本記事ではオリジナルのAC版『エリア88』とその移植版であるSFC版『エリア88』を扱う。判定はいずれも「良作」。
エリア88
【えりあはちじゅうはち】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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アーケード (CPシステム)
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販売・開発元
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カプコン
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稼働開始日
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1989年
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判定
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良作
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概要
1979年から1986年まで連載されていた新谷かおるの漫画『エリア88』。今なお彼の代表作として挙げられる名作であり、いくつかの媒体でゲーム化もされた。
本作もその一つであり、当時のカプコンが得意としていたシューティングゲームになっている。
システム
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横スクロール式・全10+1面・1周エンドのシューティング。2人同時プレイ可能。
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性能の異なる三人のパイロットの中から一人を選んでプレイする。
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風間真(シン):搭乗機は「F-20 タイガーシャーク」。通常ショットは真横へ発射。セミオートの連射速度に優れており硬い敵への与ダメージ能力が高いため、扱いやすい機体。
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ミッキー・サイモン:搭乗機は「F-14 トムキャット」。シンとくらべて通常ショットの横幅が広くセミオートの連射速度は低いが、それほど大きな差ではない。筐体に連射装置がついている場合は弱点が無くなり、シン以上にクリアがしやすい機体となる。
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グレッグ・ゲイツ:搭乗機は「A-10 サンダーボルト」。通常ショットが真横と斜め下の2方向に同時発射される特殊タイプ。その分それぞれ一方向への攻撃力は低い。プレイ感覚が独特で使いづらいと言う人が多いが、オプション武器がなくとも対地攻撃ができ他の機体より楽に進める局面もある。
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2DSTGでは比較的珍しい、残機なしのライフ制。被弾するとライフが減り、これが尽きた状態で被弾するとゲームオーバー。ステージクリアするとライフは全快する。ステージ中の特定箇所で回復アイテムが出現することもある。
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「POW」アイテムを取ると経験値が貯まり、一定値になると通常ショットのレベルがアップして強化される。RPG同様次のレベルに上がるための必要個数は徐々に上がっていくが、数個程度取り逃したところで攻略に支障をきたすような事態にはならない。
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通常ショットにはセミオート連射が搭載されており、押し続けていると連射される。ただし次第に連射速度が低下していくので、「ポン、ポン、ポン」と断続的に押すのがコツ。
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ステージ開始時に所持金を支払ってオプション武器を購入する事ができる。爆弾やホーミングミサイルなど種類は豊富。また最大ライフを一時的に増加させる燃料タンクや、数発の被弾に耐えるバリアも売っている。ちなみに、ステージクリア時に残っていた武器は残量に応じて金額が払い戻されるようになっている。
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特定のステージでは敵を破壊した際に武器アイテムが出現する事がある。オプション武器がない場合は新たにオプション武器が装備され、購入したオプション武器が残っている場合は残弾数が補充される。
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特定の箇所で「モビちゃん」や「弥七」等といった隠しキャラが出現する事がある。
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スコア・所持金増加だけでなくライフ全快、バリアやショップでは購入できない隠しオプション武器入手と効果は様々。
評価点
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プレイヤーの目的に応じて難易度が調整可能なゲームデザイン
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初心者のうちは序盤からオプション武器を買ってこれを活用して先に進み、慣れてくると前半面では武器を買わずに後半の難所に所持金をつぎ込む、安定してクリアできるようになるとハイスコアを目指して武器を一切買わずにクリアを目指すようになる(クリア時の所持金がボーナス得点に変換される)といった具合に、初心者から上級者まで、自分の腕前に見合った適切な難易度を自然に楽しめるという仕組みになっている。
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被弾時のペナルティーはライフ減少のみ。ショットのパワーダウンがなくステージクリアでライフ全快されるため多少の被弾なら痛手になりにくい。この点もハードルの低さに貢献している。
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松前真奈美によるBGMは好評。原作の埃っぽさを感じさせつつも、STG独特のテンションの上がるハイテンポなものが多い。
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キャラクターグラフィックの原作再現度は高く、オリジナルデザインのメカニックもさして不満の無い作り。
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ステージクリア時には撃墜した標的を背景に飛び去る自機とパイロットの台詞が表示される演出が挿入される。台詞自体は3キャラ共通だが印象に残りやすいものが多い。
