ファイターズヒストリーダイナマイト
【ふぁいたーずひすとりーだいなまいと】
ジャンル
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2D対戦格闘
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対応機種
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アーケード
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メディア
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MVS(122MbitROMカートリッジ)
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発売・開発元
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データイースト
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稼働開始日
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1994年3月17日
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プレイ人数
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1~2人(同時プレイ)
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レーティング
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CERO:B(12歳以上対象)
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配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2010年6月8日/926ポイント アーケードアーカイブス 【PS4/One/Switch】2017年11月16日/823円(税8%込)
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判定
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なし
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ポイント
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前作よりもデコ臭がさらにパワーアップ なおかつ読み合いを重視したしっかりした作りの格ゲー
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ファイターズヒストリーシリーズリンク ファイターズヒストリー / ダイナマイト / 溝口危機一髪!!
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概要
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データイースト(以下デコ)の対戦格闘ゲーム『ファイターズヒストリー』シリーズ第2作。海外でのタイトルは『KARNOV'S REVENGE(カルノフズリベンジ)』。
ストーリー
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決して表の世界に姿を現さない謎の格闘家「K」が主催した「グレートグラップル」。1年前、敗北を喫し、屈辱の炎に身を焦がした「K」が、再び格闘家たちを呼び寄せた…「恐らく、これが最後の大会となるだろう」。1年間の鍛錬により、驚異的な新必殺技を身に付けた前大会参加者の9人を加え、謎の格闘家「K」に挑むため、 新たに2人の格闘家が集結した。今、熱い闘いの幕が、切って落とされようとしていた……。
前作からの変更点
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前作の6ボタン操作のシステムがカプコンから訴えられた影響なのかは不明だが、プラットフォームがSNKのMVSとなり、それに合わせて4ボタン操作に変更された。
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前作ではパンチ・キック共に弱・中・強の3段階であったが、本作ではSNKの『餓狼伝説スペシャル』同様弱・強の2段階となっている。
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MVS向けに製作されたため、家庭用ネオジオROMカートリッジ及びネオジオCDでも発売された。また、本作はデコのMVS参入第3弾でもあった。
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登場キャラは前作の11人に、新キャラのザジィ・ムハバと柳英美(リュウ・ヨンミー)を加えた13人。前作ではCPU専用だった(移植版ではある裏技でプレイヤーキャラとして使用可能)中ボスのクラウン、ラスボスのカルノフもプレイヤーキャラとなった。
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ザジィはケニアの動物保護官で、やたら濃いグラフィックが特徴的。格闘スタイルは空手。
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英美は韓国のテコンドー使いの少女だが、職業はツアーコンダクター。今作の中では比較的まともな美少女と言える顔つきが特徴。(それでもやや濃いが。)
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前作の最大の特徴であった「弱点システム」はそのまま継承。
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新システムとして「ワンツー攻撃」が導入された。弱攻撃をヒットorガードさせた時に強攻撃を出すと、弱攻撃の戻りモーションをキャンセルして強攻撃が出せるというもので、これにより連続技を作りやすくしている。
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いわばチェーンコンボやコンビネーションアタック等の先駆けであろう。
隠し必殺技
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本作ではインストカードに掲載されていない隠し必殺技が多数存在し、中でも一部の技は非常に特徴的なコマンドを持つことで格ゲーマニアの間で有名である。
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代表的なのはジャン・ピエールの「ロンダート」で、格闘ゲームでは珍しい前方向に溜めを作るコマンドが話題になった。サマーソルトキックのような技で性能は微妙で使いどころが難しい。
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他にも「(テンキー表示で)69874+P」という上要素ばかりで構成されたコマンド投げというマーストリウスの「ドリルパワースラム」と嘉納亮子の「肩車」、「↑↓+K」というザジィのカカト落とし「デシカカト」等、まるでプレイヤーに挑戦状を叩きつけてるかのようなコマンドが数多く存在している。
