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タイムクライシス - (2017/12/08 (金) 15:17:16) の編集履歴(バックアップ)



タイムクライシス

【たいむくらいしす】

ジャンル ガンシューティング
対応機種 アーケード(SYSTEM SUPER 22)
販売・開発元 ナムコ
稼動開始日 1996年
判定 良作
ポイント 革新的なペダルシステム
タイトル通りの厳しい制限時間
硬派なアクション映画風の演出

概要

ナムコが1996年に稼動を開始したアーケード用ガンシューティングゲーム。
ストーリーはナムコ製アクションゲームの王道ともいえ、「国際諜報員の主人公が捕らわれた大統領令嬢を救うため、敵のアジトに単身乗り込む」というもの。
画期的な「フットペダル」の仕様により、ありきたりのガンシューの枠には収まらない好評価を受け、後のシリーズの土台となった。


ストーリー

とある小国「セルシア共和国」大統領の娘レイチェル・マクファーソンが首領「ワイルド・ドッグ」率いる犯罪組織に誘拐された。
首謀者はかつてマクファーソン一家が率いた革命で王政を滅ぼされたことに恨みを持つ旧王家の生き残りシェルード・ガロ王子によるもので、
政府への復讐の為、犯罪に手を染めていたシェルードはワイルド・ドッグと同盟を結び、レイチェルを根城である旧王家の孤島の古城に幽閉。
シェルードらは大統領に対し、娘と引換に機密軍事ファイルの提供を日没までに要求、この件の公表や武力介入をするならば、娘の命は無いと脅迫した。 そのような要求を飲むわけにはいかない大統領は、欧州連合(EU)の国際諜報機関「VSSE」にレイチェル救出を極秘裏に依頼。
これを受けたVSSEは、同機関最強の諜報員と称され、ワイルド・ドッグとは因縁を持つ男、リチャード・ミラーを単身古城に潜入させた…


特徴

従来のガンシューティングゲームのシステムは「自動スクロールでゆっくり進む画面」「次々現れる敵に撃たれる前に撃つ」「リロードは画面外を撃つ」が主流だった。
これは銃撃戦をゲームに落とし込む上での都合なのだが、遮蔽物を挟み身を隠しながら相手と撃ち合うという現実の銃撃戦のリアリティには大きく欠けるものであった。

