Dragon Blaze
【どらごんぶれいず】
ジャンル
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縦スクロールシューティング
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 高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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彩京
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稼働開始日
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2000年9月26日
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判定
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ゲームバランスが不安定
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スルメゲー
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ポイント
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もはや初心者など眼中にないかのような全開難度 弾幕キツすぎ 操作複雑すぎ 世界観とグラフィック、稼ぎ要素は秀逸 いろんな意味で末期彩京を象徴する作品
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彩京STGシリーズ
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概要
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ドラゴンに騎乗した主人公を操り、世界を闇に陥れようとする魔王に立ち向かう…というヒロイック・ファンタジーものの縦シューティングゲーム。
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新システム「ドラゴンシュート」による接近戦の爽快感と多彩な攻撃をキモとしており、その戦略性の高さ、稼ぎ要素の充実、極彩色の2Dグラフィックによる濃密で幻想的な世界観は素晴らしかったが…。
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もはや何かが吹っ切れたかのように激烈な覚えゲーと化し、初心者層はおろか、まだ何とか彩京シューを楽しめていたシューター層でさえ付いていけない者が続出する事態となった。
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システムの進化と稼ぎ要素の深化を追求した一方で、極端すぎるパターンゲーに凝り固まってしまった、良くも悪くも末期の彩京を象徴する作品である。
ストーリー
―地・水・火・風・そして月と太陽。
4つの魔石と月と太陽の神による魔法均衡は、結界世界メガリスにかつてない繁栄をもたらし、人々は長い間、豊かで平和な生活を営んでいた。
しかし平和な時代は、突如現れた魔王ネビュロスと闇の軍勢によって幕を閉じる。
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―遥か昔、世界創造時の神々の大戦でネビュロスは太陽と月の神に破れ、
4つの魔石によって封印されていたが戦争に魔王召喚を行使し、勝利を図ろうとした国家により封印を開放されてしまう。
現代の世に復活を果たしたネビュロスは、復讐として月の神の精神を暗黒の力で支配した。
万物の構成を司る月の神は、次々と人の精神や姿を醜悪なものへと変貌させ、闇の軍団を創りあげていった。
そしてメガリス全体はかつてない破壊と混沌の渦の中に巻き込まれ始める。
既に太陽の神に向けて闇の軍勢が動き始めた。
これに脅威を感じた太陽の神は、4人のドラゴンナイトに神々の武具を託し魔王ネビュロス打倒を命じた。
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特徴
最大の特徴はプレイヤーキャラがドラゴンに騎乗しており、ドラゴンボタンを押すことによって強力な接近攻撃「ドラゴンシュート」を繰り出せること。
これに伴ってプレイヤーキャラ(ライダー)とドラゴンは合体状態と分離状態の2つの状態が存在し、それぞれで大きく異なるショットと溜め撃ちを使い分けることになる。
その他、『ストライカーズ1999』からテクニカルボーナスが、『ガンバード2』からアイテムキャリーが引き継がれている。
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システム解説
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操作系統は1レバー+3ボタン(ショット・ボム・ドラゴン)。
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ショット(Aボタン)
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セミオート(1回押すと数発が自動で発射)。設置店舗によってはフルオート連射ボタンを追加している場合も多い。
パワーアップアイテムを取得することで3段階にレベルアップが可能。 ドラゴン騎乗時(合体時)と分離時で攻撃が異なり、騎乗時には強力なサブショットが付加されるが、分離時はパワーレベル最大でも申し訳程度の威力。
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スーパーマジック(Aボタン長押し)
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いわゆる溜め撃ち。画面下のマジックゲージを消費して発動する(ゲージが一定以上溜まっていないと使用できない)。