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このうちパイロットのサムネはクリア時の残ライフ量によって変化する。被弾数を抑えられた場合は余裕の表情を見せる一方、瀕死でクリアすると焦りの表情を見せたりと芸が細かい。
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ステージ数は10+特別ミッション1と多めだが一つ一つが個性的、かつ短めの物が多いのでテンポが良い。
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特別ミッションはステージ3~5のいずれかの後にランダムで発生。原作の1エピソードを再現したもので、旅客機の機体に貼り付けられた爆弾を破壊することが目的。敵機も出現する上に旅客機本体にダメージを与えると自分自身のライフと所持金が減ってしまう。「戦闘に出るより、つかれるぜ!」
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加えて制限時間もあり時間切れになると旅客機が墜落してミッション失敗となる。この場合、クリアボーナスが得られなくなるが次のステージへ進めるため、自信が無ければ爆弾を無視して時間切れまで耐えるという手もある。
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アーケードゲームとしては難易度が控えめ。若干覚えゲーの性質が強いが初見でも十分対処できる範囲内であり、難しい箇所はオプション武器で乗り切ることもできる。
現在でも誰もが楽しくプレイできるシューティングとして、レトロ系ゲームセンターなどで好評稼働中である。
(クリアまでの総プレイ時間は約25~35分程度だが、一周エンドなのでプレイ時間が長引きインカムが落ちるという事態もあまり起こらなかった)
賛否両論点
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ストーリーは「アスラン王国の内戦を利用する武器商人組織プロジェクト4壊滅のために外人部隊が立ち上がる」と大筋の設定は原作に沿っているものの、展開はほぼゲームオリジナル。
特にエンディングは「敵母船を撃破後、意気揚々とエリア88に帰還する」という、原作と全く異なるハッピーエンドのため賛否両論。
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とはいえ原作終盤の展開を本作のシステムで再現するのは困難であるし、明るい未来を手に入れた主人公達に「これはこれで」という声もある。
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全体的に敵が固いため、連射装置の有無で難易度が激変する。そもそも連射装置無しでも控えめの難易度だが、連射付きだと通常ショットのみで初見ノーコンティニュークリア余裕でした、なんてことも普通にあり得る。
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一方でややトリッキーでイジワルな敵配置がたまに見られる。
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敵が後ろから出現して高速で横切ったり、すれ違い際に弾を撃ってくるケースが多い。
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攻撃死角にあたる画面左端(後ろ端)に複数の敵戦闘機が溜まるが、自機を左端に移動させると敵が前に行ってくれるという、戦闘機同士の「背後の取り合い」を意識したような局面もある
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それを踏まえてもなお難易度は低めと言えるのだが。
問題点
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原作に無い超兵器が数多く登場。原作にもグランドスラムや地上空母などの超兵器はあったが、本作の終盤はそれに匹敵するオリジナル超兵器が続々と出現する。
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とはいえ「砂漠を走る地上空母」は、それまでリアル路線だった原作漫画に突如現れ賛否が分かれたトンデモ兵器である。ゲームにしっかり登場させる事で原作再現要素はバッチリであり、ゲームオリジナル超兵器で世界観を崩さない役割にもなっている。(他に「砂漠に埋めておくと近くの戦闘機を探知して発射される自動ミサイル」も、似たようなものでしっかりゲームに登場している。)
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上述のストーリー改変の影響か、原作のキャラクターで登場するのが前述のプレイアブルキャラ3人+インターミッションで登場するサキとマッコイじいさんの5人と極端に少ない。
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キムやセラといった連載後半期に登場した88メンバーの人気キャラ、ゲイリー・マックバーンや神崎悟といった敵側のキーパーソン、涼子や安田、ジュリオラといった戦場の外での重要人物が全く登場しない。
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スコア稼ぎにおいて永久パターンが存在する。
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稼働開始から早い段階で発覚して雑誌上でのスコア集計が打ち切りとなってしまった。スコア稼ぎが熱いだけに惜しむ声が多い。
総評
原作の雰囲気を尊重しつつ、ゲーム的な面白さも併せ持った名作STG。
原作キャラの登場人数が少ない、原作にはないオリジナル要素が目立つといった問題点もあったが、ゲームが面白かったため過剰な問題視はされておらず、ファンからの評価も上々であり、何よりもカプコンのエリア88への愛が感じられる作品である。
移植
海外向けのPC版と、大幅なアレンジを施したSFC版の2種類が存在する。
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『U.N. Squadron』
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1990年にアメリカおよびヨーロッパで発売された。発売元は知る人ぞ知るU.S.GOLD。プラットフォームもAmiga、コモドール64、Atari-ST、アムストラッドCPC、ZXスペクトラムといったホビーパソコンに移植されている。
余談
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海外版のタイトルは『U.N. Squadron』と変更されているが、『エリア88』というマンガのゲーム化であることを特に隠している様子はなく、キャラクター達もそのまま登場する。(C)表記にも原作マンガの版権者であるDAIPROの名が載っている。ちなみに、海外版の難易度は国内版よりもかなり高くなっている。
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雑誌「ゲーメスト」が選ぶ「第3回ゲーメスト大賞」(1989年度)で大賞第7位、ベストシューティング賞第1位を獲得した。
