桜坂消防隊
【さくらざかしょうぼうたい】
ジャンル
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チームワーク・レスキューアクション
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売元
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アイレムソフトウェアエンジニアリング
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開発元
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ラクジン
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発売日
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2004年6月10日
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定価
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7,140円(税込)
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プレイ人数
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1~2人
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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廉価版
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アイレムコレクション 2006年7月20日/2,800円(税込)
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判定
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なし
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ポイント
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アイレム災害ゲーの一つ アクションゲームとしては良好な出来 シナリオはやや粗が目立つ
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概要
架空の街・桜坂市の消防署に勤務する消防士「本条 大地」を操作し、火災現場に取り残された要救助者を救出しつつ、市内で起こる連続放火事件の真相に迫っていく。
災害をモチーフにしたゲームといえば同じアイレムの『絶体絶命都市』シリーズが有名だが、本作はあちらとは逆に被災者を助ける立場となる。
あらすじ
桜が咲き誇る季節となった桜坂市。
この街の桜坂消防署に勤務する若き消防士・本条大地は、満開の桜を眺めながら、一年前のある日を思い出す。
一年前、彼の唯一の肉親だった消防士・「本条雄一郎」の命を奪った廃工場への放火事件。
大地がその悲劇から立ち直ろうとした矢先のある日、桜坂消防署にビル火災発生の一報が入る。
直ちに現場へ駆けつけた大地ら消防士だったが、彼らがそこで目にしたのは、一年前の火災の引き金ともなった時限爆弾。
大地は、一年前兄を死に追いやった放火犯が舞い戻ってきたと断定。放火事件の謎と、兄を殺した張本人を突き止めるため火災現場を奔走する。
登場人物
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長いので折り畳み
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本条 大地(CV:石川英郎)
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本作の主人公。桜坂消防署の若きエース。両親を事故で亡くしており、唯一の肉親である雄一郎の事を心から慕っていた。放火を続け、雄一郎の命を奪った連続放火犯を突き止めるべく奔走する。機械音痴であり、消防学校時代に多くのパソコンを壊した事から「原始人」と揶揄される事もある。
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菊原 千鶴(CV:満仲由紀子)
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ヒロインの救急隊員。密かに大地に想いを寄せている。人助けにかける情熱は人一倍だが、それ故か無鉄砲な行動に出る事もしばしば。知り合いに警察関係者がおり、遺留品は彼女を経由して警察へと渡される。
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本条 雄一郎(CV:稲田徹)
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大地の兄で、彼の唯一の肉親。非常に優秀な消防士だったが、大地らと共に出動した工場火災で殉職する。ストーリーモードでは仕様上その能力のほどを拝む事は出来ないが、条件を満たせばフリーモードで出動させられる。全体的に高い能力値を持っており、頼れる存在。
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土井 順平(CV:阪口大助)
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桜坂署最年少の新米消防士。お調子者でおっちょこちょい。「~ッス」という語尾が特徴。非力で消火力も低いが、足の速さは全隊員中一番。
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中津川 和也(CV:川津泰彦)
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消防副士長。天才肌の雄一郎とは対照的に努力家の人間。消火能力は雄一郎に次ぐNo.2でそれ以外の能力もそこそこだが、何故かバックドラフトなどに引っかかりやすく、体力がすぐに危険域まで陥る事がしばしばある。
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嶋 龍二(CV:中井和哉)
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やや短気で口調も荒めだが、優秀な消防士。消火能力は高めだがそれ以外の能力は並程度。
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朝倉 沙耶(CV:野田順子)
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殉職した雄一郎の補充要員として配属された、男勝りな女性消防士。大地とは消防学校時代の同期であり、大地からは「カラミティ(疫病神)」と呼ばれている。足はやや速いが、総合的な能力はまあまあといった所。
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緒方 駿作(CV:今村直樹)
