「G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音 - (2024/05/24 (金) 23:34:54) のソース

*G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音
【じーもーどあーかいぶすぷらす めがみてんせいがいでん しんやくらすとばいぶるつー はじまりのふくいん】

|ジャンル|RPG|
|対応機種|Nintendo Switch&BR;Windows(Steam)|
|メディア|ダウンロード専売|
|発売・開発元|ジー・モード|
|配信開始日|【Switch】2022年9月29日&BR;【Windows(Steam)】2022年12月13日|
|定価|1,800円(税込)|
|プレイ人数|1人|
|レーティング|IARC:7+|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|
|ポイント|知る人ぞ知るメガテン屈指の鬱ゲー|
|>|CENTER:''[[女神転生シリーズ]]''|
|>|CENTER:''[[G-MODEアーカイブスシリーズ]]''|
※執筆者は携帯アプリ版は未プレイであるため、携帯アプリ版とG-MODEアーカイブス版との違いについては特に触れていません。
------
#contents(fromhere)
------
**概要
-フィーチャーフォン向けの携帯アプリとして2008年にアトラスモバイルコンテンツより配信されていた『女神転生外伝 新約ラストバイブルII』の移植版。
--スマートフォンの普及もあって、アトラスモバイルコンテンツは2014年10月31日にサービスを終了している。
-「新約」というタイトルから、ゲームボーイやスーパーファミコンで発売されていた『[[女神転生外伝 ラストバイブル]](以下、旧ラストバイブル)』シリーズのリメイクのような印象を受けるが、ファンタジー世界観の2DRPGのメガテンという繋がりしかなく、完全新作である。
--前作に当たる『女神転生外伝 新約ラストバイブル(以下、新約ラストバイブル1)』は、ガイアなど「旧ラストバイブル」を匂わせる要素があったものの、本作についてはそういった要素は一切ない。ただし、物語の時系列としては「新約ラストバイブル1」の過去の話となっている。

------

**ストーリー
 本作の舞台は、疫病と魔獣がはびこる絶望の星、ホルス。
 圧政を敷く狂王カインと、それに抗おうとする聖王アベル。二人の王はある日、民に向けて宣言する。
 『福音の子 光と共に現れ 世界に変革をもたらすであろう』誰知らぬ所で、少年の運命は動き出す…。

------

**特徴
-旧ラストバイブルシリーズと同様、女神転生シリーズではあるが見下ろし型の2DRPGになっており、世界観も中世ファンタジーになっている。
--グラフィックはゲームボーイカラー以上スーパーファミコン未満といったところ。

-ラストバイブルというタイトルや中世ファンタジーの世界観の割には、仏教の思想が根底にあるシナリオになっている。
--終盤に近付くにつれその傾向が強くなり、ラスボスに至っては「煩悩無尽誓願断」「仏道無上誓願葬((仏教用語としては正しくは「仏道無上誓願成」。))」など露骨に仏教用語を元にした技を使ってくる。意味については各自で検索されたし。
--ただし、仏教モチーフのキャラは少ない。メガテンらしくミカエルなど他宗教モチーフのキャラももちろんいる。

-悪魔ではなく、魔獣という名称になっている。本作では狂王カインが呼び出したという設定。
--魔獣合体はコンバックの魔法で行う。
--魔獣の召喚は序盤に手に入る、腕に取り付けた「魔獣召喚COMP」という魔獣召喚プログラムの機械で行う。なぜ、ファンタジー世界でこんなものが存在するのか本作では説明はない。
---魔獣召喚COMPは前作でも登場しており、前作を最後まで遊ぶと直接的ではないものの、それとなく説明はされている。
--魔獣は本家と同様に戦闘中の会話で仲魔にすることができる。仲魔になる会話のパターンは、魔獣のカテゴリによって決まっておりランダムではない。そのため、会話のパターンはメモするなどしておいたほうが良い。
--仲魔にした魔獣はレベルアップによる成長はないが、お金を払うことでパラメータを上げることができる。
---魔獣によって限界値がある。本作ではさらにアクセサリーを付けることで、能力を上げることもできる。

-魔獣図鑑というものがあり、戦闘中にエンロールという魔法を使うことで図鑑へ登録することができる。
--ボスについてはエンロールしなくても自動的に図鑑へ登録される。
--登録した魔獣数に応じて役立つアイテムをもらうことができる。
--一時的にしか戦えない敵キャラは、終盤にあるとある場所で出現するので、そこでエンロールすることで魔獣図鑑へ登録ができる。

-パーティは6人までで、人間キャラは一時的に4人になることもあるが、基本的には3人であり、残り3枠は魔獣となる。

-シナリオは「新約ラストバイブル1」の過去の話ではあるが、直接的な繋がりは薄いので前作を知らなくても問題はない。
--関係性を匂わせている要素があることや、エンディングの展開は1へ続く話であるので、もちろん知っていた方が事情が分かって面白い。
--グラフィックは1からの使いまわしが非常に多い。