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但しサムチャイ・クラウン・カルノフの3キャラについては、隠し必殺技がない。またキャラにより使い勝手の差が激しく、実用的なものから、対戦で使用するには非常に難しい技まで存在する。
隠しキャラ
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『餓狼伝説スペシャル』『龍虎の拳2』等での流行を取り入れたのか、本作でも難易度ノーマル以上で1本も取られずにラスボスのカルノフを倒すと、隠しキャラと対戦できる要素が存在する。
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その隠しキャラというのは、デコの往年のアーケードゲーム『空手道』のボーナスステージで登場した「牛(OX)」。いかにもデコらしいと評判であった。
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ちなみにこの牛、家庭用や移植版でもプレイヤーが使用することは不可能。
評価点
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前作からグラフィックが一新され、デコの持ち味である異常な濃さがパワーアップした。
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キャラのグラフィックやプロフィールもやたら濃いものばかり。一部の格闘ゲーマーに熱烈なファンを持ち、近年でも小規模ながらゲームセンターで大会が開かれることもある。かつて2000年代に「サムチャイオンリーの大会」が開かれたこともあった。
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エンディングの一枚絵は全キャラがデフォルメ化して集合したものだが、これも異常に濃いため全然可愛らしさは無い。
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ストイックなまでの仕様が、読み合いを重視するユーザーの支持を受けた。
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1994年当時は『餓狼伝説スペシャル』『スーパーストリートファイターIIX』といった、超必殺技やそれを組み込んだ連続技などが主流になりつつある時代であったが、本作は過剰なまでの演出や超必殺技は存在しない。
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だからといって連続技の威力が低いわけではなく、寧ろ相当高い部類の格闘ゲームである。弱点システムによる一発逆転もありながら、後述のようにガードが強力であるため、警戒されていると早々は決まらない。お互いが上達してくると、細かい部分の読み合いで勝負が決することも珍しくない作品である。
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中下段の揺さぶりが強くない代わりにゲームスピードが速く、投げが全て1フレで統一されたゲーム性。1試合にかかるテンポも絶妙に速く、間延びをするということはほぼない。
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連続ガード中は「レバーをたとえどこに入れてもガードしてくれる」仕様により、立ちガードしながら脚払いを防ぐという光景もまま見られる。択を仕掛けるにしても切り返すにしても独特の癖があるため、今の格闘ゲームに慣れた人だとかえって新鮮に思えることも。
問題点
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読み合い重視とはいえ、気絶してしまうとそこからのワンコンボで即死もありえる対戦バランス。弱キャラと強キャラの差はかなり激しい。
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強キャラはリー、ザジィ。以前はレイやカルノフを含めて4強という意見もあったが、近年のトッププレイヤーの提唱では2強説のほうが有力。
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ザジィは無敵移動技の「ダッキング」と炎を纏ったアッパーを出す無敵対空技の「ヘルファイヤー」を組み合わせた「ダッキングヘルファイヤー」と呼ばれるテクニックが脅威で、飛び道具も簡単に抜けることが可能。連打技の「バルカンフック」も後述するようにABCD同時押しでとっさに出せる上攻撃範囲が非常に広いので、膝から上に弱点があるキャラに対して密着から決めるとあっという間に気絶を狙える。隠し技の「デシカカト」はコマンドが↑↓+Kと独特だが、立ち回りで結構使える部類である。ただ、「ダッキングヘルファイヤー」の入力がやや難しく、連続技の難易度もリーと比べるとやや高いため、使いこなすには修練が必要。
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リーは、全キャラ中でも屈指の爆発力を持つ。高威力かつ気絶を狙え、もう一度叩き込めば勝負ありとなる強烈な連続技は脅威。加えて超高速で長距離を移動攻撃、かつ派生技に繋げられてほとんど隙のない突進技「スーパー絶招歩法」、無敵対空技の「穿弓腿」を持つため、対戦相手へのプレッシャーは凄まじい。弱点が攻撃が当たりにくい膝にあるので、気絶しにくいというのも一役買っている。
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レイは全ての技の性能が高レベルで、近距離・遠距離問わず戦えるオールラウンダーなのだが、弱点の当たり判定が非常に大きく、気絶しやすい(=事故りやすい)という欠点を合わせ持っているため、近年では「2強よりはちょっと弱い」という見方が大勢を占めている。特にザジィに対しては飛び道具をダッキングヘルファイヤーで簡単に抜けられる上、バルカンフックを喰らうと気絶しやすく、大きく不利がついてしまっている。
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カルノフに関してはバグ技を活かした奇襲攻撃「カルノフワープ(通称)」、永久連続技、空中で何度も出せる上に一瞬無敵になれる「バルーンアタック」など光る部分は大きいのだが、無敵対空技がないという欠点、及び飛び道具の弾速が遅めで若干性能が悪い為、「先述の3キャラと比較すると少し見劣ってしまう」という意見が多い。
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逆に明らかに弱キャラなのはクラウン、亮子、マーストリウス、フェイリン。
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マーストリウスと亮子は飛び道具を持っておらず、その上強キャラのリーやザジィと違い相手に接近するのが苦手。接近すれば強力な投げ技を出せるのだが…多くのキャラが飛び道具を持っている上に性能が高めなこのゲームでは、非常に窮屈な立ち回りを強いられる。特にマーストリウスはジャンプが異常に低く、飛び道具を出されているだけでも回避しにくいため圧倒的に不利(レイ相手だとマース側がほぼ詰みと言われる)。逆に言えば、飛び道具を持たない相手(つまり2強と言われるリーとザジィ)とはまともに戦える。
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フェイリンは弱点が上半身全体と大きいため、攻撃が弱点に当たりやすく非常に気絶しやすい。飛び道具も持っているが隙が大きくて使いづらい。それでいて爆発力・立ち回りとも上位陣と比べると見劣りする性能で、キャラスペックが明らかに不足している。
