ここでは『ブレイカーズ』及び、そのバージョンアップ版『ブレイカーズ・リベンジ』を紹介する。(いずれも判定なし)
ブレイカーズ
【ぶれいかーず】
ジャンル
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2D対戦格闘
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対応機種
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アーケード(MVS) ネオジオROM ネオジオCD
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販売元 開発元
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ビスコ
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稼働開始日
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1996年12月17日
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発売日
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ネオジオROM:1997年3月21日 ネオジオCD:1997年4月25日
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判定
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なし
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ポイント
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SNK以外のネオジオ格ゲーとしては末期作 外見の地味さ加減でほとんど注目されず 格ゲーとしては及第点
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概要
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ネオジオ対戦格闘の一角にあたるゲーム。製作元は以前にもMVSにも幾つかソフトをリリースしていたビスコ。
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MVSの対戦格闘としては後発に登場。すでにこの頃は格ゲー人気安定期に入っており、有名メーカー以外の作品はまともな出来のものが無く、有名メーカーのものでも完全新規作はたいてい外れ、続編ものであったとしても良い作品かどうかは分からない(むしろ外れの方が多かった)という状況下であった。
そこに現れた本作は、全くと言っていい程期待されなかった。ネオジオ格ゲーのラインナップ自体が食傷気味であり、「どうせ有名どころをパクっただけの駄作だろう」という先入観で見られがちで、プレイするまでもなく不毛なレッテルを貼られる事が多かった。
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しかし、そういう前印象の悪さとは裏腹に、当時の大手人気格ゲーと比べても遜色の無い良さがあり、完成度は高い。「意外な良質格ゲー」「地味で古臭い雰囲気もあるけど、格ゲーとしての実用性は高い」と口コミで広がり、少数ではあるが本作は評価される事になる。
主なゲーム内容
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『餓狼伝説2』などのパンチとキックの強弱4種のボタンを使用するタイプの、対戦格闘としては分かり易い操作法。特に複雑なシステムは採用しておらず、ストII・KOF系に馴染みのあるプレイヤーはすんなり入り込める。
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超必殺技ゲージが溜まっている状態でコマンドを入力すると、ゲージ1つ消費で超必殺技を出す事ができる。ゲージは最大3本まで溜める事が可能だが、ストZEROシリーズなどのゲージ2本、3本全消費の強力な超技は存在せず、必ず1本消費で固定。
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CPU戦はすべての(同キャラ含む)のキャラを倒すと専用のラスボスが登場、それを倒すと個別のエンディングを迎えてゲームクリアとなる。
評価点
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なんといってもシステムバランスの良さと操作性の軽快さ、これに尽きる。
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当時乱立していた格ゲーの中には、システムの練りこみの甘さ・操作性の劣悪さが目に付き、プレイヤーから不満の声が絶えないゲームも決して少なくなかったが、本作はそういった部分が非常に優秀。格ゲー無名メーカーが初回でここまで丁寧に作り込んだ事は評価に値する。
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とても変わった仕様として、なんと地上で攻撃を食らった側が「のけぞりモーションの後半をキャンセルして技が出せる」というものがある。
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この仕様により、一見繋がっているコンボが実は非確定だったり、一部の技に食らいキャンセルから反撃が確定したりする。このため、相手が食らいキャンセルの出来ない空中コンボが非常に重要となる。
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通常技→キャンセル特殊技→キャンセル必殺技という連続技の流れを採用している点。後にKOFにもシステムとして導入されていることから、先見の明があったことが窺える。
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様々な補正があり、「攻撃をずっとしてない時や体力が赤く点滅したとき攻撃力が上がる」「体力が赤いときは削りダメージを受けない」「セットカウントを取られていると気絶しにくくなり、攻撃力が上がる」などがある。
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コンボ補正についても上手く調整されており、全体的に接戦になり易く、一方的な虐殺にはなり難いようになっている。
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とにかくゲージが溜まり易く(このゲームではダッシュやバックステップですらゲージが蓄積される)、超必殺技をどんどん出していける上に、その性能は全体的に高めに設定されている。
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キャラの個性も豊か。
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いわゆるリュウケンタイプの万人向けから、クセは強いが使いこなすのが楽しいキャラもおり、誰一人として似たような性能のキャラは存在しない。
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圧倒的テンポの良さ。
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一試合に掛かる時間が絶妙に早く、異様な間延びは全くない。当時の有名格ゲーシリーズが無闇に長い連続技や戦闘以外の演出でテンポを損なっていた事とは対照的。
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CPU戦で同キャラ対戦になった場合に相手の名前が変わる。
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例として「神威翔(ショウ)」を使っている場合、CPU側には色違いの「沢村陣(ジン)」が登場する。
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当時の格ゲーで同キャラ対戦ができるのは極めて当たり前だが、本作ではなんとCPUキャラの名前まで変わる。別に性能が変わるわけではなく、ゲーム的にはそれほど意味がある訳ではないが、ちょっと新鮮にプレイできる…のか?
