの)かどうかに注意しなければならない。

【文化】

詳細は文化人類学を参照。

中世においては男女同権の社会は存在していなかったが、異世界においては魔法の存在がこの関係を緩和しているようである。
文化の中には言語と同じく万国共通のものがあり、たとえば未開社会において女権社会は存在せず、女性が狩猟などを担う社会は1例しか見つかっていない。

文化には構造があり、社会を維持したり人間を納得させたりするような合理性を持つ。この構造は現代社会においてもしばしば見られ、また多くの宗教の教義にも見ることができる。たとえばイスラームの信仰において豚を食べるのが禁じられたのは、豚が人間と食べるものを共有しているからであり、食料の少ない砂漠ではそのような思想が生き残りやすかったという主張がされる。

言語や文化は生物のように適応を繰り返すばかりでなく、他民族・他言語の影響を受けて変化するという点が異なる。

〔プライバシー〕

プライバシーという考えは最近できたものであり、恥ずかしいので見せたくないだとか、文化的に禁忌であるだとかの理由を除けば、個人が秘密を所有するという考えは近代的なものであると見なすこともできる。

特に未開的な社会においては食べ物を共有するということもあり、所有の形態も文化により様々である。人がいつ・何をどのように買ったのかを人々が監視する文化もある。

〔技術〕

異世界転移が頻繁に起こっている世界では新たな技術がもたらされている場合がある。また異世界にはしばしば電力や蒸気機関による現実世界のそれを超越した科学技術を持つ文明等が存在する。
異世界においては火薬や銃は存在しないか発展途上の技術であるという扱いが多く、現実世界ほど銃火器は広まっていないというのが基本。
飛び道具は弓矢か魔法が一般的。投石や投槍およびそれらを目的とした道具はあまり存在しない。

・食
異世界における食べ物のほとんどはパンなどの洋食だが、和食などの混じっていることも少なくない。ナイフやフォークを用いて食べる。冬などに備えて肉類を保存する際には干し肉にされるが、時間を止める魔法を使った冷蔵庫のような道具がある作品もある。

動物性のタンパク源としては主に加熱した牛肉, 豚肉, 羊肉, 山羊肉, 鶏肉(あるいはガチョウや鶴など陸棲の鳥), 魚介類*19, 乳製品, 鶏卵, 変わったところではドラゴンなど魔物や魔法生物の肉等が食べられる。
反面、虫や爬虫類, 両生類の肉や馬肉・生肉などは食べられない。コスト的な面もある他、進化心理学の観点からは、虫は無条件に毒等と結びついているため忌避されがちであるというような主張がされる。馬は移動手段として有用で、生肉は寄生虫や保存の問題があるからだろう。とはいえ、現実にはこのようなものを食べる文化も少なからずある。

14世紀の上流階級は肉をプディングやソーセージにしていたが、異世界における冒険者らは専ら単に焼いて食べる。
炭水化物としては麦類をパン種を用いたパンや麺にして食べたり、炊いた米などを食べたりする。米麺やトウモロコシ, テフなどは食べられない。
野菜類は比較的自由で、大航海時代以前の西洋に存在していなかったトマトやジャガイモが出ることも少なくない。
調味料としては塩, オリーブ油など。醤油や味噌の原料となる大豆がある場合もある。香辛料や砂糖の価格はまちまちである。
菓子はバラエティに富んでいる。

これらの食べ物は主に中流家庭から富裕層の家庭, もしくは居酒屋や露店で振る舞われる。作品内の生活水準によってはパンに灰が混ぜられるなどの粗悪なものが売られていることも少なくない。

・嗜好品
異世界においては葡萄酒(ワイン)のほかに蜜酒(ミード)や林檎酒(シードル)、ビール, エールが飲まれる。

ヨーロッパにおける水は多く飲むのに適さない硬水であり、軟水は高価だった。このため代用品としてワイン, エール, 乳清を飲む文化が発達した。ワインは平民は度数の低いものを、貴族は高いものを飲んだようである。

・衣服
平民はチュニックなどにマントを合わせたりする。貴族は基本的にロココ調やバッスル調, ルネサンス時代の衣服などが現代人の価値観に合うようデザインされたものを着ている。プールポワン(詰襟で、多く長い袖口のもの)を着ることはあまりない。世界観によってはトゥニカなどローマ時代の衣服を着ていることもある。
魔法使いは尖った帽子を装備していることがあるなど、ジョブによってはなんらかの衣服が設定されている。よく引き合いに出されるものとしてビキニアーマーなどがあるが、2022年現在では下火であるようだ。また登場人物の出自によってはトーガや和服など他の文化圏の伝統的な衣装を着る場合もある。これらは多く種族によって規定されており、その特殊性を目立たせるため記号的な(分かりやすい・衣服から他の要素が推定しやすい)側面が強調されている。
下着はより現代的なものを着ていることが多い。主にコミカライズの際、見栄えが良くなるように漫画家によってデザインが決定するようだ。なお、現実世界では精緻なデザインを可能にするナイロンは1931年に石油から作られた。