『ストライカーズ1999』同様、ボタンを押し続けている間は発射し続け、離すとキャンセルされる仕様。
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レベルの概念が廃止された代わりに、ドラゴン騎乗時と分離時で2種類の溜め撃ちが存在。
全体的に騎乗時は攻撃範囲が狭い代わりに高威力、分離時は攻撃範囲が広い代わりに低威力な傾向にある。
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マジックボム(Bボタン)
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一般的なボム。キャラによって有効範囲や火力が異なる。最大9個までストック可能。
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ドラゴン(Cボタン)
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騎乗状態で押すと、ライダーとドラゴンを分離させて前方に突進させる「ドラゴンシュート」。
非常に高威力かつゲージも消費しないが、射程が短い特殊攻撃。
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ドラゴンシュートで発射したドラゴンはその場に留まって分離状態となる。この状態でショットを撃つと分離中のドラゴンもその場で攻撃を繰り出す。
分離中のドラゴンは当たり判定がない無敵状態だが、アイテムは取得することができる。
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分離中にもう一度Cボタンを押すことで、ドラゴンをライダーのもとに呼び戻す。
ライダーとドラゴンが接触すると通常の騎乗状態に戻る(ライダーが自らドラゴンに接触しに行っても良い)。 さらに、ドラゴンが戻ってくる途中で再度Cボタンを押しっぱなしにすると、その場でドラゴンが停止する。
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空中の敵に接触してもミスにはならず、ショットレベルが1段階下がる仕様。
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テクニカルボーナス
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『ストライカーズ1999』と同様のものだが、成立条件が若干異なる。
最終面以外の各ボスはそれぞれ短時間「コア」と呼ばれる弱点を露出させる時間帯がある。 ここにドラゴンシュートを当てることで一瞬でボスを撃破することが可能。さらにボーナス2万点が入る。
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スコアシステム
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銀貨・金貨
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ドラゴンシュート以外の攻撃で敵を倒すと銀貨(1枚につき100点)が、ドラゴンシュートで敵を倒すと金貨(200点)が出現する。
取るタイミングによって得点が変動する「ピカッと光って2000点」システム、チェインボーナスはともに不採用。
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ボーナスキャリー
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特定の雑魚敵をドラゴンシュートで倒すと出現する隠しキャラ。ショットを撃ち込むことで多数の金貨をばら撒く。
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ショットレベルMAX時にパワーアップアイテムを取ると4000点、ボム最大所持時にボムアイテムを取ると10000点のボーナス。
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7ステージ×2周の全14ステージ構成。2P協力プレイ可能。
前半の4面の順序はランダムに選択され、徐々に難易度が上昇。後半の3面は固定となっている。
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達成率
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ゲームオーバー時のコンティニュー画面ではアドバイスが表示されるとともに、ステージの進行度が%で表示される。
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プレイヤーキャラクター
彩京シューティングにしては少ない全4キャラ(隠しキャラも無し)。キャラクターデザインは緒方剛志氏が担当。
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天駆ける竜騎士 クエイド
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男ならこれを選べ!!
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砂漠を統治するハラド王に仕える、親衛隊の隊長。 他国遠征から帰ってきた彼が見たものは、略奪され変わり果てた街、そして氾濫する魔物達だった。 魔王ネビュロスの呪いによって世界規模で人々は魔物に変えられてしまったのだ。 それはクエイドの恋人ディナも例外ではなかった。 「魔王、そいつを倒せばいいんだな!」部下の制止を振り切り、クエイドは駆け出していた。
年齢:23歳 / 武器:ランス(騎槍) / ドラゴン:ファイアードラゴン
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ショット:ファイヤーショット(ストレート)
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サブウェポン:ホーリーランス……自機から直線状に飛ぶ槍。