本作の革命的だった点は、これらの「ガンシューティングゲームのお約束」を大きく打ち破った点にある。

  • フットペダル操作による遮蔽動作
    • 本作の筐体にはガンホルダーの下に金属製のペダルが設けられており、プレイヤーは足でこのペダルを操作し、ゲーム内の主人公の体勢を変化させながら銃撃戦を行う。
      ペダルを踏むと、踏んでいる間だけ物陰から身を晒して攻撃でき、ペダルを離すと素早く物陰に隠れる。隠れている状態では敵の攻撃は一切当たらなくなり、銃弾もリロードされる。
      • 本作以前にもフットペダルやレバー等で移動できるガンシューティングが少数存在*1したが、どの作品でも使い方が少々難しく、攻撃を避けるという感覚を楽に味わえるものではなかった。
  • テンポ良く進む『エリア』制と『アクションポイント』システム
    • 本作は従来の「ゲーム開始後はステージが切り替わるまで延々と銃撃戦」ではなく、『エリア』に配置された『アクションポイント』*2と呼ばれる細かな銃撃戦を繰り返していく。
      • 1ステージは3つのエリアで構成され、全3ステージ・9エリア制。舞台が狭い古城である事を活かし、ゲーム序盤の背景に見えていた建物が後に舞台となる演出もある。
    • ポイントへの移動中は画面左下に「WAIT!」と表示され、プレイヤーは攻撃出来ず、敵の攻撃も当たらないが、ポイントへ到着すると映画の撮影宜しく「ACTION!」の掛け声で戦闘が始まる。
      このシステムにより、プレイヤーは終始神経を張り詰める事なくプレイ出来るようになり、逆に熟練者には如何に素早く各ポイントをクリアできるかという競争を加熱させる事にも成功した。
  • タイトル通り、非常に重要な意味を持った「時間」の概念
    • プレイヤーには最大60秒の制限時間が与えられるが、時間が無くなると残ライフ数に関係なく問答無用でゲームオーバーとなる。
      ポイントを1つクリアする度に制限時間が少し回復するが、ポイント間の移動中も時間は減っていく為、物陰に隠れてばかりもいられない。
      • 所々に必ず現れる黄兵*3を倒すと、ポイントクリア時に時間を更に回復できるが、彼等は画面の端にいたり、すぐ逃げてしまう。
        身の安全と迅速性、この相反する要素のジレンマに悩まされながらもプレイする必要がある。
    • 敵は一発で倒れるが急所(頭)に近いほど消える時間が短い。ランキングはクリアタイムのみで決定される為、タイム短縮の為にはヘッドショットを狙う必要もある。
  • 戦闘服の色分けや武装の差により、視覚的に危険度を示している敵兵
    • 従来のガンシューティングでは、「外見は違うが性能は同じ敵が無造作に連続登場」というものが多かったが、本作では性能に特徴が付けられた敵兵達が、他の敵兵と連携しながら登場してくる。
    • 拳銃装備の一般兵だけでも、射撃が下手な「青兵」・青兵よりは上手いがあまり脅威ではない「隊長」・初弾でほぼ必ず命中弾を撃つ「赤兵」「親衛隊」・倒すと時間ボーナスの「黄兵」と5種類いる。
      他にもマシンガン兵は緑、バスーカ兵は茶、手榴弾・格闘兵は黄/緑…と、殆どが画面内で目立つ色合いになっている為、「どの敵が危険か・優先して倒すべきか」が分かりやすい。
      • 単なる拳銃よりもマシンガンや爆発物の方が当然命中率は高く、格闘攻撃は必中。隠れる分だけタイムロスも発生する為、既存要素の「敵に攻撃される前に倒す」も疎かになっていない。
    • このおかげで初心者でもすぐに「赤兵やボスの攻撃が来たら隠れる」「黄兵は時間ボーナスなので狙う」等、敵のパターンやゲーム全体のセオリーを理解しやすくなっている。
      この要素は以降のシリーズ作でも継承され、一般兵は作品によっては色が異なるものの、全作共通して命中率が高い敵兵は「赤」・ボーナス要素がある敵兵は「黄」を基調とした外見になっている。
  • 民間人や人質といった「撃ってはいけないもの」が基本的に無いのも特徴。戦略性の高さと引き換えに、ひたすら撃ちまくる爽快感を追及したのは英断といえる。
  • ガンコントローラーには『ガンバレット』と同じブローバック機構*4付の高精度品を採用。同作で公称されていた「誤差1ドット以内」の高い命中精度は、本作にもバッチリ活かされている。

ステージについて

+ ステージ情報
  • ステージ1
    • レイチェルがシェルードによって処刑される直前、爆発物を用いて孤島中腹部の潜水艦ドックに潜入し、彼らの気を逸らしたリチャード。
      レイチェルの処刑を阻止すべく、リチャードはワイルド・ドッグの兵士達と戦いながら、貨物用エスカレーターを経由して中庭の塔へと急ぐ。
      • 中ボスとしてエリア3にて武装ヘリが登場。20発ほど撃ちこむか、数十秒経過すると退却していく。
    • ステージ1らしく、敵を早く全滅させないとタイムロスするドア、撃つと敵を全滅できる背景物、避けなければらない障害物と基本要素が詰め込まれている。
    • ボスは全身金色で鉤爪を装備した忍者のような敵「MOZ」と、彼が率いる全身黒尽くめの部下「ムササビ」。
  • ステージ2
    • 回転扉によってレイチェルを目前で見失ったリチャードは、彼女が遠くの時計塔へ連行された事を倒したMOZから聞き出し、鉄拳制裁。
      時計塔へと続く狭く暗い渡り廊下から落下するというトラブルがありつつも、リチャードは宝物展示室を抜け、時計塔の最上階を目指す。
    • エリア1の狭い渡り廊下・エリア2の宝物展示室&暗室と変わった状況下での近距離戦や赤兵の不意打ちが多くなり、難易度が急上昇している。
    • ボスは事件の首謀者シェルード・ガロ王子と、彼を守るワイルド・ドッグの精鋭部隊「親衛隊」。
  • ステージ3
    • シェルードを倒したリチャードだったが、その隙にワイルド・ドッグによってレイチェルが捕らわれてしまう。
      雇い主を失ってもなお、レイチェルを使って一儲けを企むワイルド・ドッグは、リチャードを時計塔に閉じ込め、自身は古城を脱出しようとする。
      リチャードは窓から時計塔の壁面を伝って彼らを追いかけるが、敵に発見され、数階程の高さから飛び降りての戦闘を余儀なくされる。
      • 中ボスとしてエリア1にて4門の対空砲及び大砲、ステージ1の武装ヘリ、エリア3にてMOZとムササビが再登場する。
    • 時計塔前・武器密造工場・司令室&玉座と何れのエリアでも赤兵の不意打ちや連携攻撃の連続で、回復時間も短めと非常に難易度が高い。
      夕日が輝く広場での最終決戦は、命中率の高いワイルド・ドッグの攻撃と、部下達の連携攻撃が合わさった、文字通りの激戦となる。
    • ボスはワイルド・ドッグと、MOZ・ムササビ・親衛隊を含んだ彼の部下達の生き残り。