布を作る技術はかなり古くからあるものの、基本的に布は高級品であり、文字通り擦り切れるまで使われる。

・色
染料は藍, 赤, 茶, 緑, 黄, 黒などがあり、紫は少ない。世界的に19世紀になるまで紫色の染料が安価でなく、また同時に高貴なイメージがついていたためと思われる。

・交通手段
中世ヨーロッパと同様、車輪が存在する。車は基本的に馬によって引かれるが、獣人属などの一部の種族の持つ車においては他の動物に置き換わっていることがある。これらの生き物は地球のそれよりも遥かに高い持久力を持つようである。

戦争においては馬やこれらの動物の他に、ペガサスやドラゴンを乗り物として利用する国家もある。

ケモ耳のついた人々は稀にライオンなどの動物に車を引かせるが、実際のライオンは持久力がそれほど高いわけではない。特殊な種なのだろう。

魔法的な交通手段というと箒や絨毯に乗ったりするものがあるが、これらは前述の通り長時間使用しているのは困難のようだ。

車輪は紀元前3500年頃にメソポタミアで発明され、その後紀元前2000年ごろに中国でも見られた。新大陸ではいずれの文明も実用的なレベルのものが作成されるには至らなかった。

馬に付ける足場である鐙(あぶみ)は紀元後300年に中国で作られたものがあり、西洋への伝来は7世紀になってからである。

・紙
紙は古代ヨーロッパでは紙の代わりに羊皮紙を用いていたため高価だった。ヨーロッパで紙が作られ始めたのは1100年代のことである。紙自体は中国で1世紀ごろに既に作られていた。

・肥料
ヨーロッパは寒冷であり日本のような糞尿を発酵させた肥料は作ることができなかったとされることがあるが、中世のヨーロッパは中世の温暖期と呼ばれる温暖な気候だったし、古代では少なくともギリシャなど地中海性気候の地域では糞尿による肥料は用いられていたといえる。中世ヨーロッパにおいてこうした肥料が用いられていなかったのは心理的な側面が強かったからであろう。現代では寄生虫の温床となるため、このような肥料は日本では使われていない。

・識字率
異世界における識字率は高いものが多いが、一方でこれがリアリティを欠くものであるとし、識字率の低めに設定されている作品も少なくない。

・メカ・ロボット類
無機物を自律的に動かすゴーレムの延長で、機械人形や巨大人形機動兵器が存在する場合がある。中世ヨーロッパにこれらのものが存在しなかったことは言うまでもないが、魔法の存在する世界が現実世界とは異なる重要な一例と言えるだろう。

・魔法技術
異世界では魔法がインフラや戦争など社会全般に活用されていることがある。
こうした世界では魔法使いが特権的に扱われ、貴族や騎士として振舞っていたり、魔法力の多寡を理由に婚姻が決められたりする。
また、魔法が使えない者が差別されていることもある。


・教育機関
異世界にはよく魔法学校や、騎士を育成する士官学校が存在する。

・宮廷
中世は絶対王政ではなく、貴族の領地や街単位での自治が存在していた。対して異世界は絶対王政的で、国王は絶大な権力を持っている。
主に女性向けのジャンルでは登場人物が家を背負って戦う展開にするためもあり、女性らが宮廷で国王となる人物を奪い合うことになる展開が見受けられる。これは悪役令嬢モノや中国宮廷モノと呼ばれるジャンルに多い。中国風の世界が舞台になるのは古代中国の持つ巨大な権力への憧れからであるとされる。

〔思想〕

中世はデカルトのような近代的な思想を持つ人間はまだ生まれていない。近代的自我の確立は未だされておらず、個人主義は、単に自文化へ反発する程度にしか表れていなかったようである。
異世界においては多くの人間が近代的自我を持っているといえ、目的論的でなく機械論的に世界を認識している。

中世以前はまた子供が「小さな大人」として見られていた時期でもある。子供に対して純真無垢なイメージがついたのは近代以降、学校教育により子供が勉強させるべき存在として区別されて以降の話である。

倫理観について言えば、異文化の人間が自分達と同じ考えのはずがないというのは文化人類学的には自然だが、より多くの読者から支持を得るためには文章または画として描写されるものに修正を加えざるを得ない要素もある。*20