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この時期の格闘ゲームとしてはキャラ数は充分なのだが、性能面で似通ってしまっている上に比較対象よりも性能が低い、いわゆる「劣化キャラ」が結構いる。
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勿論細かい面で言えば差異はあるが、サムチャイはレイの劣化だとよく例えられる。同様にクラウン・マットロック・フェイリンもジャンの劣化という意見が多い。
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CPU戦の難易度が高め。
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前作もかなり難しめだったが、今回はゲームスピードが増している上に「超反応」ぶりに磨きがかかっており、難易度はさらに上昇している。パターンを知らずにまともに勝負して勝つのは困難。
総評
プラットフォームをMVSに移したために、当時のSNK黄金期の作品と比較されてしまい割を食ってしまった感はあるが、それでもデコゲーらしい濃い世界観と、読み合い重視のストイックなまでの仕様は一部ユーザーの心をガッチリ掴んだといえる。
移植・続編等
前述の通り、プラットフォームをMVSに移行したため家庭用ネオジオROM、ネオジオCD版も発売された。
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家庭用ネオジオROM
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1994年4月28日発売、28,000円(税別)。ネオジオROMのため価格は非常に高いが、移植度は完璧。
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ネオジオCD
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1994年12月21日発売、7,800円(税別)。やはりロード時間が長いというデメリットがある。
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BGMはSNK製の格闘ゲームに倣い全曲が生演奏によるアレンジ版に差し替えられているが、それに伴い原作での持ち味であったピンチBGMが削除されてしまい不評であった。
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セガサターン
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1997年7月4日発売、5,800円(税別)、拡張RAM同梱版7,800円(税別)。拡張RAM対応で移植度は非常に高い。移植を手掛けているのはAC移植に定評のある「有限会社ゲームのつるぼ」。
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サターン版発売からさらに数年後にアーケードで発覚するバグ技、「カルノフワープ」と「ダッキングヘルファイアー」も使用できてしまう驚異の移植度である。
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SSのパッドでは溝口の「ごっついタイガーバズーカ」等ABCDボタン同時押しの必殺技が出しにくいことを考慮して、CボタンとZボタンを4ボタン同時押しと同等の機能に割り振る機能が備わっている。
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BGMについてはネオジオCD版同様のアレンジ版が収録されているが、同機種版での不評を受けてか、BGMを原曲(ピンチBGM有)に切り替えられる様に変更されている。
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拡張RAMは4MBにも隠し対応しており、こちらを使用すると試合前のロード中もBGMが止まらないうえに待ち時間がほぼ無くなる。
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Wiiバーチャルコンソール
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2010年6月8日配信、900Wiiポイント。ネオジオROM版と同じ内容。
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プロジェクトEGG(Windows XP/Vista/7)
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2011年7月26日配信、945円(税込)→525円(税込)。ネオジオROM版と同じ内容。
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アーケードアーカイブス(PS4/One/Switch)
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2017年11月16日配信 823円(税8%込)。MVS版をそのまま移植している。
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1995年にはスーパーファミコンで続編『ファイターズヒストリー 溝口危機一髪!!』が発売された。これは元々は本作のSFC移植版として開発されていたが、オリジナル要素が多数追加されたことによって続編となったものである。
余談
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ジャンの「ニードルシャワー」、ザジィの「バルカンフック」といったボタン連打で出す必殺技は、ABCDボタン同時押しで出すことも可能。この場合とっさに出せるという利点があり、通常技キャンセルから出すと何故か最後の一撃のダメージが跳ね上がるという現象が存在する。
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主人公であるはずのレイ・マクドガルが前作同様、影が薄い。
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前述の通り性能面では最強と言えるほどの強さを誇るのだが、デコゲーという世界観の中ではあまりにも設定が普通すぎるため、溝口をはじめとする濃い脇役勢に存在感を完全に喰われてしまった。
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必殺技でも溝口が「空中連続蹴り」「ごっついタイガーバズーカ」「通天砕」と高威力かつ派手な技を多数持つのに対し、レイは飛び道具の「ビッグトルネード」、突進技の「ホイールキック」「ダイナマイトタックル」「サンダーダイナマイト」と高性能ではあるがビジュアル面では地味な技ばかりであることも、彼の存在感の薄さに拍車をかけている。
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そのためか、新声社の「コミックゲーメスト」で連載された本作のコミカライズ版では溝口とリーに主人公の座を奪われ、挙句の果てに脇役としての扱いも非常に悪いものであった。
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そしてさらに続編では溝口に正式に主人公の座から蹴落とされ、プレイヤーキャラからも外されるという仕打ちを受けてしまった。
最終更新:2024年06月20日 16:52