本項では『マリオカート アーケードグランプリ』及びその続編『マリオカート アーケードグランプリ2』の両方を扱います。両作品とも『良作』です。
マリオカート アーケードグランプリ
【まりおかーと あーけーどぐらんぷり】
ジャンル
|
アクションレースゲーム
|
|
対応機種
|
アーケード
|
発売元
|
ナムコ
|
開発元
|
任天堂 ナムコ
|
使用基板
|
トライフォース
|
稼動開始日
|
2005年12月8日
|
プレイ料金
|
200円(初期設定)
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
10年以上人気を保つ完成度の高さ 超多彩なアイテム カードで進行状況が保存可能
|
マリオシリーズ
|
概要
『マリオカート』シリーズのアーケード進出作。マリオシリーズのアーケードゲームはエレメカを除けば『てれびでんわ』以来である。
基本は従来と同じアイテムを使ったレースゲームだが、何と言っても他のアーケードレースゲームのようなハンドルとペダルによる操作をマリオカートで体感できるという点が画期的。
ちなみにSEなどは『ダブルダッシュ!!』を元に作成されている。
ゲームの流れ
-
コインを投入したらマリオカード使用の有無、対戦の有無(対戦台のみ)、キャラクター、ゲームモード(対戦時除く)、カップ、ラウンドの順に選択する。
-
ゲームモードは「グランプリ」と「タイムアタック」の2種類。対戦ではグランプリに準じた「通信対戦モード」限定となる。
-
カップは「マリオカップ」「DKカップ」「ワリオカップ」「パックマンカップ」「クッパカップ」「レインボーカップ」の6種類。各カップには4つのラウンド(=コース)があり、原則として4つのラウンドのうち2つずつが同じコースのルート違いとなっている。
-
初期状態では各カップのラウンド1・ラウンド2しかプレイできないが、ラウンド2で1位になることでラウンド3、ラウンド3で1位になることでラウンド4が解放される。
-
全カップ制覇で、上記のコースを逆走する「うらカップ」に挑戦できるようになる。さらにうらカップも制覇すると、難易度が上がった150ccでのレースをプレイできる。
-
ラウンド4をクリアすると「挑戦状」としてミニゲームがプレイできる。これをクリアすればカップ制覇となる。
-
プレイヤーのデータを保存する媒体として「マリオカード」(以下カードと表記)がある。ゲームの進行状況のほか、ニックネームや称号を設定可能。
-
レース終了後は表彰式の映像が流れ、続いて次のラウンドに挑戦するかを選ぶ。挑戦しない場合はゲーム終了となる。
-
レース前に顔写真を撮影する。写真には操作キャラクターのフレームがつき、プレイ中は位置表示としてこの顔写真が使われる。
-
カードを持っていれば、1人プレイ時限定で写真撮影をOFFにすることもできる。また、稀に店舗設定でカメラ自体がOFFになっていることがあり、この場合はスキップされる。
-
なおCOMキャラクターはそのキャラクターの正面イラストになっている。
システム
-
グランプリモードでは6人、通信対戦モードでは人数に応じて4人までの対戦となる。
-
タイムアタックモードは家庭用シリーズ同様、3つのダッシュキノコを持った状態でタイムが計測される。
-
キャラクターは全ラウンドを制覇するまで変更できないので注意が必要。
-
筐体にはハンドル・アクセルペダル・ブレーキペダル・対戦キャンセルボタンが取り付けられている。
-
ハンドルの中央にはアイテムボタンがあり、これを押すことでアイテムを発射できる。
-
本作ではブレーキを一瞬踏むことでミニジャンプを行い、そこからドリフトに繋げる。なおジャンプ専用のボタンは無い。
-
本作のドリフトにはミニターボが存在しないのが特徴だが、速度を落とさずコーナーを曲がるのにドリフトは必要。また、本作独自の要素としてドリフト中にシールドが張られる。
-
『スーパーマリオカート』同様、コインによるスピードアップが採用されている。
-
今作ではライバルのみならず、壁や障害物にぶつかってもコインを落とすようになっている。
-
アイテムはアイテムボックスから入手するが、使用するアイテムは3種類。カードを持っていれば、使うアイテムはレース前に選択できる。
-
ちなみに「ボックス」とは名乗っているが見た目は虹色のコインに近い。
-
各グランプリのラウンドには「PRIZE」と表示されたアイテムがあり、1位になればそのアイテムを次のレースから使用可能になる。
-
また、各キャラクターでカップを制覇することでキャラクター専用のスペシャルアイテムも入手できる。
-
カードを持っていれば、ニックネームのほかに「称号」をつけられる。レースで条件を達成すると、レース後に称号を書き換えるか否かを選択できる。