------

**評価点
''最初から最後まで絶望が続いて陰鬱で救いがなく、それでいて完成度の高いシナリオ''
-主人公の妹が笛吹きの魔獣に食い殺され、さらに両親が惨殺されるという惨たらしい状態からシナリオが始まる。
--このときの笛吹きの魔獣は何度か再戦するのだが、そのたびに生前の妹が笛で演奏していた「きらきら星」のようなメロディを吹き、主人公らを嘲笑ってくる。
-物語の舞台である惑星ホルスでは疫病が蔓延しており、さらに狂王による圧制、人間に襲い掛かる魔獣という3つの要素が住民たちを苦しめる。そして疫病という、主人公たちにはどうすることもできない要素がシナリオに重く圧し掛かり、イベントのたびに主人公たちへ無力感を叩きつける。
--疫病については、携帯アプリで配信された2008年時点よりも、G-MODEアーカイブスとして配信された2022年時点の方が、2020年から始まる新型コロナのパンデミックを経験した我々としては、より絶望を実感しやすい点かもしれない。疫病は作中でふわっと語られるのではなく、やけに詳細に病状が語られ、それでいて、患者で溢れかえる病院、自宅療養するしかないと告げる看護師、なかなか開発されない薬など、コロナ禍と被る点もあるためだ。そしてこの病状というのは現実のコロナよりさらに酷いものであることから、この世界は絶望に包まれていることが把握しやすい。

#region(疫病の病状と、疫病による絶望の描写の例)
-疫病の症状
--空気感染するタイプであり、潜伏期間は3年~不定期。発症率は2~3割程度。潜伏期間が長いため、ホルスの人間全てが菌の保有者と考えられている
--年齢が低いほど発症率が高い傾向にある
--症状は体組織、主に骨の脆弱化。わずかな動作にも痛みを感じるようになる。最終的には寝ているだけで耐え難い痛みを感じるようになり、動けば骨が折れるほどになる。そこまで病状が進行すると一年も経たないうちに死に至る。
--病気の進行は遅く、発症から死に至るまで長いケースでは10年に及ぶ

-疫病を治す薬や予防するワクチンなどは存在しないが、聖王が作った痛みを和らげる薬は存在している。
--しかし、その薬は全ての人々に効果はないため、依然として病で苦しむ人は多い。
--過剰に投与すると植物状態になるという副作用がある。そして植物状態になった人は、とある場所へ集められる。病を忘れて、安らかに眠る人たちが集うことから、その場所は通称「''楽園''」と呼ばれる。
--国によっては、この薬すら満足に供給されない。そのため、"現世で苦しみ魂を解放することが幸福である"という宗教のようなものが蔓延している。

-疫病により死者が多いため、火葬が間に合わず、死者が雑に放置されている。
-年齢が低いほど発症率が高いため、疫病により家族を失った老人が集う施設がある。1階には病に苦しむ老人がビッシリ寝ており、2階は病の恐怖から過剰に空騒ぎする老人たちがいる。
-人間を病による苦しみから解放するという名目でガブリエルが、病人を殺害しようとする。主人公たちはガブリエルを撃退するものの、その病人は病による苦しみから自殺してしまう。
#endregion

-シナリオ上、イベントを解決しても根本的な解決にならず、そこからさらなる絶望を突き付けられることも多い。とはいえ、完全な徒労に終わるというわけでもなく、イベントごとに物語の真相に少しずつ近づけることから、先が気になるシナリオ運びにはなっている。
-ラストダンジョンへ向かう直前、およびエンディングにおいて主人公及びプレイヤーに重い決断を迫ってくる。本作における絶望の描写はラスボスを倒した後のエンディング中であっても、一切手を抜かない。

-陰鬱な世界観に反して、パーティに加わる仲間は妙に明るい。イベント中の会話も多いため、ある種の清涼剤となっている。
--仲間キャラ1:レオン
---狂王軍の「福音の子」の戦士。仮面を付けており、クールに立ち回ろうとするが、実は超ヘタレ。後述のアインにより、半ば強引に仲間に加えさせられる。イベントごとに一々ビビる言動も多いが、たまにハッタリで物事を解決することもある。
---出生に秘密があり、後半のシナリオに大きく関わってくる。
--仲間キャラ2:ルナ
---聖王軍の「福音の子」の巫女。巫女らしくお淑やかな性格のフリをしているが、実は非常に血の気が多く、半ば強引に仲間に加わる。レオンから頻繁にスカートが短いことを弄られているが、ステータス画面のCGを見ると本当に短い。
---初期装備は「聖女のドレス」と「''聖女のドス''」。ある意味彼女のキャラをネタっぽく表現している装備である。
--仲間キャラ3:アイン
---狂王軍の幹部。サムライのようなキャラであり、歌舞伎役者のような仰々しい話し方をしてくる。
---序盤は主人公の敵と言える立場であるが、中盤で一戦を交えた後、事の真相を主人公に説明し仲間に加わる。本作のシナリオの真相を把握している人物である。
---ボス戦における彼は非常に強いが、仲間に加わった後も、バランスブレイカーと呼べるほど異常なまでに強い。敵でも味方でも強いという、意外とゲームではいそうでいないキャラかもしれない。
--妙に明るい仲間たちも、それぞれ事情を抱えており、精神を病んでパーティから離脱してしまう。離脱するイベントは非常に苦しいものであるが、その分、復帰するイベントは熱く心を打たれるものがある。
---3人ともそれぞれ別タイミングで離脱する。レオンとルナは復帰するが、アインは復帰しない。
--魔獣との会話についても、魔獣はカタカナ英語を交えた謎のハイテンションで語りかけてくる。会話のパターンは多くはないものの、全体的にインパクトがある。