評価点

  • ハード&ソフト両面の様々な演出による、映画並の臨場感
    • システム上どうしても「敵の隙を突いて飛び出し、正確な射撃で敵を撃破」→「敵の攻撃が当たる前に隠れ、弾を補充」という一連の流れが形成され、独特のテンポが作品全体を支配している。
      繰り広げられる銃撃戦はさながらアクション映画やスパイ映画のワンシーンのようで、ガンアクションが好きな人には病み付きになってしまう中毒性がある。
      • 物陰に隠れるという要素もただ敵の射撃を回避し、銃弾を補充するだけではない。突っ込んでくる自動車やクレーン、相手の格闘攻撃を回避するために使うシーンもある。
    • 素早いプレイを要求される厳しい制限時間も、ストーリーで説明されている「シェルードらが突きつけた要求期限」を表現しており、まさにタイトルに相応しい要素となっている。
      • ゲーム中のリチャードもとにかく走り、ステージ2では屋内から屋外に出る度に時計塔を見上げ、ステージ背景の夕陽もゲームが進む毎に沈んでいくという細かな演出もある。
  • 「ひげ中村」こと中村和宏氏が1人で全担当した「サウンド」は何れも印象的。
    • オーケストラ調のBGMは何れもそのシーンに合わせた曲調で、現在でも十分視聴に堪える作り。公式サントラも2つ発売*5された。
      • 特に各エリアのBGMは一見別々の曲に思えるが、実は1つの曲を分割して使っており、最終面ではフル版の「作戦開始 2nd Theme from Time Crisis」として流れるという熱い演出もある。
        上記曲も含め、デモシーンの「With a Tension」、ワイルド・ドッグのテーマ「Theme of Wild Dog」、エリアクリア時の「作戦成功」、システム関連の効果音は続編でもアレンジされている。
      • 2015年の中村氏インタビューによると、『スピード』等の様々な映画サントラを参考とし、基板の同時発音数の12個制限と言う状況下で、不慣れなオーケストラ調での作曲は大変だったとの事。
    • キャラクターボイスも、当時としては高いサンプリングレート*6を使用しクリアなボイスを実現。3人の声優も全員ネイティブの外国人を起用し、映画らしい雰囲気を見事に表現している*7
      ちなみに一匹狼な主人公のリチャードは終始無口*8で、ゲーム中では顔の表情だけで感情を表現しているが、逆にプレイヤーがゲームに移入しやすくもなっている。
      • 銃の描写に関しても、銃声が「広い屋内」「狭い屋内」「屋外」でそれぞれ変わる、反響音や空薬莢が床に転がる音も入っている…と相当な拘りぶり。
        リチャードの銃の外見が筐体に付けられたコントローラーと同じである点も、プレイヤーがゲームに移入しやすいよう配慮されたものなのかもしれない。
  • 芸の細かさを感じさせる、非常に細かな演出
    • 敵のモーションやボイスが豊富に用意されており、撃たれた時のリアクションがどこに命中したかによって変わるのは勿論、特定ポイントではあえて敵を倒さない事で敵の同士討ちが見れたりもする。
    • 撃てる背景物も多く、テーブル上の小物を撃つと床に落ちる、開いたままのドアを撃つと閉められる、機械類を撃った際は被弾箇所から火花が出る等、リアクションも細かく用意されている。
  • 個性的なボス敵たち
    • いずれも印象的な面々で、ステージ1で鉄拳制裁された後もしぶとくリチャードを狙うMOZと、事件の主犯シェルード・ガロは銃ではなく、鉤爪や極めて命中率が高い投げナイフで攻撃してくる。
      またワイルド・ドッグとの戦闘は、手を変え品を変え場所を変えつつステージ3後半のほぼ全域に渡る為、特に強烈なインパクトを与えた。彼は後作にも出演し続け、シリーズを通しての宿敵となる。

