「天外魔境 ZERO」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
天外魔境 ZERO - (2017/10/16 (月) 17:46:30) の編集履歴(バックアップ)
天外魔境 ZERO
【てんがいまきょう ぜろ】
ジャンル
|
ロールプレイングゲーム
|
|
対応機種
|
スーパーファミコン
|
メディア
|
40MbitROMカートリッジ
|
発売元
|
ハドソン
|
開発元
|
ハドソン、レッドカンパニー
|
発売日
|
1995年12月22日
|
定価
|
9,980円
|
プレイ人数
|
1人
|
判定
|
良作
|
天外魔境シリーズリンク
|
概要
PCEで展開されていた天外魔境シリーズの外伝作品で、唯一SFCで出された作品である。
スタッフの間に自分の子供が(PCEを持っていない等の理由で)天外魔境をプレイしない、したことがない、という声が上ったという経緯で製作された。
-
ただ地形は日本列島を模していた2作とは似ても似つかない。攻略本に載っている地図をさかさまにすると九州に見えなくもないが。
ストーリー
太古のジパングは火熊国、孔雀国、鶴国、亀国、犬神国、竜王国の6つの国に分かれており、それぞれの国は神獣によって守られていた。古代の習わしにより、永遠の火の意志によって選ばれた火の勇者が竜王国の王となり、ジパングを代々束ねていた。
永遠の火によって弟王が竜王国の王に選ばれるが、兄の兄王はそれに反発。600年前に火の一族と戦い地獄門に封印されていたニニギによってそそのかされた兄王は弟王を殺害。地獄門の封印を解き、ニニギを復活させてしまう。復活したニニギは地獄の軍団を従えて瞬く間に神獣を封印し、ジパング全土を支配してしまう。
100日後、火影村の少年、ヒガンは永遠の火の意志によって新たな火の勇者として選ばれ、ニニギを倒しジパングを治めるべく旅立つ。
(Wikipediaより転載)
システム関連
-
PLGS(パーソナル・ライブ・ゲージ・システム)
-
本作最大の売りなシステム。
-
簡単に言えばゲーム内の時間と現実の時間とがリンクするシステムである。
-
一般的なRPGでは時間の概念がない、若しくはゲーム内だけの変化であるが、本作では現実の時間とリンクした様々な効果が得られる。
-
例を挙げると、朝4時半から5時半の間は戦闘で得られる経験値が1.5倍になりもらえるお金が0.5倍となる。逆に深夜2時半から3時半の時間帯では経験値が0.5倍となりお金が1.5倍となる。一日の間の変化の他にも曜日ごとの変化もあり、日によってお店が開いていたり、開いていなかったりする。などなど時々刻々とゲーム内の状況に変化があるシステムである。
-
他にもカレンダーとリンクしたイベントも毎月決まった日にあるため本作を極めるためには本当に1年という時間が必要である。
-
なお、このシステムはハドソンの後発のRPGのほか、ポケモンシリーズでもこれを模したシステムが導入されている。
-
ハードの仕様上本作の日付設定はソフトに依存するため、バーチャルコンソールでの配信はないと思われる。
-
出会い茶屋
-
これもある意味ではPLGSの一部ではあるが、特徴的であるので別記する。
-
本作では各地に出会い茶屋と呼ばれる施設が存在する。
-
要は男が通って女の子と友達になる場所であるが、本作では会って話すだけでなく、何人かは時間とお金をかけることによって最終的には家を買ってあげて、そこへ女の子を住まわせることができてしまう。
-
しかもそれは一人で終わることはなく、何人もの女性を口説くことが可能。
-
家を買ってあげた女性たちに対しては、会いに行くとアイテムがもらえるなど様々なイベントがおこるが、そのどのイベントの後も本当に子供向けのゲームかと訝りたくなる様な描写と効果音が入る(一部入らない女性もいるが、それは相手がおばあさんだからである。)。