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なまりの抜けないのんびりした口調で話す消防隊員。現場でもその調子が変わらないのでどこか気が抜ける。足が遅く消火力も並だが、力が強いので瓦礫や障害物の撤去が早い。
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三木 京介(CV:増谷康紀)
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桜坂消防隊副隊長。仲間思いの温厚な性格。消防車の操作などは彼が担当しており、ポンプ車など消防車両への応援要請は彼が対応する。
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堀越 隆雄(CV:江川央生)
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桜坂消防隊隊長。厳しいが部下思いの人物で、現場でもその冷静な判断力で大地たちに的確な助言を送る。
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河崎 琢磨(CV:佐藤正治)
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桜坂警察署の警部補で、放火事件の謎を追っている。桜坂消防署の隊員らに対して友好的で、警察側での動きをこっそり教えてくれる。
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一ノ瀬 翔(CV:置鮎龍太郎)
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河崎の部下。嫌味っぽいが職務に対しては真面目。河崎と違い彼自身はそこまで協力的ではないが、河崎の指示で彼が捜査情報を教える事もある。
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特徴
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火災を消火し人命救助を行うという、一風変わったゲーム。仲間たちと共に延焼を食い止めつつ、要救助者や事件の遺留品を探すのがゲームの目的となる。
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プレイヤーは消火だけではなく、仲間や消防車両への指示を行って消火と人命救助をより効率よく行う必要がある。
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火災現場には、逃げ遅れた要救助者や放火犯が残した遺留品が存在し、それらの救助・回収の度合いによってエンディングが変化するマルチエンディング方式となっている。
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相手は容赦なく全てを焼き尽くす炎であり、放っておくとみるみる火勢が強まり、最終的には部屋が炎に包まれてしまう(LOST)。こうなるとその部屋の遺留品は焼失し、そこに居た要救助者は死亡してしまう。その上ロストした部屋は通れなくなるため、部屋が通路の役割を兼ねている場合は大きく迂回してくる必要が出てくる。
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ロストした部屋はポンプ車や消防ヘリの注水で再び入れるようになるが、要救助者や遺留品は跡形もなく消えている。またポンプ車などが注水できる部屋は限られているので、ロストしてしまえばそこで終わりという部屋も少なからず存在している。このような事態を防ぐために、事前にポンプ車を要請しておいたり、1つの部屋の消火に固執せずある程度複数の部屋の火勢を弱めておくなどの工夫が必要となる。
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また、バックドラフトや天井崩落などのトラップ要素も現場のそこかしこに存在し、これらにひっかかると大ダメージを受けたり身動きが取れなくなるなどして消火活動に大きな影響が出る。いずれも予兆が存在しているため、注意深くプレイしていれば回避する事は十分可能。
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要救助者は呼びかけを行うと大地が気づいてマップに場所が表示されるが、昏倒している場合は呼びかけても反応がなく、大地が気づかない事がある。そのため呼びかけたからOKという訳ではなく、自らの目で部屋を隅々まで見渡す必要がある。
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救出した要救助者からは、ステージ終了後に感謝の気持ちをつづった手紙が届く。この手紙は事件解決のヒントが眠っている事もあるほか、隠し要素開放の条件にもなっている。しかし、救助が遅れて要救助者が重症になってしまうと手紙が届かない場合がある。クリアランクにも影響してくるため、要救助者の捜索と救助は素早く行おう。
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また、エリアごとに制限時間が設けられているためのんびりしすぎると時間切れの危険もある。あくまで目的は人命救助であるため、時には炎を無視して人命検索を行うという判断も必要。制限時間は要救助者を救出したり、現場で起こるイベントに対処する事などで増加する。
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クリアランクが存在するため、スコアアタック目的で楽しむ事もできる。
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高ランクを取れば、キャラクターの画像を署内のパソコンで閲覧できるようになるご褒美がある。
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ゲームをクリアすれば、任意の装備とメンバーで火災現場を攻略できるフリーモードが追加される。
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条件を満たせば、殉職した大地の兄・本条雄一郎を出動させる事も可能。彼の能力は総合的に見て非常に高く、スコアアタックの際には必ずお世話になると言っても過言ではない。
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2人プレイ用のモードも用意されている。
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2人で協力して攻略する「コンビモード」は勿論、インパルスを使って対戦する「サバイバルモード」なんてものも。
評価点
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仲間が非常に優秀。
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仲間隊員はとても頼りになり、彼らをどう使うかで難易度は大きく変わる。良く喋ってくれるので共に火災に立ち向かってるという雰囲気が出ている。
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消火能力の高い仲間なら、延焼率の高い部屋に単独で突っ込ませても無事鎮圧するという事も少なくない。プレイヤーだけでは手の届かない部分を上手くカバーしてくれる。特に終盤になってくると、スタート位置から離れた部屋が激しく燃えていたり、通路が火の海で消火しないと通れないという事態も起こるので、仲間との協力は必要不可欠となってくる。
