アオイシロ
【あおいしろ】
ジャンル
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和風伝奇アドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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サクセス
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発売日
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2008年5月15日
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定価(税込)
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限定版
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9,240円
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通常版
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7,140円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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周辺機器
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振動対応
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廉価版
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SuperLite2000シリーズ 2009年5月28日/2,000円(税別)
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備考
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初回限定版にはブックレット とドラマCDが付属
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判定
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なし
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アカイイトシリーズ アカイイト / アオイシロ
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概要
2004年に発売された『アカイイト』の続編として製作された作品。アカイイト同様に「百合」要素のあるゲームとして話題を呼んだ作品である。
ただし世界観は共通ではあるものの、アカイイトとの物語の直接的な繋がりは無い。
特徴
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『アカイイト』から引き続き、キャラクターデザインはHal氏、シナリオは麓川智之氏、BGMをLittle WingのMANYO氏が担当している。
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また日本神話をモチーフにしていたアカイイトと違い、本作はケルト神話をモチーフにしている。
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プレイヤーは主人公「小山内梢子(おさない しょうこ)」となり、因縁の地「卯奈咲(うなさか)」において騒動に巻き込まれていく。
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この小山内梢子は前作の主人公の羽藤桂と違い、全国クラスの剣道の達人なのだが、製作スタッフによると桂との区別を明確にする為に意図的にそうしたとの事。
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当時はまだ「百合」というジャンル自体への認知度が薄かったがために、「百合」要素のあるゲームは非常に貴重だったため期待も大きかった。
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前作の「アカイイト」が「百合ゲー」として非常に高評価であったのも、期待が高まる一つの要因だったと言える。
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公式blogでも「百合度」はどのくらいなのか、問い合わせがあるなかで、「前作よりも高くなっている」とアナウンスが入っている。
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こうした要素もあって発売まで一部のファンの期待がどんどん高くなったのだが、発売してみるとストーリー、「百合」部分に問題がいくつか見受けられることとなる。
ストーリー
(公式サイトより抜粋)
ずいぶんと前に亡くなった祖母は旅が好きだった。
見知らぬ景色。
見知らぬ人々。
見知らぬものとの出会いが大好きで――
高い天井で育てば背が伸びると言うように、
世界を広く持つことが、人を大きくするのだと――
そして高校二年の夏休み、私も遠くへ旅に出る。
部活の合宿なのだけれど、これも旅には違いない。
電車と車を乗り継いで、私たちは南の海へ。
剣と胴着をかばんに詰めて、鬼ヶ島を望む岬の山門へ。
そこで私が出会うのは――
月の満ち欠け、潮の満ち引き、
水面(みなも)を乱す宿命(さだめ)の周期(めぐり)――
瑠璃の宮処(みやこ)にまどろむ龍の、いざなう嵐に私はあらがう。
――むげんのなみは わだつみのこどう――
評価点
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基本的なシステムは『アカイイト』と同じだが、システム周りに改良が施され、前作以上に快適に遊べるようになっている。
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セーブデータを50個まで作れるようになり、目印としてアイコンを付けられるようになった。
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クイックセーブ、クイックロードが搭載された。
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次の未読文章や選択肢まで物語を飛ばせる「ジャンプ」機能が搭載された。
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おまけとして「鬼切りの鬼」という横スクロールACTを遊べるようになった。
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□ボタンに任意の機能を割り振れるようになった。
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アルバムモードで背景画像やBGM、各キャラクターの立ち絵も自由に鑑賞出来るようになった。
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どうしてもクリア出来ない人の為に、ネタバレ機能が追加された。
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BGMも前作同様評価が高い。
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OPとEDは霜月はるか氏とrita氏が担当しているのだが、OPが静かな曲だったアカイイトと雰囲気がガラリと変わっており、非常に明るい曲になっている。
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製作スタッフによると、前作からイメージを変えたかったから明るい曲に変えたとの事。