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合体マジック:バーストランス……直線状に飛び、着弾すると停滞しながら持続ダメージを与える炎の槍。
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分離マジック:ファイアーブレス……ドラゴンが扇状の広範囲に炎を吐く。
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マジックボム:カオスフレアー……火の雨を降らせ、画面全体の敵弾を長時間消去する。
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本作の主人公。
直線的な攻撃が多いという点はあるものの、全ての性能が平均的で癖がなく、緊急回避に優れるボムを持っている。 一見扱いやすい機体に思えるのだが、瞬間的にも総合的にも火力が今一歩足りず、さらに攻撃範囲の狭さが仇となって全体的に苦戦を強いられる。特に二周目は厳しい。 合体・分離両マジックの性能が低めであるのも痛いところ。 少しでも欠点を補うためには全ての攻撃をきちんと扱いこなす必要があるため、最も上級者向けの機体となる。 ただし、咄嗟にボムを撃つことが得意であれば一周のクリアは遠くないため、とりあえず最初に触れる機体としては悪くない。
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大海原の少女 ソニア
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全てを貫通!! フリーズアロー
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海王の一人娘。海の王国アルジェの安全と平和を常に考える。 魔王侵攻により海王の神殿は破壊され、女王(母)も含めた海の民も魔物に変えられたという。 海中神殿の結界にて呪いを逃れたソニアは、魔王を倒し人々にかかった呪いを解く事を決意する。 「お母さま、私に力を…!」 魔王討伐に必要な4つの魔石を奪取すべく、ソニアの旅が始まる。
年齢:17歳 / 武器:ロングボウ(長弓) / ドラゴン:アクアドラゴン
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ショット:バブルショット(ストレート)
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サブウェポン:フリーズアロー……一定間隔で機体正面に照射する高威力の貫通レーザー。
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合体マジック:ダイヤモンドダスト……前方扇状の広範囲に氷の矢を乱射。
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分離マジック:アクアブラスト……親ドラゴンが前方に向かって水流を噴射し、2匹のちびドラゴンが自動追尾攻撃を行う。
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マジックボム:トライデントラッシュ……画面下から海神が出現し帯状の水流で攻撃。
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広い攻撃範囲と総合的な火力に優れる、バランスのいいキャラ。これに加えマジックの燃費が大変よく、ボムも横範囲こそ狭いものの縦方向を完全にカバーし、効果時間が非常に長い利点もある。
また、サブウェポンのフリーズアローは、同社作「ガンバード」のバルナスの「バルナスレーザー」、「STRIKERS1999」のラプターの「バリオンレーザー」に似ているので、一見威力が低そうに思えるが、実は威力がかなり高く、2セット当てれば大抵の中型機を落とせる程。 しかし、ドラゴンシュートの威力が最低で、戻りも最遅であるという致命的な弱点があり、これがソニアの足を常に引っ張ることになる。唯一どの位置でもドラゴンシュートの範囲が広いという特徴を活かし補う必要がある。 どの距離でも安定して戦え、ボムでボスゴリ押しもしやすいのだが、分離・合体の両溜めを最低限扱えないと強みが数段落ちてしまうため注意が必要。 ある程度の操作を要求されることもあり、完全な初心者向けというよりは少し慣れた初級者~中級者向けである。
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巨木の森の番人 ロブ
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必殺の電撃!! ギガウェイヴ
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秘境シャバで楽しく暮らすドワーフ達のリーダー。 陽気で酒飲みで祭り好き。頑固で気性も荒いが、村人の誰からも慕われ信頼も厚い。 魔王侵攻の噂が流れ始めた数年前から、仲良く共に暮らしていた兄弟が行方不明になってしまった。 「うーむ…ここにも兄者達はおらんのぅ…」 ロブの探索の旅は続くのだ。
年齢:300歳 / 武器:ハンマー / ドラゴン:サンダードラゴン
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ショット:サンダーショット(ワイド)
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サブウェポン:プラズマハンマー……前方にゆっくりと飛び、敵に接触すると炸裂する高威力の機雷。
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合体マジック:ライトニングハンマー……前方に蛇行しながら飛ぶ貫通性のある雷球を噴射。
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分離マジック:ギガウェイヴ……ドラゴンが左右の帯状に高火力の電撃を放つ。