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NCD版無印でのみラスボスである黃白虎(ホァン・パイフー)も隠しキャラとして使える。
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なおCPU裏キャラは用意されていないどころか2Pカラーすら無いため、同キャラ戦では全く同じカラーになる。
問題点
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選択できるキャラが全8人と少ない。同時期の他の格ゲーはほとんど20人前後、KOFでは30人近くのキャラが使用可能だった事を考えると、大分控えめである。
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見た目は濃いが、味付け(設定面)があっさり気味で(特に美形勢)、印象に残るキャラも少なめ。
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実はCPU戦が結構難しい。アルゴリズムにランダム性が強い上、こちらの技に対して超反応で返してくることがあり、パターンに持ち込みにくくなっている。そしてCPUの攻撃力がプレイヤー側より高めに設定されていて、同じ強さの攻撃を相打ちすると確実にこちら側の分が悪くなる。
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一本も取られないで勝ち進むとさらにCPUの攻撃力が上がるため、ノーミスクリアは困難を極める。おそらくはインカム(売り上げ)の効率を上げる対策だと思われるが、これにより格ゲー入門者にとっては厳しい間口になってしまった。
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対戦バランスもやりこむと上位・下位の差が結構激しいことに気が付く。満場一致の最強キャラであり主人公の「ショウ」はもちろん、リベンジで追加された「サイゾウ」は飛び道具とリーチの長い刀攻撃による迎撃が強力すぎて、キャラによっては近づくことすら困難。
総評
格ゲーとしての出来は素晴らしかったものの、当時プレイヤーの注目はカプコン&SNKの寡占状態で、ほんの一部の格ゲーマーにしか相手にされずにひっそりと消えてしまった不遇の良作。
今でも熱狂的なファンは微少ながら存在する。とある格ゲーサークルが、本作と似たタイトルのフリーゲームを公開しているあたりからも、その支持力は決して低くないことが分かるだろう。
ブレイカーズ・リベンジ
【ぶれいかーず・りべんじ】
ジャンル
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2D対戦格闘
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対応機種
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アーケード(MVS)
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販売元
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ビスコ
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開発元
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ビスコ デジタルウェア
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稼働開始日
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1998年7月3日
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判定
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なし
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概要(リベンジ)
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初回版の約1年半後に、新バージョンとして『ブレイカーズ・リベンジ』が登場。
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新キャラとして忍者キャラの飛影才蔵(とびかげの さいぞう)が登場し、オープニングに少し変化があったり、勝利画面やゲージ関連のグラフィックが描き直された、無印から一部キャラのバランスが少し見直された・・・と思われたが
その中でもゲームバランスについては有志たちの調査の結果、何も変わっていないことが判明している。
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このように、外見上さほど大きな変化もなく、大元のストーリーも無印と同じため、新作というよりは『ストリートファイターII』→『II'』のような変化というわけでもなく、「キャラが増えたのでグラフィック周りを少し変更しました」程度にとどまっている。
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無印NGCD版同様、ラスボスの黄白虎を隠しキャラとして使用できる。
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出現コマンドは1Pと2Pが同時にレバーを上に入れるというもの。対戦する両者の合意のうえで選択する形であり、いきなり強力なボスキャラを使って相手プレイヤーを虐めるという事はできない。性能自体は実に高いので納得できる仕様であり、細かいところまでプレイヤーへ配慮している。
余談
