本項目ではFC版をメインに解説し、同名の続編であるGB版は参考記述扱いとしています。
悪魔城すぺしゃる ぼくドラキュラくん
【あくまじょうすぺしゃる ぼくどらきゅらくん】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2MbitROMカートリッジ
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発売・開発元
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コナミ
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発売日
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1990年10月14日
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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悪魔城ドラキュラシリーズリンク
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ものがたり
その日―――ドラキュラくんは一万年の眠りから目覚めた。
「ふあっ…あ~~よくねた ムニャムニャ へへっ…トマトジューストマトジュース」
一万年ぶりにフレッシュ・トマト・ジュースを片手にTVを見ていると…城の門番のこうもりくんが現れた。
「よう!ひさしぶり」 かぷっ! 「えっうそ!」
「な!何を…するんだ~!!俺様が世界のドラキュラ大魔王様と知ってやったのか!」
忠実なしもべだったはずのこーもりくんがはむかってきたのだ!ドラキュラくんが眠っている間にいったい何が…。
「ガラモス様ばんざい!」
「ガラモス?」
「おはようドラキュラくん」
「えっ!!」
「オメーがグースカ眠ってる間に魔界は征服させてもらったよ!これからワシのことを大魔王ガラモス様と呼んでくれたまえ!」
「魔・魔王はこの俺だ!早く仕度してあいつをやっつけなくっちゃ!!」
「うん パパのマントが良く似合う!よし!出発だ!」
こうしてドラキュラくんはガラモスをこらしめるべく1人旅立ったのであった。
(取扱説明書より)
概要
『悪魔城ドラキュラシリーズ』の番外編的作品。
『グラディウス』→『パロディウス』、『スナッチャー』→『SDスナッチャー』など、当時のコナミが度々制作していたシリアスな本編作品に対するパロディ的番外作品のひとつで、デフォルメ色の強い世界観で描かれた世界観の中、ドラキュラの息子「ドラキュラくん」を操作して魔王ガラモスの打倒を目指す横スクロールアクションゲーム。
ゲーム内容
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ドラキュラくんの攻撃方法は妖気弾(火の弾)。長押しする事でより強力な攻撃弾を発射できステージをクリアしていく毎にホーミング弾や炸裂等の特殊な攻撃やコウモリ変身や逆さ歩きといった様々な技を習得していく。
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悪魔城本編シリーズと違い空中制御が効くので、シリーズとしては性能の良い部類に入る自機。
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敵を溜め撃ちで倒すとコインが出現。コインはステージクリア後のミニゲームで用いる事が出来、残機を増やす事ができる。
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舞台は悪魔城から始まりジェットコースターや水中、ニューヨークや宇宙にまで広がる。
評価点
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アクションゲームとしての基礎部分の出来が良い
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操作性は良く、攻撃も連打と必殺技を切り替えての長押しのみと分かりやすい。
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必殺技はステージをクリアする毎に増えていくので、多彩なアクションや様々な攻略方法が楽しめる。
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攻撃の軌道が変化したり、敵を凍らせてその上に乗ったり、重力を逆転して天井に立ったりと、少しずつできることが増えていき、見た目の変化も大きく使っていて楽しい。
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BGMも良好
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悪魔城らしいシリアスさでは無いが、作風に合わせてコミカルながら作り込まれたBGMのクオリティは続編のGB版含めいずれの曲も高い。
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1面のBGMは『悪魔城伝説』より「Beginning」のアレンジとなっている。
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終盤を除き遊びやすい難易度
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悪魔城シリーズとしては低めの難易度で、終盤前までならメインターゲットである子供にも遊びやすい。
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ステージに時間制限がなく、無限に沸く雑魚でコインを大量に稼いでミニゲームで残機を増やす事もしやすい。
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後述の通り、ミニゲームは運ゲーばかりではあるが、コインをそれなりに稼いでいれば何機か増やす程度なら割としやすい。
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コンティニューも無制限に出来る。
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後述の通り、ステージ8以降はステージ7に戻されるという問題はあるが、逆に言えばそこまでのステージは何回死んでも何度でもやり直せる。
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そのステージ7開始地点の横にはハートの最大値を増やすアイテムも置いてあり、一応の配慮はされている。
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ボスは全体的にパターンが分かれば楽
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ラスボスも含めて全体的に行動パターンはシンプル。慣れればノーダメージでボス撃破も難しくない。
