SIMPLE2000シリーズ Vol.82 THE カンフー
【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむはちじゅうに ざ かんふー】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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D3パブリッシャー
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開発元
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ヴァンテアン・システムズ
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発売日
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2005年7月28日
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定価
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2,000円(税別)
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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判定
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クソゲー
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ポイント
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2005年クソゲーオブザイヤー次点
カメラ・当たり判定・モーションと、何もかも手抜き 雑魚は無視、ボスだけフルボッコで万事OK 打って変わって凶悪な修行
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KOTYゲーム一覧
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SIMPLE2000シリーズ
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概要
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カンフー映画をテーマにした、SIMPLE2000シリーズ後期の3Dアクション作品。
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開発のヴァンテアンシステムズはSIMPLE的には『THE スプラッターアクション』のような
良作
を作ったり『THE 戦車』みたいな
クソゲー
を作ったりと出来不出来の激しいメーカーであるが、本作は完全に
後者の系譜。
通称『THEカンフー』。
特徴
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メインとなるストーリーモードにて、4ステージ1セットのシナリオを4種類クリアすることでゲームクリアとなる。
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最後のシナリオ「カンフーマスター」のみ、他の3つをクリアしないと出現しない。
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それ以外の各シナリオの攻略順は任意だが、ストーリー的にも難易度的にも上から順番にやっていくのが無難。
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各ステージの前後には3Dでの一枚絵とボイスによるストーリーが展開される。
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ストーリーは全編
広東語のフルボイス
である(日本語字幕付き)。
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各ステージは共通して、雑魚を倒しつつボスのところに辿り着いてイベントを発生させ、倒せば勝利。
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攻撃は○ボタンのみで、最初はパンチ一発しか打てない。ゲームを進めるとコンボの回数が増える。
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敵が持っている刀や棍といった武器をドロップすることがあり、拾うと攻撃力が微増、攻撃のモーションも変化する。
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道中の壺などに坊主の人形(→少林寺拳法)、徳利(→酔拳)といった武術のモチーフがアイテムとして隠れており、拾うことで一定時間攻撃をその武術のものに変えることが可能。
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その他、ジャンプとガードが可能。ジャンプは敵の回避などに割と使う。ガードは……存在意義があまり感じられない。
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クリアすると、「(敵を)倒した数」「残り時間」「残り体力」「スーパーモンキー」の各項目をもとに評価点が貰える。
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評価点は裏でこれまで全てのものが累計されており、計得点が一定に達する毎に、主人公の基本コンボ数が最大3回まで強化される。
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各ステージをクリアすると「修行」としてミニゲームが挟まれる。
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ミニゲームは連打系、タイミング系、リズム系など全部で10種類。
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結果次第で、主人公の体力/攻撃力/防御力/ZEN力(後述)が増える。
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修行はストーリーで行うもののほか、専用の「修行モード」にて個別に実施することも可能。
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「スーパーモンキーモード」について
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体力ゲージとは別に「ZENゲージ」と呼ばれるゲージが存在しており、各ステージ満タンから始まる。一定量消費することで「スーパーモンキーモード」を発動できる。
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ゲージの最大値は前述の修行で増やすことが可能。初期値はスーパーモンキーモード5回分。
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発動すると身体が光り、一定時間
無敵+移動速度大幅上昇+攻撃力1.5倍
という非常に強力な効果を得られる。
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使用回数を多く残したほうが、前述の「スーパーモンキー」の評価は高くなる。
問題点
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最初に名前入力が行われる(デフォ名は「陳港星」)が、
主人公の名前は「成雷」で固定。
どこに反映されているのか分からない。
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実はエンドクレジットが映画風で「主人公役=プレーヤー」とやるためだけのもの。
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たまにある演出ではあるが、あまりに芸が無く陳腐すぎである。
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ストーリーは質・量・演出の3拍子全てが低質。
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折角の広東語のボイスだが、大半が明らかに棒読み。
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そんなに気にならないキャラもいるが、
肝心の主人公・成雷がダメ。
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当たり判定がおかしい。
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近づきすぎると当たらなかったり、横にずれていたりする。
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結果、明らかに
正面から殴っているのに当たらない
ことがザラにある。
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雑魚キャラは、持っている武器の違いを除くとたった2種類。
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全ての敵は、人民服を来た武道家と僧兵のどちらか。
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ボスキャラも16面あるにもかかわらず5種類しかいない。名有りのボスは「鳳龍」1人のみ。
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ストーリーモードのオートセーブがデフォルトでONになっている。
