本項では、ファミリーコンピュータ ディスクシステム『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者 前編/後編』のNintendo Switchにおけるリメイク版について解説します。
リメイク元については当該記事を参照。
ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者
【ふぁみこんたんていくらぶ きえたこうけいしゃ】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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Nintendo Switch
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 トーセ MAGES.
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発売日
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2021年5月14日
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レーティング
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CERO:C(15歳以上対象)
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プレイ人数
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1人
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定価
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単品ダウンロード:4,378円 コレクターズエディション:10,978円
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判定
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良作
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ポイント
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33年の時を経てリメイクされた待望の初作 良質なストーリーをさらに盛り上げる新演出の数々 台詞がフルボイスとなり、まさにドラマ感覚 FC版での進行上の難点もバッチリ改善 懐かしいネタも満載 割高感は否めず
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ファミコン探偵倶楽部シリーズ
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概要
1988年にディスクシステムで前後編ディスクとして発売された『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(以降FC版)のリメイク版。
続編である『うしろに立つ少女』がSFC版向けにリメイクされたのに対し、本作はFC版の発売以降リメイクの動きが一切なかったため、本作が待望の初リメイクとなる。
続編の『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』と同時発売となった。単品としてはダウンロード版のみで、パッケージ版は2作を1枚に収録したゲームカード、設定資料集、サントラCD、復刻版チラシを同梱した限定版「コレクターズエディション」のみ。
ストーリー及びゲーム全体の特徴は上記のリンク先を参照。本稿ではFC版からの変更点を中心に記載する。
FC版からの変更点
『うしろに立つ少女』と共通する部分
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すべての台詞がフルボイスとなった。
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その他大勢に該当するような人物でも、各々別々にキャスティングが充てられている。
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基本的にテキストはFC版を踏襲しているが、三人称視点のナレーション(いわゆる地の文)が大幅に削られ、対象となった箇所の大部分が主人公視点での独白に変更・もしくは誰か他の人がいる場合、その人がそれに合わせたような形で話す。
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例・取れないものを取ろうとすると・・・
FC版では とれません → 本作では 主人公「(これは取れそうもない)」 主人公「(やめておいた方がよさそうだ)」 等
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オプション画面にて、プレイヤーの望んだスタイルに合わせて幅広くカスタマイズすることが可能。
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上記の台詞の声の有無が切り替え可能で、また「レトロ」にする事でFC版のような文字表示音にすることも可能。
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音声がイメージに合わない、もしく声自体要らないという人、FC版の雰囲気を出したいという人にも配慮されている。
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BGMもFC版のものと切り替えが自由に可能。
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声やBGMなどはそれぞれボリューム調節でき、自分の好みのバランスでプレイできる。
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「聞く」などのコマンドは元々項目が絞られていたが、FC版よりも更に絞り込まれているので選び間違いによるムダな二度聞き等の手間が発生しにくい。
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文字の表示速度を「遅い」「普通」「速い」「一括」と調整可能。
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「一括」以外の場合、文字送り中にボタンを押すことで、その回の台詞が一括表示される。
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更に台詞送りのオート機能まで搭載。
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バックログ機能で台詞が記録されており前に戻って確認できる。
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意図せず見終わる前にボタンで送ってしまった場合や、もう一度確認したい場合などに便利。
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ボタンで声も再度再生できる。
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主人公の名前に漢字が使えるようになった。
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『うしろに立つ少女』の方を既にプレイしている場合、データを参照しその名前を使うか確認してくれるので、入力の手間を省くことも可能。
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回想シーンや移動時などに新しいグラフィック描写が追加された。