問題点

  • 敵兵の命中弾の判別が非常に難しい
    • 本作では「命中しない敵弾」と「命中弾」の外見上の差が弾道以外に一切無いため、どの弾が自分に当たるか非常に判別しづらい。
      命中弾を撃つ確率が低いからといって青兵の射撃を舐めていると、思わぬダメージを受けてタイムロスという展開も多々ある。
      • 当時からほぼ必ず挙げられた不満点だった為か、『2』で敵の射撃が命中攻撃だった場合は攻撃時や弾が赤く光るように変更、
        『4』においては格闘攻撃を除くほぼ全ての命中攻撃が攻撃時に赤く光るように変更され、判別が容易となった。
      • ただし本作の直接的な続編と言える『プロジェクトタイタン』では、命中弾の色が赤い程度に収まっている。
  • 敵の攻撃を回避できる反面、ライフの回復条件が「弾を40発連続でノーミスヒット」とかなり厳しい
    • スコア制となった『2』以降のナンバリング作では、一切のライフ回復が廃止された代わりに、ノーミスヒットは高得点を狙う上で重要な要素となった。
    • 『プロジェクトタイタン』では「30発もしくは20発連続」に緩和された上で復活、新たに「一部背景物破壊」も追加されている。
  • 銃の総弾数が僅か6発しかない
    • リチャードの銃は自動式拳銃*9であるにも関わらず、装弾数がリボルバー並に少ない。隠れることでリロード可能だが、頻繁に隠れる事が必須となる。
      • 『プロジェクトタイタン』を除く『2』以降のナンバリング作では総弾数は9発に増加した。

総評

続編に比べてシステム的に厳しい点もあるが、シリーズ化も納得の良作。
隠れながら撃つ臨場感と銃を撃つ度にガンコンがブローバックする爽快感は他のガンシューティングでは味わえないだろう。


家庭用移植

対応機種 プレイステーション
販売・開発元 ナムコ
発売日 1997年8月7日
価格 6,090円
備考 ガンコン対応
PS2『ガンバリコレクション プラス タイムクライシス』
にもガンコン2のみ対応で収録
判定 良作

概要(PS)

  • アーケード版稼働の1年後、『ガンバレット』と共にプレイステーションに移植。
    専用開発のガンコントローラ「ガンコン」も同時発売され、同梱版も発売された。

特徴(PS)

ガンコンはブローバックはしないものの、基本造形や精度はアーケード版とほぼ同じで、小さなテレビでもプレイ可能。国内版では色はつや消し黒で、大分本格的な作りである*10

  • アーケード版に於けるペダル操作は、ガンコン前方の両側面に付いた「A/Bボタン」が担当。その為、ガンコンプレイ時は両手持ち必須。
  • 通常コントローラーでも操作可能だが、画面に小さな点の照準が表示されるだけで非常に見失いやすい。遊ぶならガンコン推奨。
  • アーケード基板の半分以下の性能であるPSに合わせグラフィックの質やフレームレートが落ちたが、様々な工夫*11により、そこまで悪く見えない。
    また完全新規の「スペシャル」モードが追加され、プレイヤーの行動により次のエリアが分岐し、ストーリーや戦うボスが変わる等、アーケードとは違った魅力がある。
    以降、本シリーズの家庭用移植版では、ミニゲームモードの「クライシスミッション」や、ストーリーの裏側を体験できる新規モードの収録がお約束となった。
  • システム面の大きな違いとして、ゲームオーバー時のコンティニューがアーケード版のその場から、そのエリアの始めからへと変更。
    • アーケード版ではゲームオーバーになっても、連続コンティニューをする「ゴリ押し」プレイができたが、PS版ではエリアの初めからやり直さなければならない。
      ボス戦も例外ではなく、ボスに負ければボス戦の始めから。特にステージが長い「スペシャル」モードでは苦痛になりやすい。
  • このPS移植版は、PS2『ガンバリコレクション プラス タイムクライシス』*12に収録されて発売された。
    • PS2専用ソフトおよびガンコン2対応となり、ロード時間が僅かに短縮された点以外はPS版のベタ移植である。
  • ガンコン、ガンコン2はブラウン管テレビのみに対応。液晶テレビには非対応なので注意。(ガンコン3は両対応)