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終盤は後述のコンティニューシステムのせいでかなり難しいのは確かだが、それでもパターンが分かればボス撃破で苦労はしなくなる。
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悪魔城シリーズのセルフパロディ要素
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悪魔城シリーズの要素を上手くセルフパロディしており、シリーズをプレイしていると懐かしい要素が多い。
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ステージ1からしてお馴染みの振り子の上を渡って行く場所や、ラストで長い階段を上った先にあるボスステージ等、既存のラストステージである悪魔城をコミカルな形で再現している。
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溜め撃ちで使えるようになる技も追尾する分裂弾や敵を凍らせる冷凍弾(どちらもサイファのサブウェポン)、コウモリへの変身(アルカードの特殊行動)、天井への張り付き(グラントの特殊行動)等、本作用にアレンジはされているが悪魔城伝説のメンバーを思い出すようなものが多い。
問題点
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終盤の難易度が凶悪
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最初の難関がステージ7の軌道エレベーター。
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強制縦スクロールのステージで、画面下に落ちるとミスになる。このスクロールはかなり早く、急いで足場を飛び移らなければならない。一度でも足場を踏み外したり、敵の攻撃を受けて仰け反ったりしたら即真っ逆さま。しかもミスするとステージの最初からやり直し。
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空を飛べるコウモリ化、上に落ちる重力逆転と言った「ズル」ではクリアできない様に調整されているため、ガチのアクションで攻略する必要がある。
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ステージ8は7や9と比べると楽なステージだが、それでも空飛ぶ船と船の間を雲に飛び移りながら進む為、落下死が起こりやすい。他にも初見殺しの即死ギミックも存在し、地味に残機を削られやすい。
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そして最終ステージであるステージ9は中ボス2体+ラスボスと強敵が多い、ミスすると最初からやり直し、体力回復アイテムがないのでコンティニューすると体力3でクリアしなければならない、と、問題が多数。
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しかも最初の中ボスは特定の必殺技しか効かなかったり、動きがトリッキーだったりといきなり強敵である。
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パスワードはステージ7までのものしか存在せず、ステージ8、9まで進んでからやり直すとなるとまた悪夢のようなステージ7をクリアしなければならない。
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即死しやすい
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この頃のコナミゲーによくあったギリジャンを求められる場所が序盤から多く、かなり死にやすい。
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大半は多少余裕があり、ジャンプ中にも空中制御が可能なだけ過去のドラキュラシリーズ等に比べるとマシな方ではあるが、それでもジャンプが届かず落ちるのは良く起きる。
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被ダメージ時の動けない時間が長い
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被ダメージ時にはノックバックして少し動けなくなる時間があるのだが、そのせいで多彩なギミックに対処しきれず被ダメージ=落下死になりやすい。
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上述のステージ7の軌道エレベーターがきついのはこれも一因。
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必殺技の切り替えが少々面倒
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必殺技はセレクトボタンを押すごとに順繰りに切り替わる方式なので、後半ステージになって必殺技が増えてくると使いたい技を選ぶのに手間がかかるようになる。
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スタートボタンで停止中でも変更は可能なので、焦らず済むようにはなっている。
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ステージ間ミニゲームはルーレット・色当て・福引・黒髭と大半が運任せ。
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どのミニゲームに当たるのかもアミダくじで決めるのでやっぱり運任せ。ルーレットと福引は割と残機が増えやすいが、他二つは大変効率が悪く、大量のコインを稼いだステージでこのどちらかに当たるとがっかりする。
総評
コミカルな作りかつ良好な操作性で『悪魔城』のイメージからすると意外な作風であるが、2Dアクションとしては丁寧に作られており高い完成度の作品である。
長らく移植に恵まれなかったものの現在は後述の通り各機種に配信されている。
他作品のハードさに疲れたときに、ふと癒しを求めてプレイしてみてはいかがだろうか。
続編・移植等
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FC版の後日譚として全く同じタイトルで1993年1月3日にGB版が発売された。
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GB版のストーリーは「FC版の最後で倒したはずのガラモスが復活した」というもの。そのため、勘違いされやすいがFC版の移植ではなく続編に相当する。
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特定のステージクリアで取得できる特殊攻撃も引き続き採用。冷凍弾がなくなった代わりに、仲間のコウモリを使って攻撃するコウモリ突撃隊と敵の攻撃弾をはじくカサバリアが追加された。また、コウモリ変身が最初から使用可能になっている。