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LRトリガーボタンで台詞を高速スキップできるようになった。
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「調べる」「取る」をカーソルで調べる時、特定の箇所を選ぶとその名称が表示されるようになり、何度もハズレたメッセージを聞く手間が軽減された。
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当たりポイントでも、主人公の観点でそれが何だかわからない場合、名称は「???」と表示される。
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ただし、死体調べに関しては、そのカーソルの当たりが表示されない中で判断して調べなければならない。
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セーブデータは3枠ある。
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これとは別口に章をクリアした時にその章の最初からできるオートセーブ枠が1つある。
本作独自の部分
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FC版『うしろに立つ少女』同様、聞き込み済みの事をもう1度尋ねた場合は簡略化されるようになった。
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特に長い内容になる場合は再度聞こうとすると「もう一度聞きたいか?」等と聞かれ、キャンセルできるようになった。
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ストーリーの上で不透明だった部分や不足な部分に新しい台詞が補填され、ストーリーの中身がよりわかりやすくなった。
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FC版では時間の流れが解りづらかったが、本作ではイベントの進行に伴い昼間から夕方・夜へと変わるようになった。
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SFC版『うしろに立つ少女』に準拠した変更点
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全11章に分けられ、各々にサブタイトルが挿入されるようになった。
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プレイアビリティが大幅に改善された。
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重要事項はメモされるようになり、その説明が入った後は任意で手軽に確認可能。
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フラグ進行に伴って増加したコマンドは文字色が黄色になるため、見落としにくくなった。
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セーブは「調査やめる」コマンドのみだが、ロードはいつでもできるようになった。
また「オートセーブ」という形で、その時点でプレイしていた章の最初からできる機能も追加されリトライ性が高められた。これはSFC版にはなかった要素である。
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村人など、顔の出なかったキャラに全員立ち絵が与えられた。
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熊田医院の看護婦にも若い女性の姿が与えられ、セリフによるキャラ付けも施された。出番自体もぐっと増えたことも相まって、実質オリジナルキャラといっていいほどまでに存在感を増したが、テキスト回りはファミ探らしさを損ねておらず、登場するのも熊田医院限定で出しゃばり過ぎないようにも配慮されている。
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電話での入力桁数が旧作では市外局番を含めた10桁だったが『うしろに立つ少女』と同じ7桁になった。
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元々市外局番まで使う必要はなかったので、あまり気にならない部分ではある。
評価点
『うしろに立つ少女』と共通する部分
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「調査やめる」が進行に関与する場合、他のコマンドを全部(「調査やめる」の同列単位で)試すとコマンドの「調査やめる」が黄色に変化し、選択すべきコマンドであることがわかりやすくなった。
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FC版経験者なら特に迷わないが、初プレイだった場合いくらか試した後に促されるのでなかなかリアルなやり取りになる。
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FC版では描写されていなかった細かい部分が補完されている。更に同じ場所でも場面場面で異なるアングルでのグラフィックが与えられるなど細かい所まで凝っている。
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本作における詳細(ネタバレ注意)
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綾城家の門の前や玄関をこまめに介する様になった。
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留守の家の中にいきなり入っていたり、後編ではいつも最初から居間に入るといった不自然さがなくなった。
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天地の部屋は、玄関先から呼び鈴を押して入るようになった。
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熊田医院も、入り口からドアを開けて入る描写が追加されている。
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完全に閉まった状態での病院前というシチュエーションまで追加されている。
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神田弁護士事務所も事務所前が追加された。
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それに伴い秘書に門前払いを食らうシーンも追加されている。
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回想シーンなどにもイベントスチルによる描写が大量に取り入れられた。
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FC版では、そのすべてがテキストによるものだったので、より状況が解りやすくなり、ストーリーにも入り込みやすくなった。
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グラフィックにLive2D技術が導入されており、人物の立ち絵や背景が常時動く。
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人物は髪が風で揺れ動いたり、ペンで文字を書く様子が一行ずつ丁寧に描かれているなど描写が細かい。
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背景も雲や海、木々が緩やかに流れるように動いている。
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これと相まってセミの鳴き声といった環境音も非常にリアルで、臨場感にあふれている。