キャラクター
本作のキャラクターは「標準性能型」「加速重視型」「高速安定型」「軽量機敏型」の4グループに分けられており、それぞれの区分内では同じ性能となっている。
『64』の8キャラに加え、ナムコから展開されている縁からパックマンファミリーの3キャラが出演している。
-
標準性能型…マリオ、ルイージ、パックマン
-
加速重視型…ピーチ、ヨッシー、アカベイ
-
高速安定型…ワリオ、ドンキーコング、クッパ
-
軽量機敏型…ミズパックマン、キノピオ
評価点
-
実際に車を運転しているような感覚を味わえる。
-
ぶつかったときやダメージ時に起こるフォースフィードバックはもちろん、床の出っ張りやガタガタ道での感覚までもがハンドルと手に伝わってくる。
-
ハンドルを重くしたり、パンクしたときにハンドルが傾いたようになるなど、アイテムの効果にもフォースフィードバックが活かされている。
-
ユニークかつ非常に多彩なオリジナルアイテム
-
1レースに使用できるアイテムは3種類までだがその種類は非常に多く、+アイテムやキャラ限定アイテムを除いてもその数54種類。
-
前方のカートをロックオンして確実に当てられるタイプ、自分で狙って当てるミサイルタイプ、設置するタイプ、触れた相手にダメージを与えるタイプと内容も様々。
-
中には「壁にぶつかると笑われるようになる「笑い袋」」「音痴な歌(とエフェクト)で走行妨害する「おんちスピーカー」」などネタに近いアイテムもある。縛りプレイや魅せプレイのためのお楽しみ要素である。
-
一定以上やり込むと「+アイテム」を入手できる。
-
効果時間が増加する、クラッシュ後にバッドステータスを付与するなどより強力な効果が追加される。
-
時限爆弾の効果が追加された「めまわしウイルス+」「ハンドルウイルス+」など、中には恐ろしいものも。
-
「どくバナナバズーカ+」はCPUに対して異常に強く、被弾したCPUが復帰不可能になるほど大幅なロス効果がある。
-
対CPU性能が下がるアイテムも存在する。「ワンワン+」がその一例。
-
タイムアタック以外、特別ルールの無い限りは基本的にキノコ(ダッシュ用アイテム)は出ない。そのおかげか、極端に差が付いてしまったり、レースが早く終わってしまったりすることもない。
-
今作ではダートゾーンでも減速してしまう。よってショートカットには使えない。
-
無敵アイテムである「スター」もあるが、こちらも加速効果はなく、ダートゾーンを走破することはできない。
-
ただし、自分に対しては使えないが、敵を無理矢理ダッシュさせる「ダッシュバズーカ」というアイテムはある。
-
アイテムの取得は従来通りスロット形式で特別ルールによりアイテムが決まっていることもあるが、自分で出るアイテムを決められるルールもある。その際には前回自分で決めたアイテムをカードに保存し、すぐに使用することも可能。
問題点
-
ゲーム中の操作説明がやや不足気味。筐体には説明用のステッカーが貼られていることもあるがそれでも分かりにくい。
-
デモ画面ではアイテムの使い方とコインシステムしか説明されない。
-
カード作成後は、選択したキャラを後から変更することはできない。
-
高速安定型のキャラを選んだ場合、カーブの多い後半のコースで泣きを見ることになりやすい。その代わりなのか、とある条件を満たすことで解放される150ccでは非常に曲がりやすくなっている。
『2』ではこの3キャラに上級者向けとはっきり表示されるようになった。
-
各カップの最終コースと裏カップ以外は決められたアイテムしか使うことができない。
-
この決められたアイテムには対CPUへの効果が弱いものまで存在する。
-
キャラクター専用のスペシャルアイテムは見た目が違うだけで性能は多くが似たり寄ったり。一部を除いて弱いアイテムも目立つ。
-
ただし、マリオとルイージの「ワンワン」、ワリオの「ボム兵」など替えが効かない強力なアイテムも存在する。
-
チャレンジゲームをクリアできないとカップ制覇扱いにならないため、失敗した場合は一度クリアしたコースを再度プレイしなければならなくなってしまう。
-
序盤のミニゲームは焦らなければ簡単だが、最終カップとなるレインボーカップのミニゲームの「ロボマリオに勝て」は一部理不尽なレベルで難しい。
-
プレイヤーの前方にいる時はバナナを無限に使用し、後方にいる時は「ミドリこうら」「ブラックこうら」「バナナバズーカ」をランダムで無限に使用する。アイテム投擲の仕様から運ゲーの域に達しており、終盤で被弾してしまうと巻き返しが難しくなる。
-
コースは家庭用作品と比べるとジャンプ台や動くギミックのようなメリハリに乏しく、退屈気味なものが多い。ワリオカップとクッパカップには障害物のようなギミックがあるが序盤は似たようなコースばかりとなる。
-