異世界作品ではメインキャラはお金で解決できるような目的を持たず芯の通った人物ばかりが描かれたりすることが稀にある。

異世界に人権という概念があるという作品は今や少数派だが、しかし異世界の住民は他人を殺すことに現代人ほどの躊躇いを見せることも少なくない。

〔芸術〕

古代ギリシャでは優れた技術による彫刻や絵画が生まれ、また調性音楽の概念も発達した。
そこから離れた土地では、たとえばインドネシアのガムランのように離れた音同士を使用する文化があったりもする。

絵画に関してはその後一神教の台頭により人の大きさを揃える関係から一時的にその写実性が失われたが、カトリックの失墜に伴って生まれたルネサンスにより再び発展した。

【言語】

詳細は人工言語および言語学を参照。

当然ながら異世界の言語は異世界の出来事を体験ないし観察する主人公または語り手の手によって日本語で説明されている。*21TRPGなどでは複数の言語が技能として存在していたり、内政系の話では言語政策が一つのテーマとなることもある。そのような場面で、文の解釈の間違いなどにリアルな言語現象を用いるのも良いだろう。

異世界においてはしばしば架空の言語が描写される。多くは単なる暗号か英語のような孤立語で、ラテン語などロマンス系の言語から語彙を借用していることが多い。地名や女性名の語尾が-aや-iaで終わるのはこれらの言語の影響による。2010年台頃の架空言語は独自の語彙を用いながらも、響きの良さを優先してこうした演出を加えていることが多かった。

アプリオリな言語は主に言語類型論を参照して作られる。言語を比較する際はそれらの言語が同じ一つの言語から分岐してできたのかどうかや、地理的に近いかどうかを考慮する必要がある。また、特に鉄や蜜など文明の発達と共に伝来した高級語は特に借用がされやすく、注意を要する。
言語には一見して法則性がないように見えるが、たとえば主語・目的語という概念は日本語と英語で共通していたりするように、人間が世界を捉え、表現する方法には論理学的・普遍文法的な制約がある。
また、その言語の音の素性(口のどこで発音されるか、どのような発音方法か、など)と単語の意味とを結びつける「音象徴」や、他の音との弁別のしやすさ(聞こえ度)や引き伸ばしやすさといった音の性質(これらはその土地の風量などの関係や言語・文化のもつ「フェティシズム」にも影響を受ける)も関与してくる。人工言語アルカで使われたようなメルテーブルといったアイディア等を組み合わせてもいいだろう。


〔翻訳〕

地球人と異世界人とが会話するために、翻訳の魔法が用意されていたり、そもそも異世界における言語の概念が特殊であったりすることが多い。前者の場合、魔法が万能ではなく、機械のようなものであれば、それによる会話の齟齬が発生する。たとえば比喩や言葉の暗に意味するところなどは、前後の文脈が分からないと理解できないので、このような問題に陥りやすい。

〔命名〕

異世界における技名やモンスター名などはしばしば英語などで名前が付けられる。これが本当にそのような発音なのか、それとも単に異世界のその言語における上層の言語*22を表す記号に過ぎないのかは説明されないことがほとんどである。

異世界ファンタジーにおける人名は各々の作者により異なる命名のされ方がされる。マーリンやランスロットのような、ブリタニア列王史やアーサー王物語から取られている場合もあれば、偉人の名前であったり、もしくは単に英語圏などで一般的に名前に用いられるものだったりもする。

〔度量衡〕

ファンタジーにおいて、時間や通貨の単位を用いて異世界であることを強調することはもはや説明するまでもない事である。しばしばその具体的な程度は明示されず、登場人物の反応などによって示されるにとどまる。

長さの単位としてメートルやヤード, 尺といった単位はあまり用いられない。上記の理由から独自の単位を作った方が良いことに加えて、意味が厳密であり、用途が限定されるためであろう。

西洋で機械時計が発明されたのは1250年ごろであり、分minuteや秒second(minute)という語もこのときに生まれた。

〔数字〕

異世界ファンタジーにおいては作者の計算を楽にするために十進法が用いられていることが大半である。
12進法は未開の社会においては少数派であり、10進法が指の本数を数えることで生まれたのに対し、12進法は親指で他の指の節を数えることによって生まれた。古代エジプトが12進法を使っていたことは有名だが、中世ヨーロッパでも商人の間で使われ、たとえば銅貨12枚で銀貨1枚になるなどのシステムがこの代表的な例である。

【人間】

異世界における人類および種族は髪の毛の色が青やピンクなど色のついたものだったり、目の瞳孔に模様があったりする。
これはもともと漫画において人物に特徴を出すデフォルメ表現だったが、それを正当化する設定と言える。