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サイトロンから発売されたAC版のサウンドトラックCDにはなぜか1面の曲が収録されておらず、代わりに未使用となったボツ曲が入っている。
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その後カプコンは、今作のゲームデザインやシステムを踏襲したシューティング『U.S.NAVY』を開発、発売した。ちなみに同作は当初エリア88の続編として開発されていたが、版権許諾が下りなかったためオリジナル作品に変更となった経緯がある。
エリア88(SFC)
【えりあはちじゅうはち】
ジャンル
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シューティング
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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8MbitROMカートリッジ
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販売・開発元
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カプコン
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発売日
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1991年7月26日
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定価
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8,500円(税別)
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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ポイント
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パイロット特性・機体購入要素の導入 AC版と遜色のないグラフィック 終盤ボスの特殊性が語り草
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概要(SFC)
上記のアーケード版の移植作でカプコンのSFC用ソフト参入第2弾作品。
移植にあたりアーケード版から大幅なアレンジが加えられている。
特徴(AC版からの変更点)
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難易度は「EASY」「NORMAL」「HARD」と隠し難易度の「GAMER」の4つから選択可能。「GAMER」は敵弾の速度・発射頻度が高速化し上級者でもかなり手ごわい内容。
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3人のパイロットに特性が追加された。
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シンは通常ショットのパワーレベルが上がりやすい、ミッキーは特殊武器の追加装備が一番多い(問題点の行で解説)、グレッグは後述のDanger状態からの回復が最速となっている。
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マッコイじいさんから特殊武器だけでなく戦闘機も購入できるようになり、ステージ開始時に所持している戦闘機から選んで出撃するようになった。
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これにより搭乗機はパイロット毎の固定ではなくなった。またAC版より機体が3つ追加されている。
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特殊武器も各機体ごとに買えるものが固定になり、複数の特殊武器が使えるようになった。
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AC版にあった購入アイテムの内、燃料タンクとバリアは削除された。
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登場機体
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F8E CRUSADER:初期機体。特殊武器が3種のみだがこの機体だけでもクリアは可能。
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F20 TIGER SHARK:特殊武器が対地・対空でバランスが取れている機体。
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F14D TOMCAT:前方に強力な攻撃ができる特殊武器を複数搭載できる。対地は苦手。
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A10A THUNDERBOLT2:AC版同様にショットが真横と斜め下の2方向。その代わりショットレベルの限界が最も低い。特殊武器は対地が中心。
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YF23 STEALTH RAY:敵ミサイルの誘導無効化と上方向攻撃の特殊武器を搭載できる。
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F200 EFREET:全特殊武器搭載可能・ショットレベル最大の最強機体。デザインは架空。
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AC版ではステージ順序が固定だったが、SFC版ではマップから次のステージを選んでいく方式に変更された。
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ステージをクリアすることで基地から戦線を拡大、それに応じて新たなステージへ進めるようになる。
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ステージの総数はAC版と同程度だが、幾つかのステージやボスがオリジナルのものに変更されている。
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時折現れる敵補給部隊を強襲するステージEXがAC版スペシャルステージの代わりとして追加。無限に発生するので資金稼ぎに利用できる。
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航空部隊や潜水艦のステージが侵攻部隊として基地に接近してきて、急襲を受けた場合はそのステージをクリアするまで別のステージを選択できなくなるというシステムも導入された。
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残機制+ライフ制になった。スコアエクステンド有りでコンティニューは3回まで。コンティニュー後も購入機体・資金は継続される。
