時の継承者 ファンタシースターIII
【ときのけいしょうしゃ ふぁんたしーすたーすりー】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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メガドライブ
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メディア
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6MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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セガ・エンタープライゼス
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発売日
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1990年4月21日
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価格
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8,700円(税抜)
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レーティング
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CERO:A |
配信
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バーチャルコンソール 【Wii】2008年4月30日/700Wiiポイント
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セーブデータ
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2個(バッテリーバックアップ)
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判定
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シリーズファンから不評
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ポイント
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3作目のジンクス 世界観大幅刷新、と見せかけて… 一部種族とBGM、結婚システムは好評価 移植版ではシステムの欠点が多少改善
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ファンタシースターシリーズリンク
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概要
『PSO』以前に発売された、初代から続く「アルゴル太陽系」シリーズの1作。
シリーズ本編に属する作品であるが、本作は『時の継承者』が正式タイトルであり『ファンタシースターIII』はサブタイトルとなっている。
特徴
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前作『ファンタシースターII』でのSF的な雰囲気から180度変わったファンタジー的な雰囲気と退廃的な世界観、王家や民族をテーマにしたストーリーなど、他のシリーズ作とは内容が大きく異なる。
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結婚システムにより、3世代に渡る壮大なストーリーが展開される。
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世代が切り替わる際には「2人の結婚相手からどちらを選ぶか」という選択をすることになり、これによって次世代の主人公とシナリオ内容が変化する。
すなわち、1世代目の内容は誰がプレイしても同じだが、2世代目では2通り、3世代目では4通りの主人公とシナリオが用意されているということである。
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登場人物が多い関係上、テクニックのシステムは従来に比べて大幅に簡略化。
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系統はアタック(攻撃)・レスト(回復)・バランス(直接補助)・タイム(間接補助)に分かれており、メンバーによって習得できる系統が異なる。同じ系統のテクニックであれば消費TPは同じ。
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テクニックは最初からすべて習得した状態でスタートし、レベルの上昇に応じて各々の効果が上がる仕組みとなっている。
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また、その強さの配分を変更する事で、効果(威力・成功率)を増減させられる。効果の配分の変更はマスターの店で行う。
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戦闘システムでは前作をベースに前列・後列・左右範囲の概念が追加。攻撃対象の個別指定も可能となった。
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後列の敵については近接武器で攻撃する場合はまず前列の敵を倒さないと攻撃できない。
問題点
キャラクターや世界観の大幅な変化
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キャラクターデザインは前作のアニメタッチで描かれたキャラクター達に対して、本作のキャラクターは初代のような油絵調に描かれ、陰影が強めに表現されている。
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前作までのデザインワークに慣れていたファンに不満を持たれてしまった。
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町や人のデザインも場所や世代を越えてもほとんど変わりばえがしない。世代交代して十数年の月日が過ぎ去った設定でも町に形状変化などがなく、町の住人もメッセージが変わる程度。