〔免疫〕

異世界どころか地球上ですら、交流の無かった地域の人間が別地域に進入すると現地には存在しなかった微生物や病原体を持ち込んでしまい、
その免疫・抗体を持たない現地民にとってては打つ手がない病気を大流行させ最悪壊滅させてしまう事がある。
現実的に考えれば別地域どころか異世界ともなれば、それと同じかそれ以上に過酷な事態、
有名な作品で言えばウェルズの『宇宙戦争』で火星人が辿った運命と同じことが異世界転移人ないし異世界人の、もしくはその両方の身に起こり得る。

異世界転移作品に於いて、地球人が異世界人に病気をうつしたり移されたりすることは多くの場合ない。
殆どの場合描写・言及が無いが、敢えて深入りする場合「魔法で解決を試みる」「転移して来た時点で何等かの力で検疫が済んでいる」が対処法の筆頭となる。

現実世界におけるハプスブルク家のように近親での交配を繰り返すと免疫力や視力等の低下, 色素の異常など様々な異常が現れる。インセスト・タブー(近親相姦の禁止)はあらゆる文化に見られ、イトコ婚についても厳格な規則がある文化も少なくないが、文化に逆らおうとする人間もまた一定数存在する。

〔心理・行動〕

心理学に関してはむしろ二次創作等において家庭環境や犯罪と結びつけての用途が多いようである。しかしながら、民族の大移動等の歴史においては例えば潮の流れが移動のモチベーションに関わるなど、専門的ではないにしろ人々の心理に思いを巡らす必要も出てくるかもしれない。また、ユングなどの初期の心理学者はそれぞれの信仰に見られる「母親」などといった「原型」を発見したし、現代においてもその参与者に試練を与えることで「これだけの代償を払ったのだから」とその文化への帰属意識を強める構造が存在している。こうしたことはむしろ文化心理学的な分野かもしれない。

〔医療・サバイバル〕

様々な局面において周囲のものを利用し、生き残る能力は、特に昔の人間には不可欠だった。しかしそれは文化等によって断片的に教えられた過ぎず、個々人が体系的な知識として持っていた訳ではない。例えば手を洗うという概念は文化としては1700年前から存在しているが、それが病気と結びついたのは19世紀になってのことである。

ダンジョンのような空間は前述のように深層に行くほど景色がガラリと変わる場合もあるものの、基本的にイメージされるのはやはり洞窟のような空間であろう。崖への転落や水たまりによる低体温症、コウモリのフンによる疫病など、本格的なケービングの知識を要する場面もある。

旅をする場合の人数などは、荷物の運び役等での制約も受ける。

【動植物】

魔法世界の動植物に関する考察はむしろ少年誌や海外小説に多い。日本のweb小説に関して言えば、大きく捻ったような特徴を持つ動物や動物的な魔物を出すことはあまりない。大半はせいぜい大きさを変えたり手足や角の本数を増やすぐらいである。

現在の進化論では利己的な遺伝子説が主流である。現実世界の生物は適者生存であり、その生物の生態や形態は何らかの意志が働いて変化したものではない。
ポケモンやモンハンのように収斂進化や適応放散, ニッチなどの要素のある作品もある。

【地形・地質】

たとえば扇状地などの水はけのよい地形には果物もよく育ち、人が住みやすい。またその先端には水が溜まりやすい。
西ヨーロッパは比較的温暖な気候である。これは西岸海洋性気候が存在するためである。ただし、たとえば14世紀では小氷期と呼ばれる寒冷な気候になっているなど、歴史によってその暖かさは変化する。

石の材質によっては切り出しやすさや頑丈さなども異なる。また水の溜まりやすい地形・地質では湧き水があったりなどする。

〔治水〕

河川の氾濫により田畑が破壊されたりしないよう堤防が作られる。こうした治水工事はその時々の為政者にとって重要な作業となる。

【宇宙の成り立ち】

詳細は哲学および物理学を参照。

異世界において地球平面説をとるか地球球体説をとるかは作者によって異なる。
例えば瞬間移動の魔法などを使っても時差が無い場合、地球平面説を採用している場合がある。
古代ギリシャでは紀元前5世紀に地球球体説が唱えられ始め、中世には既に広く信じられるものとなっていた。

異世界は地球の北半球にある中世ヨーロッパをモデルにしているため、太陽は南を経由する(地球において太陽が東から登り西に沈むということ自体は北半球でも南半球でも変わりはない)。機械式の時計は日時計をモデルに作られているので、異世界ファンタジーにおける時計はやはり時計回りに進む。