-
しばらく会いにいかないと次々と手紙を送ってきて最終的には失踪してしまう女性や、会いに行くたびに貢物を用意しなければならない高飛車な女性など、必ずしも付き合いやすい女性ばかりではない。
-
一連のイベントを進めるためには多量のお金が必要となるが、本作には簡単にお金が稼げるポイントが幾つもあるので敷居はそんなに高くはない。
-
またこれらと関連して本作にはイカす度と呼ばれるパラメーターが存在する。アイテムや主人公の行動によって上下し、技を使用した際のカットインや出会いの茶屋での女性との会話に変化が生じる。
-
その他
-
一般のRPGにおける魔法に相当するものに巻物がある。巻物は人からもらうのが基本なので、主人公たちが自ら術を覚えるといったことはない。
-
巻物には1個で使用するもの、2個を組み合わせるもの、の2種類ある。前者は様々な効果を持つものがあるが、効果が低めとなっている。後者は攻撃のみで高コストだが、威力も相応に高い。
-
巻物のほかにも必殺技にあたる奥義が用意されている。習得方法はそれぞれ違い、中には自分で卵をかえして育てるというものもある(しかも、育て方によって最終的に得られる効果が違う)。
-
ボス(一部除く)に敗北すると、敗北イベントが見られる。ボスによってはかなりエグいイベントもあり、ある種の見所にもなっている。
評価点
-
3分ほどのオープニングムービーが2種類用意されている。また、これに合わさる音楽も好評。
-
一つ目のデモが終わった後表示されるタイトル画面で曲がループするまで待つと2つ目のデモが流れる。
-
オープニングムービーが複数あるゲームは多いが、それはゲームの進行とともに変化するものがほとんどで、単純に2種類用意されているゲームはそれほど多くはない。
-
ストーリーは王道的でよくまとまっている。
-
IIのようなインパクトにこそ乏しいが、一つ一つのイベントが時に切なく時にギャグテイストで丁寧に描かれており、本作独自の味を引き出している。かつイベントに合わせる音楽も粒揃い。
-
音楽の出来も全体に良好。
-
本作のサウンドトラックが今でもプレミア価格で取引されているあたり、根強い人気が窺える。
-
戦闘バランスも難しすぎず簡単すぎずちょうど良いくらいである。
-
装備を相応にしっかり整え、レベル上げや巻物回収を怠らなければ基本的に詰まる事は無いだろう。
ただ地域(エリア)ごとの雑魚敵の強さに大きなばらつきがあり、新たな地域に進出して間もなくうっかり奥地に出向くと相応の苦戦を強いられてしまう為、迂闊な探索は禁物と言える。
-
雑魚敵も非常にバリエーションに富んでおり、個性的な専用グラフィックと特殊能力を持つ敵が多くプレイヤーを飽きさせない。色替えの所謂コンパチキャラやただ物理攻撃をしてくるだけの脳筋キャラは少ない。
-
シリーズの伝統なのか敵キャラがなかなかに印象的である。
-
王道的な悪役ポジションの絶対レイドや闇の剣士シラヌイ、行く先々でちゃらけた言動や意図の読めない手助けをしつつ醜悪なまでの腹黒さを垣間見せるジュリ、科学と富で人々の生活を発展させた反面人情を廃れさせるキンギン等、一筋縄ではいかない背景や個性を持っており、ストーリー進行を飽きさせない。
-
特に赤丸は敵ながらちゃっかり本作のマスコットキャラになっており、専用の戦闘BGMや彼等をモチーフとした町があったりかなり優遇されている。
-
問題点ともなりうるが、ゲーム内の時間と現実の時間とをリンクさせようとした試みは当時としては斬新だった。
-
ROM容量が他のSFC作品より大きいためかグラフィック面もかなり上質。
-
前述した巻物のエフェクト、後半でのロボット同士の対戦等、迫力あるものも多い。
-
本編は結構シリアスだが、遊びの部分も大きくそれらも含めて作品の魅力といえる。
-