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マジックボム:サンダーブレイク……前方に大きな円形の爆風を発生させる。
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鈍足だが高火力・広範囲の攻撃を所持しているため、このゲームの敵の出現の仕方と非常に相性が良い。
適当にワイドショットで処理しながら硬い敵ならドラゴンシュート、広範囲に敵が出るならギガウェイブ…とこの2択でかなりの場面を乗り切れるため、複雑な操作をする必要があまりないのは利点。 ただ、攻撃範囲は広くとも鈍足であるためあまり適当には動けない。特にコインを拾おうとすると緻密な動きが要求される機体に急変するので、クリアしたいだけなら絶対コインを欲張ってはいけない。 部分部分注意点はあるものの、非常に初心者向けと言ってよい。
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若き死霊魔道士 イアン
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地獄の死神!! ダークスティンガー
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生まれも親も不明。人間嫌いで孤独なイアンだが、養父でもある師匠には唯一心を開いていた。 だが、魔王ネビュロス率いる軍団がマイマナを襲撃、魔王の呪いにより街の人々は魔物にされてしまった。 「イアンよ…」呆然とし立ち尽くすイアンの思念に語り掛けてくる者がいた。視線の先には1匹の骨竜。 その瞬間イアンは全てを悟る。「さぁ、行きましょうか…師匠」 イアンは飛び立ち、霧の中に消えた。
年齢:30歳 / 武器:魔法の杖 / ドラゴン:スカルドラゴン
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ショット:ソウルショット(ストレート)
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サブウェポン:マジックソード……敵を自動捕捉・自動追尾する剣。
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合体マジック:デスクラッシュ……前方一直線に高威力のレーザーを照射。
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分離マジック:ヘルスピン……ドラゴンがその場で回転し、車輪状に高火力のレーザーを発する。
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マジックボム:ダークスティンガー……発射した地点から縦一直線に伸びる超火力の貫通レーザー。
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高性能なドラゴンシュートと、瞬間火力に長けた攻撃を多く持つ非常に攻撃的な機体。
画面を動き回りながらドラゴンシュートで押して行き、どうしてもシュート1発で倒しきれない部分をヘルスピンで潰していく…という攻略の指針がとても立てやすい。 また、追尾型のサブウェポンが優秀で雑魚敵の処理がとても楽であり、ボスの攻略がほぼ「ボムを一発撃ってドラゴンシュートをするだけ」で済むのも強み。 しかし、移動スピードがとんでもない速度でありながらボムの安定性も皆無なため、非常に事故りやすい機体となっており、 一度崩れたら立て続けに死んでしまうことも珍しくなく、この点が大変ネック。 また、マジックの燃費が非常に悪く、使用するにあたってパターンを組む事は他キャラ以上に必須。 秘めたるポテンシャルは低くないものの、いかに正確に操作出来るかがシビアに問われるので、中級者~上級者向け。
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評価点
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ドラゴンシュートが生み出す究極の接近戦
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ドラゴンシュートは超高威力、原則的に使い放題、射程こそ短いが攻撃判定が広いため多少バラけている敵でも同時に倒すことが可能と、非常に強力。
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敵の出現パターンもドラゴンシュートでまとめて撃ち落とすことを前提に、1ヶ所に集まるタイミングが多めに仕込まれているため、使いこなすことで圧倒的な爽快感を得ることができる。
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当然、ボス戦でもドラゴンシュートの超威力は有効。
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彩京シューティングの特色として、ボスは常時厳しい弾幕を張ってくる訳ではなく、彩京弾と呼ばれる特有の高速弾を軸に、緩急と法則性が強い攻撃が基本となっている。
攻撃が激しいタイミングと弱いタイミングが必ず存在するため、この攻撃が弱いタイミングを見つけて接近し、ここぞとばかりにドラゴンシュートを打ち込むのが本作のボス戦の基本戦術であり、楽しさである。
コンティニュー画面で表示される「敵の攻撃には必ずスキがある」というのも、完全に投げやりなコメントでもないのである(ただし2周目はそうとも言い切れないが)。
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多彩な攻撃による奥の深い戦略
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ドラゴンシュートを打った後の選択肢は2つある。この2つを使い分けることで様々な場面に対応することが可能。
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1つは再度ドラゴンボタンを押してすぐにドラゴンを呼び戻すこと。