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CPU戦での名前が違う同性能キャラは「他人の空似の別人」という設定であるため、個別のちょっとした裏設定まで用意されている。
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ただし残念ながら名前が変わるのはCPU戦でのCPU側限定であり、プレイヤー側は別名キャラを使用できない。対人戦で同キャラ対戦になった場合は通常キャラ同士の対戦になる。
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使用キャラの面々は性能面も含めて比較的格闘ゲームらしい無難なキャラデザインとなっているが、唯一前衛的で異彩を放っているのがピエール・モンタリオというキャラ。
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一見怪傑ゾロ風のサーベル剣士だが、突っ込み所しかない各種設定にそっち系のような怪しすぎるボイスやモーションなど、あらゆる面でネタになる点が色物キャラとしての注目を浴びた。
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ブレイカーズと言えば真っ先に思いつくのがピエールだ、という声も多い。ちなみに性能的には弱すぎて泣けるほど低い。
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元々は『天麟の書 死嘩護(てんりんのしょ しかご)』というタイトルでネオジオ格ゲー絶頂期にリリースされる予定だったが、諸般の事情でお蔵入りし、誰もがその事を忘れていた頃に突如、『死嘩護』をベースに作り直された本作がリリースする事になった。
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登場キャラは『死嘩護』からの流用・改変デザインがほとんどであるがキャラ名などは変更されており、前述のCPU裏キャラの名前や設定には『死嘩護』で使われるはずだった没設定の一部もリサイクルされている。
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当時のゲーメスト誌が本作を気にいったらしく、特集記事が組まれていた事がある。特にネイティブアメリカンな風貌のコンドルというキャラへの愛着はかなり凄かった。また、ネオジオフリーク誌でも前述のピエール・モンタリオはよくネタに使われた。
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無印版は家庭用ネオジオROMとネオジオCDに移植されているが、PS・SSといった大御所ハードの移植は結局されておらず、またバーチャルコンソールなどの配信サービスでもリリースされることはなかった。
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後に無印版はビスコの公式ライセンスの下、2017年6月にDC版が海外で発売された。ネオジオCD版ベースの移植となっている。尚、北米向けのバージョンのみが日本語を含むマルチランゲージ仕様になっており、こちらは日本の初期版DC本体でも動作可能。ただしセガのライセンスは受けていないインディーズソフト扱いになっており、GD-ROMを使用していないため、起動は初期のMIL-CD対応機に限られる。
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さらに『リベンジ』に至っては長らくネオジオを含め一切の家庭用移植・配信はされていなかったが、2016年2月に欧州限定、2020年3月には日本でもエーツーより、ビスコの公式ライセンスの下、ネオジオROM版が限定発売された。ただし、こちらもSNKのライセンスを受けていないインディーズ扱いである。
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ネオジオCD版とDC版の無印は隠しコマンドで有効になる「エクストラモード」が追加されている。有効化すると元と比較して別物なレベルでゲーム性が変わるため、これを良しとするか否とするかはプレイヤー次第である。
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エクストラモードについて
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有効化のコマンド
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オプションメニューに入り、「下・A・下・A・下・B・下・B・下・右・左・右・上・C・D・下」と入力。成功すると「オメデトウゴザイマス」の音声と同時にオプションメニューに「GAME MODE」の項目が追加される。その項目で「extra!」を選択するとエクストラモードでのプレイができる。
エクストラモードの特徴
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ほぼすべての技がキャンセル可能。
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通常技・必殺技の区別無くキャンセル可能で、チェーンコンボライクな動作も可能。ただし、優先順位は基本「通常技>特殊技>必殺技>超必殺技」の順。尚、飛び道具を使う技はキャンセル不可。
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どこでも食らい判定
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投げられモーション(一部を除く)以外はどこでも食らい判定が存在する。相手の転倒中ですら追撃が可能。また、地上で5ヒット以上のコンボを食らうと強制的に空中へ浮かされる。
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転倒・ダウン時の特定タイミングでボタン3つを同時押しすることでダウン後の復帰モーションを待たずして反撃可能。