本作のPLGSと出会い茶屋のシステムは完璧に遊びの要素である。ある意味力の入れどころを間違っている気がしないでもない。とはいえ、それのせいで本編がおろそかになっているということもない。
-
所謂『強くてニューゲーム』である『ふたたび』モード。
-
主人公達のパラメーターや所持金を引き継いでプレイ出来るというもので、2周目以降を無双プレイしたり、やりこみ派には歓迎されている。
問題点
-
ゲームオーバーの概念導入
-
戦闘で味方全員が戦闘不能あるいは石化になるとゲームオーバーとなり、最後にセーブした場所からやり直す羽目になった。
-
これにより、前3作のように経験値がそのままの状態でゲームを続けることができなくなった。
-
天外魔境のRPGでゲームオーバーが採用されたのは本作が初で、『天外魔境III -NAMIDA-』も同様である。
-
PLGSがあまり本編とからまずお遊びで終わってしまっている点。
-
下手に本編にからめすぎるとプレイの幅を狭めることになり問題であるが、本作においてはただクリアを目指すだけではほとんど無視してしまっても差し支えない。
-
特定の日付でのみ入手出来るアイテムがあるのだが、その日を逃すと数か月待たされる、ということも。親の目が厳しい低年齢層や、時間に乏しい社会人プレイヤーにとっては辛いところ。
-
ゲーム開始時に設定する現在時刻が2014年までしか入力出来ない為、これから始めた場合、どうしても日付にずれが生じてしまう。
-
誕生日に関しても1999年までしか設定出来ない。これに関しては誕生日に起動した際の年齢が食い違うだけなので問題が生じたりはしないが、あまり気分のいいものではないだろう。
-
また本作が発売された当時はハッピーマンデー制度が施行されておらず、一部の祝日設定が現在とは異なっている。プレイするならこの点に注意されたし。
-
主人公の移動手段は基本徒歩であるため、本編を進めながらサブイベントをこなしていく場合、移動がめんどくさい。
-
一部地域には飛行船や船といった移動手段が用意されているが、その地域を超えて使うことはできない。
-
特に序盤から中盤にかけては、マップ全体が複雑な迷路になっている『朱雀国』、マップの大半が移動速度が大幅に落ちる砂漠の『鶴国』、マップ全体が樹木で覆われており視界が遮られる『亀国』が続くためそういった印象を持ちやすい。
-
一応、一度行った場所に移動できる天駆の巻物やひこう石というアイテムがあるため、スバル加入後は困ることはない。
-
通常の会話メッセージの表示速度に比べると、イベントのメッセージ表示速度がなぜかやたら遅く、ストレスを感じやすい。
-
こちらも一概に問題とは言えないが、最終盤でのイベントをこなすと竜王国以外のフィールドで雑魚モンスターとのエンカウントが無くなるという仕様がある。
-
フィールドを移動する際にエンカウントを気にしなくて良くなるという大きな利点はあるものの、本作の雑魚モンスターはよくある色変え等が殆ど無く個性的な敵が多く、フィールドでしか出現しない敵も多い為、それらを拝めなくなるのは寂しいところである。また、その敵しか落とさないアイテム(ドーピングアイテムや装備品)もある為、やりこみ派にとっては純粋に手痛い所でもある。
-
とある後半の町でのバランス崩壊級のミニゲーム。
-
999000両まで賭けられ当たれば2倍になるという文字通り桁外れの賭け事である。3分の1という高確率で当たり、外れてもリセットすればいいだけなので、この町以降は金額はほぼ無意味になる。
-
こうなると強力な装備品や回復アイテムが買い放題となり、ゲームバランスがかなり崩れる。日時が合えば各神社の縁日で全員を完全回復する「きせきのさけ」、敵全体に大ダメージを与える「ツウコンのこな」などの強力なアイテムも大量にストックできる為尚更。
-
直後に1000両以下でないと通過できないイベントがあるがアイテムに変えておけばいいだけなので無意味である。
-