ドラゴンシュートの連打が可能(合体状態に戻すには自らドラゴンに乗りに行ってもOK)なため、固い敵に次々に対処しなければならない場面や、金貨を狙う場合は有効な選択肢となる。
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もう1つが打ち出したドラゴンをそのままにしておき、設置砲台として使うこと。
広範囲をカバーできるため、左右から出現する雑魚敵の群れを効率良く処理したい場面で有効な手段となる(ドラゴンが戻ってくる途中で再度ドラゴンボタンを長押しすることで、好きな位置に止めることもできる)。
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加えて、溜め撃ち(スーパーマジック)の性能も騎乗時と分離時で異なる。
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このため騎乗時のショット、分離時のショット、騎乗時の溜め撃ち、分離時の溜め撃ち、ドラゴンシュート、さらにボムと、都合6種類もの多彩な攻撃手段が存在する。
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これらを的確に使いこなすことができれば、他のシューティングゲームに類を見ないようなテクニカルな戦略を構築することができる。この自由度と戦略性の高さも本作の持ち味のひとつである。
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テクニカルボーナスの改善
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『ストライカーズ1999』ではその斬新さと引き換えに、できなければクリアも見えないと言っても良いほど極端に重要度が高すぎたテクニカルボーナス。
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本作ではこのテクニカル必須なバランスは見直され、別に狙わなくても普通にボスを撃破できるようになっている。というか、慣れないうちは狙わない方が楽に倒せる。
効率良くダメージを与えればテクニカルチャンスが来る前にボスを倒せてしまったりもするので、本来の意味での「ボーナス」として妥当な位置付けとなっている。
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決まれば非常に気持ちいい撃破法だが、テクニカルを狙うのはある程度腕が立ってきてからでも全く遅くない。
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金貨ザクザクな稼ぎの熱さ
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スコアシステムは大幅に簡略化されており、簡単に言えば「とにかく金貨・銀貨を集めるだけ」(金貨はドラゴンシュートで敵を倒すと出る)。
しかし、出現する金貨銀貨の量が凄まじい量になっており、回収方法の工夫次第で大きくスコアに差が出るため、仕組みはシンプルながらこれまでに無いほど稼ぎが白熱するゲームでもある。
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回収方法のキモは「分離したドラゴンでもアイテムを取得可能」な点。
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これが最も有効となるのが、ボーナスキャリーの金貨回収。
普通に本体で回収しようとすると取り切れない上に、敵弾との兼ね合いで迂闊な動きができない…というジレンマが発生する(『ガンバード2』でも同様)。
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しかし本作ではボーナスキャリー出現の条件であるドラゴンシュートで打ち出したドラゴンをそのままそこに留め置くことで、本体は弾避けに専念しながら片っ端から金貨をせしめることが可能となっている。
何かと問題点もあるドラゴンシュートシステムだが、この辺りは非常によく考えて作られていると言えよう。
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美しく濃厚なファンタジー世界
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彩京最後の2Dシューティングとなった本作は、それまでに培われてきたドット技術が遺憾なく発揮されたグラフィックが極めて高品質。
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鮮やかな色彩と緻密な描き込み、緒方剛志氏による独特なキャラクター表現によってディープなファンタジー世界が展開されており、『指輪物語』や『エターナル・チャンピオン』シリーズのような古典的なヒロイック・ファンタジー好きにはたまらない魅力を放っている。
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ちなみに背景をよく見ると、何やら亀獣人が色々やっている。霧ステージの敵機を破壊すると落ちて行き少しおいてパラシュートが開く、神殿の入口ステージで砲台を運んで来る→あえて倒さずにおくと画面外へ戻って砲台をもう1個持って来る、起動させたボスに攻撃され黒こげになって逃げて行く…等。メーカーは違うものの『魔法大作戦』シリーズのゴブリガン帝国兵士を彷彿とさせる。この亀達が何者なのか全く語られない事とプレイ中に見ている暇なんか無いのが残念。
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BGMは全体的にシックにまとめられており、派手さは無いがボス戦の曲をはじめ耳に残るものが多い。
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ネタバレになるが、本作はそのストーリーや難易度に反して、エンディングはどのキャラも明るくコミカルな内容である。