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モンスターのデザインが全体的に奇妙というか不気味というか、形容しがたい容姿のものが多い。悪夢的と評されることも。
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電子回路のような敵、道路標識に手足が生えたようなロボット、巨大で不気味な人面岩、下半身が無く頭の上に謎のオブジェを乗せた裸のガチムチ兄貴などが筆頭か。
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そして前作ではとても滑らかに動いていた敵のアニメーションが大幅劣化。画像が2枚だけしか用意されておらず、しかも動くのは肘から先だけ・手首から先だけ・指先だけといった有様。前述の敵の最後の2体は順に両耳が動くだけ・胸筋がピクピク動くだけというもはや狂気としか思えないアニメーションである。
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当時発売前の紹介記事で「戦闘は大迫力の大きな敵キャラでIIの様にダイナミックなアニメーション」と書かれていたが、期待して戦闘シーンに入ると、「大きな戦闘シーン画面に豆粒の様なラッピー」「指先だけ動く大キャラ」等、全くの大ウソである。
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IIや千年紀では「ルドガーが撃つ」「ファルが引っ掻く」などの味方アニメーションが大きな魅力であったが、これがまるごと削除されている。アニメの魅力が減っただけでなく「誰が誰に何をした」「誰が攻撃を受けた」などが解りづらくなったのも問題点である。
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中ボスを大きく表示するのと、パーティが見えない事で脳内縮尺がおかしくなる。代表的な所で2世代目の「vsリン戦」。これでは巨人である。
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結婚により主人公やシナリオが変わるマルチシナリオなのだが、はっきり変わると言えるのは2世代目のみ。3世代目は仲間の1人・ルナの成長タイプが変わったりライアの立ち位置が変わることや、主人公の出発時のイベントを除いては、最終的にみんな同じ展開となり変わり映えがしない(エンディングのみ変化する)。
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ストーリーの大筋は評価すべき点もあるが、開発期間・容量の制約のためか説明不足が目立つ。
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第1世代から既に黒幕の魔の手が及んでいたのだが……その手段に関しては疑問が残る点が多い。
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本作の世界は前作『ファンタシースターII』作中の惑星パルマ崩壊が発端になって誕生したとされるが、II本編中のパルマ崩壊イベントの前後の流れを考えると無理がある。
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一応ネタバレ
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本作中では「当時パルマはダークファルスに支配されており、パルマ爆発直前に事前に用意していた移民船で脱出」とされているが、IIの同イベントではダークファルス復活直後に人工衛星が落とされ、直後にパルマが爆発しているためそんな暇はないはずである。
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なお、ダークファルスについてだが、IIで登場したダークファルスは最初から地球人(エイリアン)たちに憑依していたことが劇中描写からわかるので、アルゴルのそれとはこの時点で別物である。
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さらに次回作『ファンタシースター 千年紀の終りに』ではアルゴルでもダークファルスは複数、しかも同時に存在できることまで明かされた。アルゴル千年の封印とはダークファルスに対してではなく、その親元“深遠なる闇”に施すものである。ダークファルスはその封印が千年ごとに弱まる綻びをついて世界に顕現する“闇”の分離同位体であることが、当作で明かされる。
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つまりIIの時代にダークファルスが2体いても全く問題ではない。一つは地球人にとりついて彼らの母星を滅ぼし、移民船で脱出した彼らにそのまま憑いてきてアルゴルに来訪した個体(=IIに登場した個体)。もうひとつはアルゴルの封印の綻びからあらわれ、パルマを襲った個体である(=IIIで語られた個体)。
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そしてIIIのダークファルスもパルマ滅亡後、IIの地球人とおなじく母星から脱出したパルマ移民船団にとり憑き、千年前の戦役を経て封印されたことになったのである。そしてEDによっては、それがPSOやPSUへ(パラレルワールドとして)繋がっていく。
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中にはIIの地球人との関わりを見せるEDも存在する。
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習得出来るテクニック(魔法)の中に他のシリーズでは通常戦闘で使えるのに、このゲームではある条件で使うだけ(つまりイベント専用)と言うものがある。
ゲームシステム面
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戦闘面では当時のゲームらしいというべきか、少々粗のあるゲームバランスになっている。
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パーティの人数が少ないときはややきつく、逆に頭数が揃えば力押しで雑魚を一掃できる局面が多い。
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その為か、ストーリーが展開してから手に入る経験値が中盤あたりから急なインフレを起こす。
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なにげに嫌がらせ極まりない「どく」攻撃