CPUの挙動がプレイヤーと異なっており、カーブの曲がり方やアイテムの喰らい方が全く違う。
-
『スーパーマリオカート』のCPUに近く、どのCPUも決められたレーン上を走り、カーブやダートで減速しない。ただし例外としてロボマリオはジャンプをし、ミドリこうらを被弾すると即停止するなどプレイヤーと全く同じ挙動をしている。
-
被弾した時のリアクションが異なるためか、一部のアイテムの効果が対プレイヤーよりも薄い。「タライ」など殆ど効果のないアイテムも存在する。
-
ただし「バナナ」など対プレイヤーよりも効果の高く調整されているアイテムも少なからず存在している。
-
プレイヤーに近い動作をするようになったダブルダッシュとは真逆の対応である。
-
筐体の設計が高年齢層向けゲームと大差なく、シートの位置が調整できることを考慮しても子供には操作がしづらい。小学校高学年の男子で足がペダルに届くか届かないかというレベルである。
-
このため、親がアクセルを担当するという親子愛が垣間見られることもあった。
-
のちに『2』でオートアクセル機能が搭載されたがゲーム中では一切説明されないので、現在でも親がアクセルを踏む姿は見られる。
総評
家庭用作品同様、任天堂のゲームらしく誰でもとっつきやすく仕上がっている。体感型筐体を採用したことで何より操作が楽しいので、子供向けにも十分おすすめできる。
多くのコースやミニゲームを楽しみたいならば、カードを入手してプレイすることを強く推奨する。
マリオカート アーケードグランプリ2
【まりおかーと あーけーどぐらんぷりつー】
ジャンル
|
アクションレースゲーム
|
|
対応機種
|
アーケード
|
発売元
|
バンダイナムコゲームス
|
開発元
|
任天堂 バンダイナムコゲームス
|
使用基板
|
トライフォース
|
稼動開始日
|
2007年3月14日
|
プレイ料金
|
100円
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
有名声優、山寺宏一による実況付き 新しい収集要素「マリオコイン」 ミッションや仕様の変更から難易度はやや緩めへ カップ内使い回しの問題はそのまま
|
概要(2)
大ヒットとなった初代『アーケードグランプリ』の稼働開始から約1年半後にリリースされた続編。筐体は初代のものをそのまま利用しているが、実況の追加などでプレイの印象は大幅に変化した。
なお、初代のマリオカードを引き継ぐことで進行状況をコンバートできる。ただし一度引き継いだカードは前作では使用不可のため注意。
改善点・評価点
新しく追加された要素
-
レース中に実況が流れる。
-
担当するのは「おはスタ」などで知られる山寺宏一氏。
-
アイテムを敵に当てたり、綺麗なドリフトをしたり、ショートカットを使ったりと様々な状況に合わせて実況を行う。当然パターンは決まっているわけだが、それを感じさせないほどにかなり自然な実況になっている。
-
実況を消すこともできる(要カード)が、なるべく消さずに盛り上がりたい。
-
逆に実況を自機に集中させる「スーパーマイク」というネタアイテムもある。
-
プレイアブルキャラとして新たに「ワルイージ」「まめっち」が参戦。
-
『たまごっち』のキャラクターであるまめっちが参戦したのは、ナムコとバンダイが合併した縁であろう。
-
新規カップとして「ヨッシーカップ」と「ワルイージカップ」が追加。前の方に配置された初心者向けとなっている。
-
前作から引き続き、どちらもテーマに合った雰囲気がよく出ている。とくにヨッシーカップはシリーズ作品の『ヨッシーアイランド』を意識したコースに仕上げている。
-
100ccが追加されたうえに初期状態からクラス選択が可能となったため、シリーズお馴染みの50cc・100cc・150ccの難易度選択をいつでも楽しめる。
-
また50ccと100ccクラスでは、1秒間アクセルを踏まずにいると自動的に前進するオートアクセル機能が搭載された。
-
ゲーム開始前の写真撮影用のフレームに操作キャラクター以外のもの(海賊など)が追加。マリオコイン獲得によってさらに増やすことができる。
-
先述のとおり前作から使っていたカードをそのまま使うことができるうえ、進行状況もきちんと移動されるので前作のプレイが無駄にならなかった。
-
マリオコインの追加
-
コース内に配置されている、Mマークが描かれたコイン。レース中の効果自体は通常のコインと同じだが、数は限られており収集要素となっている。
-
マリオコインの取得枚数はカードに記録されていく。一定数のコインを集めるとキャラクター専用アイテムとカート、新フレームが追加される。
-
専用カートは、見た目はもちろんだが性能も差別化されており、これにより限定的ながら車両選択の要素が導入できるようになった。
+
|
4000枚集めると…