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ただし戦国シリーズやガンバードシリーズの様なぶっ飛んだギャグに走っている訳ではなく、あくまで「ほのぼの」なレベル。
問題点
一言で言えば
難しい
。これに尽きる。
先に言っておくと、本作はゲーム性が破綻するほど絶対的な難度が高いという訳ではない。
このゲームに挑んで返り討ちに遭った人には意外かもしれないが、「パターン化さえできれば」歴代の高難度と言われる彩京シューティングの中では良心的な部類。
同社のシューティングと比較しても『戦国ブレード』や『ガンバード2』よりもやや簡単な程度(2周目はさらにワンランク落ちる)で、とにかくやたらと難度だけを上げた底の浅いゲームではないことだけは確かである。
本作を初心者お断りゲーたらしめている原因は以下に示す操作の複雑さ、ガチガチのパターン化を強いられる覚え要素の多さ、パターンを確立するまでに味わう絶望感の3点によるところが大きい。
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1. 複雑化しすぎた操作
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まず、自機の攻撃手段のコントロールが難しい。
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評価点では「多彩な動きが可能」と書いたが、裏を返すと6種類もの攻撃が存在すれば操作がややこしくなるのは当たり前で、ここにさらにドラゴンの設置位置の調整、素早くドラゴンに乗り込んでドラゴンシュート連射といったテクニックが加われば、もう初心者には訳が分からない。
徹底的に無駄が省かれたシンプルさゆえにプレイヤーの食いつきも良かった『戦国エース』『ガンバード』『ストライカーズ1945』といった初期の彩京シューティングからは考えられないほどの複雑化ぶりである。
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「撃つ」「避ける」「取る」という3つの要素さえあれば成立するシューティングにおいて、ここまで「撃つ」方法が細分化されているのは正直やり過ぎな感が否めない。
これだけの動きを3ボタンにまとめたのは称賛に値するが、それならばもっと「避ける」難度を落とすなり、「防ぐ」要素(いわゆる弾消しやバリア)を盛り込むなりで全体のバランスが取られて然るべきであろう。
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ドラゴンシュートを打ち出した後に呼び戻すには、Cボタンを2回押さなければならないというのも手元が忙しい(戻ってくるドラゴンを途中で止めるにはさらにもう1回ボタンを押す必要がある)。
単純に「Cボタンを押しっぱなしにしている間はドラゴンを固定」という方法でもさして問題は無かったように思われるのだが…。
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2. パターンゲーにも程がある
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『ガンバード2』の接近攻撃でも問題点となった部分だが、本作ではなまじドラゴンシュートが打ち放題になっている分、さらに接近戦の重要性が高い。
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ドラゴンシュートのフル活用を前提とした難度設定になっているため、序盤からガチガチのパターンを組むことを要求される。
前半ランダム面の道中では、空面と海面の難易度は低く、砂漠面と植物面の難易度は高い。
空面と海面の1面ならばまだドラゴンシュート抜きでもどうにでもなる程度の簡単さだが、その後の難度の上がり方が凄まじく、同じ面でも1面に出たときと4面に出たときとではまるで違うステージのような変わりっぷりである。
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砂漠面と植物面の中型機は1面からでも容赦なく狂ったように弾を撃ってくるため、出現パターンを把握してドラゴンシュートで片っ端から落とさないとあっという間に追い詰められてしまう。
これが遅れると横から上手く回り込まなければ至近距離で自機狙い弾を食らうハメに。
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後期の彩京作品の例に漏れず、本作もまた「弾幕系」の影響を色濃く見せており、しかも本作の場合はボスだけでなく5面辺りから雑魚の弾幕も凄まじいものに。
まともに敵弾を見て避けようとすると『怒首領蜂大往生』以上の避けスキルを要求される。それなのに自機の当たり判定は怒首領蜂シリーズのそれよりもはるかに大きい。
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道中からして完璧に動き方を決めていかないと一歩も先に進めないような構成になっており、あまりにも覚えるべきポイントが多すぎる。
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救済措置としてか、彩京弾にしては弾速は低い方で、ボムも多めに支給されるようになってはいるが、ドラゴンシュートの特性上どうしても敵との距離が近くなりやすく、他に気を取られる要因も多いため、ボムまではなかなか意識が回らない。
ただでさえ事故死が怖い彩京シューティングの中でも「気がついたら死んでいた」ということが特に頻発しやすいゲームである。
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3. 圧倒的な絶望感
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上記の通り、攻略パターンの確立さえできれば決してクリアできないようなゲームではないのだが、そこに行き着くまでに味わうことになる圧迫感は異常。
弾幕のプレッシャーもさることながら、中盤からは避けスキルを試される間もなく死ぬいきなり画面広範囲に照射される一見さん即死ビームが異様に多く、パターンを作るのが非常に難しい。弾避けをしていたら訳も分からずいきなり死に、即死ビームを避けようとしたら今度は弾避けに失敗するという悪循環に陥る人が後を絶たたなかった。