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にもかかわらず、1シナリオを終わらせないと、たとえ修業後にオートセーブされたとしてもストーリーの進行状態そのものはセーブされない。
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各ストーリーで5種類しかないマップが使い回し。
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カメラワークも大問題で、プレイを大きく阻害する。
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主人公の位置や視点に応じて自動的に移動するのだが、プレイヤーの意図しないようなタイミングで切り替わって混乱することが多い。
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マップが切り替わると移動方向が大きく変わることもしばしばある。
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方向キーを同じ方向に倒し続けても、マップ切り替えの部分でウロウロしていたり行き止まりに突っ込んだりする。
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「修行して強くなる」というコンセプトなので、初期のプレーヤーはコンボすらない。
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最終的にコンボは三段まで増えるものの、モーションはカクカク。
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「蛇拳」「少林拳」といった技もなぜかアイテム扱いで、一定時間しか使えない。修行で会得して自由に使える、という形では無い。
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敵の持っている棍・剣・鉄扇、道端の長椅子を拾って戦えるが、拾うものによってはモーションや当たり判定が変化、かえって不利になることもある。
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特に、コンボが無い初期に剣を拾っても攻撃力は上がるものの突きが一段しか出ないので、余計に敵に攻撃が当たらなくなる。
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パッケージ裏では
「注目すべきは『長椅子』!」
とやたら長椅子で攻撃ができることを推しているが、見た目的にも威力的にも目を見張るものは全く無い。
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スーパーモンキーモードが凶悪すぎる。
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攻撃力アップだけでも充分なくらいなのに、凄まじいほどの移動速度UP、
挙句の果てには無敵
と、無条件で使えるパワーアップとしては完全にバランス崩壊した性能。
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これが同ステージで最低5回は使えるというのだからたまったものではない。修行を積めば使用可能回数も増大する。
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ボスまでたどり着けば、ボスもモンキーモードでフルボッコ。さくっとクリア可能。
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雑魚敵と戦う意味がない。
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本作の成長要素はほぼ全面的にクリア後の修行(ミニゲーム)の結果に依存しているため、
敵を倒しても時間や体力を消耗するだけで全くメリットを得られない。
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「雑魚敵を倒し終わらないと先へ進めない」ということも本作にはない。完全に障害物止まりで、避けて進むことに何の問題も生じない存在である。
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狭いところに沢山いることも多いために全くノーリスクで通過できる訳ではないが、スーパーモンキーモードを使えば無敵+移動速度UPによって悠々と抜けられる。
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使わなくても、ジャンプでピョンピョンしながら無理矢理通れば律儀に戦うより明らかにリスクは少ない。
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「敵を倒した数」の評価があるため、それでも戦って進んだ方が良い気もするが、代わりに「残り時間」「残り体力」の評価が上がるため全くリスクになっていない。
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そもそも、「敵を倒した数」の評価はボスを倒すだけで大幅に上がるため、わざわざ雑魚を倒して増やす意味は殆どない。
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もっと言えば、計30万点取ってコンボ数を解放した後は、根本的に高い評価を得る必要自体が無くなってしまう。
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結果、本作は
「敵を全部スルーして、ボスはスーパーモンキーモードでゴリ押し」が最適解
であり、なおかつちょっと遊べばこのことには早い段階で気付けてしまう。
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修行(ミニゲーム)の難度差が激しい。
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連打系は連打だけなので簡単。向かってくる雑魚敵を倒し続ける「ザコ敵を倒せ!」も飛び蹴り中心に動けば割と楽。
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それ以外は大体難しい。特に、六方向に左スティックを動かして飛んで来るたまごをキャッチする「たまごキャッチ!」、障害物を避けつつダッシュで目的地に時間内に到達する「森を抜けろ!」が難しい。ここだけ難易度の高い音ゲーをやらされている気分になる。
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特に後者は、クリアするだけでギリギリの難易度であり、とてもじゃないが高評価なんて狙っていられない。
評価点
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音楽はそれなりにカンフー映画っぽさがあり、まともな出来。
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ミニゲームは難易度のばらつきを除けば普通。
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どれも単純かつオリジナリティーも無いが、本作において
数少ない「ちゃんと遊べる」部分
である。
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非常に簡単にクリアできるため、いわゆる「進めなくてストレスの溜まる」部類のクソゲーではない。
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律儀に雑魚を全部倒して進んでいたプレイヤーが、全部スルーするのが最適解だと気付いたタイミングでは
別のストレスが溜まりそう
ではあるが。
総評
とにかくゲームデザインが根本的に間違っており、
アクションゲームとして成立していない
と言われても文句の言えない作品。
雑魚敵全スルーが可能かつ最適解、ボスもモンキーモードで無敵突破が基本というあんまりなゲーム進行を筆頭に、
当たり判定やカメラワークも雑、爽快感も皆無と率直に言って褒めるところが見当たらない。
SIMPLEシリーズらしく「カンフーっぽさ」でバカゲー的な趣を出したところが唯一の特長だが、
そちらもシナリオは適当、台詞は棒読みと投げやりで、まともに作っているのは音楽とデザインぐらいである。
負のインパクトでは『THE 男たちの機銃砲座』には劣るものの、純粋な出来としては(マイナス方向に)勝るとも劣らないシリーズ最底辺クラスの作品と言えよう。
余談
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キャラクターの動きは、大阪にある道場「大阪武術文化研究会」の武道家からキャプチャーをしている……らしい。
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だが、有効に働いたとは全く言えず、リアル感も無く、かと言って迫力・爽快感も無いという何とも微妙なものに仕上がってしまっている。
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よりによって、発売日がSIMPLEシリーズの代表作のひとつ『THE 地球防衛軍2』と一緒である。
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名作地球防衛軍シリーズの2作とも
SIMPLEシリーズを代表するクソゲーと同日発売
というのも不思議な話である。
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SIMPLEシリーズだから大目に見られる……ということもなく、KOTY2005の次点となった。
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PCエンジン最初期のソフトに『THE 功夫』というゲームがあるが、無関係。
最終更新:2022年12月22日 19:31