|
-
なんと主観視点で遊べるようにもなる。
-
主観視点にする場合、レース中に筐体右にある対戦キャンセルボタンを押す。もう一度押すと通常視点に戻る。
-
視点はキャラクターの目線ではなく、カートのフロントあたり。感覚がつかみ辛いが、慣れれば非常に楽しい。やり込んだら一度はこの状態で完走してみよう。
|
前作から変更・改善された点
-
+アイテムを廃止した代わりに完全新規のアイテムがさらに増加。
-
当てた相手を強制ジャンプさせる「ウサミミ」や、顔写真を利用して相手のプレイ画面を隠してしまう「お面」、後方に設置して動き回る「ネズミはなび」などバリエーションは豊富。先述の「スーパーマイク」のようにシステム変更に合わせたアイテムもあり好評。
-
お馴染みのアイテムも一部を除いて全て続投している。
-
前作ではカード使用時は作成時に選んだキャラクターから変更できなかったが、同じカードでもゲーム開始時にキャラクター選択が可能となった。これによりコースによって得意なキャラを使い分けることも可能に。
-
キャラクター専用アイテムの振り回し系アイテムの対CPU性能が大幅に向上した。
-
トロフィーが全コース制覇だけに緩和
-
前作はチャレンジゲームをクリアしないと制覇できず、失敗するとまたコースを選んでミニゲームに再挑戦と面倒なシステムだった。
-
本作では各カップの全レースを制覇するだけでトロフィーが獲得できるようになり、やり直しをしなくても良いようになった。
-
チャレンジゲームは続投しているものの、マリオコインを大量に獲得できるチャンスとなるボーナスゲームになった。ゲームの内容自体は楽しいものが多かったため、これが好きだったプレイヤーからは大いに好評を博した。
問題点(2)
-
一部据え置かれた問題点
-
前作の問題だったCPUの挙動は結局改善されていない。
-
CPUが「ネズミはなび」か「ニセマリオコイン」に被弾すると、他のアイテムに被弾するまで永続的に速度が減少するバグがある。
-
上空に吹き飛ぶだけで減速効果はもちろん存在しない。
-
前作と同様、強制的に使わされるアイテムの一部がCPUに対して効果がいまひとつ。
-
50ccと100ccでは特に問題ないが、150ccだとその影響が大きい。
-
レースによるが前方にしか投げられないアイテムだけしか割り振れないことがあり、1位で走っていると後方ががら空き。その他のアイテムも基本的に後方に装着して守ることができないので攻撃してこない運頼みになる。
-
しかも指定されるアイテムに後方装着のアイテムが少数なのも拍車をかける。
-
えんまくがCPUに対して効果がなくなっている。
-
そもそもえんまく自体が弱いためプレイヤー視点でも効果は薄い。
総評(2)
実況の導入に加えてマリオコインによる収集要素や新しいアイテムの追加など今まで以上に盛り上げるシステムがてんこ盛り。前作で問題だった仕様もそのほとんどが改善された。
難易度選択システムやオートアクセルの存在により低年齢層にも遊びやすくなった一方、新しいカップの追加やマリオコイン集めによって前作プレイ者でも十二分に楽しめるボリュームとなった。今からでもカードを手にして遊ぶ価値の十分ある良作である。
余談
-
出始めの頃は1プレイ200円の場合もあったが、現在ではほとんどの店舗で1プレイ100円・カード200円になっている。
-
本作のカメラ機能は「ナムカム2」という。「2」ということは「1」も存在するわけで、「1」はこれより約5年ぐらい前の『レースオン!』という同じく子供・パーティー向けレースゲームで採用されていた(「レースオン!」もやたら絶叫する実況と落ち着きすぎた解説付きで、このゲームの先駆けとも言える)。
-
しかし、色々あってこのゲームが出るまで撮影機能が採用されたゲームは他になかった。時代が早すぎたということか。
-
本作は非常に息が長く、2020年時点で現役で稼働させている店舗も少なくない。
同時期にセガにより開発された『F-ZERO AX』が早々に市場から消え去り、今では大都市圏でも見つけることができないのとは対照的である。
-
主にセガやナムコの運営するアミューズメント施設やROUND1ではほぼ確実に設置されている。デパートのゲームコーナーにも置かれていることが多い。
高難易度・初心者殺しなゲームが多いアーケードゲームの中でも、ほとんどプレイヤーを選ばず安心して遊べるゲームの一つであるから、それだけ人を惹きつける魅力のあるゲームなのだと言える。
-
ただし続編である『DX』が出ていることからそちらに置き換わっている店舗も増えている。またモニタの劣化により映像の色合いがおかしくなった筐体も現れてきているが、2015年に初代および『2』のサポートが終了したこともあって直されないケースもある。
最終更新:2024年07月19日 11:16