特に最終面はウヨウヨと沸く雑魚の放つ圧倒的な弾幕に加え即死ビーム連射という鬼畜面になっており、開幕1分も経たずゲームオーバーになる人が続出した。
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ここまで来ると製作者に「死ね」と言われているようですらあり、本当にこのゲームはクリアできるのかどうか軽く不安になるほどの絶望感を覚える。いくらなんでもさすがに配置が意地悪すぎである。
まあ、絶望的な戦いに身を委ねる本作のキャラクターたちの心情をリアルに共有できると言えばそうなのだが…。
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4人の自機もクセが強く一長一短で、まずはこのキャラを使えばクリアが楽、というような(『ストライカーズ1999』のX-36のような)救いも無い。
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強いて言うなら全体的に遠距離攻撃が強く避けに専念しやすいソニアが初心者向けだが、ドラゴンシュートの貧弱さとボムの効果範囲の狭さという欠点がしっかりセットでついてくる。
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某キャラクターが1面クリア時に発する「この程度の力なら~」という発言は完全にこのゲームを甘く見ている台詞である。また、このキャラクターはかなり言動が怪しく、本心の見えないところがあり、エンディングが非常に気になるのだが…。
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その他、ゲームオーバー時のアドバイスが適当、後半面でコンティニューするとステージ最初からやり直させられるといった問題点もいつも通り。これらの問題点も手伝って多くの新規プレイヤーが離れる原因となった。
彩京初期の『ストライカーズ1945』のときからこうなので、ここまでブレないのも逆にすごい。
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ちなみに、こんな難ゲーであるにもかかわらず、店舗向けの販促チラシや公式HPでは「シューティング初心者からマニアまで幅広く楽しんで頂けます。」などと書かれていた(販促チラシでは「~幅広い客層を引き込みます」)。
まあ、本作に限らず(本当に初心者からマニアまで幅広く楽しめた初期~中期の作品の頃から)ほとんどの彩京作品で使われている常套句のようなものではあるのだが。
総評
もはや完全に開き直って最初から初心者を相手にしていないかのようなパターンゲー全開のゲーム性は、逆にシューターたちへの挑戦状とも取ることができるほど、ある意味清々しい。
接近戦を突き詰めたアグレッシブなゲームデザイン、多彩な攻撃手段、スコア稼ぎの面白さ、グラフィックや演出のレベルの高さといった長所も光る分、もう少しとっつきやすいゲームになっていれば振り向いていたプレイヤーも多かったのではないかと思われるのだが…。
今となっては彩京の最後の2Dシューティングとなってしまっただけに、いろんな意味で惜しいゲームである。
ただし、攻略パターンの確立さえできれば決してクリア不可能ではないどころか、高難度揃いの後期彩京シューティングの中ではむしろ中間的な難度のゲームですらあるのもまた確か。
先入観を捨て、覚えるところを徹底的に覚え、弾幕の壁を乗り越えて…彩京が散った今だからこそ、彼らが残した最強の挑戦状をもう一度受け取ってみるのも、また悪くはないだろう。
実際にクリア出来るかどうかは別問題として。
移植・続編など
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プレイステーション2版(2005年3月31日、タイトー)
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『彩京シューティングコレクションVol.3 ソルディバイド&ドラゴンブレイズ』にて、『ソルディバイド』とのカップリング収録。
オマケ要素などは皆無だが、移植度はほぼ完璧なそこそこの良移植である。
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Nintendo Switch版(2018年4月5日、シティコネクション)
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『ドラゴンブレイズ for Nintendo Switch』のタイトルで配信開始。また、同年7月25日に発売された『彩京 SHOOTING LIBRARY Vol.1』にも収録されている。
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Windows(Steam)版(2020年8月3日、シティコネクション)
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Switch版の内容をベースにスコアアタック専用モードとオンラインランキング機能が追加されている。
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プレイステーション4版(2022年6月30日、シティコネクション)
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パッケージソフト『彩京シューティングライブラリvol.1』に収録。また、同日に単品ダウンロード版も配信開始。
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Xbox One版(2023年1月12日、シティコネクション)
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なお、欧米では2006年にイタリアのゲームパブリッシャー、505 Game Streetにより単体でプレイステーション2に移植された模様。
最終更新:2023年01月13日 21:34