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また、仲間ごとに遺留品に気づきやすい/気づきにくい、バックドラフト等の罠に引っかかりやすい/引っかかりにくいなど、ただの能力値にとどまらない個性づけがなされている。
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プレイヤー自身が救助すると消火効率が落ちるため、仲間に救助を任せ自分は消火に専念するといった事もできる。消火や救助は仲間に任せ、要救助者や遺留品探しを優先したり、バックドラフトに仲間が巻き込まれない様事前に部屋のドアを開けて回るなど、プレイヤーならではのプレイも重要となる。
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支援要請もただ呼べば良いという訳ではなく、ある程度部屋の火勢が弱まったら別の部屋に向かわせる、要救助者の配置を予測して救助部隊(要救助者を連れて行けば救助してくれる)や医療部隊(ダメージを回復してくれる)の位置を変更させるなど、全体の動きをきちんと考える必要がある。
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要請した支援部隊が到着するまでには時間がかかるため、部屋がロスト寸前になってから慌てて要請しても遅い。現場では常に早め早めの判断が求められるのだ。
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火災現場の表現は良好。要救助者を救助した時などの一部を除いてBGMがかからないため、火災現場の静かな緊張感をうまく表現できている。
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ちなみに、このBGMがかからないという点は支援要請や仲間への指示を考える際、BGMが思考の邪魔にならないという副次効果も持っている。
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豪華声優陣。
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PS2以降のアイレム作品は劇団すごろく関係者をメインに起用しており、(有名声優も起用していたが)ややマイナーな声優が少なくなかったり、どの作品も似た顔ぶれというケースが目立ったが、本作では有名声優を惜しみなく起用している。
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主人公役に石川英郎氏、桜坂消防署隊員の面々でも稲田徹氏・中井和哉氏・阪口大助氏・野田順子氏・江川央生氏等々。他のサブキャラも名の知れた声優ばかり。
賛否両論点
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炎がありえない動きをしてくる事がある。
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どう見てもプレイヤーを狙って飛んでくる炎、周囲を薙ぎ払うように動く火柱など。ゲーム的な都合と考えられるが、リアルに表現しているため、違和感はある。
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ところどころで挟まる主人公のポエム。
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熱血漢という設定に似合わない情緒的なポエムは人によっては笑いを誘うが、「陳腐」「キャラに似合わない」と拒否反応を起こす人も居る。
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ステージ数が若干少ない。
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ステージはストーリーで出てくる7つのみで、ルート分岐や隠し要素でステージが追加される事はない。「ボリューム不足」と言う人が居る一方、「隠し要素は周回プレイ前提の開放条件なのでこのぐらいがちょうどいい」とする人も。
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ただし、フリーモードでは一部イベントの省略とそれに伴う現場の状況変化や、出動地点及び仲間と装備の選択が可能であるなど、ストーリーモードとの相違点も多い。このため、同じステージでもストーリーモードとフリーモードではやや違った感覚でプレイする事ができる。
問題点
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キャラのグラフィックが稚拙。
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耐火服を着ている時はともかく、そうでない時は妙に角ばって見える。キャラの動きも硬い。
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消防署内では表情とポーズがほぼ固定なため、緊迫感のある場面でも緊張感が削がれる。
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特にヒロインの救急隊員は、シナリオの都合上緊迫した場面に多く出くわすが、表情は常に笑顔なのでかなり違和感がある。
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装備品の1つ、インパルスが使いにくい。
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上記で少し触れた通り、インパルスはチャージした水で放って一瞬で鎮火する装備品だが、チャージの手間がかかる上に、火の粉などで怯むとチャージが解除される。
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巨大な火柱は火の粉を放出する事が多く、インパルスの一番の活躍の場のはずなのにまともに消せないというありさま。小さい炎を消火するにもいちいちチャージする必要があり、やたらと手間がかかる。
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しかし、現実のインパルスは取り回しの良さを生かした初期消火が主な仕事なので、本作のように既に火災が大規模に進行している状態では力を発揮しにくいのも仕方ないかもしれない。
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一部システムにおかしい部分がある。
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はしご車とポンプ車または消防ヘリを同時に要請できない。ゲームなので仕方ない事なのかもしれないが、全く別の所に要請しているのにいずれか一つしか来れないというのは不自然。
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現場で集めた遺留品は最大3個までしか鑑識に調べてもらう事が出来ない。手掛かりになりうるのならば遺留品は全て調査するべきでは…?