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ライフ制にはAC版と異なる特殊な仕様がある。
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被弾するとDanger状態となり、その状態中に被弾すると残りライフに関わらず1ミスとなる。状態は時間経過で回復する。
評価点(SFC)
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AC版と遜色のないグラフィック。
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画面はAC版より小さくなっているものの、背景・敵ドットなどの再現性は高い。アニメーション枚数は減少しているが違和感のないレベル。
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OPデモやステージクリア時の演出、原潜シーベット戦などSFCの回転拡大縮小機能を演出面で上手く取り入れている。
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機体購入要素やステージ選択制による自由度・戦略性の向上。
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各パイロットを原作通りの機体に乗せたり、上位の機体を買うために出費を抑えたりといった各プレイヤーのスタイルが反映されやすくなっている。
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ステージ選択に関しても苦手なステージを後回しにする自由度がある程度増えている。
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ノーミスで最速で進めれば一部の侵攻部隊ステージを無視してゲームクリアできるというタイムアタック向けの要素もあり。
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環境により変動しやすかった難易度の是正。
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AC版は連射機能の有無による難易度の上下が激しかったが、移植版ではショットの連射速度が等間隔になり、DPSが環境に依存しなくなった。
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ただしこの仕様の影響により、連射機能付きのパッドなどによる高速連射はできなくなった。
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山口真理氏によるアレンジBGM。
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『ロックマン5』などを手掛けた同氏らしいメロディアスな仕上がりになっており、AC版のFM音源による重低音の効いたサウンドとはまた違った趣がある。
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とりわけ、AC版の「渓谷 ~ROUND 5」のアレンジである「戦艦ミンスク」ステージBGMの評価が高い。
賛否両論点(SFC)
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AC版同様に敵が後方から出現するケースが多い。
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ただし、その分自機後方をカバーする特殊武器の活躍機会が増えており、機体選択の戦略性にも繋がっている。
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AC版同様にストーリー・キャラクター面での原作要素は薄い。ただしAC版の時点で過剰に問題視される要素では無かった。
問題点(SFC)
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終盤ステージに登場する、あるボスについては少々理不尽な点がある。難易度に関わらずプレイヤーの機体・腕前によっては投げ出してしまいかねない。
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天井から吊り下がる形態のボスで、弱点の位置が上向きかつ隔壁で防御された場所にあるため、通常のショットを当てるのが非常に難しい。
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自機が入り込む隙間がほとんど無く、更にボス自身左右に揺れるように移動するので位置取りが非常にシビア。少しの操作ミスで隔壁や弱点に激突してダメージを受けやすい。
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「ガンポッド」など上方向に攻撃する武器があれば倒しやすくなるが、上向きへの武器を本格的に装備できる機体は購入額上位2機のみ。当然購入資金も相応に貯めておかなければならない。
ついでにアーケード版準拠の機体ではほとんど装備不可なので、再現プレイをする際は注意が必要。
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一部処理落ちが激しい部分がある。
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一部の特殊武器の使用時やホーミングミサイルなど破壊できる敵弾が多数画面に表示されると処理落ちしやすい。
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ミッキーのパイロット特性が解りづらい。
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選択時に「特殊武器の追加装備が一番多い」と解説されるが、特殊武器購入時に使用回数が多くなるわけではなく、
「ステージ中の隠しアイテムである特殊武器の使用回数回復アイテム取得時の効果が他2人よりも多い」というものになっている。
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特殊武器の使用回数回復アイテム自体が出ないステージも多く、そのステージでは単純に他2人よりも劣ってしまう。
総評(SFC)
元の雰囲気を残しつつ、多数のアレンジ要素を加える事でオリジナルとはまた違う面白さを引き立てている。
SFC初期のシューティングゲームを語る上で外せない一作と言えるだろう。
余談(SFC)
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本作に登場する架空機体「F200 EFREET」の元ネタは映画「ファイヤーフォックス」に登場する「MiG-31 ファイヤーフォックス」と思われる。
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当時のファミリーコンピュータMagazineにおいて、原潜シーベットのグラフィックが『ファイナルファイト』のハガーになるウソ技が掲載された。
最終更新:2024年07月08日 17:12