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序盤から終盤まで毒の状態異常をしかける敵がちょくちょく出現する。このゲームでの「毒」は他のRPGによくあるHP減少効果とは違い、現在HPの表示が「P」と表示されて今のHP量が分からなくなり、しかもアイテムやテクニックによるHP回復効果も受け付けなくなるという地味にいやらしい攻撃となっている。しかも、「どく」攻撃自体が回避不可能という非常に厄介な仕様。
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その為、毒を治療するアイテム「アンティポイズン」か、毒を治療するテクニック「シーフォース」にはよくお世話になる。ちなみにシーフォースは時折TP(MP)を消費するだけで失敗する事がある。
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現在のHP量を把握さえできていれば毒をくらっても気にせずゴリ押しして進んでいくこともできるが、前述した通りHP回復効果を受け付けないどころか宿屋に泊まってもHPが回復できないので早い段階で治療しておきたい所。…なのだが、次の戦闘で再び毒攻撃を使う敵が出現してまた毒をくらうという状況も結構起こりやすく、なにげにストレスが溜まる。
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4種類のシナリオに分岐するマルチストーリー・マルチエンディングを取っていながら、セーブスロットが2つしかないという残念な仕様。
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後に発売されたSS・PS2移植版ではこの点が改善され、セーブスロットは4つになった。
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テクニックの有用度がレスト系以外有用度が低い。
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アタック系は1世代目ではバータおよびザンが範囲攻撃としてそこそこ有用ではあるものの、スライサー系武器をメインとするメンバーが加入してくる2世代目以降は範囲系のテクニックの利用価値が下がる上に単体攻撃のフォイエがレベルを上げても威力がいまいちなため使いにくい。
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バランス系はバフ系のローおよびカオスがいずれも単体にしか効果がなく効果量も微妙なため使いにくく、即死のアンバランスは力押しできる局面が多いためさほど使われない。自己犠牲回復のバランスは前作のサークラ系同様まず使わない。
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タイム系は逃亡成功率上昇のヌーンは実際の逃亡は次ターンになるために有用性は低い、素早さ上昇のライジングも単体にしか効果がないため使いにくい、状態異常のフォールおよびナイトは力押しできる局面が多いため本作では状態異常で封じるより倒すほうが早いという理由で使いにくい。
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そのため。結局レスト系のみしか利用価値のあるテクニックがないという状況になっている。
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フィールドでの歩行速度がともかく遅い。フィールドマップ自体は前作に比べてあまり広くなくエンカウント率はさほど高くないが、これのおかげでイライラする(これも移植版では改善)。
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また、瞬間移動系の手段がダンジョン脱出アイテムの「イグザオカリナ」のみで町への瞬間移動手段は存在せず、この方面でも地味に移動にストレスがたまりがち。
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ショートカットや高速移動の手段もあるのだが、使えるようになるのは早くてもゲーム中盤以降なうえ、利便性もいまいち。
評価点
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後のファンタシースターシリーズに登場する「アンドロイド」や「ラッピー」が今作で初登場した。年を取らないアンドロイド2人が全世代を通じて仲間として付き従うなど、きちんと設定は活かしている。
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IIのダンジョンのマイナス点「主レイヤーとなる通路の手前(上)にパイプ等が二重スクロールとなり、立体感を出しているが根本的に見づらい」「広大な通路の画面端に寄らないとスクロールしない」「階層構造が序盤から多く、後半もより複雑になり無駄に歩かされる」等が改善されている。ただし移動スピードは改善されていない。
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音楽の評価は高い。中でもフィールド音楽はパーティーが一人増えるごとに演奏パートが一つずつ増えていき、最大人数の5人パーティーになると非常に豪華なものになる。
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戦闘時のBGMも、こちらのパーティが優勢か否かによって音楽が変化する演出が面白い。
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もっとも、長期戦になりがちなボス敵戦で苦戦していてももずっと優勢のBGMが流れ続ける場面が起きたりするのはご愛敬。
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主人公の結婚による3世代にわたるシナリオ分岐が『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』に先駆けている。(あちらの発売は2年後の1992年。)しかもあちらは操作できるのは実質2世代であるが、こちらは3世代しっかりプレイできる。
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実際ストーリーの大筋は評価されているので、うまくリメイクすれば化けるのではないかという意見も多い。