本作独自の部分
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カーソルの当たりポイントが示されるようになったので、進行がだいぶスムーズになった。
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FC版ではカーソルで調べて進むポイントで、その当たりの部分が数ドットしかないほどシビアなポイントが何ヶ所もあった。
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FC版の後編における殺人現場では「カメラが引きで描かれており死体の近くに寄ることができなくなっている」ため間接的にプレイヤーに想像させる形となっていたが、本作では前編同様にカメラが死体にズームするようになっている。
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これによりインパクト抜群だった恐怖の殺人現場の場面が更に強化された。
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死体を直接調べる際に、目視でも怪しげなポイントを見定めやすくなった。
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捜査メモが主人公目線でリアルタイムに変化する。
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「被害者」の欄は単純に「死亡した者」というわけではなく、主人公の見識で「殺された」という解釈になるまで移動しない。
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土蔵内の3D迷路は引き継がれているが、操作性が大幅に改善されスムーズに進めるようになった。
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メニューを出していない状態では自由に移動でき、メニューを出すと移動が止まってコマンドを選択できる。
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特定のシーンでBGMの使い方が細かくなっていたり、ラストシーンでの恐怖演出にも変更が加えられより恐怖感が増している。
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最終章のサブタイトルの意味がいろいろ連想させる奥深さがある。
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ネタバレ注意
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最終章は本作のゲームそのもののサブタイトル『消えた後継者』。
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初見層からすれば、まるで主人公自身が殺されてしまうようなニュアンスで、その先に迫る危機感を感じ取れなくもない。それにより、クライマックスの緊張感をより高めることになる。
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そんな彼らもクリアを達成した時、またFC版経験者でも気付かなかった者にとっては、そのタイトルの深みを改めて知ることになる。
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賛否両論点
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ビジュアル面が大幅に強化されフルボイス仕様となった一方で、画風の変化やBGMのアレンジなどに伴い恐怖感が薄れたり、キャラに抱いていたイメージと違うという声もやはり見受けられている。
問題点
『うしろに立つ少女』と共通する部分
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ジョイコンのトリガーがスキップボタンになっており、持ち方によってはうっかり触れてしまって意図せずスキップを誤作動させてしまう。
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FC版前編終了後、後編開始冒頭に挿入される前編のあらましのナレーションがそのままであるため、若干不自然になっている。
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シリアスなシーンで余計なものが調べられるようになっている。
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詳細(ネタバレ注意)
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本作の場合、主人公の過去が明らかになる場面で「見る・調べる」のコマンドがあり、電機やガスのメーターや隣の家の洗濯機などが調べられてしまう。
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勿論意図的にやらなければいいだけだが、FC版には存在しなかっただけに蛇足感は否めない。
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クリア後の解放要素がBGM鑑賞機能の「音楽鑑賞」のみであり少々寂しい。
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イベントスチルが閲覧できるギャラリー機能があっても問題は無かったと思われるのだが、常時動くという仕様によるものなのか存在しない。
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コレクターズエディション付属の資料集では各イベントスチルや単体の背景絵が収録されてはいるが、絵が常時動くという仕様であるだけに、ゲーム中で鑑賞できないのはもったいない。
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SFC版をベースとした『うしろに立つ少女』にはクリア後のお楽しみとして性格判断と相性診断があり周回プレイの楽しみもあるのだが、本作にはそれもない。
本作独自の部分
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テキスト面での加筆が行われているが全体的なボリュームはFC版準拠であり、豪華フルリメイク仕様とはいえ現代のゲームとしては割高感は否めない。
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恐らくは豪華声優陣の起用や開発延期などで予算が繰り上がってしまったのが影響であろう。
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サブタイトル追加の弊害
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サブタイトルが追加されたのはいいが、1つだけ先バレしてしまうものがある。
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実際にそれが発生するのは、少し後なので章開始時にサブタイトルで告知してしまうと、突然発生するインパクトが薄れてしまう。
総評
33年もの長い時を経てのリメイクということで、一気に現代のレベルまで昇華され、更に洗練されたBGMやグラフィックのクオリティはファン必見。
FC版では文字のみだった部分の回想シーンもふんだんに新規のグラフィックやアニメーションが取り入れられ、当時の感動や恐怖はより鮮明なものになった。
ストーリーに関しても、FC版では不足していた部分に新たにアレンジが加えられ、より一層物語の完成度を高めつつも、元々の良い部分はしっかりと活かすというリメイクとして理想的な形になっている。
またシステム面でも、声やBGM、表示の仕方などを自分好みに調整でき、幅広い人が望むプレイスタイルに対応してカスタマイズできる点もあり、ほとんど文句のつけようがない。