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その他のBGMも、個々が使用されるシーンの雰囲気に絶妙にマッチしている。
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前作で使われた曲のリメイクVerも幾つか使われている。これは「使い回し」として賛否両論ではあるのだが。
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相変わらず吸血シーンがエロい。
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アカイイト同様に本作にも妖艶な吸血シーンが存在するのだが、アカイイト以上に妖艶さに拍車が掛かっている。
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口移し・搾乳・3Pなど、前作のユメイさんの変態吸血シーン以上に本当に気合いが入っている。
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吸血シーンならぬ、精気を吸われる「吸精シーン」も存在する。
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ただし、アカイイトで搭載されていた血液ゲージシステムは廃止された。
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前作でも実質ユメイルート以外では特に意味もなさないシステムではあった。
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今作での主人公の「血」は特に何か特別な力を秘めている訳でもないため、四方八方から「血」を狙われる心配がない。さらに「アオイシロ」という青をイメージカラーに置いた今作において、赤いイメージの強い「血」を重要視する必要性がなかったのも、このシステムがなくなった一つの理由かもしれない。
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「百合」描写がより明確になった。
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元々百合作品にする事を想定していなかったアカイイトと違い、本作は当初から「百合」というものを強く意識して作られている。
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それ故に明確なキスシーンや告白シーンも描写されるようになった。特に保美ルートでの保美の健気さには、胸を熱くした人が多いのではないだろうか。
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分岐図とルート封印システムが改良された。
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『アカイイト』ではどこのルートが封印されているのかが、攻略情報を調べないと全く分からなかったのだが、本作では封印ルートに鍵の描写が施され、封印箇所が明確に分かるようになった。
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また『アカイイト』では全てのハッピーエンドを見る為には特定のノーマルエンドやバッドエンドを強制的に見る羽目になっていたのが、本作では選択肢さえ間違わなければ、一度もノーマルエンドやバッドエンドを見る事無く、全てのハッピーエンドに到達可能になった。
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ただしバッドエンド専用のCGもあるので、そんな事をしよう物なら今度はCGが埋まらなくなってしまうのだが。
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「真のハッピーエンド」の追加。
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『アカイイト』では5つあるハッピーエンドのいずれの場合においても、登場人物の誰か1人が何らかの形で犠牲を強いられており、これが非常に問題視されていた。
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これに関して相当批判が集中したのか、本作ではヒロイン全員が一致団結してラスボスに挑む「グランドルート」と、ヒロイン全員が幸せな結末を迎える「グランドハッピーエンド」が追加された。
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ある意味、ハーレムエンドと言ってもいいかもしれない。
問題点
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システム面等での問題は特にないのだが、肝心のシナリオの内容について批判が集中している
+
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本編のネタバレを含みます
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シナリオの長さに対して、ルート分岐によるシナリオの差異が少なく、似たような話を延々読まされることが多々ある。
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前作は主人公が最初に宿泊する場所の違いで序盤から大きく話が異なってくるのだが、今作は「合宿」という形態のため、主人公が自由に身動きが取れない。また単独行動だった前作とは違い、今回は団体行動で主人公は率先して指揮をとる立場にあるため、余計に身動きが取れなくなってしまっている。また合宿所での生活も部活動などで大きく割かれてしまい、主人公の自由行動の時間は非常に少ない。さらにその少ない自由行動の時間すら、団体行動と言う制限がつくため主人公自身がなかなか自由に動き回れない。
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主人公の行動が制限されるのに対し、攻略キャラクターは五人と多い。
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そのため共通ルート部分では、似たり寄ったりな話を何度も観る羽目になってしまう。
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数少ない女の子同士での交流は、伝記、伝奇の薀蓄で基本的に潰される。
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「百合ゲーム」として注目を集めた本作であるが、ジャンル名を見てわかるとおりあくまでゲームとしての主体は「和風伝奇アドベンチャー」なのである。そのため何が起こるかと言うと、人と会話するたびに妖怪や仏教、また登場舞台での伝奇話の薀蓄がひたすら続くのである。本作はかなりボリュームのあるゲームなのだが、内容の三分の一以上が、この薀蓄である。
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年頃の女子高生が集まって「河童」の話題で盛り上がるというのも不自然ではないかという声もあった。
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この薀蓄は前作からもあったのだが、本作はそれ以上にあるのである。正直、一番グレードアップしたのはこの「薀蓄」部分であると言っても過言ではない。しかし興味ある人が読めば雑学としては非常に楽しめる。
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エンディングの種類は56と前作から比べて大増量したのだが、増量の内容が「ストーリー的に無意味、無駄なエンディング」であることが多い。
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また話の流れとは関係なく、呆気なく死ぬエンディングも数多く存在する。