''2Dでないと許されないような描写、2Dだからこそ描けた絶望を突き付ける描写''
-前者については冒頭の妹が食い殺されるシーン、後者については疫病の患者が画面一面に横たわるシーンなど。
--陣痛の腹いせに、生まれてきたばかりの赤ちゃんに暴力を振るう母親など倫理的にヤバいシーンもある。
-なお、携帯アプリ配信時はCEROによるレーディングは行われてない。G-MODEアーカイブスでは、IARCによるレーディングが行われているが「7+」となっている。CEROとは基準が違うとはいえ、そんなに低くて大丈夫なのだろうか?

''前作からのシステムの改善''
-細かい点ではあるが、以下のような改善がされている。
--持てるアイテムの個数が24個から36個へ増加。
---装備品を含めての個数なので前作ではアイテムの管理が非常に厳しかった。本作では少しはマシになっている。
---ただ、物語を進めているとこれでも少ないと感じることもあるが。
--ボスに対してはエンロールしなくても自動的に魔獣図鑑に登録される。
--レベルアップ時に行えるステータスの割り振りは、あるアイテムを使えばやり直しができるようになった。
--魔獣にもアクセサリが装備できるように変更された。これにより、ある程度はパーティへの戦力となるようになった。

------

**問題点
''倒し方をわかっていないとキツいボス戦''
-中盤以降のボス戦は難易度が急上昇し、単純に正面からぶつかるだけでは、ほとんど勝てなくなる。
-ボスには眠りなど何らかの状態異常が効きやすく、そういった魔法を駆使して戦うことが基本になるのだが、その魔法を人間キャラが覚えているとは限らない。戦いに応じた魔獣を前もって準備しておく必要がある。
--救済策として、魔獣図鑑の完成度に応じて貰えるワンドを使用することで、こういった状態異常の魔法と同じ効果が使えるようになる。しかし、魔獣図鑑は無理に完成させなくてもよいという旨の発言があることから、貰える有用なアイテムの存在に気が付かず魔獣図鑑の作成を怠っていると……。

-ラスボスは激しい攻撃を繰り返してくることと、単純な攻撃では打撃力が足らないので、高火力の魔法や特技と回復呪文を駆使して戦うことになり、あっという間にMPが枯渇する。そのため、MPを大幅に回復するアイテムを大量に持ち込む必要があるが、このアイテムを販売しているのが箱舟を手に入れた後でしか行けない、シナリオ上行く必要のない町でしか売られていないため、存在に気が付かないと大苦戦を強いられる。

''エンカウント率が非常に高い''
-携帯アプリの2008年の時点であることを考えても、エンカウント率が非常に高い。おまけに逃げづらい。
--移動速度も速いとは言えないので、高いエンカウント率も相まってダンジョンの攻略には時間が掛かりがち。
-一応オートバトル機能はあるものの魔法などは使ってくれないので、過信は禁物。
-ダンジョンでは息切れしないよう回復の泉が存在しているという配慮はあるのだが。

-価格の高騰
--元は525円(消費税5%込み)だった物が1800円にまで値段が上がっての移植となった。
---時代の違いや移植の手間など金額が上がる要素はあれど、この価格で携帯で遊べたからこそのゲームが、今の時代にゲームバランス等が最適化される事もなく3倍以上の金額になったため、流石に高すぎると言われている。

------

**総評
システムは良くも悪くもスーパーファミコン時代のレベルのものであり、よく言えばシンプル、悪く言えば古臭く、一見すると女神転生の名前を冠しているだけの地味なRPGにしか見えない。しかし、序盤から終盤まで一切の妥協なく絶望を叩きつけられるシナリオはプレイヤーに絶大なインパクトを与え、携帯アプリという遊ぶ手段が限られていたにもかかわらず、語り草になっていたゲームであった((本Wikiでも旧ラストバイブルのページにおいて、早い段階から本作が鬱ゲーである旨が触れられていた。))。&BR;&BR;
シナリオ一点突破型の良作であり、シナリオの核心部分について触れづらいのがもどかしいところであるが、G-MODEアーカイブスによる移植のおかげで非常に手に入れ易くなったため、鬱ゲーを遊んでみたい人には是非おすすめしたい作品である。