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ドラゴンクエストVが意図的にビアンカ優遇になっているのに対し、3世代の結婚は本当に悩ます様に平等にヒロインを扱っている。
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特にわかりやすいのがケイン(1世代目)。1人目のヒロインとの結婚式早々牢獄にいれられるが、それを助けるのが2人目のヒロイン。そして2人目が後々にパーティ入りと「助ける対象」か「助けてくれた相手」かと、全く違う2人に非常に悩まされる。
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主人公が美形ぞろいのためかアルゴル太陽系シリーズ中最も女性人気の高い作品でもある。
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キャラクターデザインには後に漫画『バジリスク ~甲賀忍法帖~』『Y十M ~柳生忍法帖~』などを連載することになるせがわまさき氏が参加している。パッケージイラストは同氏のデザイン。
総評
セガの人気作品は「3作目でこける」と言われている。本作もその法則に当てはまってしまった作品といえる。
公式からも設定やストーリー展開などから「ナンバリング作品でありながら外伝的なタイトル」「シリーズ屈指の異色作」と言われている。
しかしながら、他のシリーズとは一線を画した独自性のある世界観や大まかなストーリーを評価する声も多く、本作のファンもまた多い。
前述の通り、ファンタシースターシリーズとしては異色すぎたために評価を落としてしまった面があり、シリーズに組み込まれていなければ、また違った評価をされていたかも知れない。
余談
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4種エンディングのラストに何が映っていたかをハガキに書いて応募すると『ブロクシード』というテトリス型落ち物パズルゲーム内蔵のアーケード筐体が貰えるという早解きキャンペーンが行われ、スティック型コントローラーも先着上位順に贈られた。
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続編『ファンタシースター 千年紀の終りに』には、なぜか題名に『IV』の数字が付いていない。今作を無かったことにしたかったのか、それとも……。
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とはいえ、PSO設定資料集によるとPSOに本作のキャラであるシーレンが登場する予定があり、PSOの設定的にもIIIとのリンクを思わせる部分があるなど、全くの黒歴史ともいいがたい。
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ある意味本作の存在は、以後のシリーズにおける多種多様な時空を舞台としている世界観設定にちゃんとした説得力を持たせているともいえる。
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なお、『千年紀の終りに』の海外版タイトルは『PHANTASY STAR IV』であり、れっきとした正規シリーズとわかるようになっている。
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アルゴル太陽系シリーズのCMでは、本作のみ実写映像のみで構成されている。
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黒歴史的な扱いながら、SS版ファンタシースターコレクション・PS2版コンプリートコレクション・WiiのVCで遊ぶ事が可能。
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入手のしやすさ・セーブデータが4つに増加・歩行速度が1、2、4倍速に設定可能でシリーズ歴代作品も遊べるPS2版(及びゲームアーカイブス版)がベストか。
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本作は双葉社よりゲームブック版が発売されている。ただしボリュームの都合上、任意によるシナリオ分岐は再現されず、収録シナリオはシーンルートのみ。
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当時、「ファミコン必勝本」で紹介されたメガ・ディクショナリーの同人誌「メガドライブの
朝
」にて、本作は大絶賛されている。当時踏み込んだ内容でファンも多かった同人誌であるが、ユーザーとは乖離していた様だ。
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マルチエンドだが、一番ライアの血が濃くなるシーンが正史扱いされる事が多い。
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ラスボスのダークファルスは、開発チーム内で最も嫌われていた上司を模したものだと、当時の雑誌で暴露されている。
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PSIIからチームが変更され、セガ体感ゲームチームがメガドラのゲームを作る流れが起こり、IIIも体感ゲームのスタッフが手がけている。その当時の体感ゲームチーム中で嫌われていそうな人材というと「あの人?」と目星をつけられている人がいるが…?
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最初のイベントで、ケインがある手順を使うと「脱獄」が出来てしまい、またその行動に対する王様からのお褒めの言葉?がある。ただしそれだとゲームが進まないので「最初からやり直してね」と言われてしまう。
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開発関係者の「PS3否公式HP」がある。ただし、現在は無期限停止中と書かれている。
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シナリオ進行と関係ないエリアに立ち寄ると、モンスターはラッピーのみになる。
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何気に今作で初めて本編内で「ファンタシースター」を語られている。
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フィンのエンディング中、パイロッタからのメッセージにて「こうふくを ねたむ かみの いない ファンタシースターへ…」と語られている。
最終更新:2025年03月22日 10:48