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前作ではノーマルエンドもバッドエンドも伏線になっていたり、感動できるエンディングも数多く存在した。本作でもいくつかあるのだが、それを上回って無駄死にが多いのである。内容の取ってつけた感も相まって、エンディング数の水増しのために作られたエンディングとしか思えない。
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キャラ個別のグッドエンドがあっさりしすぎなキャラが多い。
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重ねて言うが、このゲームは「和風伝奇アドベンチャー」である。個別のルートを通り、そのエンディングを迎えるだけであり、各キャラクターと主人公が恋仲になるわけではない。そのため各エンディングは非常にあっさりしている。キャラによっては、本編終了後エンディングまでろくに連絡を取ってない状況だったりする。
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しかし本作は「百合ゲーム」として期待と注目を集めており、制作スタッフもそれを意識した宣伝を行っていた。誰一人恋仲にならず、そもそも恋愛だったのかどうかすら宙ぶらりんのままエンディングに突入。そしてそのままさっくり終わるため、少し肩透かしに感じるプレイヤーもいた。
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特にキャラクターの1人である相沢保美は、かねてから主人公に恋愛要素を抱いているような描写が多かったためエンディングに期待していた者も多いだろう。しかし彼女のルートで一番残念な部分は、エンディングではない。
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保美とキスをすると死ぬ。
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明確なキスシーンが存在する保美ルートなのだが、しかし保美とキスをするルートに進むと、何とあろう事かノーマルエンドやバッドエンドが確定してしまうのである。
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しかもそのノーマルエンドやバッドエンドも、何とも後味が悪い代物になってしまっている。
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彼女とのハッピーエンドを迎える為には、彼女とキスをしないルートに進まなければならない。
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それ故に、キスルートならぬ「デスルート」と呼ばれたりとか。
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『アカイイト&アオイシロ公式アートワークス』によると、これに関しては本当に凄まじいまでの抗議がサクセスに殺到したらしい。
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ちなみに後に発売されたPC版では、保美ルートのバッドエンド「わだつみにその身を捧ぐ」にテキストが追加されたのだが、そこでも保美とキスをする描写が追加されていたりする。
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他のキャラクターは応急処置でキスをすることがあるのだが、こちらはキスしてもしなくても問題ない。少なくともキス描写=バッド、ノーマル確定なのは保美だけである。
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強いてフォローするなら、彼女のルートのみ告白っぽいシーンが存在する。また、露骨にヤキモチを妬くそぶりを見せてくれるのも彼女だけである。露骨にえこ贔屓してくれる描写があるのも彼女だけだし、そのことに満更でもない気分になるシーンも存在する。ただし、キスしたら死亡確定である。
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ルート管理ミスによる矛盾の発生(名前を知らないはずのキャラの名前が出てくる等)や誤字脱字が多い。これはPC版や廉価版では修正された。
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サブキャラクターの百子と綾代が攻略出来ない。
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2人共非常に人気が高いキャラクターなだけに、攻略対象キャラクターでは無い事を残念がる人たちが非常に多い。
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プロデューサーのほんまPも初回限定版のブックレットにおいて、百子が攻略対象キャラから外されてしまったのはとても残念だと語っていた。
総評
システム、イラスト、BGMは前作に引き続き高評価を得ている。
しかし肝心のシナリオ面に関しての不満が多く、高い期待値に応えられたとは言えなかった。
期待値に応えられなかった原因は何かと言えば、制作側の「百合」というジャンルと、購買層が求める「百合」というものの認識不足と思われる。
当時はまだ「百合」に注目が集まってきたばかりであり、制作側もどこまでやっていいのかさじ加減が分からなかったのではないだろうか。
宣伝の仕方やアピールポイントで再三「百合」を強調してはいるが、ジャンル名の「和風伝奇アドベンチャー」という表記からも、尻込みと「百合」と言うジャンルに対する不安を感じさせる。
当時「百合」といえば「精神的なつながり」というイメージが強かったため、露骨な表現をあえて差し控えたとも考えられる。
前作の評判と宣伝内容から、恋愛アドベンチャーのようなものを「百合」で期待してしまった人たちからすると、残念な内容と言わざるを得ない。
とは言え、それも前作の評価からの期待値の高さの部分が大きく、決して駄作というわけではない。先入観抜きなら楽しむ余地は十分あると言えよう。
余談
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シナリオを担当した麓川氏は、続編の企画書を上層部に提出したとブログで語っていたのだが、残念ながら通らなかったようだ。
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本作発売後、サウンドトラックとドラマCDがサクセス通販限定で発売された。
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ドラマCDには前作のヒロインの1人である若杉葛が登場する。
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だがドラマCDは終盤の展開が投げっぱなしで終わっており、高評価を得ていた前作のドラマCDと比較して評価は低い。
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ドラマCDは元々2枚組にする予定だったのだが、無理矢理1枚に収めたとのこと。サウンドトラックは2枚組なのだが…
その後の展開
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2009年11月21日にWin版が発売。複数の追加要素がある。
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グランドルートをクリアすると追加される機能「創作モード」が話題となった。
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テキストエディタで簡単なスクリプトを組むことで、自分の好きなようにオリジナルのシナリオを作ることができる。
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2022年9月15日にHD版リマスター版である『アオイシロ HD REMASTER』が発表された。
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対応機種はSwitch/Win(Steam)で2023年5月25日に『アカイイト HD REMASTER』と同時発売された。
最終更新:2023年05月26日 16:00