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なお、ベストエンドを迎えるためには遺留品の内正解となる遺留品をすべて調べてもらう必要がある。発見者のコメントや話の流れを注視していればある程度の目星は付くようになっている。
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一部ステージでは、はしご車に乗って外部から火災を鎮圧し、突入の用意を整える「外部注水」を行う展開が存在するが、やる事はただはしご車のかごを操作しながら火を消すだけなので作業感が強い。2度目の外部注水では火の粉が飛んでくるようになるが、通常時と違いかごを左右させる事しかできないので避けにくい。
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説明不足だったり、無理に急展開に持っていこうとするなど、シナリオの粗が目立つ。
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作中で爆弾解体を行うシーンがあるが、なぜ消防士である大地が爆弾解体を行うのかがわからない。
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最初の解体時は爆発物処理班が現場に向かう手だてが無いという理由があったが、それ以降のステージでは特に理由付けが無く違和感がぬぐえない。
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しかも最初の解体を行った後、撤収する時は普通に階段を降りて帰る。階段があるならなぜ使わない。
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解体作業は赤・黄・青の3本のコードを順番通り切断するという物だが、コードを切る順番を示した暗号がわかりやすすぎる。ただの縦読みだったり、文中に色名をそのまま紛れ込ませるなど。あまり複雑すぎるのも難だが、狡猾な放火犯が考えたにしては稚拙な出来であると言わざるを得ない。
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なお、なぜ爆弾解除のヒントをわざわざ置いているのかについては説明がない。
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ヒロインである「菊原 千鶴」の行動があまりにも軽率で不用心。
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持ち場を離れて危険人物が居る可能性のある部屋(しかも火災の真っただ中)に単身向かったり、犯人と思われる人間に本名入りのメールを送るなど。こうして危険が及ぶと毎回大地が助けに行くことになるが、これでは「危険にさらされているヒロインを助ける主人公」ではなく「同僚のミスを尻拭いさせられる苦労人」である。
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最初のステージの時点で犯人の声がバレバレ。クリア後に全く同じ声のキャラが出てくるため、特に注意していなくてもすぐわかる。
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現場では黒塗りにされているが、声ですぐわかるので茶番にしか見えない。
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そして、物語の肝となる黒幕を追い詰める過程にも粗が目立つ。
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ネタバレ注意
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真犯人は2名おり、その内1人が同僚の消防士「三木 京介」なのだが、彼が犯人と判明するまでの流れが遺留品も伏線もないあまりに唐突な展開となっている。
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彼が犯人であると判明する理由は、メールの文面に「兄ぃ」という彼独特の呼び方を使用したために正体がばれるというかなり無理のある展開。もし文章がまともだったら真犯人の正体はわからず終いだった。
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そもそも、メールに日常会話で使う独特の呼び方を律儀に書き込むというのは、わざとやっているのかと思いたくなるほど不自然。一応彼は「チマチマした作業は苦手」と話していたが、それと文面の偽装(というより一般的な書き方をするだけ)ができない事は別問題だろう。せめて「独特の呼び方をあえて使用する事で三木に罪を被せる」といった展開ならば,この不自然さもある程度納得出来たのだが・・・。
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なお、消防士が犯人の片割れであるシナリオ上の理由は「火災現場から怪しまれず脱出するための耐火服を調達できる人物」だからである。言ってしまえば、消防隊の誰が犯人でも本作のシナリオは概ね問題なく成立してしまう。
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もう1人の真犯人である「河崎 琢磨」は、ベストルートでゲームを進めているとどこか矛盾した発言をする(該当するシーンの直後には、大地も違和感を感じたような反応をする)など、こちらはちゃんと疑惑が起きるような展開となっている。
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また、最終的に真犯人を説き伏せたのは主人公ではなく上司「堀越 隆雄」であり、展開としてはありがちだがそのせいでラスト間際の主人公の存在感がやや薄くなっている。
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なお、真犯人の2人は最終ステージにおいて、自分達の仕掛けた爆弾で自爆するつもりだった。そのため、大地達にも現場から逃げるように訴えていた。
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しかしその割に、解除のための道具と解除のヒントはキッチリ用意している。生きたいのか死にたいのかどっちなんだ。
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総評
火災現場の表現や仲間・支援部隊のバランスなど、アクションゲームとしては秀逸な完成度を誇る。
しかしシナリオ展開はあまり良いものとは言えず、ストーリーを期待して買うのはあまりお勧めできない。
シナリオをもっと練りこめばより評価が高まっていたかもしれない、惜しい作品である。
最終更新:2024年05月25日 12:55