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GB版で追加された特殊攻撃はステージ間デモで習得し、FC版で習得したコウモリ変身以外の特殊操作はオープニングで使い方を忘れているがステージクリア後に使い方を思い出すといった具合に、FC版の後の話ということを意識している。
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全ステージがパスワードコンティニューできるようになったほか、サウンドテストやミニゲームだけがプレイできる特殊なパスワードもある。
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パスワードは4文字の食べ物になっており、入力画面では寝ているドラキュラくんを正しいパスワード(ドラキュラくんの好物)で起こす。なかなか現金である。
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一部ステージ間の間に演出なども追加されているが、ステージ・敵・BGMなどFC版と似ている点も多く、半分移植半分続編と考えるのが妥当。
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ミニゲームで残機を稼ぎやすくなったり、軌道エレベーター(GB版ではステージ5)では足場を下からすり抜けられるようになっていたりなど、FC版より幾分難易度が下がっている点もある。
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海外ではGB版のみ『KID DRACULA』のタイトルで発売。FC版については後述のコレクションまで長らく海外ではプレイ不可能になっていた。
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2006年には携帯アプリにFC版が移植されていた。現在は配信終了済につきプレイ不可能。
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2019年5月16日よりSwitch/PS4/XboxOne/WinのDL専用ソフトとして配信されている『悪魔城ドラキュラ アニバーサリーコレクション』にFC版が収録されている。
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本項のFC版については元々日本版のみだったが、海外配信の為に新たにGB版と同じ『KID DRACULA』のタイトルでFC版ベースの英語版が制作された。
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後にアップデートで日本版のソフトでも英語版がプレイ可能となった。
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『アニバーサリーコレクション』自体の仕様としてクイックセーブが可能なので、上記の終盤面からのやり直しが困難という点が解消されている。
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他作への客演としてパロディウスシリーズにドラキュラくんが登場している。
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『極上パロディウス』(SFC版)、『実況おしゃべりパロディウス~Forever with me~』(PS/SS版)に登場。
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ドラキュラくんの2Pキャラである「キッドドラキュラ」の元ネタは海外ゲームボーイ版での本作の英語版のタイトル。設定上は「ドラキュラくん本人が1万年の眠りに就く前の9歳児であり、眠くて機嫌が悪い」となっている。
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子供にも親しみやすいキャラクター性から、キッズメダルの『ワイワイジョッキー』『ワイワイポーカー』にも出演した。
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また、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』ではドラキュラくんネタが比較的多く登場している。
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本作のボス「ガラモス」は月下の夜想曲に隠しボスとして登場。本作同様肩パット付きの鎧を装着しており、電撃で攻撃してくるが武器は刀から鎚矛に変わっている。電撃無効の装備をしなければ最強の敵として君臨する。
倒して無事生還できれば爺の図鑑に載り、内容が1万年計画でドラキュラに代わって悪魔城を支配しようとする魔神という内容である…………あれ?
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画面に収まりきらない程の巨体を誇り、コナミお得意の多関節技術によって非常に滑らかな動きで襲いかかってくるこのボスキャラには多くのプレイヤーが度肝を抜かれたと思われる。また作品に合わせてシリアスな外見になっており、魔神らしい凶悪な面構えになっている(ドラキュラくんの方は魔神というより怪獣の様な感じのキャラだった。ドラキュラくんよりは大きいもののサイズも画面内に収まる程度の大きさであった)。
余談
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ドラキュラくん=アルカード?
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本作の主人公であるドラキュラくんは、白髪・黒マント姿の子供吸血鬼であり、おつきが死神さん。ドラキュラの息子で火弾がメイン攻撃だったりするので『悪魔城伝説』などに仲間キャラとして登場したアルカードではないかとも思われがちだが、ゲームストーリー自体はあくまでもシリーズ番外編であり、本作のオリジナルキャラである。年齢は1万9才(9才で眠りについて1万年後に目覚めた)。
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上述の『アニバーサリーコレクション』における年表においてはドラキュラくんだけは「※外伝設定」とわざわざ注釈されて独立しており、欄外に「アルカードとは別人らしい」と注意書きもされている。
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一方でアルカードの父であるドラキュラからアルカード同様にドラキュラくんも親子という繋がりで記載されており、別人表記についても「らしい」と濁していたりと、完全に別人と断定はしておらず、曖昧な形で濁している。これらの表記からしてパラレル設定と見るのが無難だろう。
最終更新:2025年01月02日 15:15