またファンタジー作品にはしばしば月が二つ存在する。これは単に記号的な意味が強いのだろう。
地動説は紀元前5世紀には現れていたが、16世紀になるまで主流の考えとなるわけではなかった。

【メタ的な要素】

詳細はプロットを参照。

設定の一部は物語の要求によって決定される。物語は作者の嗜好や読者がその物語のジャンルに求めているもの、読者を惹きつけるための新規性や異化作用(センス・オブ・ワンダー)、そしてそれらを実現するための演出・展開や物語の整合性・伏線による制約を受ける。たとえば主人公の血が見たいという理由で不死の能力が存在するような世界観にするのはこの好例と言える。

しかしながら突飛すぎる世界観を用いれば整合性を損なうことになる。特に長編になればなるほど、作品に矛盾を生まないための制作コストは膨大なものとなっていくだろう。そこで既存の物語の世界観を借用することが行われたり、既存の神話などからモチーフが取られたりする。

よくジャンルとして使われる異世界転移/転生/召喚は、「転移/転生/召喚した先で、どのような物語が起きるのか」の情報が含まれていないので
設定のジャンル(超能力もの、ロボットもの、学園ものなど)としては正しくても、物語のジャンル(バトル、ラブコメ、ホラーなど)としては説明不足である。

表象文化論においては、物語における現実とは読者によって作られるものである。故に現実世界と虚構世界とでは明確に異なる部分が生まれる(たとえば羅生門の下人の父親の血液型がA型か否かに関しては、真でも偽でもない)。物語には読者の文化や常識によって容易に想像できる部分と、そうでない部分が存在し、後者の領域においては真理値が存在しない。メルヒェンではしばしばこうした部分に焦点を当て、異世界ファンタジーではこの部分を意図的に作り上げることで設定の不整合を読者の意識から外すこともある。





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最終更新:2025年05月02日 15:12

*1 SF・ファンタジー作家フリッツ・ライバーが1960年代初頭に命名した表現とされる。

*2 平板で発音される。

*3 なお、しばしば中世では二階の窓から汚物を捨てていたという記述がなされることがあるが、これは近世に入ってからのことであり、それまでは例えば軒先から捨てるといったような比較的「自然な」処理の仕方がされていた。

*4 というより、ドイツの伝承であるコボルトがヨーロッパ全土に広がった際の呼称がゴブリン

*5 九尾の狐や猫又からの類推による。

*6 ただしセイレーンは本来半人半鳥のであり、人魚として描かれたのは中世以降とされる。かのスターバックスコーヒーのロゴもセイレーンということもあってか、現代のソシャゲ・異世界モノでも多くの場合人魚の姿で描かれることになった。

*7 ほかに、魔法を使うたびに穢れが溜まり魔物になっていく、魔法の使用回数は日ごとに制限があるなどの設定もある。

*8 作品により「師」と「士」が互いに入れ替わることがあるが、これらはそれぞれ別個のイメージを持つため混同することは避けるべきである。

*9 これにはおそらくは言語学的な認知しかたが関係するものと思われる。

*10 このために魔法陣やなんらかのアイテムでその場を囲うこともある

*11 なお、魔女狩りの要因となった「魔女に下す鉄槌」が出版されたのも15世紀になってからのことである。

*12 現実の騎士や侍が「装備管理専門の従者」を連れていたことを考えればリアルな描写かもしれないが、ゲームではアイテムを運ぶだけのキャラを動かしていて面白いかはわからないので、ゲームの都合とゲーム風物語のリアリティのギャップに苦労させられる部分である

*13 平板で発音される。

*14 クロスボウは装填に時間がかかるため野戦では使いにくいという欠点があり、ロングボウ・ショートボウが主流なのは不思議な事ではない。

*15 クロスボウそのものは中世どころか古代から存在しており、正しく中世ヨーロッパの出来事である百年戦争に於いてもフランス軍が使用していた弓は主にクロスボウであった。

*16 ステータスはRPGのシステムを物語の中で再現したものといえるが、このような設定はアダルトゲーム・Ranceシリーズが初出であるようだ。

*17 その点ではライトノベルもそれと似たようなことをしているといえるだろう。

*18 この特徴は多くの少年漫画等にも当てはまるだろう。

*19 中世ヨーロッパではウナギやニシンが食べられていたが、異世界ではこれ以外にもさまざまな魚や甲殻類・貝類が食べられる。

*20 時代劇におけるお歯黒等の演出にも通じる。

*21 あるいは最初から日本語と同じである。

*22 日本語でいう英語のような立ち位置の言語。