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食らい中・ガード中でも相手を投げることが可能
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超必殺技のゲージ増加量が変わる。
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食らい中は攻撃している側とほぼ同量。ガード時はさらに多く増加するため相手よりも早くゲージが溜まる。
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アドバンシングガード
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「ガード中にボタン3つ同時押し」でガード後の相手との距離を離す。硬直時間は通常ガードと同じ。アドバンシングガード中のモーションはキャンセル不可。
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緊急回避
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「食らい中にボタン3つ同時押し」で超必殺技ゲージを1本消費する代わりに無敵時間付きの空中復帰状態が発生する。この状態からジャンプ攻撃を出すと無敵状態が解除され、出さなければ着地まで無敵状態が続く。
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サドンデスタイム
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KOされてから実際にKO判定が出るまでの間の数秒だけ反撃が可能。KO判定が出る前に相手をKOさせるとダブルKOでドロー扱いとなる。ただし、超必殺技は使用できない。当然ながら相手側も動けるので返り討ちに合う危険性有り。
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2019年8月に『婆娑羅コレクション』を手掛けたブラジルのQUByteから、本作と『~リベンジ』のカップリングにオンライン対戦機能を追加した『Breakers Collection』をPCとコンソール機で2020年に発売することが発表された。発売にあたりビスコから両作のワールドワイドパブリッシング権を取得したことも併せて報じられた。
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だが、発表当初にティザームービーが公開されただけでその後音沙汰がなかったが、2020年10月にWindows/PS4/XboxOne/Switchにて2021年中の発売を予定していることがQUByteから改めて報じられたものの、2022年2月にクローズドベータテストを行うことが追加告知された。
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その後、2022年中の発売を目指して開発が続けられていたが、予定よりも少々遅れて2023年1月12日に
ダウンロード専売
ソフトとして各プラットフォームにてようやく正式発売された。
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オンライン対戦はクロスプレイ対応かつロールバックネットコード採用、トレーニングモードやチームバトルモード、イラストなどが見られるギャラリーモードがあったりと内容としては充実している。残念ながら海外MVS版ベースのため言語切替に日本語が入っておらず、ネオジオCD/DC版に隠し要素としてあった無印のエクストラモードも未収録である。なお、後のアップデートで黄白虎が常時解放されるオプション設定が追加されている。
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2024年に行われたEVO JAPAN 2024にてexA-Arcadia新作として『ブレイカーズ・リベンジ 死嘩護』の開発が決定した。その後、2024年5月下旬に行われたロケテストを経て、2024年8月22日より正式稼働開始。
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大きな特徴は、キャラ選択後にシステムを選択する方式を採用。小ジャンプが使用可能になった他、各キャラクター性能が調整された完全新規モードの「死嘩護」、ネオジオCD版のエクストラモードの
ハチャメチャな
仕様をベースに
総体力が通常の半分の状態で開始する
「エクストラ」、「リベンジ」の3つから選択できる
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他にも各種カスタマイズ要素の充実したトレーニングモードの搭載や0.3フレーム入力処理により「MVS版より3倍速いレスポンス」を実現している。
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また、これまで隠しコマンドでしか使えなかったラスボスの黄白虎が性能を調整されたデフォルトプレイヤーキャラとして使用可能。
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『戦国BASARA4』のコミカライズを手掛けた吉原基貴が新規キービジュアルとイラストを担当。オリジナルのBGM作曲を担当した神尾憲一による新規アレンジサウンドトラックも収録されている。
尚、勝利画面のピエールは妙にイケメン化しており、一見「誰?」と言われる程。
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本作のプロトタイプであった「死嘩護」と言うフレーズが、およそ30年の時を経て改めてゲームで日の目を見る事になろうとは誰が予想出来ただろうか…。
最終更新:2024年08月17日 23:22