この国にはほかにも金や砂金の換金などの金稼ぎもあるが、このミニゲームの爆発的な効率の前では影を潜めてしまう。
-
テンジンの扱いについて
-
本作の3人目のパーティキャラのテンジンは恋人である4人目のパーティキャラのみずき(パッケージ右上)と一つの肉体を共有しており、中盤以降に自由に入れ替えが出来るようになるのだが…
-
典型的な器用貧乏で使える巻物も少ないテンジンと比較してみずきは全体的にステータスが高く奥義も強力なものが多いため、みずき加入後にお払い箱になってしまうケースが多い。
-
強力なキャラの交換券扱いと言う事で某RPGの青い剣士を彷彿とさせるが、交換される相手が自分の恋人であるために余計に哀愁が漂っている。
-
終盤のアクション対戦モード
-
終盤に巨大な魔人を操り、敵の巨大ロボットと格闘ゲームで対戦し倒すイベントがあるのだが、一度対戦に入ると勝利するまで先に進めず、敗北しても再戦するかゲームオーバーになるかの選択しか無く、後戻りも出来なくなってしまう。難易度はそれほど高くはないのだが、格闘ゲームが苦手な人にとってはやや厳しい。一定回数敗北した際の救済処置等も無く、自力で勝たなければならない。
-
後に犬神神社の縁日でこのゲームを自由にプレイ出来る。敵のロボットを操作したり2Pプレイも可能と嬉しい措置なのだが、こちらもPLGSイベントの1つであり、その日が過ぎると暫くプレイ出来なくなるのも寂しいところ。こちらはいつでもプレイ出来るようにしても良かったのでは。
その他
-
本作はROM内に時計機能が仕込んであるため、他のSFCカセットよりもバックアップのための電池の消耗が早い。そのため現在では電池交換の必要なものがほとんどである。
-
幸い(当時の事情もあるが)出荷台数が多く、現在でも中古ショップや通販等で新品が数百円で投げ売られてる事が多いので、電池の消耗の少ない新品を購入するとある程度安心。
-
「週刊少年ジャンプ」の抽選プレゼントで、「少年ジャンプの章」という特別版が配布された。
-
毎週火曜日に各神社で「ジャンプ」が購入出来る等、いくばくかの追加要素がある。
-
またある条件を満たすと今田耕司が登場する。
-
当時放送されていた深夜番組とのタイアップによるもの。
-
出会い茶屋について、主人公の設定年齢を考えると様々な意味で子供向けではない。
-
出会い茶屋がらみのイベントも、突き詰めると『12歳の少年が出会い茶屋に通い詰め、次々と女性を口説き、果ては二股三股な状態で家に住まわせる』という相当な女たらしな主人公と化す。12歳の少年相手にマジになる女性達も大概であるが。
-
女性達のやり取りの中で画面が暗転する事があるのだが、その際どう見ても接吻したとしか思えない効果音が鳴る為、余計にアブない。
総評
全体的に丁寧に作られた良作である。本作の評価点としていろいろ挙げることはできるが、総合的に見て完成度の高い作品といえる。
しかし、本作ならではの特色に乏しく、全体的に模範的な良点が散りばめられている作風は「雰囲気ゲー」ということもできるかもしれない。
プレイしているうちは楽しいのだが、終わった後で何が良かったのかと聞かれるとちょっと答えにくい…そんな作品である。
その雰囲気にどっぷりとつかってしまえた人には名作ともなりえるし、雰囲気が合わなかった人には至って普通のゲームといわれるかもしれない。
ある意味で後年に出たオリエンタルブルー 青の天外と似た作品といえる。
だが不運にも、わずか13日前に発売された国民的RPGに埋もれ短命に終わってしまい、ゲームとしての知名度は高いとは言えない。
それでものちに大出世を遂げる、あのシリーズの始祖より宣伝には力を入れていたほう(あちらはPSへのリメイクで知名度を大きく高める事になるが)。
しかし現在でもリメイクや移植、VCでの配信を求める声が多い事から、知名度こそ低めだが一定以上の人気は確実に掴んだ秀作…としての地位は確立している。