多くのファンが長年待ちに待った期待にそれ以上の形で応えた良リメイクと言えるだろう。
主なキャスティング
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詳細
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主人公(緒方恵美)
橘 あゆみ(皆口裕子)
天地(杉田智和)
駅員(千葉繁)
田辺 善蔵(樋浦勉)
綾城 キク(宮沢きよこ)
綾城 完治(木下浩之)
春日 あずさ(田中敦子)
綾城 二郎(堀内賢雄)
山崎 茜(石飛恵里花)
熊田医師(岩崎ひろし)
熊田医院の看護婦(佐藤舞)
玄信住職(塾一久)
平吉(魚建)
綾城 香(寺依沙織)
藤宮 由紀子(小清水亜美)
綾城 和人(川田紳司)
石野 麗子(山本彩乃)
大西 克子(森なな子)
駄菓子屋の老婆(片貝薫)
明神山の村人(小島英樹)
山本 元子(沢田泉)
綾城 ユリ(潘めぐみ)
サンボラのマスター加藤(志賀麻登佳)
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その後の展開
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2024年7月17日にNintendo Switchで35年ぶりの新作となる『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』が公開され8月29日にNintendo Switchで発売予定と発表された。
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先んじて7月10日に紙袋を被った笑み男のホラー調映像がタイトルを伏せて公開されており、さまざまな考察の声があった。
余談
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後述の二郎の免許証などの描写の通り、本作の時代設定はFC版の発売年と同じ1988(昭和63)年である。
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2019年9月5日に公開されたニンテンドーダイレクトでは2020年発売予定となっていたが、結果的には延期となった。
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この時に本作の開発中画面が公開された。それは最初の殺人現場に出くわす直前の場面が先行して紹介され「7/30(SAT)」という表記があった。
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1988年7月30日は本当に土曜日なのは勿論のこと、その殺人が行われたのは前日の満月の夜という設定だったが、1988年7月29日は本当に満月だった。
つまり相当細かいところまで、拘っているのが垣間見える。
あゆみは現役の高校3年生でもあるのだが、探偵助手として作中の事件の調査をフルタイムで行えているのは夏休みの期間だからと思われる。
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本作が発売されたのは、奇しくもFC版の前編がディスクライターで書換え開始された日と同じ5月14日となった。
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オリジナルでは110番のみだったが、SFC版『うしろに立つ少女』同様に119、117、104なども有効になった。
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また『うしろに立つ少女』のサンボラにもかけられるようになった(当然FC版ではその存在自体なかった)。
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元々市外局番まで使うような用はなかったので、これのために7桁に変更したものと思われる。
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橘あゆみ役の皆口裕子は、SFC向け周辺機器「サテラビュー」で1997年2月に配信された「BS探偵倶楽部」で本作に先んじてあゆみを演じている。
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機器の普及率が低かったため作品自体がマイナーだったものの、旧作を意識したキャスティングになっている。
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坂本氏は「橘あゆみの声=皆口裕子」に拘りがあったとのことで、24年という長い年月を経ながら再度起用された
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本作で天地を演じた杉田智和氏はシリーズの熱狂的なファンとして知られ、以前から度々リメイクや続編を切望していたため出演が発表された際には一部で大きな反響があった。
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FC版にはなかった小ネタも盛り込まれている。いずれも懐かしさを感じられるものばかり。
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綾城二郎の生年月日が昭和24年4月27日になっており、この4月27日とはFC版の前編パッケージ版が発売された日である。
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また昭和24年というのは、作中の昭和63年に対して二郎の年齢39歳で逆算したもの。
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上述の二郎の免許証が「昭和65年の誕生日まで有効」。更に種別表示が一列構成。
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八束町に「コスモス自販機」を模したものがある(名前は「コロモス」と変名されており、本物は赤っぽい色だが作中では緑になっている)。
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土蔵の中に、ファミコン本体やディスクシステムの箱が置いてあり、ちゃんと調べると特別な反応がある(上記の通り緊迫したはずの現場には不釣り合いだが)。
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しれっと「1日1時間ならやってもいいだろう」という懐かしいネタも…
片やディスクシステムの箱は「ある意味骨董品だ」と自虐的且つメタ発言もある(時代設定的にはまだまだ現役の筈なのだが…)。
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コメディアン「ザ・ドリフターズ」の名前が隠れている。
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志村けん………空木探偵事務所のあるビルの1階に「志村不動産」
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荒井注………明神駅の掲示板の張り紙に「荒井商店」
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高木ブー………上記と同じ掲示板に「高木金属加工有限会社」右上の看板に「テレビは…Boo」
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仲本工事………八束町の駄菓子屋が「仲本商店」隣に「仲本パン」
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加藤茶………とある回想シーンの片隅に見える喫茶店が「カトー」
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いかりや長介………八束町アパートの部屋の1つの表札が「碇矢」
最終更新:2024年12月17日 08:04